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2007年9月[Sanada発 現場から]


「黒龍江省訪問記」

 

 先日、中国本土の最北端、ロシア・シベリア地域と接する黒龍江省を訪問して参りました。
 今回はその様子をご報告申し上げます。
 字数の制限もあり、詳細なご報告はここでは出来ませんが、ご了承ください。
 また、もし詳細な情報が必要であれば、御連絡ください。
ご報告を改めて致します。

 今回も最近のシリーズものであります「中国本土辺境調査」に行って参りました。
 今回の調査目的は黒龍江省哈尓濱市、斉斉哈尓市、黒河市、佳木斯市の地域産業開発について、次の3つの視点より実態を把握し、日本企業が当該地域に投資するための条件と日本政府支援・関与のありかたについて検討するものであります。
即ち、

1)資源開発と環境保全の実態
  資源大省・黒龍江省の4地域における「エネルギー資源(原油、石炭、天然ガス、メタンガスなど)の開発・高度活用」、「農林産一次資源(バイオマス原料、加工食品原料など)の工業原材料活用」、「希少資源(ロシア、モンゴル等のレアメタル、希少鉱産物)の開発・調達」の実態を把握する。
  また、一次資源開発と二次加工にともなう環境保全の取り組み実態を把握する。

2)対ロシアとの経済交流の実態
  北東アジアにおいて、中国東北地域とロシア極東地域の経済交流は、両国の中央政府のそれぞれの意向を反映し「辺境」地域の経済活動が急激に活発化している。そうした情勢下で韓国企業が積極的に反応しているものの日本企業の存在感は薄い。今後の北東アジアでの経済情勢を判断し、日本企業の活動のタイミングをつかむためにも、中国東北内陸地域での中ロ貿易の現状を理解することが必要である。
 そこで、黒河市−ブラゴベシチェンスク市の間の中ロ辺境貿易と地域企業の経営実態を把握する。

