SAITAMAビジネスライン 埼玉産業人クラブ
埼玉ちゃれんじ企業経営者表彰
ホーム    サイトマップ    当クラブについて   
現在位置:ホーム >Sanada発 現場から サイト内検索
 

2014年9月[Sanada発 現場から]


[チェコ、スロバキアの動向について]

 毎年恒例の企業経営者の方々との海外調査に出て参りました。
 今回は、チェコとスロバキアです。
 以下、ご参考まで、ご覧ください。

 スロバキアと言う国は、4,036平方km一の国土面積にあり、人口は約540万人、国内総生産、約1,720億ユーロ、一人当たりGDP約13,000米ドルの国です。
 また、外貨準備高は約220億米ドルとやや少なく、これに対して貿易収支は約45億米ドルの黒字となっており、輸出は約800億米ドル規模となっています。
 産業部門別に見ると、金属加工と輸送機械分野が比較的強い国でもあります。
 失業率は14.2%とやや懸念される水準にあります。
 スロバキア政府は、2013年の経済成長率が0.9%増に留まったとしていますが、今のところ2014年は更に高い経済成長率が期待されています。
 こうしたことからすると、景気後退から回復期に転換したとも見られ、2014年以降の経済成長が期待されています。
 しかし、昨今のウクライナ情勢やユーロ経済圏の経済成長の予想を下回る状態などから、見通しはやや厳しいものになり始めています。
 また、チェコと言う国は、日本の約五分の一の国土面積にあり、人口は約1,050万人、国内総生産、約2,000億米ドル、一人当たりGDP約19,000米ドルの国です。
 また、外貨準備高は約570億米ドル、これに対して貿易収支は約100億米ドルの黒字なるも、経常収支は約30億米ドルの赤字となっています。
 一方、失業率は約7%あり、楽観視出来ない状態にあります。
 こうした中、ウィーン比較経済研究所(WIIW)の春季経済予測では、中・東欧経済は政府消費支出および個人支出の増大に支えられ緩やかに回復する見通しで、2014〜2016年の実質GDP成長率を年平均2〜3%と見込んでいました。
 しかし、WIIWはやはり最近のウクライナ情勢を、この地域の経済の下振れリスクの要因に挙げています。
 楽観的な見通しでもウクライナのマイナス成長は避けられないとしており、情勢がさらに悪化した場合は中・東欧経済にも影響が及ぶとみており、これに追い打ちをかけるように欧州経済全体の予想以下の鈍化が加わり、チェコ経済の先行きにも厳しい見方が出てきています。
 尚、参考までにお隣のハンガリーと言う国について一言、日本の約四分の一の国土面積にあり、人口は約1,000万人、国内総生産、約1,300億米ドル、一人当たりGDPは約13,000米ドルの国です。
 また、対外債務残高約600億米ドルに対して外貨準備高は約470億米ドルとやや脆弱、これに対して貿易収支は約60億米ドル、経常収支は約40億米ドルの黒字となっています。
 一方、失業率は約10%あり、楽観視出来ない状態にあります。
 ハンガリー政府・国家経済省は2014年度予算案の中で、2014年の実質GDP成長率を2.0%と予測しています。
 2012年にマイナス成長となったハンガリー国内経済は、2013年に入って農業、建設業、産業部門が回復、緩やかな改善の兆しをみせ、2013年の成長率は1%前後となっていると見られ、ハンガリー政府は4年間続いた景気後退から回復期に転換したとしており、2014年以降の経済成長が期待されています。
 しかし、昨今のウクライナ情勢やユーロ経済圏の経済成長の予想以下の鈍化などから、見通しはやや厳しいものになり始めています。

