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2007年6月[Sanada発 現場から]


「国際金融市場と国際スタンダード」

 

―最近の為替相場動向―

 最近の為替相場動向に目を向けると、少し言い過ぎかもしれませんが、
「円の独歩安状況」
の色彩が続くのではないかと感じています。

 そして、ここではまず、為替のプロである友人からのコメントを引用させて戴き、この辺の背景を確認しておきたいと思います。
以下は友人の分析です。
「先週はUSDが堅調な週であった。これは発表された米経済指標が総じて強かったことに加え5月30日に公表された5月9日実施のFOMC議事録において、米景気に対する強気な見通し(≒インフレ警戒感)が記載されていたからだ。
YENということでみれば、外貨建て投信の新規設定が多く、コンスタントなYEN売り需給となっており、USD/YENは4ヶ月ぶりの122円台乗せ、EUR/YENは最高値更新となった。
ところで、米長期金利とUSD/YENの相関性が高いが、米景気に対する安心感から米10年債利回りは5%を伺う水準となっている。
USD/YENが年初来高値122.20をつけたときは4.8%台であったことを考慮すると、現水準はそれ以上でありUSD/YENがさらに上値を追う展開となっても不思議ではない。
テクニカル的にみると、年初来高値122.20はもとより135.20(‘02 Jan31)から101.67 (‘05 Ja17)の61.8%となる122.39が重要。そこを抜けてくると125円台が視野に入る。」
とのことです。

 そして、私が米国から聞いている話では、
「一旦、為替相場は円安が進展した後(私の感触としては125円に向けて動いた後)、日本の円安が貿易問題(自動車の対米輸出拡大等)に影響を与えるといった議論が米国において急速に強まり、経済的な側面からではなく、政治的な側面が一旦前面に押し出て円高・米ドル安に戻す。」
といった見方も出ているようです。
いずれにしても、為替相場展開、円売り・米ドル買いの実需が日本の投資家に強く、当面は、
「コンスタントな円売り」
の傾向が強いと見られている点、留意しておきたいと思います。

―国際金融市場に見られるスタンダード―

 自分がもともといた世界の話でありますから、やや極端な表現になるかもしれませんが、私は、現在の世界経済は、
「金融資本主義的なシステムとルールに裏打ちされた弱肉強食型の原始資本主義=Primitive Capitalism」
により大きな影響を受けていると考えています。
そしてまた、その金融資本主義の底辺を支え、
「市場原理」
の名の下に、日本流に言えば「仕手戦」的な動きを示す資金の流れが存在していると考えていますが、こうした状況下、国際的な金融機関である国際決済銀行(Bank For International Settlement=BIS)は、世界のヘッジファンドの総資産について、
「本年5月時点での推計で約1兆6,000億米ドルと1999年の5倍強に増加している。」
と発表しました。

 またこれによると、地域別では欧州・アジアの比率が2002年の17%から32%に高まり、米国一極集中から世界分散運用に移行、顧客も個人から年金基金など機関投資家に多様化しているとのコメントが示されています。
こうした発表は、BISの金融安定化フォーラムが独ハイリゲンダム・サミットでのヘッジファンド監視論議のたたき台として調査され、今般、報告書をまとめたものといわれていますが、そもそもヘッジファンドとは何か、資金がどのような動きを示すと秩序を乱すものと定義され、どのような動きまでは市場原理に基づいた動きなのかといった、基本的なDefinitionを、世界全体で共通して行うことが極めて難しい、即ち、各国、各機関、さまざまな個人投資家などの利害関係が絡んで難しいものであり、よって、これを規制することは更に困難なことであると私は考えています。
しかし、金融資本主義の悪影響は何とか排除しなければならない、すると、国際社会の議論で必要なことは、細かいルールを支えていく原点となる、
「世界共通の倫理観のDefinition作りをすること」
になり、その為には、一国主義的な対応ではなく、各国のスタンダードの共通項を幅広く受け入れる定義が確定しないことには話は進まなくなるものと思います。

 しかし、課題は、今の世界のリーダーたちに、
「地球を支える地球人的リーダー」
が全く存在しないことにあり、私はその先行きを大いに危惧しています。
具体的にどのような行動を取ればいいのか、更に悩み、そしてアクションをし続けていきたいと思います。

 さて、そのハイリゲンダム・サミットですが、そもそも毎年開催される先進主要国首脳会議というものは、世界経済の共通発展と大国の利害関係調整のために開始されたもので、その意義、意味は大きいものと思います。
しかし、東西冷戦構造が本格的に崩れた1990年代に入り、唯一の超大国・米国の存在が強まる中、ユニラテラリズム(一国主義的な動き)が進展、そうした中、
「グローバリゼーション進展」
を旗印に、世界の秩序の再構築が改めて進展しましたが、これに対して、
「強者が弱者にスタンダードを押し付け、更に強者のポジションを強めるために利用しているのではないか?」
  といった厳しい批判が生まれ、例えば世界貿易機関(WTO)の会議においてもNGOやNPO団体が反対デモを行うといった事態も見られ、必ずしも、
「国際社会のグローバル化」
が順調に進展しているとは言えないと私は認識しています。

 さて、こうした状況下、今般、先進主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)の開催に反対する一部デモ隊と警官隊との衝突事件が発生、これによる負傷者が6月3日までに1,000人に達するという事態が起こりました。
激しい抗議活動は反グローバル団体などの暴動で多数の死傷者が出た2001年のイタリアでのジェノバ・サミットの状況に似ており、開催地に近いドイツ北部のロストクでは警備当局が終日、厳しい交通規制を敷いていると日経新聞などでは伝えていました。
本来、グローバリゼーションは庶民の生活を豊かにするためのものとして進展されると期待されていましたが、むしろ、強者が弱者に自らのスタンダードを押し付け、我田引水、自らに利益誘導、その地位を更に強固にするものとして利用されているとの見方が強まり、今では、
「先進主要国首脳会議は世界を二極化する遠因となっている。」
との見方まで出るようになっています。
やはり強者は弱者を思いやる、弱者は強者が何故強者となったかを理解し、尊敬するという意識をお互いに持たないとよい関係は構築できないものと思います。
「先進主要国首脳会議の真の意義」
といったものを改めて考え直す時期に来ていると思います。
そしてその中で、中立的な立場を貫き、理念とビジョンを以って安倍内閣には世界貢献に向けた役割を果たしてもらいたいと思います。

 

今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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