[最近の為替相場動向]
国際原油価格や国際原資材価格の高騰、国際的な金利の上昇トレンドなどでビジネス環境が厳しくなっているとの声が聞かれていますが、更に為替相場動向に不安定性が見られると、経営の困難さは増加します。
従って、為替相場にも色々な注意を払わなければならないと思いますが、その動向について、今日は先ず、私の見方をご紹介してみたいと思います。
私は、最近の為替相場展開を見ていると、引き続き「金利」が最も重要な材料として扱われているような気がします。
そして東アジア各国では、
「米国・金融当局が一旦、金利引き上げを小休止するスタンスを示したことにより、米ドルとの金利差の問題からアジア通貨高になるとの見方をするところが多いのですが、日本はその例外のようであります。
即ち、日本では、ご高承の通りゼロ金利政策は解除されたものの、絶対的水準が低く、また金融当局も事実上の低金利政策を依然として維持していることから、円は売られやすく、高金利通貨(特にNZ$,AUD$など)が買われやすい展開となっており、為替市場では明確な方向性を持って売買していないように見られます。
そして円・米ドルの金利相場を見ると、共に「次の利上げが遠い」との見方が主流となっており、円、米ドルともに売られやすい通貨となっています。
こうしたことが最近の円・米ドル相場の
「米ドル安が進展しない中での相場安定」
に繋がっていると見ておきたいと思います。
皆様方は如何、ご覧になられますか?
[人民元相場について]
さて、日本企業の中には、対中ビジネスを拡大されている企業が多く、こうした企業の皆様方は、米ドル・円相場の動向と共に、
「人民元相場の行方」
が気に掛かっていらっしゃるのではないかと思います。
ところで、ここで改めて、確認の為に申し上げておきますが、日本国内ではしばしば、
「人民元切り上げ問題」
といった形で人民元問題を取り上げられる向きもありますが、国際金融社会では、
「人民元の切り上げが何処まで進むのか?」
ということよりもむしろ、
「人民元の為替相場決定システムが市場に委ねられていくかどうか?」
が注目されているのであり、現状では市場意識と現実相場の乖離から結果的には「人民元切り上げ」が想定されているということであります。
従って、
「人民元が一層強くなり、昨年7月の人民元切り上げ後初の1米ドル=7.93人民元水準と人民元高が進んでいる。」
といったコメントが見られていても、為替相場決定のシステムが市場化されていかないと
「人民元問題の根源的な解決」
には繋がらないと見ておくべきでありましょう。
そして、中国本土政府は、中国本土経済の防衛を意識し、人民元の影響力拡大と米ドル経済の中国本土経済浸透を極力防衛する為、ここで時間稼ぎをしながら、人民元為替相場決定システムの市場化進展を先延ばしにし、この間に国際金融社会に於ける人民元の影響力を最大限、拡大していくことを考えているものと考えられます。
そして、そうした政策の第一弾として、先月には人民元金利の引き上げを発表し、人民元為替相場の切り上げを側面から促しているとも見られます。
そこで、今後、考えられるシナリオとしては、
「昨年7月の際と同様、市場が人民元切り上げを促す前に、早めに中国本土政府が自主的に人民元を切り上げてしまい、市場の批判を未然に回避する。」
といったことが考えられ、この際には、マーケットを驚かすように、この秋口には突然、人民元の人為的切り上げが実行される可能性があります。
しかし、その一方で、私が聞いておりますシナリオとしては、
「米国の中間選挙にて対中政策について融和姿勢を示すヒラリー・クリントン氏の勢力拡大が期待されることから、先ずは米国の中間選挙の結果を待つ。
そして、ブッシュ政権の勢いが残れば、速やかに人民元切り上げを実行し、市場の批判をかわす。
しかし、もしヒラリー氏の勢力拡大が見られれば、当面は人民元の人為的切り上げは回避し、一定のボックスの中で人為的な人民元高を誘導して、時間稼ぎ戦略をより拡大するのではないか。」
といったものがあります。
いずれにしても、人民元為替相場については、今後も政治相場が続くことは否めず、様々な角度から複合的に分析をしていく必要がありそうであります。
来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。
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