 こうした中、今年はこのスロバキアとチェコを企業経営者の方々と巡って参りました。
概要は以下の通りであります。

 先ず、私はその国の国力を見る際にインフラの充実度を一つのチェック・ポイントとしていますが、プラハとブラチスラバに入り、見聞きし、経験した限りでは、電気、水道、ガス、トイレ、交通、情報、衛生インフラは総じて悪くありません。古くから経済力を背景として基礎インフラの充実を図ってきた実績もあると思われ、量と質の電力の安定度、市内電車や地下鉄、道路の充実度、下水道を含めた水の充実度とこうしたインフラを背景とした衛生は総じて悪くないと感じます。
 また、チェコやスロバキアなど、旧東欧諸国経済を考える際に忘れてはならぬことは、コメコン体制のことでありましよう。
 第二次世界大戦後、世界は一つには纏まらず、東西冷戦に突入しますが、戦勝国・米英を中心に構築されて行ったブレトンウツズ体制に対抗するかのようにこのコメコン体制は構築されていきました。
 コメコンとは即ち、経済相互援助会議Council for Mutual Economic Assistanceの略称であり、1949年ソ連を中心として東欧諸国が結成した経済協力機構であります。
 1947年米国提案の西欧諸国経済復興計画(マーシャル・プラン)に対抗したものとも言え、ソ連・東欧諸国のほか、モンゴル・キューバ・ベトナムなども加盟していましたが、旧ソ連の崩壊により、コメコン体制も、1991年には解体されました。
 チェコやスロバキアなど東欧諸国を意識して、コメコン体制を更に細かく表現すれば、第二次世界大戦後の所謂西側諸国が1947年にトルーマン・ドクトリンやマーシャル・プランを提唱して以来,ソ連は東欧各国を自己の勢力下におさめ〈ソ連・東欧圏〉を樹立することをめざして同じく1947年にはコミンフォルム(共産党情報局)を設立し、1948年には東欧の中で独自の活動(バルカン連邦など)を試みるユーゴスラビアを排除して,東欧各国に、それぞれの歴史的条件に関係なく、ソ連的な経済・政治・イデオロギー体制を普及させていきました。
 余談にはなりますが、バルカン半島にしばしば見られる混沌の一つの火種の遠因はこうしたところにもありましょう。
 そして、特に経済面では、重工業偏重の中央統制型の計画化、行政力に頼る農業集団化が行われ、1949年に設立されたこのコメコンを通して,東欧とソ連の結合が強化されていったのであります。
 政治面では,議会の無視,共産党の一党支配,党内の対ソ自主派の粛清(ハンガリーのライク、ブルガリアのコストフ、ポーランドのゴムルカなど)、小スターリンの独裁(ハンガリーのラーコシ、ブルガリアのチェルベンコフ、ポーランドのビエルト,チェコスロバキアのゴットワルトなど)が特徴となりました。
 中心となる旧ソ連の崩壊によってコメコン体制は終結しましたが、近い過去の出来事として、今もこのコメコン体制の影響はチェコやスロバキアなど東欧諸国には少なからず残っており、また昨今の米露対立の中で、ロシアからの水面下のアプローチも再び強まる可能性はあると見る人もいるようです。
 更に、ウクライナと一部接しているスロバキアでは、
「第三次世界大戦への突入の危険性が強まりつつある。」
と言った声までも出ていました。

 プラハに着くと先ず、今回はプラハの春に現場の一つとなった革命広場の近くの伝統ホテルに入りました。
 このプラハの春とは、旧ソ連・東欧にかつて見られたスターリン批判の衝撃が拡大、ポーランドやハンガリーのように共産党体制の危機を引き起こすほどではなかったにしろ、チェコスロバキアにも波及し、1960年代に入るとアントニーン・ノヴォトニー(党第一書記兼大統領)の統治体制は揺らぎ始めました。
 特に1950年代に猛威を振るった粛清裁判犠牲者の名誉回復問題、経済成長の鈍化に象徴される計画経済の行き詰まり、スロバキアの自治要求などをめぐって、ノヴォトニーに対する批判が高まっていきました。
 そして、1967年に入ると、第4回チェコスロバキア作家同盟大会において、パヴェル・コホウト、ミラン・クンデラ、イヴァン・クリーマといった作家たちが党批判を行ったと言われています。
 また、プラハは現在のチェコ共和国の首都であり、チェコ最大の都市であります。
中央ヨーロッパ有数の世界都市としても有名でありますが、ハプスブルグ王国やナチスドイツに攻め込まれるなどといった歴史も持つチェコの歴史の中で、複雑な過去を持つ都市と言っても良いでしょう。
 またプラハの人口は、約120万人であります。
 プラハはドイツ語では Prag(プラーク)、マジャール(ハンガリー)語では Praga(プラーガ)、英語では Prague(プラーグ)と呼ばれています。
 市内中心部をヴルタヴァ川(ドイツ語名モルダウ)が流れ、中洲もある町並みはパリやローマにも似ており、川をバトームーシユのような遊覧船が走ります。
 古い町並み・建物が数多く現存しており、世界遺産地域は足元が石畳で歩きにくいもののゆったりと市街観光が出来る街です。
 こうしたことから、毎年海外から多くの観光客が訪れ、特にこの夏のバカンスシーズンは欧州をはじめとする観光客で中心地は賑わっています。
 チェコを国家としての発展に導いたカレル王の名前を取ったカレル大学は中欧最古の大学でもあり、中欧の文化の中心地とも言えましょう。
 また、尖塔が多くあることから「百塔のプラハ」とも呼ばれる特徴を持っています。
 尚、ウィーンよりも遥かにドイツ寄りに位置し、ボヘミア王を兼ねたドイツ人が神聖ローマ帝国皇帝をつとめ、プラハを首都にドイツ民族に戴かれていた時期もあることから、独自のスラブ文化と併せて一種の国際性も古くから備えた都市となっているとも言われています。
 一日目は日曜日であったこともあり、こうしたプラハを歩き回って見学、また、チェコ繁栄期にプラハの財宝を蓄えたカルルシュタイン城も見学しました。

