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2005年5月[Sanada発 現場から]


「ものづくり日本の進むべき道」
 

 国際通貨基金(IMF)は今年の日本の経済成長率について、昨年の2.6%から0.8%へと大きく減速し、主要先進国の中ではドイツと共に低成長率となるとの見通しを発表しました。

 また、読売新聞では最近全国主要企業100社を対象に景気アンケート調査(4月調査)した結果を掲載していますが、これによると、
「景気は回復局面にあるが足取りは重いと回答した企業が48社となり昨年10月時点の調査の24社から倍増した。」
と報告、更に、
「景気は停滞状態にあると回答した企業は同じく昨年10月の2社から23社へと大幅に増加している。」
と報道し、
「景気の停滞感が広がっている。」
と結論付けています。

 企業各社が懸念を示しているのは、日本のGDPの約6割を占める民間消費、就中、個人消費に伸び悩みが見られる上、原材料や原油の高騰などの経済的悪影響よりもむしろこれを背景として期待されていたデフレ懸念払拭がなかなか現実化せずにいること、米国や中国本土の景気先行きに不透明感が存在していることなどの点にあり、更に最近では北東アジアに広がる反日意識の拡大が日本経済に悪影響を与えるかもしれないといった不安感も拡大してくるものと思います。

 日本政府や強気エコノミストのコメントとは裏腹に、私の体感からしても、海外諸環境の悪化は否めず、従って個人消費を中心とする内需が回復し、輸出部門の不安を払拭して成長実績が見られぬ限り、企業各社の景気停滞感はなかなか拭い去れないのではないでしょうか。

  そして、その為には国内に滞留する資金を国内で有効に動かさなければならず、資金を動かす為には国内の信用を拡大しなければならない、国内の信用を拡大する為には、やはり政局の安定と金融システムの有効稼動が必要最低条件であり、こうして考えてくると、今は何よりも政治的リーダーシップが望まれる時期なのではないでしょうか。

 国会ではしばしば重箱の隅をつつくような議論がなされ本質の議論を忘れて相手を叩く姿勢が散見されますが、より鳥瞰図的なものの見方の上で政局運営をしてくれないと、国民、民間企業も安心してこの国で資金循環をできないのではないでしょうか。
国民は最近、景気や雇用よりも治安に不安を感じていると言われています。
 私は、不安が多いから、景気が回復せず雇用も改善されないと考えています。

 さて、こうした景況感を持つ中、私は先日、定点観測で福井を訪問して参りました。
そして今回強く感じましたことは、

「地域経済の混迷は続いており、倒産件数は減っているものの、地元の商店の経営不振、そして廃業などが続いており、地域経済の活性化はあまり進展していないのではないか。」

ということであります。

 各地では、地方自治体の支援策の下、地場産業・伝統産業の保護、再建に力を注ぐ姿も見られていますが、地元住民にお聞きすると、

「地場産業・伝統産業には雇用吸収力が不足している。
 更に、年季を必要とする技術力を要求するものが多く、特に若者達を留める雇用機会の醸成にはあまり繋がらない。
 しかし、多くの住民は働く場を求めており、また働く場がなかなか見つからないから地方から都会へと流出しているのである。」
とコメントしています。そしてまた、そうした考え方の下、

「シャープの亀山工場に見られるように電気・電子・半導体関連企業の高度な事業分野で技術漏洩等を嫌う企業の国内投資や、今年、国内投資の拡大に意欲を示すトヨタ自動車などの国内優良自動車関連企業など、多くの雇用機会を創出する大企業や中堅企業の誘致を期待する。」
とのコメントをしています。

 もちろん、こうした要請に対して各地の地方自治体政府も強く意識をしていらっしゃいますが、しかし、こうした企業を誘致しきれない、即ち、他地域となかなか差別化することが出来ず、また財政状況などもあり、税制の優遇など、各種誘致策を提供しきれない地域にとっては打つ手がないとも言えるのであります。

 国内景気については、強気・弱気の見方が交錯していますが、私は上述したとおり、庶民の現場感覚からするとまだまだ景気回復の力強さには欠ける状態にあると見ておくべきであり、地方自治体をサポートする中央政府の経済政策はこうしたところに注がれるべきであると私は考えています。

 ところで、こうした考え方を強める中、今回の出張では織田信長で有名な織田一族の出身地である福井県織田町を訪問、越前焼きの陶芸家のお話を伺うことが出来ました。

 この陶芸家の先生曰く、
「日本のものづくりの文化は、常に新しいものを求め、作り出すところにその特徴があり、またそれが日本のものづくり文化の真骨頂である。」
と語られた後、
「新しいものを生み出すまでに、最初から採算を考えて効率的にものを作ることは出来ない。
 また最初から大量消費を目指して大量生産に入ることも出来ない。
 そこには、常に、一旦、採算を度外視した挑戦が必要であり、日本のものづくりは、この挑戦をし続けてきたから、世界の中でも差別化が出来る技術力を生み出してきたのである。
 厳しい経済環境にある現在、正に日本のものづくりは今、その真価が問われており、苦しい中にあっても挑戦をし続けなければならない。」
とコメントされています。

そして、自らは、コスト面では決して間尺に合わない、
「陶芸による新型のコーヒーカップの陶器に漆塗りを施して完成を図る作品作りに挑戦し、これを一般大衆化していきたい。」
と熱く力説されていた点が印象的でありました。

 また、日本のものづくりによる製品は、
「良いものを安く」
といった形で販売されることが多いが、作られたものを販売する際には、その販売をする人も、きちんとものづくりの誇りを持って、その製品を売って欲しいとも語られていました点も心に残る発言でありました。

 一方、越前焼きには陶芸家組合があるそうですが、この陶芸家組合は、採算などを度外視し、米国より日本の陶芸に高い関心を示す米国人青年二名の研修生を日本に呼び寄せて教育した経験があるが、この米国人たちが数年経った今、米国にて越前焼きをじわじわと広めており、今年は一年間をかけて越前焼きを米国に広める展示会の開催を開始したところだそうであります。

 また、越前の出身といわれる継体天皇1500周年を記念した特別茶会を2007年に開催することを計画、これに合わせて新作の越前焼き作りに陶芸家の皆さんが挑戦しているとのことで、日本のものづくりの精神を実践すべく、頑張っていらっしゃる姿を拝見し、こうした動きの中に見られる技術革新こそが将来の大量生産に結びつき、更にそれが大きな雇用機会の創造にも繋がる契機となるのではないかと感じました。

 皆様は如何、お考えになられますか?

以上
 
愛知淑徳大学ビジネス学部
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール

真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京 三菱銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。

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