今年最後のテーマには日本経済、国際経済の現状と今後の見通しが相応しいと考えましたが、今回は経済情勢の悪化が見られる韓国について、新聞などで伝えられる角度とは異なる視点からのコメントをして見ることとしました。
ご了承ください。
さて、先ず韓国経済の現状についてですが、韓国に対する外資の事実上の懸念が見られる中、外国人による株売りが続き、韓国の純対外債権が8年ぶりにマイナスに転じ、純債務国となったと報じられています。
これは韓国が持つ海外の資産よりも外国に返済すべき借金のほうが多いということを意味し、2000年1〜3月期以来のこととなっています。
即ち、中央銀行である韓国銀行が発表した暫定値によると、9月末現在で韓国はマイナス251億米ドルの債務超過となったのであります。
純対外債権がマイナスに転じた最も大きな原因について、韓国銀行は、
「外国人による株売りである。」との見方を示唆、
しかし、「統計上の純対外債権がマイナスに転じたからといって、直ちに深刻な問題が起こるわけではない。対外債務の中には船舶輸出前受金が550億米ドル、為替ヘッジ用の海外借入金が496億米ドルあり、これら償還の負担が小さい1,112億米ドルを差し引けば、韓国の純対外債権は861億米ドルほどのプラスになる。」とコメント、内外で高まる危機感の払拭に努めています。
暫くは韓国に対する外資のこうした「目」を注視していく必要がありましょう。
一方、朝鮮半島情勢に目を向けると「南北融和」に向けた事業の一つである「開城工業団地」の運営に関して、現行の韓国の対北政策と大きく変化する国際情勢を背景に、北朝鮮が強硬姿勢を示唆し始めており、韓国側では、「開城工業団地は今後、閉鎖の危機を迎えるのではないか?」との不安感を示し始めています。
こうした状況についてもフォローしていく必要が出てきていると思います。
さて、こうした状況を見せる韓国では、今年、大統領が変わり、
「経済に強い大統領の就任」で韓国経済の拡大と富の偏在の調整が進むのではないかとの期待も出、また実際に造船業界などの好調もあり、輸出部門は比較的好調を維持してきましたが、実際には国際経済環境の急激、大幅な悪化を主たる背景にして、また李大統領の政策展開の中のひとつのコアであった、「先ずは核となると財閥企業のビジネス拡大」
を梃子にした景気拡大策も財閥企業の所有と経営問題なども複雑に絡み、今ひとつ効果を上げぬうち、文字通り、「切り札のないまま」具体的な景気拡大策を示せず、今年は予想以上に相当厳しい経済政策運営を強いられてきたと見ておきたいと思います。
そして、また、ウォンの下落といった国際金融問題以外で見ても、例えば、
「対日貿易収支の悪化」や、「中国本土やインドをはじめとする開発途上国の追い上げ」といった課題も顕在化、韓国経済自体が抱えてきた根源的な課題を解決する策にも手をつけきれずに、ここまできたと言え、
「今後、如何にして国際経済社会で韓国経済の比較優位をどのように示していくのか?」
「より高度でコストが安い経済運営が出来るシステムを作れるのか?」
「その際には資源やエネルギーを、量と価格面で安定確保できるのか?」
といった難しい課題の解決に向けて更に力を注いでいかなければならない状態となっており、その経済情勢は短期的に見るだけでなく、中長期的に見ても課題山積といえるのではないかと思います。
また、安くて質の高い労働力を一定量もつ北朝鮮を韓国の資本と技術でコラボレーションさせ、その延長線上で、
「新型大朝鮮国」の建設を目指すといった戦略も、北朝鮮自身にはなかなか受け入れられず、更に中国本土の思惑と複雑に絡み合い、今ひとつ、進展していないように思います。
そして、中国本土、北朝鮮との経済外交関係を意識しつつ、資源・エネルギーを持つ大国・ロシアとの関係を拡大、韓国経済に不足している、
「資源・エネルギーの安定確保先」
としてのロシアとの連携も、商品技術の流入を強く希望しているロシア側の思惑との若干のずれなどもあるように思われます。
そして、最近の一つの流れとしては、新しいビジネスの場となっている、
「中近東、アフリカ市場」に於いては、中国本土や日本、インドなどその他諸国との激しい競争の中で何処まで厚いマージンのある仕事を韓国勢が出来ているか疑問の部分もあります。
こうした中、韓国のビジネス環境を概観すると、
- インフラと不動産、基本的には問題なし。但し、不動産投機の抑制は必要。
- 外国人投資受け入れ姿勢については、基本的にはEqual Footingで問題なし。そして、高度技術随伴事業、外国人投資地域入居外資企業当に対する優遇制度を存在させ、高度技術の流入には高い関心を示している。
- 日本の手続きと大きな差はない会社の設立と運営システムがあり、日本企業の対韓ビジネスは以前よりもやりやすい環境が出来つつある。
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徴税は以下の基本税体系の下、円滑に運営されている。但し、外資にとっては、移転価格税については、要注意。
租税 |
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国税 |
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内国税 |
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直接税:所得税、法人税、資産再評価税等々 |
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間接税:付加価値税、特別消費税、交通税等々 |
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関税 |
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特別目的税:教育税、農漁村特別税 |
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地方税 |
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道税(=県税) |
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普通税:所得税、登録税等 |
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市・郡税 |
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普通税:所得税、財産税、自動車税等々 |
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目的税:都市計画税、事業所得税等々 |
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個人所得税 |
- 労働事情には安定化が見られるが日系企業にはまだ個別の問題が存在している。
賃金・給与制度 |
労働条件 |
労使関係 |
社会保障 |
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雇用保険、産業災害補償保険、国民健康保険、国民年金、日韓社会保障協定(派遣労働者等の二重保険料納付回避を目的) |
労使紛争 |
- 貿易為替管理制度については、ウォンの国際化が遅れる中、為替リスクがまだまだ重くのしかかっている。
- 金融制度については金融システムの脆弱性を残しており、上記の為替問題やウォン資金の調達・運用問題などに課題が残っている。
点が良きにつけ、悪しきにつけ、気にかかるところであります。
今後も韓国経済の行方を注目していきたいと思います。
皆様方は如何ご覧になられますか?
以上、ご参考になれば幸いです。
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