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2009年8月[Sanada発 現場から]


「景気回復の見通しと企業経営」

 

[景気概観]
  日本政府・内閣府は、5月の景気動向指数(2005年=100)の改定値を発表しましたが、これによると、景気の現状を示す一致指数が87.1となり、前月対比1.1ポイント上昇したとしています。
 またこの数値は、速報値対比でも0.2ポイントの上方修正となり、基調判断も速報が発表された際の「悪化を示している。」から、「下げ止まりを示している」と上方修正されており、これが実態との見方なのでありましょう。
 しかし一方で、こうした発表は、結果としては、総選挙に向けて、政府・与党にはサポーティブな見方が示されたとも言えるとの声もあります。
 内閣府は、
「指標の計算に加わった5月の製造業稼働率指数が全体を押し上げた。」
とコメント、また、判断が上方修正されるのは2カ月連続であり、鉱工業生産指数や製造業の中小企業売上高は速報段階に比べて僅かに下方修正となったものの、製造業の稼働率指数が前月対比5.4ポイントと伸びたことが上方修正の背景としています。
 こうした政府コメントは、私が各地で経営者の方々や消費者の方々とお話している実態とはやや異なりますが、
「景気は気から。」
とも申しますし、慎重な精査をした中で、こうした見方が出ることは良いことかもしれません。
 一方、私が今現在、注目していることはまた、
「米国政府が、米ドルの基軸通貨の信認を取り戻すことに必死となり、米国中心の世界経済システムの維持に本格的に動き始めている。」
ということにあり、更に、中国本土も米中対話の中で、
「米国が責任ある経済政策を取り、ドル相場の基本的な安定を保ち、中国の在米資産の安全を守るよう明確に提起する。」
ように提言、こうした「基軸通貨・米ドル」を維持する動きが本格化すれば、一気に世界経済は、資金が循環をし始め、好転していく可能性を秘めていると私は見ています。
 更にまた、米国の主要金融機関であるシティグループとバンク・オブ・アメリカは、それぞれ、
「4〜6月決算は共に最終損益が2四半期連続の黒字となった。
シティは証券子会社スミスバーニーの売却益を計上、バンカメは米証券大手メリルリンチを買収した効果が出たものである。」
と発表しています。
 もちろん、不良債権の増加によって貸倒引当金の計上が増加するなど、その収益環境は決して芳しくないとの見方もあり、また金融機関の友人たちの多くは、
「米国経済もまだまだ厳しく、欧州経済も懸念材料が潜んでいる。」
とコメントしており、私も警戒をして見ていますが、
「基軸通貨が戻り、信用創造を司る担い手である金融機関が元気になれば、」
私は世界経済の基軸である米国に信用が戻り、かつ資金循環が生まれる、これによって、世界に拡散した「不景気の根」を一旦、絶つことが出来ると見ています。
 こうした状況下、先般開催された米中戦略対話を見ると、世界のシステムそのものが変わる可能性も出てきたとも感じられる側面も出て参りました。
 即ち、米国・ワシントンで、安全保障や政治分野も含めた初の「米中戦略経済対話」が開催されたが、覇権主義に代わり、協調主義を意識、対話外交を掲げるオバマ政権は、従来の政治力、外交力、軍事力に加えて経済力を急激に増して、世界に於いて存在感を高めている中国本土と貿易や投資などの分野での話し合いを行いつつ、基軸通貨問題についても議論しました。
 米中首脳は本年4月、ブッシュ前政権が2005年以降始めた経済分野での戦略対話を政治、安保分野まで広げることで合意、オバマ大統領は就任前から、東アジアで「新たな対話メカニズム」を多角的に構築する構想を掲げてきており、年1回の定期開催となる米中対話はその中核となると見られ、「日米対話」は、表面上は、この米中対話に比較すると、軽視されているとも見られています。
 また、今回の会議では、米側からはクリントン国務長官、ガイトナー財務長官、中国本土側からは王岐山副首相(金融担当)、戴秉国国務委員(外交担当)が出席し、それぞれ共同議長を務め、また冒頭、オバマ大統領が米中協力に関する演説を行いました。
 更にまた、今回の安全保障分野での協議では、北朝鮮、アフガニスタン、パキスタンが取り上げられ、北朝鮮問題では、タイ南部プーケットで行われたASEAN(東南アジア諸国連合)地域フォーラム(ARF)の討議結果を踏まえ、態度硬化を重ねる北朝鮮を対話の場に引き戻すための方策などを検討されました。
 そして、対テロ、温室効果ガス抑制など地球規模の課題も議論され、中国本土側が「内政問題」と主張する人権やチベット問題、新疆ウイグル自治区での暴力的な状況についても、米側の見解が伝えられました。
 経済分野では、米国市場の消費水準が今後も経済危機前の水準を下回るとの見通しがあることから、米国はかつて日本に対してしたように、中国本土に対して対米輸出依存から内需主導型の成長モデルに転換するよう、要請したようであります。
 更に、人民元の為替問題を切り口に、「基軸通貨問題」も議論され、
「基軸通貨・米ドルの復権」
については、ある程度の米中共通認識が見られたと思われます。
 今後は、米国が唯一の超大国の地位を維持するのか?世界の協調体制が更に進展するのか?或いは米中両国のいわゆるG2体制となるのか?などを、こうした会議結果を踏まえて、しっかりと見極めていく必要があると思います。
 いずれにしても、こうした国際、国内情勢の動きを睨みつつ、真の景気回復を大いに期待したいものであります。

[企業経営の逞しさ]
 さて、私は常々、
「企業経営は景気に左右されずに生き残るように頑張るべきだ。」
とコメントをさせて戴いておりますが、これに対して、私がいつもご指導を戴いている三重の企業経営者の方から、次のような力強いご返事を戴きました。
 こうした企業、こうした経営者がいらっしゃるからこそ、日本は経済大国なのだと改めて感じた次第です。

「何と言っても、企業存続⇒成長は、他力ではならず弊社でも、体力のあった昨年から経済の不穏な臭いを感知していましたので、新製品を仕込んでいました。
 今年になってからは、雇用調整助成金制度も活用してより多くの社員がその製造に携わることが出来るように教育訓練してきました。
 また、これまで行いたいと思っても時間がとれずできなかった若手リーダーの育成に尽力しています。
 社内で10名の若手リーダーを選抜、週1回、私が直接講座を持ち財務、工場経営、プレゼンテーション、マーケティングについて指導しています。
 特に、財務とプレゼンテーションに力を入れているのですが全員のプレゼン能力の向上が顕著で、私自身驚いています。
 工場経営に対する意識も高まってきました。
 工場ラインの社員には、技能士試験を目指して、工場長が座学と実学を、品質責任者が同様に品質面の教育訓練を担当してくれています。
 中堅〜大企業では、こうした教育がキャリア形成のためのプログラムとして組み込まれていますが、中小企業では教育といえばOJTです。
 このようなことが弊社で可能とは思ってもいませんでした。

 新製品もそろそろ完成です。
 このどんよりした【気】に染まらず、少しでもブレークスルーできるようがんばります。」

 本当に、素晴らしいお話ですよね。

 

 来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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