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2019年3月[Sanada発 現場から]


深まる混沌の世界、独仏連携、そして、日本の生きる道


 

 今回は混沌の世界情勢を概観してみたいと思います。

[自国第一主義に基づくポピュリズムの台頭]
私は必ずしも、米国のトランプ大統領を、能力が低く、自分勝手な人間とは見ていません。
むしろ、彼の経済戦略や外交戦略は、
「他国に打ち勝ち、米国を再び偉大な国にする。」
という視点から見れば、
「効果の高い戦略を打つ戦術家、少なくとも、そうした戦術家を背後に持つ大統領」
と私は感じています。
しかし、私がトランプ大統領に対して持つ危惧は、
「アメリカファースト」
を唱え、
「自国第一主義の名の下、大衆迎合的動き(ポピュリズム)を米国国内はもとより、世界に拡散させている。」
ということにあります。
自国第一主義の下での世界的なポピュリズム拡散は、世界各国を、
「均衡(Balance)、協調の世界から、自国第一意識を背景とした覇権(Hegemony)争い」
に導き、
「世界的混乱を解決するどころか、世界的混乱を拡大する。」
という遠因にもなりかねないと私は見ています。

そして、私はこうした中、
☆米中覇権争いやその背後で動くロシアの動き
☆BREXIT問題の渦中にある英国、庶民の既得権益層に対する不満を背景としたフランスの黄色いベストデモ運動、ドイツのメルケル首相の権力掌握力低下、イタリアの財政赤字問題を背景とした、欧州連合崩壊トレンドに対する懸念
☆イラン問題を軸にシリアやトルコ、そしてサウジアラビアも巻き込む中東情勢の混乱懸念
☆米国のお膝元で燻るベネズエラの混乱
などの現象を見ると、
「中長期的には、現行の世界秩序の変化が見られ、その混沌(Chaos)が混乱(Disorder)へ、そして、場合によっては、無政府状態(Anarchy)にまで発展してしまうのではないか。」
と心配してしまいます。
否、そこまでの心配へは行かないとしても、
「我々の世代で最悪の不況がやってくる。」
と見られてきており、気に掛かります。
特に私は、
「直近の世界的経済混乱となったリーマンショックは、民間セクターで起こった、行き過ぎた広義の信用創造によるバブル経済の崩壊が齎した大混乱でありましたが、その後の世界は、そのリーマンショックを克服しようと、公的セクターが今度は行き過ぎた広義の信用創造を行い、その結果、世界の主要国は現在、財政赤字問題に苛まれており、万一、これが爆発、崩壊すると、民間セクターを背景とした経済危機であったリーマンショック以上の世界的大混乱を齎す。」
と私は見ています。
実際に国際金融世界では、
「経済の低迷は時間の問題である。
今回は前回よりも苦しい戦いになる。」
との見方もあり、特に最近は、
「これまで世界経済の成長エンジンだった米中の経済は同時に低迷している。
米国の経済成長率は2020年には1%台にまで低下する。」
との声も出ています。
そして、私が心配しているのは、例えば、日本が実施している、
「マイナス金利政策の出口戦略が見えない。」
と言われているが如く、世界的混乱の解決に向けた際の秘策が尽きてしまったら、世界はどうなるのか?と言う懸念であります。
即ち、前述したリーマンショック以降、世界は景気を回復させるという名分で財政出動拡大した上、更に利下げマイナス金利政策の導入、税金減免など、私の目からすれば、
「禁じ手」
も含めた様々な対策を打ってきましたが、しかし、世界経済に確たる景気回復は見られていますでしょうか?
このままでは、
「Anarchy、究極では戦争状態に陥る。」
のではないかとまで心配してしまいます。

そして、私は思います。
私が小学校の頃、先生に教わった大切なことの一つは、
「混乱が大きければ大きいほど、皆で力を合わせて克服しなければならない。」
ということでありますが、こうした、
「世界的な協力、協調」
を阻むものは、冒頭に述べた、世界的なポピュリズムの拡散であります。
最近では、トランプ大統領だけでなく、「熱帯のトランプ」と称されるブラジルのボルソナロ大統領、極右勢力の五つ星運動が権力を握ったイタリアのほか、トルコ、メキシコ、フィリピン、ギリシャ、シリアまで排他的国粋主義で武装したポピュリズム政権全盛の時代を迎え、ロシアや中国本土は自国内において、統制色を強めながら、
「独裁色」
まで深めつつ、世界的な覇権争いを展開しています。
そして、こうしたポピュリズムの動きの中で、
「自由貿易を否定、関税戦争に没頭する。
経済危機に伴う打撃を最小化するには先手の構造調整が必要であるにも拘らず、政治家たちは、票には繋がらぬとこれを一蹴する傾向が強まっている。」
と見られ、拡散している模様です。
世界は大混乱に陥りそうです。