 翌日は、ジェトロプラハ事務所と日系メーカー企業2社、そしてチェコ日本人商工会議所を訪問しました。
 チェコの2014年のGDP成長見通しは3.7%、設備投資が4.1%、輸出が7.4%増に転じる一方、消費者物価は0.6%であり、比較的安定的に推移している、失業率も6.4%と安定的に推移しようとしており、社会は総じて順調に運営されています。
 政治面を見ると、現政権はEU寄りの親EU政権であり、もちろん、かつての共産党支配からは開放されていますが、意外に共産党が健闘している国で、年老いた国民の中には、
「ものは豊かになったが、拝金主義的となり、真の豊かさは損なわれている。」
という人も多いようです。
 東側諸国の最前線の国で生き延びるための知恵として、パワーバランスを見つつ、パワーゲームに長けた国とも言えます。
 チェコ進出日系企業は、現在232社、このうち製造業95社、非製造業134社、R&D3社となっています。
 また、日系企業の投資金額は1,003億コルナと1,781億コルナと1位のドイツに次いで第二位の投資国となっています。
 これにより、25千人の雇用を生み、ドイツ系、米系企業に次いで第三位の雇用創出効果を上げています。
 しかし、最近では韓国の現代自動車のチェコ進出に伴い、韓国勢のチェコ進出が顕著となりつつあり、日本勢の脅威ともなりつつあるようです。
 中国本土勢に関しては、今のところ、顕在化していませんが、今後は増加、日本勢の潜在的な脅威となりそうであるとの声が強かったです。
 日系企業のチェコ進出の目的は、主として、相対的に安価、良質な労働力を背景にチェコで規模の経済性を追える生産、販売体制を構築、チェコ国内販売よりも圧倒的にチェコ域外への輸出を図っていくことが、大きな目的となっています。
 原材料、部品、素材の多くは、日本や日系アジア拠点から調達、これを加工して、海外を主に、一部チェコ国内向けに販売されていき、その建値と決済通貨は、主としてユーロとなっています。
 仕入れ、販売の流れに於いてはあまり為替リスクは感じられませんが、コルナ建て決済時の為替リスクは存在しているものと思われます。
 また、チェコのユーロ加盟は、今暫く様子を眺める必要性がありそうです。
進出日系企業は、運転資金も含めて資金余力はあり、現地での銀行借り入れはあまり無い企業が多いようです。
 出資形態は100%単独出資が多く、出資に絡む問題、設備機械導入に関する税関でのトラブルなども、あまり無いようです。 
 政治的、経済的に見ると、ロシアの影響力は今のところ、あまり強く無いとの見方がなされていました。
 しかし、ウクライナ情勢もあり、今後、ロシアの影響力が強まる可能性はあります。
 そして、その損失額は数千億コルナと推算されています。
 平均賃金は約8,500コルナ、約42千円となっています。
 日系企業の経営課題として総じて議論されていることは、
(1) 為替リスク
(2) 売上高の維持、拡大
(3) 賃金上昇の危険性
(4) 人材確保、拡大、特に中堅幹部社員確保
(5) 地域格差拡大の可能性
(6) 労務管理
(7) 韓国勢の台頭
などが上げられていました。
 尚、チェコは、かつての東欧諸国の優等生でシュコダをはじめ、有数のものづくり企業があったことから、重工業の裾野企業があるなど、産業インフラ基盤はある程度整っていると見て良いようです。
 また、そうした背景から労働者の質も整っており、一定の安心感は持てそうです。
 但し、日系企業の方に伺うと、チェコの労働者は言われたことは卒なくこなすが、改善などのアイデアを求めてもあまり意見は出てこず、そうした意識改革の必要性はあるとのことでした。
 また、言われた仕事以外、あまり積極的にしないようです。
 チェコ在留邦人は約1,500人、日本人学校はプラハにあり、また、中核となる方々のお声掛けで様々なイベント企画もあり、日本人同士の関係は良い意味で濃密とのこと、一つの特徴は音楽留学生が多いことのようです。
 そう言えば、チェコ音楽の祖と言われるスメタナ、ドボルザークと言った有名な音楽家を生んだ國、チェコではプラハの町並みに音楽に関する街並みも多く、街頭音楽家の演奏も楽しめる音楽の街でした。
 外国人の中ではベトナム人が7万人もおり、彼らは日本食も含む、中華などのアジア系レストランも展開しているようです。
旧共産圏の繋がりでベトナム戦争前後から労働者としてチェコがベトナム人を受け入れたことが背景にあるようです。
 そして、食べ物といえは、チェコは、穀物自給率は高いようですが、オレンジなど洒落た食べ物はイタリア、ギリシャ、スペイン、フランスなどから輸入されたものが多いとのことです。
 田園風景にある畑は確かに穀物が中心でした。
 その他のものとして小さめの赤いリンゴなどが車窓からは確認できました。
 また、ギリシャと言えば、少し頑張った庶民の楽しみの一つには、バカンス時期などにギリシャ・ツアーをすることもあるそうで、航空運と宿泊費も含めて、6万円前後からパックツアーがあるそうです。
 また、オーストリアを越え、1,300キロ以上の陸路移動をしてアドリア海でバカンスを楽しむ庶民もいるそうです。