3)機械工業の経営実態
  日本の機械工業は国際市場競争において優位性を持つ日本の基幹産業である。機械工業の活躍する事業フィールドを中国東北地域にも展開し、日本の機械工業技術体系と同調することが重要である。旧ソ連あるいは欧州の機械工業技術体系が標準となれば、日本企業の活躍するフィールドは限られたものとなる。
  この点、中国政府は「東北地域等旧工業基地振興」において、日本企業への投資、技術移転に強い期待を表明している。瀋陽市、大連市、長春市とともに機械工業集積地域である哈尓濱市、斉斉哈尓市の機械工業企業の経営実態を調査し、日本企業とのパートナーシップの意向について把握する。
というものであります。
 今回の調査対象地である黒龍江省は、中国本土東北部に位置し、面積は454,000km2と、一つの省でありながら、日本の約1.2倍の面積を持ちます。
 また、省内には黒龍江、松花江、ウスリー江の三本の大河が流れ(これを三江と呼びます。)、東部にはこれらに囲まれた三江平原が広がり、この三江平原では大農方式による穀物生産などの展開と更なる拡大が計画されてもいます。
 また省西部には大興安嶺、小興安嶺の二つの森林地帯があります。
 寒暖の差が激しい大陸性亜寒帯に属している為、特に厳冬期は生活も厳しい状況となります。
 そして1年で最も気温が高くなるのは7月で平均気温が22.8℃、反対に最も低くなるのは、1月で平均気温が−19.4℃で、北部では−52℃の最低気温を記録したこともあります。
 また北部と東部をロシアと接する中国本土最北の省であり、3,026qの国境線を有し、今回は私が行けなかった黒河、そして昨年訪問した満州里、一昨年訪問したスイフン河など、ロシアとの国境貿易を繋ぐ大都市があり、また人口は3,700万人で、その95%を占める漢民族を中心に、モンゴル族、満族、オロチョン族、ホジェン族など45の少数民族が居住、また省都は哈爾浜(ハルビン)市で、人口は約960万人となっています。
 黒龍江省は、資源が豊富で、森林面積、木材生産量は中国本土一であり、その他石油、石炭、金、石墨、鉄鉱石等が産出され、特に大慶油田などを軸に石油の年間生産量は5,600万トンと、国内トップの生産量を誇っています。
 一方、黒龍江省は中国本土有数の重要な商品食糧の生産基地で、大豆、とうもろこし、小麦、水稲、サトウ、ダイコン等が特に生産されています。
更に、豊かな天然資源を原材料とし、黒龍江省では工業が発展しており、中国本土の重要な工業地帯、また初期段階から中央政府級の有数なる国有企業が存在してきた省としても認識されています。
 特に石油、石炭、木材、機械電子及び食品加工工業が発達しており、よって、これらの産業を支える基礎インフラとなり交通、通信等に関連する施設も発達しています。(因みに日本とのルートについては、1992年には、松花江からロシアを経由して山形県酒田港に入港する水上航路が開設されています。また、1998年6月に就航したハルビン空港と新潟空港を結ぶ国際定期便もあります。)
 また、こうした経済状況を背景に、黒龍江省の対外貿易は盛んに行われており、特にロシア及び東ヨーロッパの国々との国境貿易が活発で、上述したとおり、満州里やスイフン河、黒河はじめ25カ所の対外開放通関所があります。
 黒龍江省は現在世界の130以上の国及び地域と経済貿易関係を樹立しております。
 一方、こうした重化学工業系やバイオ系の産業を背景に、科学・文化・教育の分野においても目覚ましい発展を遂げており、省内には様々な種類の大学が計42校、科学研究機関も872カ所あり、各分野の専門技術者は160万人にものぼると黒龍江省政府は発表しています。
 そして、こうしたことから、黒龍江省は、
「中国全土に優秀な人材を提供する人材供給基地」
といった表現をされることもあります。
 尚、省都ハルビン市は北東アジア経済圏の中心に位置し、19世紀末の鉄道建設に伴い、本格的な都市建設が始まった都市でもあります。
 地理的・歴史的経緯もあり、市内にはまだ多くのロシア・ヨーロッパ風の建物が残っており、現在、機械電気工業を主とする工業都市として、「動力の故郷」、「工業の街」とも呼ばれ、業種も電気機械を初め、石油化学、食品、紡績、医療機器、製薬など、多分野にわたっています。
 また、中国本土政府は最近、都市部の低収入層や農民に対して各種助成策を打ち出すように地方政府に水面下で圧力をかけていると見られており、黒龍江省に於いてもこうした現象が見られていると思われます。
 更にまた、黒龍江省では近年、緑色(グリーン)食品の生産に力を入れており、グリーン食品の作付面積はすでに312万ヘクタールに達し、グリーン、無公害産品の生産量は3,380万トンに達したと発表されています。
 そして、黒龍江省のグリーン、無公害食品の生産拠点面積、総生産量、生産総額などは共に全国トップとなっており、すでに黒龍江省で6番目に大きい規模の産業分野に成長している点、留意しておく必要があります。
 また、グリーン食品の安全と品質を維持するために、黒龍江省は全過程における品質管理を徹底して行い、基地検査制度と、年度ごとの生産品検査制度を制定し、定期的に検査結果を一般に公表、生産品の定期検査を徹底すると共に、ランダム検査を増やし、行政法執行、こうしたことから、ここ2年間、無作為抽出検査で地元の農産品の合格率は99%に達しています。
 そして、昨年の黒龍江省緑色食品産業の生産総額は230億5,000万人民元に達し、加工業の生産総額は198億5,000万人民元で、納税額は22億7,000万人民元となっています。
 こうしたことから、グリーン色食品の生産額が農村の経済に占める割合は、かつての5.4%から17.5%以上にまで現在増加している点、注目しておきたいと思います。
 その一方でまた、現地に入ると、今年は旱魃による被害が顕在化しており、その対応がわるかった地方都市は黒龍江省政府に厳しく叱責されているという説明を受けました。
 また、今回の調査期間中、中国本土政府・国務院は改めて、
「東北地区振興計画」
を発表、今後この黒龍江省、吉林省、遼寧省の東北三省を資源適応型地域としての安定的発展地域とする、総合経済発展均衡発展地域とする、経済成長地域とする、国際競争力のある製造業基地とする国家の新型原材料と資源保障基地とする、農牧業生産基地とする、国家の重要な科学技術研究発展と創業基地とするといった具体的な青写真を持った形で(但し、後述するハルピン経済技術開発区管理委員会の局長によると、詳細なる具体策はまだ示されていないとのこと。)地域振興を進めていきたいと発表しました。
 今回はこうした黒龍江省のハルビンを軸にして、調査をして参りましたが、その中で面白かった訪問先数箇所について、以下、簡単に述べ、今回のご報告とさせて戴きたいと思います。

