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2007年10月[Sanada発 現場から]


「経営者に必要とされる資質とは?」

 

私は今、仕事柄、色々な地域、色々な国で様々な仕事に関わる経営者の方々とお話をする機会があります。
また、そうした経営者の方々をサポートされるコンサルタントの方々と意見交換や情報交換をさせて戴く機会もあります。
こうした機会の中、最近特に話題に上る話の一つとしては、
「日本経済を根幹から支えているのは何と言っても中堅、中小企業であり、その中堅、中小企業と大企業が共生しながら共に発展する仕組みが出来ているから、日本経済は底堅い。
  しかし、いわゆる系列関係が崩れ、更にものづくりを支える後継者、技術者の絶対数が不足する中、特に日本の製造業分野では中堅、中小企業の経営をしっかりと推進していくことが難しくなっている。」
というものであり、更にこうした話の延長線上で、
「中堅、中小企業の経営者の資質が今まで以上に問われる時代となっている。」
との見方をされる方が多くなっています。
 そしてまた、
「それでは、日本経済の根幹を支えるものづくり中堅、中小企業の経営者の資質には一体どのようなものが必要なのか?」
という点が、次の話題に上ります。
 ここには、多くの方々の考え方やご意見がありますが、私がこうした経営者の方々やコンサルタントの方々を纏めさせて戴くと以下のようなものになると思います。
 表現の仕方が「真田流」となっていますが、皆様方が根本で感じられている、考えていらっしゃることは次のようなものではないかと考え、今日は以下にこれらを列挙させて戴きたいと思います。
 また、皆様方のご意見を戴ければ幸いで御座います。

[今、日本の中堅、中小企業経営者に求められている資質とは?]

  1. 親分肌の経営者となる必要がある。
    親分となるには、その広い心が求められる。
    世界に共通する「人」としての倫理観に強く、社会を愛し、従業員を愛し、家族を愛する優しくも厳しい心、情を持ち、更には、自らの実力にあった社会貢献をしていこうとする志のある人が、必要であり、これを忘れた経営者は弱肉強食の原始資本主義の世界でしか生きられない。
    但し、「悪銭良貨を駆逐する」の例えにもあるように、ややもすると親分肌の経営者は情に流れ過ぎ、大樹を枯らしてしまうことがあるので、「厳しさ」を忘れてはならない。

  2. 現状認識に甘えを入れてはならない。
    物事を進める際、理念を持ち、ビジョンを立て、そして現状認識を、内部分析と外部分析を経てしっかりと行い、そこから課題を抽出、課題を克服する為の戦略を幾重にもそろえ、その中で優先順位を立て、戦略の実行を図る、そして改めてその成果を見直す現状認識へとフィードバックしていき、必要に応じて新たな戦略を立案するというサイクルが必要となるが、その際の「現状認識」に於いて、
    「自らを見つめ直す」
    ことをしっかりと行わない経営者が意外に多い。
    必要に応じて苦言を呈する外部のプロ・アドバイザーの進言などにも耳を傾けることが必要となる。

  3. 経営者自らが大きな人間となる必要がある。
    世界的に見た場合、日本人に欠けている点として、鳥瞰図的ものの見方(Bird’s View)、複眼的ものの見方(Insect’s View)が不足している、或いは弱いと言われているが、経営者には正に、この鳥瞰図的かつ複眼的なものの見方が必要とされ、そうした見方をする為には、経営者自らが幅広いものの見方が出来る人間と成らなくてはならない。
    よって無駄と思われることであっても多くの機会に触れることが必要となる。
    尚、この際には国際的視点、金融的な視点、マーケティング的な視点といったものを特に蔑ろにしてはならない

  4. 改革、変革を恐れてはならない。
    経営者はややもすると自らの成功に溺れ、それに胡坐をかく傾向があるが、常に発展を目指さなければ、経営は現状維持が出来ないどころか縮小してしまう。
    そこで、常に挑戦者の意識を持ち、厳しい現状認識の中から、更に改善をする必要がある点を意識し、改革、変革に努めなければならない。

