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2016年3月[Sanada発 現場から]


[国際金融市場の安定性]

はじめに  
 国際金融市場は混沌が深まり、世界の混乱は増すばかりではないか、とついつい悲観的になるほど今の世界経済は先読みのしにくい状況になっています。
 そして、欧州では、
「ドイツ銀行は大丈夫か?」
と水面下で噂されるような状況にもなっています。
 そこで、今回は欧州の財政状況と東アジアの金融情勢について考えてみたいと思います。

欧州財政状況
 様々な世界的混沌が深まる中、相対的に見ると、国際金融社会のギリシャ問題を発端とする欧州財政危機に対しての関心は、最近は薄まっていると思われます。
 しかし、このギリシャ問題を背景とした、欧州財政危機のリスクは未だに潜在的な存在しており、これが、
「統一通貨・ユーロ」
に対する不信感を生み、更に、欧州経済そのものに対する不安が顕在化しているとも思われます。
 更に、先進地域を中核とする欧州の経済不安は、
「先進国地域全体の経済不安」
をも連想させ、それを前提として、
「未然の対応は不可欠である。」
とまで言われていることから、混乱の最大当事者であるギリシャのモラルハザードを引き起こし、ギリシャ自らの改善に向けた明確なる対応姿勢がなかなか見られないといった状態にもなっていると言われています。
また、
「今の欧州の根源は、ギリシャ、ローマ文明である。
 従って、欧州統一を目標にして動き始めた統一通貨・ユーロに関しては、ギリシャは、欧州諸国に頼まれて入ってやったと言わんばかりの姿勢を示し、強気に出ている。」
とも言われ、一部には、
「ギリシャは、わがままをいい放題である。」
とまで言われていました。
 そして、こうしたことを受けてか、オーストリアのファイマン首相は、ギリシャは債務問題に関する債権団との合意に於いて、
「ギリシャは5カ年計画を策定する必要がある。」
と述べ、長期的な視野に立った対策が必要であるとコメントしました。
 即ち、ファイマン首相は、
「目の前の債務危機を脱するための短期的な解決策を作成するのではなく、ギリシャは中期的な財政見通しを立てるべきである。」
と主張した上で、
「欧州委員会も想定しているような中期的な解決策のためには、ギリシャと集中的な協議をし、5年間を見通す計画を策定することが必要である。」
との考え方を示したのでありました。
 そもそも、ギリシャのこうした体たらくの直接的な背景は、
1. 過度の年金制度の設定
 即ち、「社会保障給付費」と「人件費」が利払い後歳出の7割を占めるような状態になっていて、これを放置したこと。
2. 行き過ぎた財政出動を良しとする政権が、政権交代のたびに拡大を続けたこと。
 即ち、王政崩壊後、政権交代がある度に、公務員としての雇用を増やしてきたこと、その結果として、公共部門の労働人口の約4分の1に相当していること。
3. 脱税が横行し、財政基盤の充実を図りにくいこと。
などが挙げられましようが、上述したようなモラルハザードの中で、ギリシャ自身が、その根本的原因を早期に、かつ、大胆に改善しようともしていないことから、ギリシャ問題を背景に、
「欧州経済不安は長引きそうである。」
と危惧されています。
 今後も、引き続き、欧州財政問題には、高い関心を払わなければならないようです。

[アジア金融市場安定のあり方]
 世界には、実体経済を大きく上回る巨額の資金が放出されており、所謂「バブル経済」の状態になっており、その結果として、
「行き場を失った余剰資金が投機性資金に化け、これが世界経済の混沌を深めている。」
と私の目には映ります。
 従って、こうした状況にある時だからこそ、世界は皆、今、歯を食いしばって、
「経済が一旦、縮小均衡に入り調整をしていくことを覚悟すべきである。」
と私は考えており、そうした意味では、上杉鷹山公などが行った、
「質素、倹約」
に基づく、耐乏政策を、むしろ、経済大国が、大きな犠牲を払ってでも、率先実施すべしと思います。
 人々には「欲」があり、これが容易ではないことを百も承知ではありますが、しかし、私はこうした耐乏政策を率先実施すべしと考えているのであります。
 しかし、そうは言っても、
「現実との折り合い」
は大切であり、その折り合いをつける一つの方策に、
「金融市場の安定、就中、国際金融市場の安定」
があげられるかと思います。
 そうした意味で、アジアの金融市場の安定の為の最近の動きは大いに注目すべきでありましょう。
 即ち、今般、日本や中国本土、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の13カ国が、通貨危機の警戒や対応にあたる「ASEAN+3マクロ経済調査事務局」(AMRO)を設立することになりました。
 AMROの本部は日中韓ではなく、シンガポールに置かれ、日本が主導する、国際通貨基金(IMF)のアジア版として、経済成長が続くアジアの金融安定化への寄与が期待されるものとなっています。
 そもそもは、1997年のアジア通貨危機を教訓に、これら13カ国の財務相が2000年、為替市場での投機的な動きや信用不安による国外への資金流出に備え、通貨防衛や国際収支危機への対応へ資金を融通しあう協定「チェンマイ・イニシアチブ」の創設で合意したものであり、更にリーマンショックを経て、2009年2月に多数の二国間協定を一つの多国間協定にまとめて、監視機関・AMROの設立で合意したことを母体としています。
 そして、この協定の資金枠規模は2014年には、2,400億米ドルに倍増されています。
 新体制の初代事務局長は、根本洋一氏であり根本事務局長は、
「より効果的に金融リスクに対応できる。」
と強調しています。
 但し、その根本氏の任期は本年5月までであり、次期事務局長を含めて公募される新執行部人事は、加盟国の協議を経て決まることにもなっており、日本と並ぶ筆頭出資国である中国本土の人事に関する関心は極めて高く、今後はポストをめぐる日中間の争い、そして、
「アジアに於ける通貨覇権を巡る争い」
が、むしろ、一旦は高まり、アジアの金融界に不安要因が生じるかもしれません。
 様々な視点から、今後の動向をフォローしたいと思います。  引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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