(1)佳木斯市
  佳木斯ではまず、工学部や医学部などで有名な佳木斯大学が経営するホテルに宿泊することから、ここに荷物を置き、市内見物に入りました。
  市内は270万人都市にふさわしい町の構えとなっており、また松花江のほとりにはきれいに整備された川辺の公園があり、庶民の憩いの場になっていました。
  またこの佳木斯はかつての集団農場である「農墾」の本部(現在はハルピンに移転)が所在、更に日本人が満州開拓をした時代にはこの佳木斯を橋頭堡としてこの地域開発をしたとされ、地域の農業開発、大農方式の農業発展に力が入れられた地域でもあります。
  そして市内には、農業試験場もあり、こうした市の歴史を引き継ぐ施設もあります。
  一方、工業関連の開発区はまだ見られず、大規模工業団地の育成といったことはこれから始まるのではないかと思われます。
  また市庁舎は佳木斯市西部に移転され、立派な建物となさっていましたが、当地に限らず、中国本土国内では、国民の中に生活に苦しむ者がいるにも拘らず、地方政府がこうした贅沢をするのはどうかといった批判もあるとのことで、当地のそうした市の一つとなっていそうでありました。
  また、市内には庶民や富裕層がお布施を出し合って立派なお寺が増築されており、新たな名所となっていました。(因みに最近、中国本土では鳥や金魚、鯉などを買い求めた後、これを自然に再び放つ、「放生」ということが流行っており、放生により、徳を積むといった発想から宗教に関心を払い、またお布施を出す人も増えているとのことでありました。)
  市内には昔ながらの旧市街区、古い家並みが散見されますが、上下水道の整備が遅れ、氷点下25度を越す寒さとなる当地では、文化生活の問題となるといった課題があるとの指摘もありました。
  尚、黒龍江省の他地域と同様、当地にも朝鮮族が存在、一定のプレゼンスを示していました。
  さて、この佳木斯市は32,704平方キロメートルの面積を持ち、約270万人の人口をもつ大都市であり、そのうち農業人口の比率は約55%と、やはり農業中心の都市であります。
 温帯大陸性気候に所属するとはいえ、年平均気温は3.6度と冬の寒さは超一級の都市であり年間降水量は約520ミリとなっています。
 今年は大旱魃で被害が大きいのですが、三江の交わる地域として水資源はまずまず豊富、石炭、石灰岩、大理石、花崗岩、石英、天然ガスなどの鉱物資源にも恵まれています。
 主要生産物は大豆が年産113.0万トン、水稲101.4万トン、とうもろこし78.5万トン、小麦10.1万トン、4,697万トンとなっています。
 年間旅行者は125万人であり、外国人ではロシア人が多いとのこと。
 また、年間発電量は30億キロワット/時であります。
 交通の便はこの地域のハブとして発展しており、国内では、北京、広州、上海、大連、煙台、国際線ではハバロフスクとの間に航空路線を持ち、鉄道、道路の地方幹線道路を持っています。
 域内GDPは278.5億人民元、財政収入は14.2億人民元、都市部民間人平均収入7,791人民元となっており、中核企業には佳木斯紙業集団、佳木斯電機、佳木斯佳鳳ビール有限公司などがあります。
 対外貿易規模は10.8億米ドル、このうち、対露貿易は9.9億米ドルと大宗が対露貿易となっています。
 工業用水は2.60人民元/トン+10%工業付加税、普通工業用電力料金0.7073人民元、従業員月収400〜600人民元、一般管理職月収600〜800人民元、中間管理職月収800〜1,000人民元となっています。
 このように投資環境は地方辺境都市とはいえ、比較的整備された地域であることが確認されました。
 そしてまた、中国本土の最大の内政問題とも言える「三農問題(農業、農村、農民)」を解決するためのモデル事業がこの地域では展開されており、農民の戸籍の都市戸籍への変更問題や、農民医療の充実に向けた努力、その一方で、耕作意欲が高く、生産能力の高い農民の優遇といった実力主義的な対応が見られている点も付記しておきたいと思います。

