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2005年2月[Sanada発 現場から]


「日本経済の潜在力や如何?」

先月は埼玉県の地域経済振興についてお話をさせて戴きましたが、今月は全く違った視点からのお話を取り上げてみたいと思います。

さて、日本の信用力をチェックする際には、

「外資が日本に対してどれだけの関心を示しているのか?」

という視点からの評価方法があることはご高承の通りであります。

そうしたことを踏まえて、今般、財務省が発表した2004年の「対外・対内証券投資状況」を概観してみると、

「2004年の日本の証券に対する外国人投資は、買い越し額が15兆2,650億円(日本の一般会計予算の約19%程度)に膨らみ、2000年に記録した9兆8,429億円の史上最高記録を更新、更に2003年の7兆5,666億円のほぼ倍増となった。」

とのデータが示されていることに関心が持たれます。

このデータによる外国人証券投資の買い越しの内訳を見ると、

株式投資:約10兆円
公社債 :約4兆8,000億円

となっており、日本株に対する買い越しが増加していることが注目されます。

こうしたことから、外国人が日本に対する「信用」を回復していることは間違いないと言えましょうが、その一方で、私の経験と最近の対日投資を行っている外資の言動などからすると、

「外資の証券投資、特に日本を含む東アジア地域に対する証券投資は、いわゆるPortfolio Investmentが多く、その評価は日本経済に対する絶対評価ではなく、他国・他地域との比較に基づく相対評価によって判断され、その結果、比較的短期に利益固めができると予想されるものに対して投資をしてくる傾向がある。


こうした傾向を持っていることから、ベースの資金として安定的にその投資に留まる可能性は低く、リスク対リターンを見ながら、出入りの激しい動きを見せる。」

といった特徴があると思われます。

また、M&A Investmentにしても安く買い、極力短期間に付加価値をつけて高く売るといった「ビジネス」を意識した投資が中心でありましょう。

即ち、日本経済を絶対評価基準から見て、

「良い」

と判断しているのではなく、他の投資先と比較して「相対的」にリスクが低い割には「相対的」にリターンが大きい、しかも、外資の流出入に対する規制が少ないことからほぼ自由に資金の出入りをすることができるという背景から対日証券投資を拡大しているのではないかと思われます。


対日証券投資の買い越しが増加していることを高く評価したいと思いますし、日本経済回復に対する期待を持ちたいと思いますが、上述したようなポイントは意識しながら、外資の日本に対する評価を冷静に判断していく必要があると思います。

ところで、上述したような外資の日本に対する相対評価とは別に、国内では景気先行きに対する不安感が改めて少しづつ強まってきているのではないかと感じられます。
こうした状況下、日本の中央銀行である日本銀行は今後の金融政策について、

「現状維持方針」

を鮮明に示しています。

日銀はこの一年間、金融政策の現状維持姿勢を採り続けており、また昨年前半の経済動向を見ながら、量的緩和策の効果は強まっているとしていますが、やはり景気回復が本格的ではないことを意識しているのではないかと思います。

私の見るところペイオフや景気の再低下見通しに伴う金融システムに対する不安の再拡大などの不安も払拭しきれず、肝心のデフレ脱却にも目処がつかない、目処がつかないどころかスタグフレーションの発生を指摘する見方も内外には存在しており、こうした声と認識が強まれば、逆に追加的な量的緩和策まで求められる局面があるかもしれません。
 
さて、こうした日本経済の現状を意識した上で、私は日本経済が抱える大きな課題、根本的な課題は、

* 短期的には財政赤字問題
* 中長期的には少子高齢化問題

にあると見ています。(もちろん、その他にも多くの課題を抱えていると思いますが、煎じ詰めるとこの二つに収束されていくとの考え方を持っています。)
日本の国際的信用力の唯一最大の背景は、基軸通貨を持たない日本が抱える巨額の財政赤字にあり、国際的な信認を取り戻しビジネスの基本である「信頼」を取り戻す上からも財政赤字問題の解決は急務でありましょう。

一方、少子高齢化は働き手(労働者)の数と使い手(消費者)の数の減少を意味し、自然放置すれば、当然に経済体力は縮小均衡に入りましょう。
私は、前者に対しては積極景気拡大策に出て、一旦は財政赤字規模を拡大してでも信用補完強化を図り、国内に浮遊している資金を「日本経済の為」に使用させるきっかけさえ作れば、景気は順回転に転ずると考えています。

一方、後者に対しては日本人一人一人の「生活の質」を高める努力をしていけば、数の減少を質の向上によってカバーし、それによって経済体力の減少を食い止め、何とか年率1〜2%の成長を維持できるのではないかと考えています。

いずれにしても、この問題については様々な議論が今後もなされましょうが、こうした根本的な課題の足元にある減少として、エコノミストの皆さんはよく、

* デフレ経済からの脱却
* 金融システム不安の解消

というキーワードを掲げられます。

そして、私も当然にこうした視点から日本経済の現状認識をし、対策を講じることがとても重要であると考えています。
こうした状況下、先般金融庁は2004年中間期(2004年9月末基準)の全国銀行の不良債権残高について、

「2004年3月期対比2兆8,000億円減少し、23兆8,000億円となった。」

と発表、金融機関の経営改善が更に進んでいることを裏付ける発表をしています。
こうしたことから、キーワードの一つである金融システム不安の解消に向けたトレンドに入っているとも言え、こうしたムードは大切にしていきたいと思います。

但し、決して水を指すつもりはありませんが、私の認識では、各金融機関の要管理債権等不良債権の減少には、

「当該不良債権が正常債権に戻ったという事例は限定的である。」

といった状況にある模様であり、どうも景気が本格的に回復し、金融機関も受信人も共に拡大トレンドに入ったという状況にはないように思われます。
景気回復トレンドにあり、また回復が一層推進されることを期待していますが、こうしたところに、まだまだ景気回復の足腰の弱さを私自身は感じています。
皆様もご自身のビジネス展開を図る上で、足元の日本経済の現状がどのような状況にあり、今後、どのように変化していくとかチェックされていらっしゃることと思いますが、一体どのように捉えていらっしゃいますか?

以上
 
愛知淑徳大学ビジネス学部
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール

真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京 三菱銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。

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