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2005年4月[Sanada発 現場から]


「日本経済の最新動向と埼玉経済に対する期待」

 最新の日銀短観を見ると日本経済の先行きに対するビジネス界の見方はやや厳しいものとなっているようであります。

 1バーレル60米ドルに迫る原油価格の高騰、半導体分野を中心とする在庫調整の遅れ、米国・中国経済に対する先行き不透明感等々が企業経営者の景気先行き不安に繋がっているものと分析されており、更に雇用回復の遅れが日本の国内総生産の約6割を支える民間消費、就中、個人消費の回復の遅れにも繋がっていると見られています。

 そしてまた最近では再び原材料価格の高騰が懸念されています。私も仕事柄、様々なメーカーの関係者にお会いする機会があるのですが、こうした方々とのお話の中で最近の経営課題をお伺いすると必ず、

「原資材価格の高騰」

といった回答がその中に含まれるようになっています。

 ご高承の通り、一昨年末より続く鉄くず価格の上昇トレンドを契機に、最近では鉄鋼やプラスティックなど様々な素材価格が上昇しています。

 そして、皆様にお伺いすると、今後も原料である原油や鉄鉱石などの価格が上昇するであろうこと、投機性資金が市場でうごめいていること、更には世界の原料の山元が主要資本家に抑えられ価格支配が見られ始めていることなどを背景に素材高騰は今後も続くとの見通しを示されています。

 その結果として、素材メーカーの中には利益拡大に直結することなので悪い事態ではないとのコメントも聞かれますが、私がお聴きする多くの企業経営者の方々は、

「素材価格の高騰をそのまま製品価格に転嫁できず利益率はむしろ低下している。

 また、全体的に見ればデフレ解消が見られるのではないかと期待したがなかなかこうした状況にも繋がらず、日本経済全体に与える影響はむしろマイナスが大きいのではないか。

 景気下振れリスクが高まっていると見ている。」

とコメントをされています。

 素材高騰が日本経済に与える影響については、私はこうした経営者の方々と同様、当初よりマイナスが大きいとの見方をしておりますが、そうではないとする方々も多く、今しばらく調査・分析を続ける必要がありそうであります。

 さて、日本経済全体に対する先行きには不透明感が出てきているようでありますが、私は読者の皆様方がいらっしゃる埼玉経済には逞しい潜在力があると感じています。

 そこで、以下は埼玉経済に関するお話を申し上げたいと思います。
三月に私は、埼玉県の政令指定都市であるさいたま市の市長に対して新産業育成に関する提言書を他の委員の皆様方と共に提出させて戴きました。

 今回はさいたま市が既に作成されている基本政策方針を如何に「具体化」していくかを念頭に提言書を作成、また、地域経済の活性化に対しては即効薬がほとんど無くじっくりと腰を据えた対応が必要であると私は考えていますが、今回はさいたま市の現状と将来を勘案、分析して、今後の発展に期待の持てる新産業を如何に育成していくかを検討した形で提言書を準備しました。そして、

* 地元企業経営者の方にも委員となり実質参画をして戴いた。
* さいたま市の職員の方と委員が協力をして地元企業を訪問、聞き取り調査をしてどうしたことを行政に求めるか、どうした点を民間に委ねるかといった現状認識をきっちりと行ったうえで6個の戦略代替案を提言した。
* 提言書の中に優先順位をつけた向こう三年間の具体化計画を組み入れ、更にはその具体策実行に関わる必要予算をも提示した。
* 知識集約的産業の育成をも念頭に置いた具体策とした。
* 地場の既存企業の発展と相乗効果が期待される新産業育成の育成を意識した。

といった特徴を持たせた形での提言書と致しました。

 一方、このさいたま市のある埼玉県では日刊工業新聞様が事実上事務局となり、地元産業界と創業立県を標榜する上田県知事の肝いりで「埼玉ちゃれんじ企業経営者」を表彰する制度がスタート、これからは埼玉県内、さいたま市内の企業の新規事業分野の拡大、創業に向けてのトライアルを様々な形で支援していく制度がしっかりと確立されています。

 更にまた三月末には、埼玉国際化シンポジウムが埼玉県やさいたま市、そして関係各団体の主催で開催され、私もパネル・ディスカッションのコーディネーター役を仰せつかり、ご出席のパネラーや会場の皆様と色々な議論をさせて戴きましたが、私が今回、強く感じましたことは、行政サイドは地方への権限委譲や地方自治体統廃合などの流れの中で行われている事実上の国家からの補助金等削減の状況の中で、税収の拡大と雇用機会の創出を目指して、内外を問わず資本の域内経済流入を促進しなければならないという明確なミッションをお持ちであること、一方、地元企業は、国際化の必要性を認め、例えば外資の域内経済参入という具体的な点について総論では関心を示していること、しかしその反面、各論に於いては外資の域内経済参入についてはやや戸惑いもあるのではないかということであります。

 こうした状況下では、私は何と言っても、

「先ず行政は、これまで域内経済の発展に貢献し、地元に対するアイデンティティと愛着心をしっかりと持つ地域に根付く既存企業の経営者の気持ちや経営方針を尊重すべきである。」

と考えており、そうした意味から、例えば、

「地元企業にとっても望まれるような資本が日本内外のどの企業なのかを地元企業からヒヤリングし、地元企業と共に、そのお力をお借りしながら、個別具体的な資本誘致を図っていくのが実は最も効果的であり、地元企業も入ってくる域外資本も、そして行政も喜ぶWin,Win,Winの成果を上げるのではないか。」

と考えています。

 また、全く視点を変えて金融的な視点から見ると、埼玉県やさいたま市がその高い信用力を背景に県内や市内の有力企業と有望成長企業をミックスしてポートフォリオを上手に分散、これら企業を対象にして投資をすることを目的とした特別ファンドを組成、外国人投資家に対しては「対日ソブリンリスク」部分を埼玉県やさいたま市が保証して外資にも安心感を持ってもらいながら、これをプロに運用してもらうという形で日本の投資家のみならず、外国人投資家からも資金を集め、県内や市内の企業発展の為に行政が一肌脱いで金融面からの国際化を図るといったことを行うことも面白い一策となるのではないでしょうか。

 そして、こうしたシンポジウムや各種のビジネス支援イベント、提言書などを通して埼玉経済に対して独自の個別具体的な戦略を作り、地域経済の活性化を自らの手で図ろうとする経済界、行政、そして学界の方々が力を合わせていらっしゃるところに私は埼玉経済の潜在力を強く感じます。

 こうした着実なる動きが間違いなく地域経済の活性化に繋がっていくものと思います。そしてまたいつも申し上げておりますとおり、地域経済の活性化には王道は無く、こうした地味で着実な工作を積み重ねていくことによって、地域経済は更に発展するものと私は確信致しております。

以上
 
愛知淑徳大学ビジネス学部
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール

真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京 三菱銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。

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