(2)新華鎮政府・副鎮長
  三江平原の西南地域に位置する鶴岡市・新華鎮に入った我々は、飛び込みで市政府を訪問、強引にも副陳長に対するインタビューを突然申し入れました。
  これに対して、地元出身ながらも大連大学を卒業、その後は都市で就職しようとリクルート活動をしたものの叶わず、当初は仕方なく地元に戻り、行政試験を受けたが、そのやりがいに目覚め、現在28歳という若さで常務副鎮長となった陳氏は我々の申し入れを頃よく引き受け、インタビューに応じてくれると共に、鎮内有数企業の一つを紹介、またお昼の接待までしてくれました。
  新華鎮は、省レベルの行政体である「農墾」が管理する新華農場に隣接(因みに農墾はかつては、屯田兵的役割を果たした部隊の総称であり、現在もこの地域に約40の農場を所有、また、農墾グループそのものは上海A株市場に上場、最大株主は中央政府となっている。)、鎮そのものは1983年に郷ができ、1984年に鎮となって今日に続いています。
  尚、鎮の耕地面積は21,000ヘクタール、農場の耕地面積は約80,000ヘクタールと、新華農場が大きな耕地面積を保有しています。
  そして、絶対的な権力を持つ新華農場とは現在、「場鎮共建」(農場と鎮が共に発展しよう)というスローガンの下、共存共栄の道を歩んでいるとのこと、尚、この新華農場の中では日本のニチメン(現双日)が一部出資をして運営された精米工場もあり、その製品は輸出もされているとのことであります。
  新華鎮は農業問題が顕在化する前からモデル地域として、農民保護政策に努めており、2004年からは一免二補(農業税の免除、稲の手当て、耕地の手当てに関する補助)が実施されています。
  そしてこのような厚い農政により、農民はその生活水準を向上させており、例えば平均4,300人民元の収入を得るなど、その生活水準は小康状態(若干のゆとりある生活水準)に入っているとのこと。
  しかし、こうした農民保護は鎮静府にとっては財政的な不利益ともなるので、鎮では現在、新華工業園区を建設、工業化の推進も図っており、ここには現在契約ベースで4社、このうち一社は今年の9月より本格稼動することになっているとのこと。
  本格稼動予定の一社は康維生物化学社であり、他の三社はにわとりの地鶏の生産(この地鶏はご馳走になった昼食で食しましたが、名古屋コーチンのように大変美味でありました。)、二次加工、都市部への販売、そして輸出を目指す華農食品や白酒生産を目指す興澤酒業、そして八穀粥生産を目指す食品加工メーカーとなっています。
  さて、この新華鎮政府の、政府としての主要な役割は、農民に対する農業指導、学校や福祉の充実、社会インフラ整備となっています。
  そして、生活困窮者の子女に対しては鎮政府が補助、100%の義務教育体制を確保しており、また鶴岡市との共同出資金300万人民元で養老施設も新設、更に農村新型合作医療制度の導入に伴い農民の医療制度の確実なる実行(農民の医療保険の保険料自己負担は年間20人民元とのこと)を図るなど、住民主体の行政が展開されています。
  鎮人口は17,000人、このうち農民人口は11,000人となっています。
  今年は大旱魃によりとうもろこしや大豆には被害がでるものの、水稲については域内で井戸130も掘るなどの対応を取った成果もあり、その被害がほぼ皆無となりそうであるとのこと。
  地域はかつての三江の洪水により作られた肥沃な黒土によって覆われていることから、今年も何とか水稲の名産地としても面目を保てるとの発言がありました。
  鎮の財政収入は1,400万人民元となっており、企業からの営業税、増値税、資源税、所得税といったものが収入全体の約80%を占め、そのうち約半分は中央政府、省政府、市政府に納め、鎮そのものに残る予算は600〜700万人民元の範囲内となっている、そしてその大半を福祉、教育、そして基礎インフラ建設に費やしているとのことでありました。
  いずれにしても、この若きニューリーダーである副鎮長の下、新華鎮には大いに発展の可能性を感じました。

