[日本経済概況と現実のギャップ感]
日本政府・大本営?!発表によりますと、日本経済は大変堅調に推移していると言えましょう。
速報ベースで見た今年1〜3月の実質経済成長率は、前年同期対比0.8%増と低成長に留まり、輸入の伸びから外需寄与度が大きく低下したことがその背景と言われていますが、消費、設備投資は堅調に増加し、内需中心の日本経済の成長はまだまだ底堅いとの評価を下すエコノミストも多いと認識しています。
また、ライブドア、村上ファンド事件などの特殊事件は出たものの、企業経営も改善、金融機関の不良債権問題も一段落し、景気過熱感の出ない中、むしろ経済は安定成長を続けている、従って「いざなぎ景気」を超える景気堅調推移が持続するとの見方が太宗であると思います。
こうした中、経済界の懸念は、
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デフレは本当に脱却できるか? |
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米国経済、中国本土経済は引き続き堅調に推移するか? |
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国際原油価格、国際原資材価格の高騰はどこまで続くか?その悪影響は? |
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急速な米ドル安は日本経済に如何なる影響を与えるか? |
といった点にあり、よってこうしたポイントが今年はマイナスに働き、年間経済成長率は成長鈍化のまま2.0%成長前後で着地する、一方、2007年には国際情勢が大きく変わらぬ中、消費税率引き上げを前提に駆け込み需要が出て、内需が今年よりは拡大し、2007年には経済成長率が2.5%程度になるであろうとの見方が一般的であると思います。
尚、2005年、2006年1〜3月の日本経済概況は以下の通り。
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2005年実績(%) |
2006年1〜3月暫定統計(%) |
実質国内総生産成長率 |
3.2 |
0.8 |
民間最終消費支出増減率 |
2.4 |
0.5 |
民間住宅投資増減率 |
-0.2 |
1.1 |
民間企業設備投資増減率 |
7.5 |
3.1 |
政府最終消費支出増減率 |
1.5 |
0.2 |
公的資本形成増減率 |
-1.4 |
-1.6 |
輸出増減率 |
9.2 |
9.2 |
輸入増減率 |
6.8 |
3.5 |
鉱工業生産増減率 |
3.6 |
0.6 |
消費者物価増減率 |
0.9 |
0.4 |
失業率 |
3.6 |
4.2 |
しかしながら、これまでも何回かこのレポートで申し上げてきましたとおり、国際金融情勢は本当に日本経済に対してそんなに優しく接してくれるであろうか?こうした中、日本各地の地域経済は本当に回復しているのか? を私は大変心配しており、そして何よりもこれが単なる危惧である、大本営?! 発表通りとなることを強く期待しています。
[定性的視点から見た地方経済]
さてこうした中、先日は岐阜・高山を訪問しました。
今回は公式訪問ではなく、また高山地域経済に関するデータに基づく定量分析ではなく、私のヒヤリングに基づく定性分析を行う為に訪問をしたのでありますが、高山経済、やや翳りが見られているように、私には感じられました。
上述しましたとおり、日本政府が行う主要企業に対するヒヤリング調査などを見ると、いざなぎ景気を超える好景気の持続、今後の景気好転を予測する声が強く、今年の日本財界には景気先行きに対する強気の見方が強くなっているように思いますが、しかし、岐阜県の中では相対的に見て景気が堅調であると言われている高山では、今回お会いした市内の中小企業経営者の方々にお話を伺うと、むしろ景気の悪化が目に見えてきているとのこと、即ち、首都圏や東海圏で言われているような景気好転などはあまり体感できないとの声が少しづつ目立つようになっていました。
また、色々と細かい話を聞いていっても、景気の悪い話が多く、彼らのコメントによると、高山市内では製薬、電子関連等の三社のみが景気がよく、あとの企業は業績悪化、或いは低迷が続いているとのことであります。
そして高山の中核産業の一つである観光産業についても、韓国人、台湾人などの外国人観光客が増え、人数基準では観光客数に著しい変化は見られないものの、これら外国人が高山市に落すお金は少ないことから、観光収入は減少しているとのことで、昨年私が何回かお伺いした日本を代表する国際観光都市・函館などと同じような現象を示しており、またこの結果として、市内にもシャッターにより閉められた商店が出てきはじめている、またその商店街店主を支えてきた地域金融機関も商店街の低迷を支えきれず、例えば最近では、商店街の店主達から両替の際に手数料まで取るようになっているとのことで、こうしたことから、商店主達の地域金融機関に対する実際の信頼感は少しづつ低下しているとのコメントすら出ていました。
そして、その商店街では、顧客の心を掴むために努力をし、その結果としてうまくいっている商店とそうでない商店の二極化が出始めているとのことで、経営努力の差とは言え、やはり「勝ち組と負け組の格差出現」には危惧の声も出ています。
