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2006年5月[Sanada発 現場から]


「欧米金融市場の動きと中国本土の底力」


  国際金融市場の動きを見ている中、最近気に掛かることの一つには、4月のG7以降、外国為替市場に於いてユーロの対米ドル高傾向が見られていることが上げられます。
  米国景気について、不動産景気などを含めてその先行きに不透明感が深まる中、相対的に堅調な欧州経済圏の基軸通貨・ユーロが買われることは言ってみれば当然のことかもしれませんが(尚、先日米国FRBは金利を0.25%引き上げる決定を下し、更なる利上げの可能性も出てきています。万一、こうした状況となると、一段の米ドル安・ユーロ高は回避されるかも知れません。)、当のEU、そしてEUの通貨管理を預かるECB(European Central Bank)はユーロ高の継続は望んでいないとの姿勢を強めています。
  しかし、こうした一方で、欧州経済圏では銀行貸し出しに二桁台の伸びが予想され、また消費も雇用も堅調なる事から、再び、
「インフレ懸念」
という言葉をよく耳にするようになっており、金融引き締めを誘導するユーロ金利の更なる引き上げが示唆されていることから、ユーロは更に買われる素地・可能性が出てきています。
  こうしたことから、私はユーロ金利は今後、更に0.75%〜1%の引き上げの余地があり、但し、引き上げは一気にではなく、全ての環境を眺めながら0.25%づつ徐々に引き上げられていくのではないかと見ています。(Repo金利ベースでは現行の2.5%から年末まで3.25%〜3.5%前後まで引きあがるのではないかと思われます。)
  また、こうしたことから、他の要因が変わらなければ、ユーロは米ドルに対して当面は、やはり強めに推移するのではないかと見ておきたいと思います。

 一方、私が頂戴している三菱東京UFJ銀行の米国発の一般公開情報では、4月24日付FT紙の報道を引用し、
『「中国の周小川・中国人民銀行(中央銀行)総裁はIMFに対し、多国間監視制度を、中国為替政策を攻撃するための手段として用いないように。」
と警告した上で、
「もし多国間監視の焦点が誤った形で為替相場の推移に置かれるとしたら、それはほとんど客観的ではないし、より根本的な問題を確実に見落とすものである。」
と発言した。
  一方の米国側では、中国の為替介入継続を条件にIMFの中国投票権拡大案に対して拒否権を発動することを定める法案が、現在上院財政委員会で検討されている。」』
とのコメントが見られました。
  私の認識しているところでは、米国をはじめIMFの中核国は、中国本土の通貨・人民元の切り上げではなく、相場決定を先ず一義的には市場に委ねなさい、市場決定システムに一旦は従うようにしなさいと圧力をかけており(注:尚、私が見るところ、IMFや米国は一旦、中国本土政府が為替相場決定システムを市場に委ねれる体制とすれば、急激な人民元の引き上げは望まず、むしろ中国本土経済の根幹に見られる脆弱性を背景に、市場の大方の見方とは反対に人民元安を誘導するのではないか、特に米国などは中国本土からの輸入が多く、急激かつ過度の人民元高は米国経済にとっても好ましくないと考えているものと見ています。)、これに対して中国本土は、自らの国際金融市場に於ける影響力が拡大、より確立したところで徐にこのシステムに本格的に参加し、その蓄えてきた影響力の強さを既存勢力に示すことを意識、計画しているものと思います。
  従って、上述したようなやりとり、駆け引きが見られることは当然と考えています。
  しかし、最近私が気にしていることは、こうしたやりとり・駆け引きが、これまではあまり表面的には見えず、少なくとも、素人にはあまり分からないところで、議論されていたはずであるのに、最近ではかなり表面化しているということにあり、特に米中双方に相手方に対する苛立ちが見られることにあります。
 こうしたことが、国際経済はもとより、国際社会全体に悪影響を与えないことを期待したいと思います。
 ところで一方、こうした状況下、中国本土政府は、これまで実態上は大変厳しく対応してきた資金の国外流出について規制を緩和する姿勢を示しています。
 即ち、例えばこれまで対外送金等に対する報告義務を厳格にしていたものを緩和したり(尚、これにより、例えば中国本土業者に対して契約違反などを理由にクレームをし、損害賠償を求めても送金が受けられなかった日本企業にとっては、より簡単にクレーム代金を受け取ることが可能となるのではないかといった期待も出ています。)、内国人の国内での外貨資金保有規制を緩和するなど、増加する外貨準備高などを背景に徐々に国内資金が海外に流出することをある程度容認し、自由化を図っていく姿勢を示している点も注目しておかなければなりません。
 更にまた、これに加えて、積極的に資金を海外に投資し、国益に生かしていこうとする中国本土政府の巧みな姿勢も見られ、中国本土政府の国家としての管理能力の高さと将来を見据えたマクロ政策作りの周到さを感じます。
 そして、こうした政策を具体化するために、外国人の経験者からのヒヤリングを行ったり、時にアドバイザーとして積極的に外国人を利用する中国本土政府の戦略性の高さといったものも強く感じます。
 一方、米国のブッシュ大統領が石油の代替エネルギーとしてエタノールの開発などに注力するとの姿勢を表面化していますが、私の認識では中国本土は既に東北三省を中心に、とうもろこしを原材料としたエタノール開発に相当注力、また外国人研究者の協力なども得ようと努力しており、この辺にも中国本土政府の先見性の高さと戦略性の高さがあり、これが中国本土の大国たる所以ではないかと私は最近強く感じています。
 ところでまた、全く違うお話でありますが、中国本土・遼寧省・瀋陽市政府の外資誘致の仕事をしている中国人の知人から突然連絡が入り、
 「最近では瀋陽に進出する、そして進出をしようとする日本企業が激減している。  大企業のみならず、中小企業の中でも、もし瀋陽に進出したいとの計画を持つ企業があれば紹介して欲しい。」
との主旨のお話が入りました。
 昨春の上海などに見られた反日運動以来、日本企業の対中進出トレンドには一旦変化が見られていることは確かであり、私の認識では、少なくとも大連を除く東北三省地域に対する日本企業の投資意欲はやはり低下しているのではないかと感じています。
 しかしだからこそ、日本企業としては、再び自らに良い条件を引き出して、東北三省地域に対する投資を計画しても面白いのではないかとも感じています。
 いずれにしても、東アジアの大国・中国本土と日本が如何なる形でお付き合いをしていくのか、改めて色々な角度から検討してみる時期に来ているのではないかと私は感じています。
 皆様は如何お考えになられますか?

  来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京 三菱銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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