(3)康維生物化学
  当社は上述した陳新華鎮副鎮長の紹介を受けて訪問をした企業であり、もともと電気製品販売から不動産業も手がけ、そこで資本金を貯めた地元鶴岡出身の青年実業家・杜氏が率いる企業であります。
  当社の資本金は600万人民元、総資産は3,200万人民元、また総投資予定額は5,600万人民元となっており、100%、杜氏の個人出資となっています。
  また牡丹江では国営ワイン工場を買収、北京では調味料会社との共同経営なども実施しています。
  この新華鎮では、やはり農業を中心とした食品産業に従事しつつ、地元の発展、地元の雇用機会創造に貢献しようとの意識から、北京で醤油、酢、大豆味噌の生産技術特許を、300万人民元で購入、これを元に健康酢や醤油、味噌の生産設備を設置、本年9月中旬より本格稼動の予定となっています。
  既に、製品の生産体制などについてはISO9000とHACCPを取っており、品質に問題なしとしており、醤油は年産5,000トン、健康酢は同8,000トンを予定しています。
  酢は私も戴きましたが、健康黒酢と漢方薬が混じった製品は大変美味でありました。
  但し、酢の瓶詰めパッケージには課題があると感じました。
  原材料は原則地元から、薬草など一部は河北省から調達しており、課題は宣伝と販売、即ち、製品のブランド・イメージを如何に市場に定着させていくかということにあるようです。
  生産ラインの機械は江蘇省や河北省の機械、そして一部米国製の機械を設置しています。
  瓶は外注、工員は地元住民を優先して採用、文字通り、地元定着企業を目指したいとしていました。
  その心意気、大いに期待したいと思います。

(4)ハルピン電機廠有限責任公司グループ
  ハルピン電力の元副社長でセッ江大学出身、日本の宇都宮の大学、そして日本IBMにも派遣され、また米国のウェスティングハウスでも研修を受けた経験のある技師出身の鄭時剛・社長特別顧問の説明を受けました。
  ハルピン電力の技術者の流れは、国民党(現台湾野党)時代から受けたものであり、国民党時代には米国のウェスティングハウスから技術指導を受けた技術者がいたそうでありますが、その後、中華人民共和国になってから、その技術者たちが集められ、1951年に現会社が設立されたとのことで、現在は中国本土有数の歴史ある名門企業であります。
  1951年設立直後は、旧ソ連からの技術指導を受け、レニングラード方式と呼ばれるボイラー、タービン、発電機の三点セットを製造する企業として発展、1991年には国家一級企業としての指定を受けています。
  また、関係会社のハルピン動力設備は1994年に香港H株市場に上場、現在はハルピン電点設備が60.55%の株式を保有しているものの、残りの39.45%は外資などが株式を出資しており、例えばABB社なども3.99%の同社株保有をしています。(因みに当社会社概要では上述したような比率でありますが、鄭氏の口頭での説明によると、現在は46%の株式が香港市場に上場されているとのこと。)
  また、1965年には中国本土南部地域にも同社と類似した企業を設立するとの中央政府方針に基づき、同社から約800人に人材が四川省徳陽に移動し、東方を設立したという歴史もあるとの説明がありました。
  現在は全社で約20,000人、本社工場には6,000人の従業員がおり、主として水力発電用、火力発電用、原子力発電用のボイラー、タービン、発電機、そしてAC−DC(直流交流)モーターを製造する大型企業であります。
  そして技術面では、水力部門がアルストームと日立、火力部門が東芝とウェスティングハウス、そして原子力部門はウェスティングハウスと、そしてAD−CDモーター部門は東芝と三菱電機の合弁会社であるTIMAC社との強い関係の中で技術を深化させ、生産を拡大しているとのこと。
  また、今後については、環境問題と熱効率の問題から小規模火力発電部門は縮小されていくものと見ている一方、水力は三峡ダムクラスの大型水力発電事業の増加が期待され、また向こう10年間で約4,000万キロワットの発電量を持つ原子力発電事業(箇所にして20〜30箇所、一基当り100万キロワット前後)の分野も発展分野として考えられるとの説明がありました。
  特に原子力分野についてはAPR(加圧水)型の原子力発電所をウェスティングハウスと共に中国本土国内でビジネス展開していくことを予定しており、本年4月にはウェスティングハウスとの間でAPR1000という最新技術の基本契約を締結したとのことであり、また既に山東省2基、セッ江省2基を受注しているとのこと、一方、ライバルは四川省の東方(アルストームと提携、EPR=沸騰水=型原子力発電所を展開中。因みにアルストームは8月24日、中国本土で原子力発電用の中核設備を計1億3,500万ユーロで受注したと発表しています。出力100万キロワット級の蒸気タービンと発電機を4セットで、中国本土北部に新設予定の原発に組み込まれることになっていると見られています。そして、そのカウンターパートが、東方電気集団であり、同社から受注しているものであります。東方はアルストームの蒸気タービンと発電機を、電力会社である中国広東核電集団(CGNPC)の原発用に供給する予定、また原発は遼寧省の紅沿河に建設するものとなっています。)であり、東方は福建省の2基を受注しているとのことでありました。
  日本の原子力技術については、決して低い水準ではないものの、ウェスティングハウスの新技術には劣るという認識があること、そして何よりも先般の柏崎原発の事故が中国本土でも悪印象としてあり、暫くは日本との原子力技術開発技術の交流といった話は弱くなるのではないかとのコメントがありました。
  また、水力部門については、三峡ダムプロジェクトで、全体26基の発電施設中、北部の14基のうち8基は同社とアルストームが残り6基は東方とGE・シーメンスが、また南部の12基のうち、同社が4基、東方が4基、そしてアルストームが4基ずつを受注しているとのことであり、今回見学をした工場でもこれらのタービンや発電機が製造されていました。
  尚、三峡ダムプロジェクトについては、日本企業が積極的であったにも拘らず日本政府のアプローチは極めて弱く、ドイツ政府やフランス政府の中国本土政府に対するアプローチと比較して圧倒的に政治的工作が弱かったことが、日本企業が受注できなかった背景と見ているとのコメントもありました。
  また火力部門は2006年の生産実績は年間40基、2,000万キロワット相当を生産しているとのこと。
  この分野については、今後、環境対応とセットでのアプローチをしてくる企業が中国本土に於ける受注を拡大する可能性があるとの見方が出ていました。
  こうした点で日本企業群の食い込んでいく余地があるのではないかと考えます。
  生産設備については、シーメンス、イタリアのINNSE、ルーマニアのARMUS(東芝設計)、韓国重工などの外国産機械が使われ、鍛造はチチハル第一重型のものが使用されていました。
  また、走行クレーンは400トン級と全国最大級のクレーンであり、また銀川起重器総廠製造などの国産機械も設備として使われていました。
  中国本土最大級の発電関連整備生産企業であるハルピン電機廠グループと日本企業の今後のビジネスの新たな接点は更に拡大していくものと期待されます。

