謹賀新年
読者の皆様、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、今年も日本企業の国際化は進展、日系企業の国際舞台での活躍は更に拡大していくものと期待しています。
こうした中、私がいつもお世話になっているジェトロ様のご報告によると、最近の日本企業の経営状況については、その収益の三分の一は海外で上げ、更にその三分の一はアジア・ビジネスから上げているとの報告がなされています。
また、アセアン主要6カ国とインドに進出した日系企業の約8割は、売り上げを拡大、調達コスト削減、人件費削減、高付加価値化などの経営努力によって黒字化しているとも伝えられています。
更に日系企業の対外直接投資の約3割(金額基準)はアジア地域で行われ、自動車・同部品、電気・電子・同部品、金属などの分野の進出が多くなっています。
そして、このジェトロ様の報告では、中国本土とアセアン+インドを相対比較した場合、アセアン+インドが中国本土に劣る点として、問題視されているポイントは、
- 裾野産業が狭い。
- 各層での人材確保が難しい。
- 為替相場が不安定である。
といったことが上げられており、また、中国本土を100として総製造原価を比較してみると、ベトナム以外は中国本土のほうが安く、インドも1.2ポイントではありますが、インドのほうが総製造原価は高いとの報告がなされています。
また、こうした中、日系企業のビジネス最適地として注目されているのが、中国本土と共に、タイ、インド、ベトナムであるとも言われています。
そこで、今回はこうしたジェトロ様の分析を踏まえた上で、ビジネス最適地について、少し考えてみたいと思います。
まずは、私が講演会などでいつも申し上げていることなのですが、企業が国際ビジネスを展開するに当たっては、
- 言語
- 通貨
- 法律
- 会計基準
- 環境基準を含めた製造基準
といったリスクを国内ビジネスに比較すると相対的には多く抱えることから、原則としては海外よりも自国内のほうがビジネス最適地となり得るはずと考えるべきであります。
しかし、国際ビジネスを展開していく際には、むしろ国際的な言語に恵まれている地域、通貨が自国通貨より安定している地域、法制度や会計システムが整い、製造基準を満たし易い環境を持っている地域もあることから、こうした五つの切り口から見て、自国よりも海外のほうが安定的でメリットがある可能性もあるので、それらを確認したうえで、自らにとって、
「カントリーリスク」(特に戦争のリスク、政権交代による政策変更リスク、法律変更に伴う自社債権を接収されてしまうリスク等々)
が自国と比較して、或いは一般的に見て国際水準からすると高いのか低いのかを確認することが望まれます。
その上でビジネス最適地は、自社の国際ビジネスに合わせて、
というビジネスの四要素が効率活用できる地域を求め、総合判断をしていくことになります。そして、その場合のチェックポイントは、
- 立地条件 インフラ、物流、建設工事難易度など
- 生産環境 設備や原材料の調達状況、産業集積度、労働力、エネルギーコスト、環境保護など
- 販売状況 市場規模、流通網、参入条件など
- 従業員の生活環境 医療、教育など
- ビジネスパートナーの有無
- 公的支援体制の整備状況
- 資金調達運用状況
- 国際的な弁護士、会計士の存在などビジネスソフトインフラの整備状況
- E-Mailなどを含めた情報環境の整備状況とそのコスト、安全性
- 国際化進展度合い
などが最適地を選定していく際の一つの大きな切り口になっていくものと思います。
そしてまた、これらのチェック・ポイントについては、全ての項目が他の地域よりもよいというところはまずないと思われることから、各要因を組み合わせて総合判断をしていくこととなり、また他社と「わが社」の違いが当然にあるでしょうから、他社の見解は参考にする程度に留めて、自社独自で判断をしていく必要が出てきます。
こうして論理的な視野、視点からビジネス最適地を選定、リスク対比リターンの極大化を図っていくことが企業の国際化については大切なことであると私は考えています。
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