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2008年10月[Sanada発 現場から]


「どうなる、国際金融?」

 

 先日は、名古屋で講演が終了した後、時間調整でスタンド・カフェに入り一服をしておりましたら、隣の年配の男性が、カフェの老夫婦との間で、
「今日はトヨタもストップ安になった。
 日経の株価はまだまだ下落する。
 一日で何兆円という単位で企業価値が減少していく。
 私も早々に証券会社を引退してよかった。」
と話し、カフェの老夫婦は、
「私たちが持っているOO社の株はどうなるだろう?
  いつが売り時か?」
といった会話を真剣にしているのに接しました。
 確かに昨今の国際金融市場を見ていると、
「一体、どうなっているのか?」
と聞きたくなるような混乱状態にあると言えましょう。
 既に国際金融市場は、一つのスタンダードに基づき運営されるようになっており、また各地域の金融市場それぞれが深い関連を持つようになっており、
「たとえOO国の経済ファンダメンタルズは良くても、国際金融市場全体の動向に左右される。」
といった状況にあり、だからこそ、ここでは冷静に投資先のファンダメンタルズをしっかりとチェックしながら、
「大型台風の過ぎ去るのを待つ姿勢」
も必要となることがあるのでないでしょうか。
 また、現状の国際金融市場は一種のパニック状態にあり、そうしたパニック状況の中で人が事を急いて判断することは、その判断を誤るという、大いにリスクのあることであるとも考えています。
 しかし、私の見るところ、上述したような点よりももっと根源的なポイントとして、今回の混乱は、少なくとも、米国大統領選挙の決着がつくまで解消されないと考えています。
 即ち、私は米国大統領選挙により、

  1. マケイン氏が大統領となった場合には、一旦、国際金融業界の再編を推進した上で(因みに、資源、エネルギー、食糧といった分野での業界再編が推進される。)、金融界の再建策を具体的に示し、落ち着きを取り戻させる。そして来年半ば頃までには株式市場への資金還流を促し、アジア地域などではこれに伴って不動産市場も回復、来年後半には世界経済はかなりの落ち着きを見せる。
  2. 一方、オバマ氏が大統領となり、国際金融市場の安定化を求める政策姿勢を示せば、来年いっぱいは市場の混乱が続く可能性があるものの再来年からは回復していく。
  3. また、オバマ氏が大統領となり、これまでの共和党の政策方針に全く対峙するような厳しい金融政策を採ることとなると、国際金融市場の三番底もあり得る。
と見方をしています。(いずれにしても、「仮定」が多くまだまだ不安定要因が存在していると見ておくべきであると思いますがーーー。)
 そして、国際金融市場の混乱、各国の政策協調だけではなかなか払拭されず、米国の大統領選挙の結果を見るまでは、一旦、塩漬けとし、Watch and Seeを続けていく必要があるのではないかと私は考えています。
 また、不透明な市場の中であぶれだした資金は一旦古典的な投機、即ち、為替への投機へと流れているものと見られ、そうした中で、三極通貨の中で相対的には良い、しかし、ファンダメンタルズは決してよくない円に対する資金流入が見られ、米ドル安、ユーロ安、円高といった状況が今後も暫く見られるのではないかと私は見ています。