 そして、プラハからチェスキークロムロフへ向かう際、原発を見かけましたが、チェコの原発依存度は約20%、その他は石炭石油火力が中心です。
 この原発はかつて、操業のトラブルが発生した際にオーストリアから厳しい非難を受け、チェスキークロムロフ側からのオーストリア入国が制限された時期もあったそうです。
 ドイツに近いプラハと違い、オーストリアに近いチェスキークロムロフは、オーストリアの影響が強く、また、オーストリアからの侵攻を防ぐ要衝の一つでありました。
 ここには有数の諸侯が入り、チェコを守りましたが、ハプスブルク家が強かった時期には、その影響下に入り、チェコの既得権益層の中心言語はドイツ語になっていきました。
 その際にチェコのアイデンティティ喪失を憂える教師などの勢力はマリオネットを通して、言葉と文化の継承者となりうる子供達に、チェコ語とチェコ文化の伝承を行っていたようです。
 そして、この中心部人口が僅か約600人の観光都市・チェスキークロムロフの中心部を発ち、オーストリア国境を抜けましたが、国境検査は全くなく拍子抜けでありました。
 オーストリアからスロバキアに入る際も全く問題なくノンストップ通過しました。
 ゲルマン民族の国に入るとチェコとは雰囲気が変わりました。
 色使いの柔らかい村並みであり、ゆとりのある雰囲気でありました。
 また、緑の多い草原と森でありました。
 最近、チェコなどでは、
「ハプスブルク家の飴と鞭の上手な統治方法が、EU運営の一つのモデルである。」
との再評価の声も出ており、オーストリアの最盛期評価の雰囲気も出ているようです。
 そして、そのオーストリアの3番目の都市であるリンツを抜け、オーストリアの高速道路を使って一路、一気にスロバキアのブラチスラバに入りました。
 尚、リンツはヒットラーの出身地に近く、ヒットラーがユダヤ人たちから集めた収集品の博物館を建てようとしたところでもあり、徹底的に破壊されました。
 今現在は18万人の人口を有する工業都市でもあります。
 また、オーストリア東部のスロバキアとの国境地帯の田園地帯には、たくさんの風力発電機が密集していました。
 風力発電の比率はそれでも5%前後、原発を回避しているオーストリアの主電源は水力約60%、火力約30%となっています。
 しかし、いずれにしても、原発反対を唱え、自然エネルギー利用推奨国、オーストリアの様子を改めて感じました。
 また、ブラチスラバに入ると、スターリン型住宅などとも揶揄される集合住宅地帯が目に飛び込んできました。
 ブラチスラバは、長いこと、ハンガリーに制服された時期もあり、マジャール人に治められたこともあったから、言語や文化の混じった都市であるとのことでありました。
 また、ブラチスラバの路面電車はシュコダ社製のものでプラハと似た雰囲気で走っていました。

