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2007年8月[Sanada発 現場から]


「世界的な業界再編の動きとものづくり大国・日本の将来」

 

先日、日本経済新聞の記事を見ておりましたところ、
「中国本土で省や地域を超えた国有企業の再編が加速している。
乗用車最大手の上海汽車集団(上海)は中堅の南京汽車集団(江蘇省)との提携交渉を開始。鉄鋼最大手の宝鋼集団(上海)は新疆ウイグル自治区や内モンゴル自治区など西部の中堅企業と相次ぎ提携している。供給過剰が問題化するなか、政府も国際競争力の向上につながるとして再編を後押ししている。」
との記事に接しました。
  私の現地調査でも正にこうした状況を強く感じています。
  その背景には、もちろん、中央政府の意向もあると思いますが、私の見るところ、更にその背後には、

(1) 世界的な業界再編に伴い、中国本土企業の業界再編を進めておき、これに未然に備える。
(2) 世界的な業界再編に対して、中国本土は社会主義、共産主義の国家であるからと言って、そのまま保護主義的に世界の業界再編の渦に巻き込まれないようにしておくわけにはいかないほど、国際化の進展が進んできていると中国本土政府自身が認識していること。
(3) そして、逆に「攻撃は最大の防御なり」的な考え方の下、国内の業界再編を進め、体力をつけた上で、中国本土企業自身が世界の業界再編の主役として躍り出ようとの考え方もあること。
(4) 中国本土国内の証券市場が拡大・発展、更には地域格差の是正や地域間交流の拡大が進む中、国内での企業再編を行い易い環境が整ってきていること。
(5) こうした中、中国本土国内のパワーゲームも絡み、勢力争いもあって、業界再編が加速化する可能性もある。
(6) 一方、地方の不良な国有企業を売却し、キャッシュを確保しなければならない財政事情にある地方政府も存在し、こうした地域では業界再編が更に加速化する可能性がある。
(7) ポイントは、こうした業界再編に何処まで外資が関与してくるのか?関与が出来るのか?

ということになるのではないかと考えます。
一方、同じく日本経済新聞はロシアの経済紙であるベドモスチの記事を引用し、
「ロシアの財閥総帥のオレグ・デリパスカ氏が米ゼネラル・モーターズ(GM)株の5%弱を保有していることが明らかになったと報じた。投資額は現在の株価で換算するとほぼ9億米ドル。目的は不明だが、同紙は値上がり益を狙ったものと指摘している。
デリパスカ氏は米フォーブス誌によると資産規模168億米ドルとロシア2位の富豪で、ロシア最大のアルミ会社UCルサールのほか大手自動車GAZなどを所有する。今春以降カナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナルに出資、日本の部品大手ティラドとロシアに合弁会社を設立するなどアルミの有力顧客である自動車産業への投資を加速している。
同氏が保有する投資会社はGM株取得についてコメントしていないが、取得が事実なら世界の自動車業界の再編に向けた憶測を呼ぶ可能性もある。」
との報道が流れていますが、ロシアの通貨・ルーブル復権の動きと合わせ、ロシア企業が国際経済社会にコミットしてくる可能性は高まっており、これにより世界的な業界再編に繋がるとも考えられます。
こうしたロシアや先ほど述べた中国本土、そして最近はその動きが活発化しているインド企業の動向にはやはり日本企業としても高い関心を寄せ、必要に応じて、先手必勝、或いは対抗、或いはこうした国際資本を上手に受け入れながら、企業経営の国際化を進めていかなければならないと考えています。

 ところで、こうした国際情勢にある中、日本の進むべき道は、国際金融を通した業界再編による事業再編ではなく、やはり、技術に立脚、人間社会に役立つ製品を生み出す、
「ものづくり大国」
を目指すことにあるのではないかと考えています。
  そして最近もまた、大阪、そして西明石、千葉、東京にて多くのものづくり企業の経営者の方々などにお会いしました。
  企業体力があったからこそ出来たことではありましょうが、
「先行投資をしてきた技術がここにきて花を開き、会社の収益の柱になった。」
と仰る企業もあり、元気のよいものづくり大国・日本の復活は間違いないと確信していますが、こうした議論の中でやはり気になるのは、
「原材料、エネルギー資源を量・価格両面で如何に安定的に確保するか?」
という点であります。
  経済発展が著しく外貨準備高を着実に伸ばす中国本土はその拡大する経済力を背景に、
「資源やエネルギー、食糧などのバルク買い」
に走り、世界のこうした原材料、エネルギー資源、食糧などの売り手は、購入時に細かい注文をつける日本企業を忌避しつつあるのではないかと思われ(実際に今回の話し合いの中でもそうした事例が出ているとコメントされる方もいらっしゃいました)、購入国・日本のあり方を考える必要もあるかと思います。
  また、
「いいものを高く売り、そのお金で、ものづくり系の人材に対して高給を払いつつ、育成する。」
ことの必要性を指摘した私の意見についても総論賛成の声をお聞きしましたが、更に私が思うことは、
「体制の構築されている日本の最終メーカーと部品供給者の間ではなかなかいいものを高く売ることは難しいのではないか。」
と思われることであります。
従って、この一つの解決策としては、私は、
「最終メーカーがその商品を国外に販売する際には、日本企業同士が未然に調整をして競合し価格引き下げ競争に走らないように注意をしながら、付加価値の高い製品を高く売る努力をする(日本の商品が真に差別化されていれば高く売れるはずであり、それを単純に安く売ってしまう最終メーカーは国富の海外流出を助長する企業であるといった見方も出来ると思います。尚、海外にものを安く売るとダンピングとの声が出ますが、逆転の発想、当面は、それを高く販売しても批判は少ないと思います。)、そして国内マージンよりも厚く出た利益は部品供給をする協力企業に優先株を持ってもらっておいて高額配当する、研究開発・人材育成支援費などの形で還元し、最終メーカーと部品供給者の間で既に持っている信頼関係の下で両者の共存共栄体制を再構築することが日本の場合には十分に可能であり、また最終メーカーの株主もそうした共存体制を理解してもらうことは十分に可能である。」
と思っています。
  いずれにしても、何とかものづくり大国・日本のあり方を更に強化していきたいと皆様方が考えており、私もこうした方々と協力して日本のよき社会を強化、また国際社会と共存共栄が出来る道を模索したいと改めて感じました。
  尚、この「ものづくり」には是非とも「農業」も加えたいと私は考えています。

 

今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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