 ところで、米国のブッシュ政権と国際金融筋は、国際金融がここまで大きな混乱に陥るとは考えていなかったのではないかと思われます。
 即ち、私は共和党と国際金融筋は、民主党の最終候補はヒラリー・クリントン氏となり、この結果、民主党、共和党いずれが政権を奪取しても、既存の米国のシステムや、これまで米国が進めてきていた世界システムの構築体制には大きな変化は生じない、よって米国は世界の中で中心的な役割を強化、維持していくと考えていたように思います。
 そして、こうしたことからか、例えば本年3月13日、暴落の危機が囁かれていた米ドルが急落し、対円でも1米ドル=100円を切り、それから暫くの間、外国為替相場市場は、文字通り、
「方向感を失う。」
といった動きとなり、相場が乱高下しましたが、その際にもブッシュ政権にはまだ余裕があったように思います。
 米国国内では従来、米国が、
「世界の“もの”と“サービス”の価値を図る世界的なスタンダードとしての米ドル」
を発行していることによって、国際社会での主導的な地位を維持し易いポジションにあり、そうした意味で基軸通貨・米ドルは米国にとっては軍事製品などと共に重要な戦略的意味を持つものであり、これが大きく崩れなければ、世界の中心的存在を維持できると認識されていると私は見ています。
 そうした視点から、米国国内では、最近、
「強い米ドルが、米国の利益」
「米ドルは米国経済の総合力で見たファンダメンタルズを反映する。」
といった言葉が出てきている、そして、それは単に米ドル高を意味しているのとは異なると私は理解しています。
 ところが、ブッシュ大統領はこの混乱の3月の時期に、ニューヨーク経済クラブで演説当時、外国為替市場はもとより、世界は、ブッシュ大統領が、
「米ドル危機に関して、強い米ドルを望んでいる。」
 と明言してくれれば、それで資金が米国に回帰し、インフレ・リスクが緩和され、米国政府によるサブ・プライム・ローン問題に対する救済や支援の計画も不要になるはずと考えていたにも拘わらず、こうした発言が無いまま、即ち、米国政府による米ドル支援措置が明確にされないまま、FRBが利下げに踏み切り、資金は逆に米国から洪水のように流出する、しかし、米国の外では、資金余剰に拍車がかかり、行き場を失った資金は、原油や金をはじめとする原材料などの市場に更に流入、これら価格は高騰し、また、一部政府系ファンドは一部の地域で個別不動産を買い漁るという、とんでもない事態を生み、景気減速のリスクが囁かれる中、インフレが進展するという事態を生み出してしまったのではないかと私は見ています。
 こうしたことを逆説的に考えると、ブッシュ大統領、否、新しい米国政府がもっともっと強い米ドルを望むことを、ここで明確にすれば、
「市場では米ドルは再び急騰する可能性がある。」
と私は考えています。
 そして、そうなると、米国株式も債券も魅力的な価格をつけて、復活をしていくとも考えられます。
 米国金融商品は、米ドル信認低下不安の脅威が続く限り、当然に債券利回りが高く、更に世界的な信用収縮は続きますが、逆に強いドルの見通しが立てば、そうした状況は逆転すると私は考えており、また、わが国・日本の通貨・円については、
「ファンダメンタルズに特筆すべき点が見えない。」
と日本経済が評価されており、この結果、日本政府が発行する日本円は、
「相対的、中期的に見ると、むしろ今とは反対に、弱含みに推移するのではないか。」
との一抹の不安を持ちながら、私は相場動向の今後を睨んでいます。
 いずれにしても、
「米国政府が、強い米ドル政策への転換は国家安全保障上でも不可欠である、原油価格も米ドルが強くなれば安定するベネズエラ、イラン、ロシアなどの反米諸国への富みの移転を減速させる、強い米ドルは、外国を上回る速度で米国の富を増やし、米国に再び力をもたらす。」
といった考え方を持っているであろうと見られる米国国内の政治家やエコノミストたちの発言や行動を、今後、注目したいと思います。
 そしてまた、何よりも、こうした延長線上で、この11月の米国大統領選挙を見つめてみたいと思います。

 但し、短期的に見ると、世界の主要金融機関の資金繰りは大きく悪化、米国系金融機関は世界各国での現地通貨の資金調達に苦しみ、世界各国の金融機関は米ドル資金の調達に苦しみ、金融機関の倒産も懸念されており、この結果、金融梗塞状況が世界的に拡散しつつあると思われ、資金繰り上、体力の無い企業も淘汰されてしまう危険性も出てきています。
  今回の金融市場の混乱は、文字通り、
「100年に一度の出来事」
であると言われており、当面は、実体経済を見ていく上からも、注意を要する状態となっている点は付記しておきたいと思います。
 
 以上、ご参考になれば幸いです。

 

 来月号もどうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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