 ブラチスラバに入り、大きなショッピングモールで地元のファーストフードを食べましたが、体格のがっしりしたそこの店員は、フォルクスワーゲンにて働き、貯めたお金で今、大学にてトレーニング理論を学び、将来はトレーナーになりたいと目を輝かせて語っていました。
 彼は、貧富の格差の問題があり、スロバキア人に日本人のような細やかな心遣いのないことを恥、日本人のような国民のいる国にしたいと生き生きと語ってくれたことに感激しました。
 こうして、昼食を取り、車にて市内から約15分のフォルクスワーゲンスロバキアを訪問しました。
 同社はシュコダ社の部品製造していたスロバキア工場に対して、1991年にフォルクスワーゲンが80%出資してスタート、1999年にはフォルクスワーゲン100%子会社になりました。
 現在、6車種を年間約43万台生産する工場になっています。
 どうも工場見学して見ると完全に組み立てに特化しているようで、あまり付加価値の高い技術はないようです。
 仕事は鋼板のプレスから溶接、組み立て、そして、完成車生産までとなっています。
敷地規模約1.8平方キロメートル、8,400人の従業員を抱えるスロバキア有数の企業であります。
 また、ロボット化率は約80%と労働集約的な工場でもあります。
 資本金2.5億ユーロ、年商65億ユーロ、2013年度当期純利益176百万ユーロと総じて堅調な企業です。
 従業員の平均年齢は34歳、生産現場では、男性90%、女性10%となっています。
鋼板やその他部品の多くはドイツや日本、ハンガリーその他の海外から輸入し6車種を完成車にまで導き生産しています。
 同社はこうして集められた部品を組み立て、完成車にまで仕上げるのが役割となっています。
 販売は内外の自動車関連企業を利用した形で推進されており、基本的には、注文生産の形となっており、厳しい状態となっています。
主たる売り先は海外ディーラーでドイツ24%、フランス、イギリスなどその他の西欧15%、ロシア12%の他、中国本土、日本、米国と幅広く輸出しています。
 仕入れと販売はユーロ建て、資金回収は海外の緊密先からの代金回収で、安全性の高い体制をとっています。
 製造装置の多くはドイツKUKA製のものにシーメンスがそのソフトを担当しています。
 労賃は約1,200ユーロとなっており、スロバキア平均の824ユーロを上回っています。
 欧州の生産拠点の一つとして、付加価値はあまり高くなさそうですが、比較的安価に品質の良い完成車を大量生産する場として、このブラチスラバ工場はグローバルな役割を果たしていると言えましょう。

 日本大使公邸にも招かれ、懇親会をして戴きました。
 大使自らスロバキアについて説明してくださり感激しました。
 欧州の中央に立ち、相対的に安価高品質の労働力確保がしやすいこと、EU加盟国であり、ユーロ経済圏であることが特徴、但し、貧富の格差の問題があり、また、失業率も相対的には高い国として問題を指摘されていました。
 また、スロバキアは今後、付加価値の高い技術導入を望んでいることを指摘されていました。
 一方、起亜自動車が進出している韓国勢のスロバキアに於けるプレゼンスが高いともコメントされていました。
 1993年に平和的にチェコと分離し、2004年にはEU、そしてNATOに加盟、2008年にはユーロにも加盟したスロバキアの経済発展を日本としてどのような形でサポートしていくか、私としても考えていきたいと思いました。