  5. 従業員に経営を理解してもらう努力をする。
    古来、会社とは「仲間」の集合体であり、経営者と使用人といった関係を持ってはならない。特に中小企業経営に於いてはこの意識が重要であり、会社としての一体感を持ちながら、Equal Footingの中で経営者と従業員が力を合わせ、喜びも悲しみも共にする体制を作るべきである。よって、例えば情報も最大限、共有化し同じ意識での仕事に励める体制を構築していくことが大切である。

  6. 具体的な作業
    (1)ビジネス環境を認識し、特に逆境を捉えるようなビジネススタンスを持つ。
    (2)問題を先送りしてはならない。
    (3)差別化されたビジネスモデルの構築に常に励む。
    多くの方々から伺っているお話を纏め、経営者に求められる資質を列挙すると以上のようなものになるのではないかと思います。
    そして、最後にもう一つ思うことは、
    「私(真田)にはとても経営者になる資質は無い。」
    ということであり、こうしたことを書くことは簡単であっても実行することは大変難しいということであります。
    そうした意味で、私は日本国内にいらっしゃる多くの経営者の方々を本当に尊敬しています。

[志を以って、これを仕事の活力とすること]
 さて、経営者の皆様方は、自らの信念を以ってビジネスを展開されることが多いと思いますが、私はそうした志、信念を以って生きていくことが大変重要であると考えています。
そして先日、ご縁があり、
「アジアと日本を舞台に仕事をしている日本人であれば、岡倉天心のことをしっかりと知るべきである。」
というご指摘を受けて、岡倉天心の思想を磨く基礎の地となった茨城県・五浦の地を訪問する機会を得ました。
 皆様、ご存知かも知れませんが、
「亜細亜ハ一な里(アジアは一つなり)」
の言葉を残した岡倉天心は福井藩士の家に生まれ、横浜に育って、物心ついた時には日本語よりも英語が得意な少年であったそうで、その後、文部省関連東京美術学校の仕事に就きましたが、トラブルがありその職を追われると、この五浦に横山大観などを引き連れて移住、内外の仕事を続けながら、精神性の高い仕事をこの地で残したと言われています。
 岡倉天心の足跡は、
「アジアの価値観を世界の進歩と発展に役立てたい。
東洋の精神的観念が深く西洋に浸透する時である。」
という天心自身の主張の中にはっきりと見られ、マレーシアのマハティール前首相らアジアの指導者がしばしば唱えている、
「西洋は東洋を見習う時である。」
と言う主張の一つの根幹をなすものでもあると言えるのではないかと思います。
 更に、天心はまた、
「アジアの普遍的な価値観を回復・復興するためにアジア人が力を合わせていく。」
という思想をアジアに広め、こうしたことから、天心をアジア主義思想の父とまで評価する人もいます。
そして、
「西洋近代の弊害(パワーと効率への偏重)を克服する価値観として、仏教をはじめとする宗教的価値観(愛と寛容)が如何に貴重か?」
ということを世界に示そうとし、
「アジアの普遍的な価値観を回復・復興するためにアジア人が力を合わせていく。」
という行動指針に繋がり、これを世の中に説いていったものと思われます。
 残念ながら、岡倉天心の崇高な思想と理想は、後に日本の軍国主義者の欲望の前に歪められ、そして利用されて、
「曲がった形での大東亜共栄圏思想」
へと発展してしまった、またそうした中で、岡倉天心自身も内外から、
「単なる国粋主義者」
に見間違われたこともあると私は聞いていますが、私はこの岡倉天心という人はもっともっと崇高な理念と純粋な精神の下、
「アジア社会の底辺に横たわる愛と寛容の精神をベースとした科学的な根拠に基づく近代化」
を世界が進めていくことこそが、倫理観のある社会を作ることだと主張された人であると考えています。
 弱肉強食の原始資本主義が横行する現状の国際社会は、今、改めて岡倉天心の真の心と崇高なる理念、純粋なる精神を学んで、私たちはビジネス社会を生きていくべきではないかと私は改めて強く感じました。
 楽しい五浦訪問でありました。

 

来月もまた、どうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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