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2006年10月[Sanada発 現場から]


「台湾訪問記 」

 

[最新台湾動向]
先日は久し振りで台湾を訪問し、台湾政府関係者の方々とお会いしました。
米国との関係を基軸としつつも中国本土との関係にも軸足を置き、世界的なパワーバランスの中で比較的堅調な経済状況を維持、社会が安定化している台湾ではありますが、その一方で陳水扁総統の親族の不正事件やタイの出稼ぎ労働者の待遇改善を求めたデモの拡大などを背景に反陳政権の動きが強まり、野党のみならず、与党内部からも陳総統に対する不信任の動きが出てきていることから、政治的には変動の兆しが見られていると私は考えています。

タイの軍事クーデターのような一種の異常事態は想定しなくてもよいものと思いますが、台湾は現在、
「台湾という国家(国際社会では中華人民共和国との政治的関係があり、台湾は国家として認定されていませんが、ここではその実態を勘案し、一応国家という言葉を使わせて戴きます。)の今後の進むべき道が変わる可能性がある、一つの岐路に立っている。」
という印象を持ちました。

そして、こうした状況下、香港生まれで米国にも中国本土にもパイプを持ち(但し、日本との関係は相対的に弱いと言われている。)、次期総統候補の筆頭と言われている野党・国民党の馬英九主席に対する国内の期待が徐々に強まっており、この馬主席の動向が今後の台湾の行方に大きな影響を与えるのではないかと思います。
尚、台湾国民の民度は高く、リーダーが誰になっても、台湾の国益は何処にあるのかを真剣に議論をし、自らの判断を以って政治的判断をする人が多いことから、台湾国内では今後も国民に動揺が広がる可能性は低いのではないかと私は見ています。
微妙な大人の関係を維持する米中両国との関係が深い台湾が今後どのように動いてくるのか、この馬主席の動向はより一層見逃せないものと思います。