 また、スロバキア経産省対内投資(SARIO)担当者と面談、付加価値の高い技術導入を期待する旨、コメントがありましたので当方よりは、質の高い中堅中小企業の誘致を図るべきであり、その為には、EU経済圏内でのマーケティング支援が出来るような善意のビジネスパートナーを日系優良企業に紹介していくべきであると伝えました。
 尚、SARIOは、この11月に東京で投資セミナーを先進技術を持つ中堅中小企業企業を対象に開催するとのことでありました。
 対スロバキア投資メリットやスロバキアの特徴としては、
(1) ユーロ加盟国として通貨は安定的である。
(2) シンプルで公正な税制、22%の法人税である。
(3) 国際的ハイテク企業が集積している。
(4) 曙ブレーキも進出してくることになった。
(5) 日系進出企業数は48社となっている。
(6) また、例えば自動車分野ではスロバキア国内には約300のサポーティングインダストリーズを抱えている。
(7) 国際的な格付け機関の付けたカントリーレーティングもAクラスである。
(8) 多言語能力を持つ。(ロシア語、英語、ドイツ語など)
(9) OECDの中でも生産性の相対的に高い国として評価されている。
(10) 基幹産業は自動車産業であり、これを中核にビジネス発展をしやすい。
(11) 労賃は824ユーロとまずまず、労働生産性と合わせて考えると安価て質の高い労働力と言える。
(12) 労働組合の組織は強制ではなく、民間企業の組織率は低い。労働争議も公務員は多いが民間企業は比較的少ない。
(13) 離職率も低いが、賃金にはやはりナーバスである。
(14) 大学進学率は約15%、工科大学は4大学となっており、高度ノウハウを持つ中間技術系管理職以上の人材はやや限定的である。
(15) 自動車、IT、エレクトロニクスが中心産業分野でこの高度化を図りたい。
(16) SARIOは、日系企業に対して情報提供、コンサルティング、手続き支援、アフターケアを支援する組織である。投資奨励金、法人税免税、現金による補助金、新規雇用に関する助成など、政府支援を用意しており、そうしたアレンジもしている。

 また、PWCの日本人担当の方からの説明も受けました。
 スロバキアは政治的、経済的安定があり、予測がし易い国である、ユーロ加盟国で為替リスクが低い、労働の質が高いといった大きなメリットがある。そして、
(1) 中東欧の中で唯一、ユーロ加盟国である。
(2) 中東欧の中で、税、社会保障費は安くない。
(3) 中東欧の中で、投資インフラが相対的に整っている。
(4) 国の経済成長が安定している。
(5) 中東欧の中で、相対的に安価高質の労働力確保が容易である。
(6) 税務コンプライアンスの手間があまり掛からない。
という点が注目されるとの説明を受けました。
 また、外資導入にも積極的なスロバキア政府のサポートも受けながら、スロバキア進出のメリットを享受できる可能性は高い等々の説明を受けました。

