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2009年6月[Sanada発 現場から]


「景気回復期待と将来の攻めどころ」

 

[日本経済の見通し]
 日本政府は6月の月例経済報告の中で、景気の基調判断を2カ月連続で上方修正するという検討に入ったと伝えられています。
 即ち、5月は、
「悪化のテンポが緩やかになっている。」
とのコメントに留めていましたが、6月は、
「悪化」
の表現を7カ月ぶりに削除する方向で検討されているようです。
 では、日本経済は本当に景気の底を打ったのでしょうか?
 4月基準の日本の主要経済指標を見ると、
*消費者物価指数 :前年同月対比マイナス0.1%  低下トレンド
*消費支出 :同マイナス1.3% 減少トレンド
*完全失業率 :5.0%  増加トレンド
*有効求人倍率 :0.46倍 求人減少トレンド
*鉱工業生産 :5.2%上昇 若干の回復トレンド

といった数字が見られています。
 一見すると、景気は回復しつつあるようにも見えますが、雇用に対する懸念が依然として強く、雇用不安定が個人の収入減少を生み、これが更に個人消費にも悪影響を与える、よって、在庫調整が一巡し、生産に回復が見られる中にあっても、
「消費低迷は生産の本格的な拡大には繋がらず、景気回復はまだではないか。」
との声が、一方で見られています。
 また年金問題を中心とする「長期的な不安」が政治的に全く、払拭されておらず、日本の国内消費が大きく改善されるような雰囲気は今のところ感じられないとの声も少なくありません。
 更に、日本では、物価が低下傾向にあることから、
「デフレが再燃しないか?」
との見方も一部では出ています。
 一方、最近の主要金融指標を見ていると、

日経平均株価 :9,700円前後で回復傾向か?!
円相場 :1米ドル95円前後で一旦安定か?!
円金利 :長期  1.5%前後で安定か?!
    短期  0.1%前後で安定か?!
金地金 :3,100円前後で上昇トレンドか?!
原油価格 :60米ドル超えで上昇トレンドか?!

といった数字が見られており、やはり景気回復に期待が見られているものの、まだまだ一進一退、不安要因は残っているとの声があります。
 こうしたことから、このような各種指標による「定量分析」を軸にして、体感の景気動向といった「定性分析」を加えつつ、引き続き、細かい分析が必要であると思います。
 尚、こうした状況下、
*米景気に関する懸念の拡大
*米財政赤字への懸念再拡大
*金融不安を背景とする米ドル買い需要の減少
などを背景に、国際金融市場では、米ドル安、円高がいま少し進むのではないかとの見方も出ており、これが日本の輸出産業、ひいては日本の景気全体に如何なる影響を及ぼすかについては、改めて、注意を払う必要があると考えています。

 