そして、このような情勢下、今般、私がお会いした国民党の政策立案者の方のコメント、金融当局関係者のコメントを要点のみ列挙すると以下の通りとなります。即ち

陳水扁総統に対する国民の信頼感は低下傾向の一途にある。
野党のみならず、与党内部からも来年に予定されている立法院委員(国会議員)選挙をこのままでは乗り切れないとの声が高まっており、陳水扁総統支持の勢いは低下している。
陳水扁総統は2008年の任期を満了するまで総統を辞任しないと言っているが、国民の反発は今のところ強まりを見せている。
実際に訪問日の月曜日夕刻に総統府付近を訪問した際に私が見た民衆の反陳水扁総統デモはかなり厳しいものであった。
これに対して国民党の馬英九主席に対する信頼は高まりつつある。
即ち、馬主席に対しては、理性の人、民主主義の人という見方が定着し、次期台湾リーダーとして名実共に相応しい人物との見方が強まりつつある。
特に米中とのバランスを上手に取る人として、その手腕を期待する人は多い。
日本人の中には、馬主席は日本との関係が薄い、また中国本土に高い人であることから日台関係は疎遠となるのではないかとの不安感を示す人もいるが、実際には、馬主席は連戦前主席をはるかに上回る関心を日本に対して寄せている。(例えば、馬主席はお会いした政策立案委員の方が作成する日本関連のレポートを念入りにチェックしているそうであります。)よって、日台関係も今よりも好転するものと台湾では期待されている。
台湾財界には、台湾政局の不透明性が、台湾に対する国際的な信用低下を生み、その結果として台湾の株価が香港などに比べて低く評価されているとの見方が強まっている。
経済全般については、輸出部門は堅調を維持しているものの、内需部門は不透明で先行きには注意を払う必要があるとの見方が強い。
台湾の金融市場の国際化に向けた動きを加速化しており、こうした中、欧州系金融機関の中期・大型米ドル建て起債が台湾マーケットで行われるものと期待している。
まだ有名外資の台湾市場に於ける資金調達は5件しか記録していないが、今後はこうした外国人発行者の台湾市場での資金調達を拡大してもらえるよう環境整備に努めたいとしている。
また、上海やソウル、香港、シンガポールといった他の金融市場との差別化に向けて努力を図りたい。
尚、台湾の金融市場のメインプレーヤーは不良債権問題を主たる背景とする台湾系金融機関の淘汰が進む中、CITIBANKをはじめとする外資系金融機関であることは否めない。
台湾の社会現象としては、タイやインドネシア、フィリピン、ベトナムなどの労働者が台湾にたくさん入っており、高速道路や高速鉄道建設に従事するこうした外国人労働者の増加が顕著となっているが(実際に私も台北・桃園国際空港でこうした外国人労働者の到着と鉢合わせしました。)、今のところ、台湾経済社会に対しては好影響を与えていると総合評価されている。
こうした一方で、ベトナムやタイの女性と結婚する農村部の台湾人男性が増加しており、この結果、現在、生まれる子供の8人に1人は、こうした混血の子供達である。しかし、こうした状況についても、今のところ社会問題化するような事態は見られていない。(尚、今週はある会議にて、ベトナム専門家の方の最近のベトナム訪問の中、ベトナム女性が台湾を中心に海外に渡り結婚していることは、ベトナムサイドから見ると違法性が高く問題であるとの見方が出ているとの報告があり、留意しておきたいと思います。)
長さ12.9キロメートルの長いトンネルを持つ高速道路が完成し、台北中心部と太平洋岸の宜蘭の間は交通混雑さえなければ、45分前後で結ばれ、宜蘭や蘇アウなどは観光地化が進み、これに伴い太平洋岸の経済力は急速に高まっている。週末などは特に観光客でこの高速道路は渋滞し、観光地の賑わいは増している。(私も今回は蘇アウにある世界三大奇泉の一つである冷泉に入り、また南方アウにある南天宮の純金と特殊な石で出来た馬祖を拝観、その上で高級サメ料理を食するなど、暫し、観光客気分を味わいました。)
また、この蘇アウ地域は天然の食い込んだ入り江となっており、米国から購入した戦艦などが停留する海軍の重要な軍事基地となっており、注目される地域となっている。
タイの情勢については、プミポン国王の意向が背景にあったものと見ている。タクシン氏は出国時にたくさんのトランクを持ち出すと共に、別便でもたくさんの荷物を持ち出した上で、事前に手当てしていた英国の住宅に荷物を輸送していたものと見ており、今回の事態を事前に覚悟していたものと思われる。また、タイでは貧富の差の拡大と華僑のみの発展に対する国民の不満が噴出したものと見ているが、当面、大勢に大きな変化はないと考えている。
中国については、今後、米中関係の緊密化を図る動きが出てこよう。しかし、中国の資源外交は更に活発化し、米国との対立の接点は拡大する可能性も高い。
中国としては、アフリカや中近東との経済外交拡大を目指しており、またこうした状況下、多くの人材が海外で働くようになっているが、こうした中国人労働者が生活していた中国での生活レベルと現地の生活ギャップが小さいことから、中国人労働者はアフリカや中近東に於いても、欧米人労働者と比べると比較的スムーズに現地に溶け込む傾向を見せており、これがまた中国の経済外交を支える一つの背景となっている。
中国の中小企業経営は台湾の中小企業経営から多くのことを学んでいる。
台湾と中国・満州地区は日本統治時代の関係から交流があり、例えば台湾の医師が満州に入るなどの交流がある。
などでありました。

[台湾とのビジネスアライアンスの可能性]
さて、こうした状況下、台湾と日本企業のビジネス連携については、例えば、

(1) 中国本土に進出している日系企業がコスト削減などを意識し現地調達率を高める際に、中国本土企業に比較して品質レベルが高く、その一方で比較的低価格の製品を産出している現地進出台湾企業からの調達を進める傾向があり、中国本土に於けるビジネス連携を更に拡大できる可能性がある。
(2) 台湾企業を高品質の製品を大量生産する生産拠点として利用できる可能性がある。
(3) 台湾の人材を日本の中間管理職レベルに導入し、社内の活性化に利用する。
(4) 台湾にはいわゆるリスクマネーがあることから、台湾に於いて日本企業が起債などを行う等、資金調達を行うという視点で利用できる可能性がある。
(5) 台湾を市場として認識し、台湾向け販売を拡大できる可能性がある。
(6) 台湾と日本の観光事業の相互拡大を図るという可能性がある。
といったことが、今後、検討できるのではないかと思います。
来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。


以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京 三菱銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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