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2004年12月[Sanada発 現場から]


埼玉産業人クラブの皆様、愛知淑徳大学の真田で御座います。

「最新経済情勢に対するチェックポイントと東アジア経済見通し概観」


皆様、今年最後のコラムを掲載させて戴きます。
 今月27日に埼玉県経済振興プロジェクト・チームの最終提言書を上田知事に提出させて戴く予定となっておりますことから、本来であれば、これに関するご報告を申し上げたいのですが、残念ながら、公式発表に先立ち、このコラムでその概要をご報告申し上げる訳には参りません。そこで、必要があれば、この提言内容については来月、ご報告を申し上げたいと存じます。
 
今月は最近の経済のチェックポイントについて少しご報告を申し上げ、その後に東アジア経済概況につきましてご報告致します。

 最近の国際経済環境を見ると、いくつかの大きな変動要因があることに気付きます。
 そこで、今日はその中の主要ポイントである五点の変動要因について、以下の通り、ご報告を申し上げたいと思います。

(1)国際原資材動向
 2004年は鉄くず、鉄鋼材をはじめとする国際原資材の需給関係と価格が不安定な状況に陥り、これが各国の実体経済に与えた影響は少なくなかった。特に原資材を輸入し、これに付加価値をつけて輸出、外貨を獲得しながら国家の経済発展を誘導している国家が多い東アジア地域にとって、国際原資材の需給関係と価格動向は、その経済成長に直接的な影響を与える。そして、2005年度も国際原資材の需給は逼迫し、原資材の確保は難しいのではないか、確保できたとしてもその価格高騰が続くと予想されることから利益幅は減少する危険性が高いのではないかと見られ、日本を含めて、東アジア地域の経済動向に対しては、総じて、「悪影響を及ぼす」と見られている。

(2)国際原油価格動向
 国際原油価格については、低下してきているとは言え、WTIベースで1バレル40米ドルを超える水準にまで達した国際原油価格は、やはり東アジア地域に悪影響を及ぼすと考えておく必要があろう。
 国際社会全般に見られる現行のデフレ経済状況を鑑みれば、原油価格の上昇が消費者物価の上昇にそのまま繋がり、またこれがすぐに金利反転、上昇に繋がっていくとは考えられないが、原資材の上昇の余波と同様、企業の利益幅の低下に繋がる可能性は大きいと見ておく必要があり、この結果として企業収益の悪化や家計所得の伸びの低下並びに消費低迷に繋がる危険性があると視点から、国際原資材価格動向にも注意を払う必要が出ている。

(3)為替相場動向
 大統領選挙に勝利した米国のブッシュ大統領は、経済政策の中心を「双子の赤字(財政収支赤字と貿易収支赤字)問題」の解消に置いているものと見られており、その即効薬として、米ドル安容認、或いは米ドル安誘導政策を採っているものと見られている。米ドルはユーロや円のみならず、アジア通貨に対しても全般的に弱含みで推移しており、年前半はこうした相対的米ドル安基調が続くものと見られている。
 筆者は、為替相場動向については、一年を通じて見れば、年内で何処かに大きな転換点が生じるものと考えており、これに一喜一憂すべきではないと考えているが、年平均レートで1米ドル=110〜115円水準を大きく外れると日本及び東アジア地域経済には悪影響を与える危険性があるものと考える。

(4)国際金利動向
 国際的な金利情勢は、前述した国際原資材価格や国際原油価格の上昇に引きずられる形で物価水準に上昇傾向が見られ、緩やかな上昇局面に入るのではないかと見られている。
 但し、消費者物価の大幅な上昇が見込まれないこと、米国の利上げも限定的であること、経常収支が総じて黒字基調であることなどから、東アジア地域では大きな金利上昇局面は見られないと予測される。従って、金利動向を大きな変動要因として捉える必要はなかろう。尚、金利動向は一年を通して要注意なファクターであり、その動向をフォローする必要があることは言うまでもない。

