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2009年10月[Sanada発 現場から]


「世界経済の主役交代の可能性と基軸通貨」

 

 OECDは、状態が悪いと見られる本年度の世界経済について、
「日米欧など先進国を軸とする加盟30カ国の2009年の実質成長率はマイナス4.3%となる。
 各国は財政・金融両面で刺激策を講じるが、生産や消費の急減を補いきれず、経済は来年末までは潜在成長力を下回る動きが続く。」
と予測、本年半ばには、
「今年の成長予測は日本がマイナス6.6%、米国がマイナス4.0%、ユーロ圏がマイナス4.1%といずれもマイナスとなる。
 そして、新興国を含む世界全体については本年がマイナス2.7%、2010年はやや回復しプラス1.2%になる。」
とコメントしました。
 最近は、こうした予測よりは若干は改善されるであろうとの見方も出てきていますが、OECDは不況の長期化について、経営体力を落とした金融機関による融資抑制などで実体経済に悪影響が広がる恐れがあり、雇用では主要7カ国(G7)の失業者数は来年末までに3,600万人に急増すると見ています。
 一方、そうした中、新興国の経済は、先進国に比較すると、
「相対的には高い成長が期待される。」
と見ているようです。
 それでは、
「新興経済国」
とはどのような地域・国家が挙げられるのでしょうか?
 現在、言われている主要な新興経済国とは、それぞれの定義の中で一部、国家が重なりますが、
(1)BRICs:
ブラジル、ロシア、インド、中国本土
(2)VISTA:
ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン
(3)NEXT11:
イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、ベトナム、メキシコ
などと言われています。
 昨年、世界を震撼させた、経済不況の波がこれら諸国にも襲い掛かり、各国共に、苦戦を強いられていますが、しかし、
「相対的には経済は堅調である。」
と言え、その背景には、
「ある程度の経済インフラが整う中でも、真の消費意欲がある。」
ということが大きな発展の源にあるように思います。
 そして、更に総じて人口多い国であり、これらを背景に、2050年まで経済規模は拡大していくものと期待され、経済動向が変化している中、修正が必要な見通しかもしれませんが、例えば、中国本土は約48.6兆米ドルと世界一の経済規模を抱える、インドは約27.2兆米ドルと米国に続いて3位、ブラジルも約8.0兆米ドルと日本とほぼ同様の5位、メキシコが約7.8兆米ドルの6位、ロシアは6.2兆米ドルの7位になるといった見通しも示されています。
 また、これら新興経済国は年率の経済成長率も相対的に高く、世界経済の中での影響力も着実に増していくものと思われます。
 こうしたことがまた、世界経済のリーダーをG7ではなく、今後はG20へ移行させる動きにもなっていると見られ、注目されましょう。
 いずれにしても、果たして今後、これら新興経済国がどのように推移するのかをチェック、またそれが、
「基軸通貨・米ドル」
を軸として推移していくのか否か、チェックをしつつ、世界経済の主役が本当に交代するのか?交代するとすれば、いつ、どの国に、どのような形で交代していくのか、などをじっくりと見極めていく必要があると思います。
そして、私たちは、その主役交代の行方を睨みつつ、これからのビジネスの基軸をどこに置きながら展開していくのが好ましいのかを考えていく必要があるのではないでしょうか。

 ところで、こうした中、最近、少し気になる報道に私は接しました。
 即ち、それは英国のインディペンデント紙が報道をしたものなのですが、この報道によると、
「アラブ湾岸諸国が原油取引での米ドル利用を停止し、人民元などで構成する通貨バスケット建て取引に移行する案をロシア・中国本土・日本・フランスと極秘に協議している。」
となっています。
 同紙がアラブ諸国や中国本土の匿名の銀行筋の情報として伝えたところによると、米ドルの代わりに使う通貨バスケットは、円・人民元・ユーロ・金のほか、サウジアラビア、アブダビ、クウェート、カタールなど湾岸協力会議(GCC)関係国が計画している統一通貨などで構成されるとなっており、米ドルの「立ち位置」が変わる可能性が出てきているからで、私は少し気に掛かると申し上げました。
 しかし、一方でこの報道の周辺では、
「原油の取引通貨として米ドルを使うのをやめること自体は、イランがすでに実行していることでもあり、それほど困難ではないかもしれない。
 それよりも、難しいことは、原油価格の設定を米ドル建てから変えることである。
 現在はニューヨークからデュバイ、シンガポールまで、原油のベンチマーク価格は米ドル建てとなっており、これを変えるには大変な努力が必要である。
 つまり、原油取引での米ドル利用停止が仮に実行された場合には、輸出国は外貨準備の多様化が容易になり、輸入国は代金支払いのために米ドルを取得する必要性がなくなるという点では外為市場にとって大きなニュースだろうが、原油取引自体の革命につながるとは考えにくい。
 米ドル建ての原油取引停止は新しい案ではなく、米ドルの下落に伴いここ10年、度々浮上しているが、これまでのところ実現したことはない。
 原油の米ドル以外での売買シェアが上昇したとしても、こうした売買の価格を決定する指標が米ドル建てという現実を変えることにはならない。」
としています。
 即ち、基軸通貨・米ドルは、その勢力を落としつつも、
「世界のものやサービスを計る価値判断基準」
としての地位を維持し続けるとの見方とも受け取れるわけであります。
 私は、世界経済の秩序と早期の景気回復のためには、とにかく、一旦は米ドル基軸を取り戻し、その上で、中長期的に「基軸通貨」を如何にするのか議論がなされると見ています。
 これからも、こうした観点から米ドル基軸の行方というものを鳥瞰図的、複眼的に見て分析、更にそのシナリオの延長線上で世界経済の回復の動きを判断、そして世界経済のシステム変換にまで発展していくのか否かを判断していくべきではないかと考えています。

 皆様方は如何、お考えになられますか?

 

 来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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