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2014年11月[Sanada発 現場から]


[混沌の世界、日本の生きる道]

[混沌の世界情勢とアベノミクス]
 先般のASEM会議に出席したわが国のリーダー・安倍首相は、
「自らが推進するアベノミクスを基にして、アジア経済、世界経済の推進を後押ししたい。
 具体的には、インフラ輸出などを念頭に置いている。」
との主旨の発言をしたと日本国内では報道され、私たち国民の自信を取り戻すことが出来るような、所謂、耳障りの良い報道となっています。
 私も、実際に、
「日本がアジア経済や世界経済の発展を寄与するために努力をしており、また更にそれを促進したい。」
と考えており、世界にもその心意気をしっかりと伝えていくことは極めて重要であると考えています。
 しかし、国際金融社会の多くは、アベノミクスに対して、金融政策と財政政策でしか効果を示しておらず、肝心の需要を創出するための施策である成長戦略の中身も、現状では、
「女性の活用、法人税の低下、カジノ利用」
といったものに留まっていると認識しており、これを決して高く評価してはいません。
 むしろ、こうした政策の過程で、現状では財政状況が更に悪化する可能性を秘めていると見ており、警戒感を持って、日本経済の動向を見ている向きも少なくありません。
 これに対して、日本政府からは、
「TINA=There is no alternativeだからね。」
 即ち、
「他に何か手があるの?」
との声が出ており、成長戦略の具体的な展開が難しい中で全力を尽くしていることを強調しています。
 そうした日本政府の考え方も私はある程度は理解します。
 しかし、現状、
「アベノミクス」
を枕詞にして、
「日本は世界に貢献したい。」
と声高にここで言うことはむしろマイナス効果であるかもしれません。
 そこで、その背景を申し上げます。
 先ずは、アベノミクスの金融政策と財政政策だけでの効果についてでありますが、先週もお伝えしましたように(何度もコメントして申し訳ありません。)、
「先進国は、先進国が故に少なくなっている国内需要をカバーする為に、自国外ビジネスを拡大しようとし、その為に、
“自国通貨安競争を拡大する、その為の方策として、資金を更に市場に過剰供給する、この結果、資金量が実体経済規模を異常に上回る事態となり、金融が実体を振り回す(これを国際金融市場では、犬が尾を振るのではなく、尾っぽが犬を振り回す事態と揶揄している。)、そしてお金のある人とない人の格差を広げて、弱肉強食型の国際金融主導の原始資本主義がはびこるという更なる悪循環に突入している。”
 そして、具体的に、米国政府は、
“消費をする人や企業に借金をさせて需要を拡大する”
という戦略に出て、クレジットカードやオートローン、ハウジングローンも充実させて経済を拡大させていきましたが、本来、貸してはいけない相手にまでこの信用創造を拡大してしまい、これがサブプライム・ローンなる形で顕在化、これを遠因として貸し手であった銀行の融資債権などを証券化していた投資銀行であるリーマンブラザースが破綻、この結果、世界的に急激な金融収縮が起こる、こうした実体経済に起こった世界的な不況を救済するために、世界各国の多くの政府は、財政出動を伴う金融政策を打つ、しかし、ギリシャやポルトガル、スペイン、イタリアをはじめ、日本も米国も自国政府の金庫には資金が不足しており、国が資金調達を国債発行などのDebt Financeで行ったが、ここでも行き過ぎた信用創造(借金)が行われ、欧州の財政問題は既に一度顕在化、現在は沈静化しているが、米国や日本と共に、世界の先進国の多くに、財政赤字問題が存在している、そして、その反対側で、世界には今、資金が溢れすぎるほど溢れ、この引き締めを何時どのような形で実施するかが、現行の国際金融の一つの大きな関心事となっている。」
のであり、こうしたことからして、
「世界はむしろ、金融政策と財政政策による経済発展の方向性に対して行き過ぎ感を持っており、現在ではその効果に対して、既に疑問を持っている。」
ともいえ金融政策・財政政策の域を脱していない、即ち、成長戦略での効果を世界にきちんと示しきれていないアベノミクスを前面に押し出して、
「日本が世界に貢献する。」
と訴えても、効果が薄い、或いは逆効果である、更には笑いものになるとも考えられるからであります。
 そして、もっと素直に、
「日本が世界経済の発展にものづくり大国として貢献したい。」
などとコメントするほうが良かったのではないかと考えます。
 いずれにしても、私は、
「格差拡大」
を大きな背景として、
「現行の世界では、国際金融を軸とした弱肉強食型の原始資本主義と化した、現在の資本主義に疑問を持っている人々が増えている。
 本来の資本主義の理論では徐々に格差が縮小すると考えられていたのに、むしろ格差が拡大する現行の資本主義を否定する声すら出てきている。」
と理解しています。
 更にまた、現行の世界の秩序の基盤となる、民主主義に関しても、
「民主主義の根幹となる多数決の論理がセミイコール数の論理、そして力の論理に繋がり、強者を正当化するほうに利用され、結果として、格差を拡大する。」
という意識を持つ人々が世界では増えていると見ており、こうした、
「格差拡大に対する不満」
を背景とした勢力が、
「現行の世界秩序を支える理論である民主主義と資本主義に対する不満」
となり、その一部が過激化してきていると私は考えています。
 世界的な混沌は、このまま、現行の秩序をただ単に守ろうとし、不満勢力を力ずくでのみ押さえ込もうとすると、更に深まるのではないかと思います。
 私はこの混沌の深まりを本当に心配しております。