(5)国際株式市場動向
  国際的な投資家の株式市場に対する投資意欲は強くもなく弱くもないとの見方がなされており、当面、国際株式市場は安定的に推移するものと見られている。東アジア地域についても株式市場は総じて安定的に推移しようが、依然として国際金融市場からは「Emerging Market」との評価を受けており、資金の出入りの大きい相場展開が予測され、株価が高水準を維持するとは予測しにくい。

そして、これらのチェックポイントをベースとして直近の状況を総括しておきたいと思います。

最近の米ドル安現象が今後の東アジア経済、日本経済に悪影響を与えるのではないかとの懸念が強まっていることはご高承の通りであります。
変動為替相場制に基づいた為替相場でありますから、相場変動が発生することは不思議ではなく、またある程度の変動は覚悟せねばならないと思いますが、現状の米ドル安状況は東アジア諸国の輸出に悪影響を与え、ひいては東アジア諸国経済の成長を阻害する可能性も出てきています。

こうした中、今般、米国では金利引き上げを実施しました。既に0.25%の利上げが相場に織り込まれていることから為替相場展開に大きな変化はないものと思われますが、今週発表された貿易収支と証券投資に関する発表によって米ドル安の早期是正の芽は弱まったと見ておくべきではないかと感じます。

一方、先週末、日本政府・経済産業省が発表した「緊急円高調査」を見ると、国内の輸出企業の今年度中のヘッジ率は67%で想定レートの平均は107円であったそうです。
 こうしたことを合わせて考えてみると、100円台前半の円・米ドル相場が続く可能性が高い現状では、輸出主導で経済成長を維持している日本経済にも悪影響が及ぶ可能性はありと見ておくべきではないかと感じます。

 また、国際原油価格はWTI基準で1バーレル当たり40米ドル台前半まで下がってきましたが、まだまだ昨年まで適正水準と言われていた20〜30米ドル水準を上回っており、更に産油国側がこのままの原油価格値下げを嫌う姿勢を示していることから簡単に、更なる価格下落が続くことは期待できそうもありません。

 更に、国際原資材価格の上昇や高値継続がまだまだ見られており、金利にも若干の上昇傾向が見られる中、日本や東アジアの生産者やサービス提供者は、国内デフレ、世界的デフレ現象が続き、景気回復が本格化していない現状にあっては、これらコスト高要因を販売価格、サービス提供価格に完全に転嫁できていない様子で、どうやら利益率は低下するかもしれないと見られ始めています。

 それでは最後に来年度の東アジア経済を概観・総括します。

「東アジア経済は緩やかながらも、その成長速度を鈍化させると見ておくべきである。
 その背景としては、東アジア諸国の主要貿易相手国である米国・中国本土の景気減速懸念、米ドル安に伴う輸出減速懸念、原油価格の高騰に伴うコスト高懸念などが上げられる。
 但し、年後半には米国経済の回復が期待されていることから、経済成長減速にも改善傾向が見られるのではないか。」
となるのではないでしょうか。
 そして、各国データなどを基に2005年度の東アジア諸国の主要経済指標を予想すると以下の通りとなります。
 ご参考まで、ご報告申し上げます。

国家 GDP成長率(%) 消費者物価増加率(%) 経常収支(億米ドル)
2004年
2005年
2004年
2005年
2004年
2005年
中国本土
9.2
8.5
4.1
3
440
375
台湾
6
4
1.8
1.5
232
220
香港
7.5
4
-0.5
1
137
130
韓国
5
4
3.7
3.5
254
150
シンガポール
8.1
4
1.7
1.5
261
240
マレーシア
7.2
5.5
1.2
1.5
157
160
フィリピン
5.9
4
5.7
6
48
40
インドネシア
4.4
4
6.2
6
28
60
タイ
6.2
5
2.7
2.5
46
50
ベトナム
7.6
7.5
8
7.2
-16
-20
インド
6.5
6.5
4.1
4
6
-20

 皆様、ご参考になりましたでしょうか?
それでは皆様、どうぞ良い年をお迎えください。
 そしてまた、来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
以上

 

愛知淑徳大学ビジネス学部
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール

真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京 三菱銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。

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