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2005年11月[Sanada発 現場から]


「ロシア・中国・朝鮮半島連携の動きと日本」
−そうした状況下、日台ビジネスアライアンスは検討できないであろうか?−

 先日は韓国政府関連機関である対外経済政策研究所主催、ロシア政府傘下のロシア科学院が後援する「2005年東北アジア国際セミナー」と題する学会に参加し、研究論文の発表をして参りました。

 クレムリンのすぐお隣、名門ホテルの一つであるメトロポール・ホテルに宿泊、国際貿易センターで学会開催、そして合間を見ての市内観光(赤の広場、レーニン廟や市内デパート、モスクワ大学などを見学)と三泊四日にしては慌しい出張をして参りました。また、韓国政府機関の主催であったせいか、ロシア料理はただ一回、その他はロシアン韓国料理に舌鼓を打つというちょっと面白い企画?もあり、初めてのモスクワ訪問を文字通り楽しんで参りました。

 さて、今年のロシア経済は最近、年初見通しよりも景気拡大のスピードが速いと見られており、速報ベースではこの1〜9月で5.9%の経済成長を達成、こうした実績を受けて、
「今年通年では6%成長は確実となろう。」
との声が強まっています。

また、国際原油価格が現行水準を維持するとの前提の下、原油生産国であるロシアについて、今年のみならず、向こう三年間5.5〜6.5%の経済成長が持続するのではないかとの見方も出ており、首都・モスクワ市内の動きを見ると、景気の良さを肌で感じるものでありました。(但し、ヒヤリングによると地方経済には明暗が見られており、まだら模様の景気状態にあるとのこと、付記しておきたいと思います。)

また、モスクワ市内の看板やトロリーバスを見ると、三星グループ、LGグループ、現代自動車グループの宣伝が圧倒的に多く、またタクシーをはじめ現代自動車の数が目立ち、この9月に見たウラジオストックの交通状況との違いを感じました。

そして、現地韓国人ビジネスマンに聞くと、三星やLG、現代等々、各グループはロシア国内各地に流通販売拠点を着実に拡大しつつ、現地生産の拡大と現地販売の拡大を目指して生産・販売両拠点同時拡大方針を明確に示しています。

そして、そうした韓国系大財閥のロシアでの動きを捉えて、ロシアにかつて抑留されたり、そのまま居残った韓国人・朝鮮民族の人々が中堅・中小企業を設立、韓国系大企業の製品の通関業務を代行したり、ロシア各地代理店のマネージをしたりしており、韓国企業のネットワークは着実にロシア国内に根を張りつつあるものと言えましょう。

一方、テレビや新聞・雑誌に見る企業の広告宣伝活動を見たり、外資のロシア市場参入状況を概観するとロシア経済には底の深さを感じました。
但し、中国本土同様、ウラジオストックとの比較をしても、またロシア人のコメントを聞いても地方とモスクワやサンクトペテルブルグなどの大都市との格差は大きく、また拡大していると聞いており、こうした点での課題があることも否定できません。

また最近では、鳥インフルエンザの被害が間違いなくロシア国内で拡散し混乱が見られる上、国内治安の悪化傾向が見られること、特に私たちアジア人にとってショッキングなことは、スキンヘッドと呼ばれる排他的グループがアジア人留学生の集団暴行、殺害行動に出るなどの問題が最近になり拡大していると盛んに報じられており、こうした社会的側面から見た経済的課題が存在していることも見逃してはならないと思います。
さて、東北アジア開発について、今回参加をしたロシア、韓国、中国本土の代表達の動きや発言を注目すると、私の印象としては、
「米国を除く形で東北アジア開発に踏み込んでいこうとする意図、意思」
といったものが強く感じられました。

 そして、そうした基本姿勢の下、
ロシアは東北アジアに於けるプレゼンスが低下していると自己分析、これを打開する為に東北アジアに対する影響力を拡大していきたいとしている。
中国本土は東北アジア開発にこれまで最も積極的に関与、最も高いプレゼンスを示しているものの、国内問題が障壁となり、これ以上の関与拡大は難しく、ロシアや韓国と比べて、これ以上、その相対的プレゼンスを拡大することは難しいとの見方をしている。(因みに、中国本土は北朝鮮の羅津・先鋒の港を今後租借し、ここを基点に貿易拡大を図る意思もあると言われています。)
韓国は北朝鮮を軸として東北アジアに於けるプレゼンスを更に拡大、北朝鮮の経済的ソフトランディングを誘導、その延長線上で将来の南北統一に結び付けたいとの意欲を示している。
と感じました。

 そしてまた、更に、これら各国は、
「日本が東北アジアに於いて与える影響力は大きい。或いは与えるであろう潜在的な影響力は大きい。」
との見方を示す一方、
「日本がそのプレゼンスを拡大することには、基本的には反発が存在している。」
と言えるのではないかと感じました。

 朝鮮半島・中国東北三省・シベリアのみならず、ロシア全土と中国本土、朝鮮半島の関係が緊密化していく兆候が見られる中、日本政府、日本企業としてはどのような動きを採っていくのか、ここでしっかりと考えていく必要があるものと思いました。

 そこで、日本企業としては台湾との関係なども見直していってはどうかと私は考えています。
 台湾経済を見ると、末尾のデータ(確報データで2004年末基準ですので少し古いデータであります。ご了承ください。)でも見られますとおり、比較的堅調な状態にあると考えられます。

 経済規模の面で一定の水準にあると同時に、経済体質にしっかりとした土台があり、また貧富の格差も比較的少ないと言われ、東アジア諸国の中でも高度な生活水準が保証されている地域(国家)ではないかと見られます。