[独仏連携について]
上述したように、私は、世界的な混沌は深まるばかりでしないかと見ています。
米中摩擦の行方や、米国トランプ政権かが進める、
「イラン包囲網」
の動きやこれに影響を持つシリア情勢、トルコやサウジアラビアの動向などの中東情勢もやはり、世界経済に大きな影響を与えると考えています。
そして、混沌と見られるBREXITの行方、黄色いベスト革命の動向によって揺さぶられるフランスのマクロン政権の動向、更に権力掌握力を弱めるドイツのメルケル首相とドイツの動向などを考えると、EU崩壊リスクとその延長線上のユーロの混乱などが、世界的な経済混乱を誘発する危険性もあると私は考えています。
しかし、こうした中にあって、その独仏両国では、
「独仏友好条約」
をもとに改めて新連携が推進されようとしています。
即ち、
「独仏が互いに異なるが故に、独仏関係は強くなることが必要である。」
との認識の下、
「独仏新友好条約締結は象徴的な意味に留まってはならない。」
との意気込みを持ち、新連携が推進されようとしているのであります。
これまで、EUを主導してきた独仏の混乱は不安材料となりますが、独仏の連携強化は、再び、EUを強くするサポート材料になり、そうした意味で、独仏友好関係の深化は、ヨーロッパ全体にとって好材料になると見て良いと考えます。
即ち、
「通貨の統一から経済の統一、そして税制を統一しつつ、政治を統一し、戦争のないヨーロッパを作る。」
という崇高なる理念を持って進められてきた欧州連合は今、危機にあり、英独仏の混乱に加え、例えば、
「財政問題で責められるイタリア政府はEU政府への不満を募らせている。」
「ハンガリー政府は、報道の自由を制限している。」
「ポーランドでは、司法権の独立が危機に晒されている。」
そして、EU全体では、
「難民受け入れで、EU加盟国間でも意見の対立が見られる。」
という中、BREXITをむしろ歓迎する勢力がフランスやドイツも含めてEU加盟国の中で拡大しつつあるとの見方も出ています。
こうした中にあっての、
「独仏友好新条約締結」
は大いに期待したいものであります。
そして、マクロン大統領とメルケル首相は、ドイツのアーヘン市で、新友好条約に実際に調印しました。
これはまた、独仏のEUに置ける復権を導くのみならず、中国本土、ロシア、米国に対抗して行くためのヨーロッパとしての連携強化を導くものとしても期待されているのであります。
今後の独仏の具体的な連携強化の動きを大いに注目、期待したいものであります。
但し、独仏連携に関しては、
「ロシア」
との関係について、メルケル首相とマクロン大統領の間に考え方の違いがある点は、留意しておきたいと思います。

[日本のあり方]
私は、世界的な混沌の中、日本は外需に基づく景気拡大を期待するのではなく、外需で稼いだお金がまだある中、そのお金を粛々と内需に回して、緩やかでも良いから、外需に基づくお金を背景とした内需の拡大を図り、外需と内需が共に回る、
「安定成長経済システムへの移行」
を明確に目指すべきであり、その為には、
☆公的セクターは、叡智を集め、日本がすべき、インフラの再開発を、利権誘導を絡めずに計画、実行していくこと。
☆民間セクターは、人材不足の中、IOT化、AI化を意識、省力化、機械化、自動化を推進、機械ができる仕事は機械に任せ、人は人しかできない仕事に集中するという改革を進め、人と機械が共生する先進国発展モデルをここで一気に確立する。
そして、
☆日本経済のアキレス腱となっている年金制度を抜本的な解決するため、国民全てが応分に痛みを分かち合い、新しい年金制度を構築する。
ことが今の日本に必要ではないかと考えます。
ポピュリズムが拡散すれば、世界の混沌は深まるばかりです。
立て、新生日本!!

引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上

 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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