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2006年12月[Sanada発 現場から]


「国際資本の動き、変化の兆しは見られるか?!」

 

 私の東アジアで仕事をしております実感からすると、最近、
「東アジアの自国内に於けるリスクの高さを外国、特に米国勢から指摘された東アジアの投資家たち(当然に機関投資家を含む、否、むしろ機関投資家が中心)は、リスク対比リターンが“相対的には高いと見られる”対米国債投資を含む対米証券投資を拡大し、国際的な資金はやはり、日本と開発途上国を含む東アジア諸国から米国に流れている。」
との実感を持っています。

即ち、従来の新古典派経済モデルによると、国際的な金融自由化と経済グローバル化に伴い、世界経済全体の資本は資本の限界生産性の低い先進国から限界生産性の高い開発途上国に流入するはずであると言われていますが、現状では、こうしたモデルとは全く正反対の動きを示していると見られ、また私の実感からすると、先進国である日本の郵貯の資金はもとより、韓国の外貨準備高を背景とした資金、そして中国本土や他の東アジア諸国の資金までもが米国に向かって流入し、先行き不安の兆候が見られる、そして現状では政治的変化の兆しも出てきた米国の経済基盤を下支えする資金となっているのではないかすら思われます。

こうした資金は、

(1) 上述したとおり、自国内に於けるリスクの高さを外国、特に米国勢から指摘され、燻り出された資金。
(2) 巨大消費市場として自国製品のお客さんとなっている米国の経済を下支えしようとする資金。
(3) 政治的連携を背景に米国をサポートしようとする資金。
(4) 米国に対する債権者となってあわよくば、米国に揺さぶりをかけようとする資金。

などが入り乱れており、しかし、結果としては米国に大挙流入する資金となっていると私は考えています。
  そして、その先頭を切って対米投資に積極的なのは、わが国・日本の資金ではないでしょうか?

ところで、巨額の経常収支赤字を抱える米国の対外的ファイナンスを持続させる背景として、こうした資金流入は大変大きな力となるはずであり、また、こうしたファイナンス継続に関する楽観論の最大の拠りどころは、
「米国が良好な経済成長率と高い投資収益率を維持する限り、海外の資本は相対的に高い米国での投資リターンに誘引されて流入を続ける。」
というものであり、私の見るところ、絶対基準で見た対米投資のリターンは他の投資案件と比較して決して高くないにも拘らず、これにリスクを掛け合わせたリスク対比リターンで考えると対米証券投資は未だに魅力的水準にある、よって米国への資金の流入は暫く続くと考えられます。
しかし今後は、外国投資家が対米証券投資の実際の投資リターンの低さに気付くと共に、米国の実際の「リスク」を意識し始めると、米国に向かっていた資金は一気に違う方向に流れ始める可能性もあるのではないか、そしてそうした資金の流れ着く先は、例えば、
「資源の山元の権利、資源関連企業、資源開発などに関する証券投資先」
ではないかと考えています。

いずれにしても、私は、
「米国市場の高い流動性、企業統治・会計基準の相対的な信頼性、情報アクセスの容易さ、基軸通貨としての米国ドル、リスク分散」
などを背景に、そして日米蜜月関係を軸に高い対米証券投資のポートフォリオを抱える現行の日本のスタンスには柔軟性が少なく、他の外国人投資家の対米投資スタンスの変化が具現化すると、日本勢のみ、各種米国債権を持っていることを背景に「ババを引く」危険性はないか? またそうしたリスクがたとえ少ないと仮定したとしても、「ものづくり大国」として日本が将来も発展していこうとするのであれば、その「もの」を作る源となる原資材・エネルギー源の確保にもっともっと国家として、戦略的に国際投資を分散していってもよいのではないかと考えています。
 
[日本のお金は日本の中で生かそう!!]
  ところで、前述したような戦略的投資を行う一方でまた、私はまた私たちが汗水流して働き稼いだ日本のお金を、もっともっと日本国内で生かしていくべきではないかと考えています。
少し遠回りになりますが、以下のようなお話をお読みください。
  私が銀行に入行をし、社会人としてスタートをした1980年代は、盛んに日本経済の強さが語られていた時代でありました。
  そして、その強さの背景として挙げられていた要素としては、

株式の持ち合い制度
メインバンク制度
終身雇用制度と年功序列型賃金体系
企業の系列化強化、拡大
効率的な産業政策の推進

といったものが挙げられていたと記憶しています。
  そして、こうした強さの中で日本人は、

厚い福利厚生の享受
個人の満足度拡大と生活意識の多様化
所得・資産の適正分配(社会主義的な公平ではなく、労働の質・量などに対応した適正なる配分)
経済的安定と適度なる成長の享受

が可能となり、今現在と比較して見ると、正に幸せなる時代を過ごしていたのではないかと感じます。
  しかし、東西の冷戦構造が崩壊し、唯一の超大国・米国が出現した後、米国に対する対抗軸が弱まった中で、世界のEstablishmentは意図的に、
「グローバリゼーション」
の名の下にルールはもとより、社会システムの世界標準化を推進する動きを強め、そうした流れの中で日本経済の強さを支えてきた、上述したようなスタンダードやシステムに対する批判もじわじわと強まり、その結果として、かつて日本経済の強みと言われた各種要素が崩れたと言えるのではないでしょうか?
  例えば、株主の直接的な権利に対する意識が強まる中、株式持合い制度は崩れ、金融機関の経営悪化の中でメインバンク制を維持することが出来なくなりつつある金融界、実力主義が叫ばれる中、事実上崩壊した終身雇用制・年功序列制、外資導入を迫られる中、変化をする企業間の生産系列・流通系列、そして小さな政府を標榜する現政権によって弱まりつつある大局的視野・鳥瞰図的視野から作られた国家的視点から見た産業政策の弱体化など、かつての日本経済の強さを支えた背景はことごとく弱まってきているのではないかと私には感じられます。
  これが「グローバリゼーション」であり、日本としては、これに従わなければならないとの考え方もありますが、このまま何もせずにこれを受け入れることには、私としては今ひとつ納得できないこともあります。
  ところでこうした中、グローバリゼーションの網を潜り抜け、日本経済の強さを復活するために活躍する組織の一つとして、地域金融機関が注目されるのではないかと私は考えています。
  地域経済、地域企業にしっかりと食い込み、日本経済を底辺から支える基礎単位として日本企業、個人としての日本人と密接な関係のある地域金融機関が地域経済に熱い息吹を吹き込めば、日本経済の再生には大変効果的でありましょう。
  そして、例えば地域金融機関によって検討されている具体策としては、

長期継続取引の中で培われた顧客情報をフル活用した地域企業支援策の推進
目利き機能を生かしたコンサルティング業務の拡大
売り掛け資産流動化などの仕組みものも含めた中小企業金融の拡大、円滑化推進
ジェトロ、中小企業支援センターといった外部機関との連携、情報交換の強化
そうした営業推進の為の内部体制再構築
そして、地銀、第二地銀、信金・信組の棲み分けとその一方での連携強化

などが推進され、今後、その効果を上げていくことが期待されています。
  そしてこうした地道な動きが、
「日本のお金をもっともっと日本国内で生かす最も早い近道である。」
と考えられ、日本経済を底辺から支えていくものとなるのではないでしょうか?
私はこうした意味から、読者の皆様方の地元に根付く地域金融機関の活躍に大いに期待をしています。

 

今年も一年間、お世話になりました。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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