 歴史的に見ると、スロバキアのキリスト教会の中心とも言えるブラチスラバから約80キロ離れた二トラ県に入りました。
 そして、まずは住友電装スロバキアを訪問しました。
 ヒヤリングの相手は工場長のベルナルドマリアン氏。ここに日本人従業員はいない。
 欧州は六カ国展開している。
 住友電装の100%子会社。
 ブラチスラバにカスタマーセンターあり。
 フォルクスワーゲンのワイヤーハーネス100%生産。
 1996年設立。
 敷地面積は16,500平方メートルとなっている。
 従業員数は1,346人。
 ロジスティックセンターはブラチスラバに2006年に設立。
 ドイツ向け60%スロバキア向け40%の販売となっている。
 生産車種は、アウディA8アウディQ7ポルシェパラメラが中心。
 アウディA8は180ワイヤーハーネスを一日に生産、一つのワイヤーハーネス生産時間は17時間。
 アウディQ7は300ワイヤーハーネスを一日に生産、一つのワイヤーハーネス生産時間は16時間。
 検査については、基本的には、組み立て後最終一括検査している。
 その最終検査は、約20分掛けて6人で行っている。
 5%の不良発生率である。日系企業に比べるとかなり高いと思われるがそうした反応は特になし。
 フォルクスワーゲンとシーメンスの合弁から始まった会社である。
 部品はフォルクスワーゲングループが決めた欧州の会社から輸入している。
 工場見学と工場長の話を聞く限りに於いては、住友電装がそのノウハウやのれんをこの会社に持ち込んだ形跡はあまりなく、住友電装にとってはグローバルなグループシェアが増えたこと、配当収入、そして、フォルクスワーゲングループの様々なノウハウ、のれん等を知り利用することなどにあると思われるが、スロバキア人工場長の説明ではこの辺のことは、はっきりとは分からなかった。
 続いて、Foxcconスロバキアを訪問しました。
 ヒヤリング相手は社長。
 1996年ソニースロバキアとしてスタートした工場がフオクスコンに売却された2010年10月に同社に残った日本人社長率いる台湾系企業であり、ソニーも10%の出資シェアを残している。
 主たる生産品はソニーブランドLCDテレビであり、欧州向け販売が主である。
 その他はセットトップボックスである。
 因みにこの二トラ県地域では三星電子も含めて、欧州向けテレビの約20%が生産されている。
 二トラでは2008年に操業開始している。
 現在年間250万台弱のテレビ、130万台弱のセットトップボックスを製造している。
 1, 054人の正規社員を抱えている。
 その他人員の業務委託もしている。
 当初は、パネル工場も隣接しようとしていたことから、土地は大きく確保されている。
 アジアから海路、アドリア海経由部品輸入、組み立て、ロシアを含む欧州のソニー関連会社向けにテレビ販売している。
 アジアからは米ドル建て、欧州販売はユーロ建てとなっており、その為替リスクは同社が抱えている。
 物流は主としてTNTなどの大手に任せているが、扱いが荒く、クレームの遠因となっており、梱包の改善なども必要となっている。
 製造装置の多くはJUKIなどの日本製となっている。
 不良品発生率は0.2%程度とのこと。
 社長を除く日本人派遣者はソニーからの出向者で、家族帯同で赴任している。
 住環境はよく、また、ウィーンも上手に利用しながら、生活を楽しんでいるとのこと。
 続いてSIIX社を訪問しました。
 同社は、日本人2名でマネージしている会社で資本金2,144百万円、8,487人の企業の子会社である。
 即ち同社は、1992年に大阪に設立された日本企業が親会社であり、その親会社は、生産、販売、物流、海外戦略を一貫して行える東証一部上場企業でもある。
 本社は中国本土、タイ、インドネシア、スロバキアで電子機器、部品などの生産販売物流が主たる業務である。また、家電、車載中心で同社売り上げの約半分のシェアを持っている。通信機器、家電機器で約40%、車載関連30%となっている。航空機内部の電子機器も生産販売している。グループ船体では、アジアの売り上げが約70%、欧州は4%に留まる。欧州では、ドイツが販社、スロバキアは生産拠点となっている。
 そして、そのSIIX社の欧州子会社である同社は従業員480人、資本金530万ユーロ、2001年地場のスルズバ社とのJVでスタート、2005年より100%出資の会社となっている。
 バーコードを使った製品管理をし、効率化を図っている。
 製造装置はパナソニック、ルネサス、田村製作所などの日本製が中心となっている。
 しかし、意外に機械よりも人によるプリント基板製造のポーションも多く、チップを基板に乗せたり、ハンダ付けも人によって行われる部分があった。
 検査は機械と人によるダブルチェックとなっている。
 正社員の勤続年数は5〜6年。
 この地域には派遣、業務委託のシステムがあり、そうした業者もある。
 派遣会社は寮も準備して派遣社員も確保している。
 部品は日本、アジアから納入、建値は円建て、米ドル建てが多く、販売は欧州向けを中心にユーロ建て、しかし、日系欧州拠点に対する販売建値は円建てで、為替リスクは同社が抱えている。

 こうして、今回のチェコ、スロバキアの訪問を終え、最終日は、ウィーンで観光地見学をほんの少しだけして帰国しました。

 次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
コンテンツ

例会・講演会

各部会紹介

リンク


SANADA発現場から

お問い合わせ

当クラブ(地図)へのお問い合わせ、入会希望など、お気軽にお問い合わせください。

tel0438-872-2281 fax048-872-2285

Eメール
clubsaitama@sangyojin.org

お問い合わせフォーム

ホーム当クラブについて埼玉ちゃれんじ企業者表彰例会・講演会情報ファイルお問い合わせサイトマップ
NITEC埼玉産学交流会TDU産学交流会埼玉ビジネス研究会経営研究部会企業PR部会人材開発部会産友会分科会
Copyright (C) 2004 SAITAMA SANGYOJIN CLUB All rights reserved