また公共事業については、財政赤字改善に向けた歳出削減策の実行が続く中、この高山でも公共事業の拡大を期待することは出来ずにいます。
一方、今年は雪害がひどく、これによる景気悪化も深刻でありますが、この雪害に対する地方自治体の支援も現状の地方自治体の財政力からすれば仕方がないとは言え、やはり少ない、また自治体が少ない財源の中から復旧資金を出しても、期限付きの復旧を義務付けられるため、域内の業者のみならず、他県の業者も参入してもらう形となっており、地域企業にその復興関連特需のメリットが行き渡らないといった声も聞かれ、負の循環が見られています。
昨年、この地を公式訪問した際にはもう少し元気の良い声が聞かれていたはずでありますが、日本政府が発表する好景気の持続は、ここ高山でもあまり感じられず、私の訪問する地域では、多くの経済圏で、残念ながら景気回復や好景気の持続を強くは感じられません。
抜本的な解決策を考える必要があるのではないかと思います。
また先日は東京・小松・福井の日帰り出張、更には東京湾クルーズと各地を巡回、またこうした中、地銀の中堅幹部行員の皆様方とディスカッションをしたり、北陸地域の皆様方との議論、永田町関係者の方々との意見交換などを致しましたが、日本の景気動向についての見方はここでも皆さんの景気に対する見方はいずれも総じて厳しいものでありました。
最近の内閣府の発表された景気動向指数、日銀の7月景気経済報告の結果をもちろん十分に知り、その意味も分かってはいますが、その発表内容と私が各地で伺う地域経済の情勢に対する一般庶民、一部経済界の方々のコメントにはギャップがあるように感じます
即ち、私たちが経済分析をする際にはもちろん、数量データに基づいた定量分析が何よりもベースにあり、それに数値化しにくい要因を定性分析として加え、総合分析をしていくことが常であり、そうした意味で昨今の日本経済に対する定量分析結果はよいものとなっていますが、地域経済に関する定性分析、就中、地域の体感景気には、マクロの定量分析結果との間で乖離を感じます。
何がこうした背景となっているのか?例えば、
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| 好景気の企業の数が少ない割には数値面では極めてよいデータを示し、全体の景気低迷の中でいわゆる勝ち組は相当よい実績を示していること。 |
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調査対象に偏りが見られていること。 |
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ショックアブゾーバーとしての中小企業に対する偏りが大きく、その中小企業の数が多いこと。 |
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企業業績の改善が多くの個人の収入拡大には繋がっておらず、一部の個人の収入の急拡大に繋がっていること。 |
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そしてそうした勝ち組個人の個人消費は堅調に推移し、日本全体の個人消費をマクロベースでは下支えしていること。 |
などがそうした背景として考えられ、また日本経済の課題は、
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大企業の景気回復がかつてのようにタイムラグを持って中小企業に拡大していくと言うシステムには変化が見られているであろうこと。 |
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景気拡大が広く多くの個人の収入拡大にはあまり繋がっていないと見られること。 |
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企業景気の拡大が雇用機会の創出にはあまり直結していないこと。 |
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企業景気の拡大が必ずしも法人税収の拡大にはすぐには繋がっていないこと。、 |
などにあり、日本政府としても
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税収システムの変革による富の再分配 |
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経済システムの再構築による富の再分配 |
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雇用機会拡大を誘引する企業経営拡大、企業再生、創業支援策の構築 |
などを検討しなくてはならない時期に来ているのではないかと感じます。
いずれにしても、定量分析を基にし、定性分析を加味した分析による現状認識を改めて行った上で、中長期的に見た日本経済再構築案をここで徹底的に議論する必要があるのではないかと、私は改めて感じていますが皆様方はどのようにご覧になっていらっしゃいますか?
来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。
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