[外需部門に対する期待、そしてルーマニアは?!]
 さて、日本経済がはっきりせぬ中、輸出を中心とする外需部門に期待が持てれば、日本企業もそれなりの対応策を立てることが出来ますが、その外需部門も世界的な景気低迷の中で中国本土などの一部を除くと総じて元気がありません。
 こうした状況下、国際情勢を分析する際には、一般的に、現在では、
「四極経済」
即ち、日米欧と中国本土の経済状況を先ず注目しなさいとよく言われています。
 そこで、今日はその中の欧州について、少しだけ、コメントをしてみたいと思います。
 欧州については、たくさんの国家が混在する欧州連合=Europe Union(EU)という、一つの国家集合体を分析することが必要となり、一国経済となっている、米国や中国本土、そしてわが国・日本の経済状況を分析するのとはまた、ちょっと違った視点からの分析を必要とします。
 そしてまた、そうした分析の基礎となるのは、
「集合体としての欧州連合」
と、その集合体に所属しているそれぞれの、
「加盟国家」
の分析の合わせ業によって、総合分析をしていく必要が出てきます。
 従って、欧州経済を見る場合、それぞれの加盟国に対しては、様々な関心と情報収集が必要となり、その欧州経済全体を見る際には、やはり、
「ドイツやフランス、そしてイタリア」
といった既存の経済大国と、共通通貨・ユーロには加盟していないものの、やはり既存の世界経済に様々な角度から影響を与えている
「イギリス」
などの分析が大変重要であることは言うまでもありません。
 最近では英国経済の悪化が取り沙汰されていますが、ここにきてやっと、英国FT紙が、
「20人のエコノミスト中、11人が景気後退は、ほぼ今月6月を持って終わると判断。
 残る9人にしても、ボトムアウトは間近との見方を示した。
 加えて、年内はゼロ%成長が続くとの英政府見通しについて、大半が悲観的に過ぎると考えていること、そして、支持率急落と閣僚の相次ぐ離反、更に、地方選、欧州議会選では労働党が急後退を余儀なくされるなど、窮地のブラウン首相に対しては、年後半に景気回復が実感されれば、支持率の回復に繋がる。」
との見方を示し、欧州全体にも回復の期待が見られつつあると思います。
 こうした中、一方で、市場ではまた、
「発展の潜在力を示す開発途上国家」
に対する関心も高まってきており、そうした視点からのその他の国家に対する分析の必要性が最近、更に高まってきていると思います。
 そこで、今日、ここで少しだけ注目をしておきたい国家が、
「ルーマニア」
であります。
 ルーマニアはご高承の通り、旧東欧圏国家のひとつであり、2007年1月に、やっと、念願のEU加盟を果たした国であります。
 社会主義的体制から市場経済化を図るに際して、その根幹を成すスタンダードの転換、即ち、社会制度を規定していく法律の改正を、当時はまだ加盟を希望していた欧州委員会の首脳の意見なども相当程度参考にしながら実施していったと言われ、視点によって、
「ルーマニアはそれだけEU加盟を切望していた。」
と肯定的に評価も出来る一方、
「ルーマニアの社会、経済状況は、それだけ疲弊していた。」
との否定的な評価を与えることも出来るかと思います。
 そして現在も欧州委員会による厳しいモニタリングを受けながら、社会、経済の運営を行っており、そうした意味では、良いか悪いかは別にして、EUへの同化が早いとも見られています。
 そのルーマニアは、2007年には6.0%の経済成長率を上げ、一人当たりの国内総生産は約6,000米ドルとなり、拡大基調にあります。(2008年の詳細データはまだ入手できておらず、古いデータで恐縮です。)
 こうした状況より、昨年のリーマン・ショック以降、鈍化した世界経済の余波を受けているとはいえ、国内の消費意欲は比較的強く、内需が経済成長の片輪を順調に回転させていたと言えます。
 また、ものづくり生産拠点としての期待から、外資が積極的にルーマニアへの参入を目指し、2006年、2007年は1,114億米ドル、673臆米ドルの直接投資を受け入れたと報告されており、こうした外資がルーマニア経済を牽引していることも間違いありません。
 また、まだまだ輸入依存が大きいことから、貿易収支に赤字が見られるものの、輸出は2007年には294億ユーロにまで拡大、増加トレンドにあります。
 こうして国民の生活水準も上がり、社会も安定化、それを受けて更に内需と外需が拡大するという順回転のサイクルにはあり、ルーマニアは今、少しずつ注目される国家へとその相対的地位を高めていると見ておきたいと思います。
 今後は、GDP対比財政赤字の拡大を如何に抑制し財政バランスを改善していくか?2007年末基準で367億ユーロにも上る対外債務の削減に如何に努めるか?産業構造の近代化を更に、如何なる方向性を以って推進させるか?といった点をはじめとして様々な課題がありましょうが、このルーマニア、間違いなく面白い国になっていくものと思います。
 これからも時々、この国もフォローをしていきたいと思います。
 皆様方は如何ご覧になられますか?


 来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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