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2009年11月[Sanada発 現場から]


「日本、中国本土経済に対する評価は?」

 

[好調を続ける中国本土経済、その背景と課題は?]
 世界的な景気低迷に改善が見られるとの見方がある一方で、欧米の金融システムはまだまだ回復が遅れ、これらを背景とした「景気の二番底」はあるとの見方は、国際金融市場にも厳然として存在しています。
 しかし、こうした中にあっても、少なくとも、相対的には、
「中国本土経済はまずまずの実績を上げている。」
と評価されています。
 こうした中、先般、中国本土政府系Think-Tankの一つである社会科学院は、「中国経済分析と予測2009年秋季報告」を発表しています。
 これによると、
「2009年の中国本土の経済成長率は8.3%前後、2010年の成長率は、国内で広範囲の深刻な自然災害や重大問題が発生しなければ、9%前後となる。」
との予想が示され、やはり中国本土経済は堅調に推移していると見ておいても、良いのではないかと思います。
 そして、同報告が示す、各経済指標等の概要は以下の通りとなっています。
(1)輸出入
 2009年の輸入は−21.0%、輸出は−19.5%であり、貿易黒字は2,500億米ドル前後の黒字となる。
 2010年の貿易情勢は好転し、輸出入の伸びは2008年の水準に回復する。
 輸入の伸びは18.7%、輸出の伸びは17.3%となる。
(2)消費
 2009年の社会消費品小売額は1兆2,500億人民元であり、実質の伸びは16.3%となっている。
 2010年は1兆4,800億人民元であり、実質の伸びは16.4%となる。
(3)投資
 2009年の全社会固定資産投資は22兆7,400億人民元前後で、名目の伸びは32%となり、2008年を6.5ポイント上回っている。
 ここ16年での最高の伸び率となり、価格要因を除くと、実質の伸びは34.4%であり、2008年の実質の伸びの2.26倍に達する。
 2010年の積極的財政政策と適度に緩和した金融政策が引き続き実行されるならば、固定資産投資も引き続きかなり高い伸びを維持し、名目の伸びは34.4%に達する。
(4)物価
 2009年の消費者物価は−0.5%となる。
 2010年はプラスに転ずるが、3%前後であり、明白なインフレは発生しない。
といったデータと見方が示されています。
 しかし一方、中国人民大学経済学院の劉元春副院長は、
「今年の消費の伸びは、かなりの程度短期的消費刺激策によって決定されている。
 しかし、来年、この政策が続くとは言い難い。
 将来の経済成長の程度は、主として輸出入の回復水準によって決まる。」
とすると厳しい見方を示しています。
 これまで、中国本土経済は内需、外需両輪が回り、二桁台の経済成長率を達成するなど、好調でありましたが、それでもやはり、内需、外需を比較すると、輸出と投資にやや偏って依存してきていたと言え、今後、これを、最終消費を中心とした内需による成長に転換することができるかが、今後の一つの課題であるとも言えます。
 経済実績のみならず、今後、どのような経済構造の変化が見られるのか、中国本土経済に関しては、様々な角度から分析していく必要があると思います。

[日本経済に対する厳しい見方]
 アジアの国であり、隣国でもある中国本土が好調さを示す中、日本に対する国際金融市場の目には、まだまだ厳しいものがあります。
 日本に対しては現在、2009年度の新規国債発行額が50兆円を超すとの見方が示されています。
 これは日本の国家予算一般会計の金額が90兆円弱であることを考えると大きな金額です。
 そしてこれにより、国債の利払い額は当然に増加する可能性が強まってもいます。
 また、国の税収に対する利払い費の比率は20%を超え、政策に使える税収は一段と減ることも意味します。
 利払い費は償還分も合わせた国債費全体で20兆円を超え、日本政府は利払い費の増加リスクを抱えながらの、財政運営をしなくてはなりません。
 鳩山新政権は、補正予算の見直しで約3兆円を削減、その上で、
「国民生活に密着したものに振り替える。」
として借金返済に充てない方針を示していますが、この「国の借金」拡大の問題は将来に禍根を残す可能性も当然にあります。
 そしてまた、視点は異なりますが、海外の投資家筋には、
「日本の鳩山政権の今の動きは、財政再建の動きと映る。
 それは、緊縮財政を連想させる。
 そして緊縮財政は景気腰折れをイメージさせ、その結果として、日本の経済回復が遅れるのではないかの懸念に繋がる。
 世界は100年に一度の経済危機の中、苦しいことを承知で財政規律の一時放棄をしているのに、日本はどうなっているのか?」
との声が一部あり、こうした視点に立つ向きは、その認識そのものが正しいか否かは別にして、世界的に見た投資や投機を行う資金を持つ者としてのスタンスでは、
「日本株購入」
にはネガティブとなっています。
 日本の財政問題、鳩山政権の表現の仕方によっては、更に様々な影響が出てくることも考えられ、フォローしていく必要がありそうです。