 もちろん、今も外省人と本省人の意識差をベースとした乖離が存在、これをベースとした政治的対立と庶民に対するある種の監視の目の厳しさが残っていると台湾については厳しい見方もありますが、少なくとも私が見るところ、台湾経済は東アジア地域に於いて、平均的に見てもトップ水準にあると思います。

 従って、日本も台湾とは経済的にもっともっと緊密化に向けた動きが出てもよいのではないかと思うのですが、最近では、日台間にあまり、
「お金の匂い」
がしません。

 もちろん、大手化粧品業界や一部食品・飲食産業などについてはこれまでと同様にビジネスを展開、しっかりとしたビジネスを進めてそのメリットを享受されていますから、台湾と日本のビジネスが縮小均衡にある、或いは冷却化しているとは申しておりません。

 しかし、台湾を注目し、台湾ビジネスを積極的に展開する日本企業はあまり多くないのではないか、特に中国本土と比較すると台湾に対する日本のビジネス界の関心は圧倒的に低いように感じます。

 一方、台湾ビジネス界サイドも、自国産業、自社の特性は、目立たなくてもよいので、あまりコストをかけず、既に開発された技術を基にして生産部門を請負い、実利を取る志向が今も強く、例えばその典型として、日本企業の委託の下でOEM生産を希望する企業が意外に多いことに気が付きます。

 また、日本政府が進める対日投資に関する台湾ビジネス界の意欲についても、
「日本は生産拠点としてはコストが高く投資メリットが低い。」
との認識を示す台湾ビジネスマンの方が多く、また直接投資ではなく、ポートフォリオ投資に関心を持つ投資家が多く、その延長線上で対日不動産投資に対する関心は比較的強いものと感じられます。

 また、投資家としては「事業法人」ではなく、お金持ちの個人投資家が多いのも特徴であります。
 いずれにしても、こうしたことから、どうも日台間でビジネス拡大に向けた動きがあるとは感じられず、だからお金の匂いがしないのであります。
 こうした中、日台間で動いているビジネスとしては、

台湾政府が進める発電、交通などのインフラ開発に関連した大型工事案件に対して注目する日本企業の動き
台湾に於いてビジネスモデルを構築する、或いは台湾をサービス・アフターケア拠点として利用しようとする日本企業の動き、特にこの延長戦上で中国本土や華僑・華人経済圏にビジネスを拡大していこうとする日本企業の戦略、動き。
台湾企業を代理店的に扱い、対中を中心とする対東アジアビジネスを展開しようとする日本企業の動き
などが見られ、一方、台湾側は、
技術買取型での日本企業の買収を検討する台湾企業の動き
日本の優秀な人材確保に向けた台湾企業の動き

が目立たぬ中で見られているものと思います。

 そして、私が注目している動きの一つとしては、資本と技術や経営ノウハウの交換をベースとして、ある程度の信頼感が造成されている日台企業間に於いて、
「株式の持合をする」
という動きが見られていることもあります。

 これは、今後日台事業法人間で相互メリットを期待できる一つの手法ではないかと考えられます。
 また、もう少し視点を地面に下ろして日台のビジネス関係を見てみると、台湾側からは例えば、
「商品のカバーに印刷する技術が悪く売れ行きが今ひとつなのであるが、日本ではパッケージのデザインと印刷を上手に変えると売上が伸びるという話を聞いている。こうした高度印刷技術を持った日本企業とコンタクトしたい。」
といった話を耳にしますので、こうしたビジネスマッチングの可能性は出てきましょうし、また台湾側が、
「日本の工作機械の技術の高さを利用したい。」
との意識を持っていることを利用し、例えば伝動工具を台湾に販売する、それと同時にその背後にある技術を移転するビジネスをパッケージでアレンジするといったことも考えられます。

 こうしたことは単なる一例でありますが、私の認識では、詳細に見ると、
「国際金融社会で信用力が高く対外支払い能力に心配が少なく、経済構造が高度化し生活水準が高くなった台湾は、中台問題などの政治問題さえ気をつけていけば、今のところ、日系企業にとってビジネスの種の宝庫ではないか。」
と考えています。

 いずれにしても、目立たぬ中でも台湾を一つの戦略的ビジネスパートナーとして見直し、様々なビジネスを再検討してみてもよいのではないでしょうか。
さて皆様は如何、お考えになられますか?
尚、台湾との交流を推進されている交流協会様と中部財界の皆様は、台湾財界の方々の訪問を受けて11月24日に名古屋で日台ビジネスアライアンスに関連するコンベンションを開催されることとなっており、私もそのお手伝いをさせて戴いております。単なる形式的な会議ではなく、実質的なビジネス関係構築に向けた会議となる予定であり、私もこの会議にとても高い関心を持っております。
皆様方もご関心があれば是非こうした企画にご参加戴ければと思います。
また、2004年基準で見た台湾の主要経済指標は以下の通りとなっています。

人口 :22,680千人
実質国内総生産 :10兆7,269億ニュー台湾ドル
GDP成長率 :5.71%
一人当りの国民所得 :12,381米ドル
産業構成 :第一次産業 2% 第二次産業 30% 第三次産業 68%
鉱工業生産伸び率 :9.85% うち製造業 10.55% うち機械工業17.76%、同石油・石炭17.34%、同輸送機械16.85%、同ゴム製品11.38% マネーサプライ(M2):7.45%
公定歩合 :1.750%
外貨準備高 :2,417億米ドル
消費者物価 :1.62%
失業率 :4.47%
対内投資 :3,953百万米ドル
対外投資 :3,382百万米ドル
対中間接投資 :6,941百万米ドル

 来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。

以上

愛知淑徳大学ビジネス学部・大学院研究科
教授 真田幸光

以上
 
愛知淑徳大学ビジネス学部
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール

真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京 三菱銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。

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