(5)黒大伊思特軟件有限公司
  当社は朝鮮族で黒龍江大学教授であり、文革後第一期中国政府派遣日本文部省奨学金留学研究生として東大、北大、NTT通研などで博士課程を修了、ポストドクター企業実習の経験を持つ洪海教授が1992年に日本のイースト株式会社の出資を受けて設立した合弁企業であります。
  資本金は100万人民元、出資者は35%に当たる21万米ドルをイースト社が65%部分を現物出資にて大学が出資した企業であり、黒竜江大学のキャンパス内部のインキュベーションに設立された企業であります。
主要業務は、
 *日本向けソフトウェア受託開発
 *システムインテグレーション
 *対日ソフトウェア人材教育
であり、企業理念としては、
 *日中協力拡大
 *産学研プロジェクトの推進
 *知識産業化推進
が挙げられ、また、対日人材育成、システム開発、企業国際化、産学研一体化といったビジネス目標の中で、社会貢献、企業発展、品質向上、創造性の拡大を目指しています。
  また、技術者全員が日本語可能となっており、日本の商習慣をよく理解、納期遵守、低コスト、高品質を同時達成する対日ソフトウェア開発環境を整えるべく、努力されています。
  2005年1月には黒龍江省内で初めてCMM3レベルを獲得、高級人材育成のための専門教育センターも設立しています。
  こうしたことから、日系企業として、当社が希望する人材交流提携をし、日本国内で不足するSEなどを当社から派遣してもらう、或いは採用していくといった戦略を採ることは大いにメリットがあると感じました。
  また、従業員数は45人、メインバンクは中国銀行(黒竜江分行)となっています。
  こうしたことから、既に210人を上回る高級技術ソフトウェア開発技術者を社会に輩出、約60人が海外企業に採用され、今も活躍しています。
そしてまた、 ハルピンが大連などの他地域のソフト部門関連企業との違い、強みは、
 *人材の裾野が広いこと。
 *コストが低いこと。
 *自らの人材育成センターを保有していること。
等となっていると強調しています。
  一方、ビジネスの課題としては、
 *マーケットの拡大を如何に図るか?
 *オンサイド作業対応を如何に図るか?(ビザの獲得問題など)
 *人材市場そのものの混乱はどうなるか?
 *人民元高に伴うコスト高に対する対応を如何に図るか?
といった点が挙げられていました。
  いずれにしても、当社は日本のIT人材不足を解決する一つの具体的パートナーとして考えられるものと思われ、今後の同社との連携を意識した日本との動きを注目していきたいと思います。
  以上が、今回の出張報告であります。
  ご参考になれば、幸いであります。

 

今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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