[日本の実体経済は?]
 ところで、こうした厳しい見方が国際金融市場に於いてはなされていても、私はやはり日本の実体経済が重要であると考えており、ここさえしっかりとしていれば、日本経済に、
「自力再生」
の可能性が高まると考えております。
 そのように考えながら、先日も名古屋と東京を基点に蒲田や川崎、長崎や飯田や足助、原ノ町、いわきと回って参りました。
 そして、福島県では例えば、相馬市や南相馬市、新地町など、素晴らしい工業団地を有し、この厳しい時代にも新たに設備拡大を求める企業の誘致に努められたりしています。
 また相馬市では、私の大好物な海産物の生産に努められ、特に地域の名産である「穴子」の関連食品の生産・販売に従事される素晴らしい企業経営者の方にもお会いし、文字通り、
「生き生きと頑張っていらっしゃる姿」
を拝見しました。
 一方また、今回は浪江日本ブレーキ様を訪問させて戴きましたが、
「整然とした工場の運営システム」
を持ち、厳しい世の中にあっても、そうでなくても、
「淡々と、丹精込めて、きちんとしたものづくりビジネスを展開する」
という企業を拝見し、改めて、日本の強さというものを体感致しました。
 こちらの企業の最大の特徴は、中部産業連合会のマネージメント・コンサルタントをきちんと対価を支払って受け、
「5S・VM(Visual Management=見える化経営)活動」
を展開されていることです。
*ものづくりの基本は5Sである。
*表示のないものは全て不要物である。
*忙しいから出来ないとは絶対に言わない!
*異常・ムダ・問題点の見えるVMボードにする。
*目標管理の報告、発表、打ち合わせはVMボードの前で行う。
*コストダウン活動の結果は全て金額で評価する。
*指摘箇所は三日以内に改善する。
という七か条を掲げ、また、
*見えなければ管理できない。
*見えなければ共通認識できない。
*見えなければ情報共有できない。
*見えなければ問題意識が共有できない。
という見える化の必要性を認識して、会社全体が文字通り、ベクトルを一にして頑張っていらっしゃる、こうした結果、この厳しい時期に、米国・フォード向け販売の立ち上がりなどもあって、この10月の売上高は史上最高を記録したそうであります。
 本当に素晴らしいお話です。
 そして、こうした企業や自治体を後押しする、「地域に目指す経営」を標榜する東北電力様の底辺でのしっかりとした活動を拝見、今後、こうした地域はじわじわと拡大していくのではないかと感じました。
 さて、しかし、こうした一方、今回も皆様方から、景気の不透明感が続く中、
「自力再生が必要なことはよく分かっている。
 永田町などを当てにはしないと考えて何とかしなければならないとも思っている。
 しかし、なんとも言えぬ脱力感があり、どうしたらよいのか分からない。」
という声もあちこちで伺いました。
 とにかく、今は売上高を拡大しなければならない時期、コストの削減には限界があり、何よりも、
「縮小均衡」
を前提とするため、景気低迷がこれほどまで、長引くと、
「脱力感」
が出てくるのも仕方がないことかもしれません。
 また、内需拡大、或いは域内経済の循環拡大といった、「成長戦略を持つこと」の必要性が謳われていても、
「雇用環境が悪化、年金問題などもあり将来にも不安がある中、国内の消費意欲はなかなか拡大せず、一向に売り上げ拡大には転じない。
 また、国内、域内だけで資金を循環させているだけでは経済全体のパイは拡大しない。」
との声もかなり多く聞かれます。
 更には、
「高速道路の1,000円化も子供手当ても、返済猶予といった政策も、良い面、悪い面、表裏一体で本当にどの程度の効果が上がるのかまだまだ未知数である。」
との声も出てきています。
 こうした声を聞くにつけ、国内にはまだまだ不安がかなり強く残っており、
「閉塞感の状態からの本格的な脱却」
には程遠いように感じます。
 こうした中、私は常に思うのですが、日本はやはり食糧もエネルギー源も多くは海外に依存している国であり、最終的には、
「外貨をきちんと安定的に稼げる経済構造、産業構造を維持していかなければならない。」
と確信しており、世界が何と評価しようと、とにかく、一旦は外貨を獲得する、その上で、稼いだ外貨をどのように使うかは、その時々の情勢で考える、という余裕を持った産業構造を持つ社会作りを目指さなければならないと考えています。
 そして、中小企業の支援についても、こうした視点から、きちんと外貨を稼ぐことが出来る中小企業、但し、これは単に輸出が出来る企業ということだけではなく、輸出関連企業の部品製造をしている企業といった間接的な企業や技術輸出が出来る企業、輸出を促進し得るサービス・金融系企業なども含め、こうした外貨獲得可能企業、農林畜産漁業関連企業や個人等を先ずは「優先的」に生き残らせる政策対応が必要不可欠ではないかと私は考えています。
 日本の多くの中小企業や個人は、閉塞感の中、強い脱力感を感じています。
 早くにこの状況から脱しないと、更に縮小均衡、負の連鎖に至るのではないかという、眼に見えない不安感も募らせております。
 実体経済の本格的な回復を目指して、なすべき子とは何か?
 引き続き、色々と考えていきたいと思います。

 皆様方は如何、お考えになられますか?

 

 来月もどうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ド レスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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