[成長戦略の基本姿勢]
 批判ばかりしていてはいけません。
 そこで、成長戦略に関する基本姿勢といったものを私なりに考えてみました。

 日本全国各地を歩いていると、昨今の特に円安進展が齎す結果でしょうか、
「わが社は輸入する製品よりも易くて品質の良いものを作り、日本経済に貢献している。」
と胸を張る方が少しずつ増えてきています。
 とても、頼もしいことです。

 皆さん、私は思いますが、

  1. 日本の通貨・円は世界の中心的な通貨である基軸通貨には、今の国際経済の概念では決してなれない。それは軍事力に欠けているからである。そして、基軸通貨になるために軍事力を強化することなどは本末転倒、言語道断の話である。
  2. 一方で、日本は私たちが生きていくために最低限必要なもの、即ち、水、食糧、原材料、エネルギー源のうち、現行では自給できるものは、水しかなく、その他のものは、原則として輸入をせざるを得ない。因みに、この人々が生きていくために最低限必要なものは原則としては、基軸通貨建てで決済の建値がつけられている。
  3. その私たちが生きていくために必要なものを得るためには、原則としては、基軸通貨を稼ぎ、これを以って支払いをして輸入せざるを得ない。
と言えます。
 そこで、こうした前提となる状況が今後も続くとすれば、円と基軸通貨の為替レートの変動にも十分に注意を払いつつ、
  1. 外貨を稼ぐ産業を積極的に育成する。
  2. 外貨支払いを必要とする輸入を減らすべく、輸入代替化を推進する。
  3. そして、将来的には、これらを組み合わせて、日本の産業ではなく、グローバル産業を育成していく。
ことが日本経済にとっては必要不可欠であると私は考えます。
 そして、私が、もしも、
「日本の産業政策を司る長として成長産業を指定していく。」
のであれば、
「先ずは単純に上述の概念を以って日本経済、日本の産業界を見つめ、見直し、そしてそうした産業を育成するための産業政策を選択と集中で、ひと、もの、資金、情報を日本政府として支援し、外貨を稼ぐ、その一方で輸入代替化を図る政策を短期的な効果が上がりそうなもの、中長期的に見て効果が上がりそうなものに分け、少ない財政資金をそこに投入して推進する。」
こととします。
 そうした意味で、既存の中堅・中小企業が持つ、例えば、炭素繊維の高度加工技術などは即戦力として、外貨を稼ぐ製品を作れる分野であり、また外貨を稼ぐノウハウとして世界に技術を売り、その対価を外貨で稼ぐことが出来るような製品ともなりましょう。
 一方で、太陽光・太陽熱発電やメタンハイドレードに見られるエネルギーに関連する産業分野は即戦力として外貨は稼げないかもしれませんが、将来的には、外貨を稼ぎ、かつ、エネルギー輸入の代替化を図れる分野として、時間をかけて支援をしていく分野でありましょう。
 同様に食糧、その延長線上での健康医療に関連する農業分野は、今現在推進されている「六次産業化」を利用しながら、国内生産力を高めて輸入代替化を先ずは図りつつ、中長期的には、これを以って外貨を稼ぐことに向けていくべきでありましょう。
 私は、上述したことをもとにして、先ずは、
「骨太の成長戦略」
を立てた上で、日本全国各地から上がってくる案件を精査し、優先順位をつけて、また費用対効果を考えて、限られた財源となっている財政資金の分配を考え、集中支援、
「こうした出来上がったパイロットプロジェクトの成功を導き、その成功体験を基にして、日本経済に活気を与える。
 但し、パイロットプロジェクトについては、成功失敗のみきわめをするタイミングを大切にして、安易な中止をさせないと共に、見切りをつけなくてはいけないのに、その案件を選定してしまった面子と責任から、そのプロジェクトを成果が上がりにくいにも拘らず、無用に長引かせて、財政の無駄遣いをさせないようなチェック機能を必ず持たせる。」
ことをしていくと思います。
 
「カジノが成長戦略の目玉?!」

 日本はそれほど成長性がない産業を抱える国に落ちぶれてしまったのでしょうか?
 私は違うと思います!!
 真の日本の生きる道をもっと突き詰めていきたいと考えています。

 次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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