SAITAMAビジネスライン 埼玉産業人クラブ
埼玉ちゃれんじ企業経営者表彰
ホーム    サイトマップ    当クラブについて   
現在位置:ホーム >Sanada発 現場から サイト内検索
 

2017年5月[Sanada発 現場から]


国際情勢と米国、そしてトランプ大統領


 国際情勢が大きく変化する中、米国の立ち位置はどう変化しているのか?そして、トランプ大統領は如何に対応しているのか?今回は昨今の国際情勢と米国に関して私見をご披露申し上げたいと思います。

[北朝鮮とシリアに対する米国、そして世界の対応]

国際社会は、
「現行の世界秩序」
に変化が見られるのか否かに大いに注目をしていると私は認識しています。
 世界秩序の変化については、

  • 米中を軸とする大国同士の覇権争い
  • スペインや英国にも見られる国家の枠組みの変化の可能性

などが挙げられますが、最も、予測しにくく、国際社会に少なくとも、当初は悪影響を与えるであろう、

  • イスラム過激派などに見られる過激派の動き

は最大の懸念として挙げられると私は考えています。
 こうした状況下、世界のリーダー国・米国の大統領に就任したトランプ大統領は、口頭では、
「私は米国の大統領である。」
という発言を繰り返し、
「自国第一主義」
の姿勢を示す、しかし、その実、
「大国・米国の論理を世界に浸透させようとする覇権主義」
を強く意識した言動を示しており、読みにくい世界を更に読みにくくしています。
 そして、アジアでは、北朝鮮が執拗にミサイルや核実験を繰り返し、また、化学兵器や細菌兵器テロの危険性までもが指摘され、不安定要素が増しています。
 米中が「金正恩氏排除」の点で一致しているのではないかとの見方も出る中、その金正恩氏は、どの国も信頼しない、頼れるのは「核兵器や化学兵器」のみであると言わんばかりの言動を繰り返していることを受けて、日米、米中、そして日米韓でもこの北朝鮮問題に関しては、様々な議論が水面下でなされているようです。
 今回の北朝鮮情勢に関しては、ロシアがその立場を明確に示しておらず、ややかく乱要因です。
 また、中東ではイランとの対立姿勢を米国自身が強め、ペルシャ湾に空母を入り込ませている中、シリアは化学兵器の使用に踏み切ったと報道されています。
 シリア問題に関しては、アサド政権を支持するロシアが、化学兵器の使用は明らかなれど、シリア政府自身は細菌兵器を使用していないとの主張を繰り返していることを受けて、国連・安全保障理事会の拒否権を持つ常任理事国として、現段階では、中立的な第三者の確認が必要であるとして、明確にシリア制裁に反対の姿勢を示し、これに対して、米国は、安保理で何も決められないのであれば、米国は単独でも行動を起こすといきまき、実際に軍事行動に出ました。
 これに対しては、当然にロシアが、そしてイランも更に反発するのではないかと思われます。
 更に、こうした世界の現行の秩序に反発するシリアや北朝鮮、場合によってはISやボコハラムといった過激派勢力が、水面下で、
「敵の敵は味方的な連携」
を強め、
「同時多発的な過激活動」
を今後、具体的、積極的に展開してくる可能性も否定できません。
米国のトランプ大統領は、当然に、この北朝鮮やシリアに対する米国の対応戦略について、何もコメントせず、先手必勝の行為を示すのでありましょうが、それでは米国にはどのような具体的なオプションがありましょうか?
 また、上述したような世界的に見た同時多発的な過激派行為に対して、米国自身が対応しきれる体力はありましょうか?
 その米国の過激な動きが具現化した場合には、日本を含む北朝鮮周辺国にリスクは本当にないのでしょうか?
 その米国は、地下網を張り巡らし、空爆攻撃に対応する能力を持つと言われるアフガニスタン・タリバンに対する、核ミサイルを除く最強のミサイルによる軍事攻撃を展開し、その効果を確認しつつ、これを、同様に地下網を張り巡らしている北朝鮮攻撃に利用するのではないか、即ち、北朝鮮に対する軍事行動も現実化する可能性が高まっているのではないかとの見方も、直近では出てきています。
世界は混沌の様相を深めているようにしか思えません。
 そして、今後更に、
「対話路線で現実との折り合いを付けていく。」
ということに世界の主要国が見切りをつけていくこととなれば、より一層、
「強者の論理」
が優先され、各国では、自国の防衛力強化、そして、統制国家的色彩が拡散するように思えてならず、庶民には生きにくい世の中になっていくようにすら感じられます。
 本当に心配です。

[トランプ政権の軍事・外交政策姿勢と米国の威信]

 上述したような味方をする一方、私は今の米国には国際社会を一国で押さえ込めるほどの総合的な国力は無いと見ています。
 そして、こうした状況にあるからこそ、米国は国際問題をマルチラテラルには解決出来ず、先ずはバイラテラルに解決した上で、マルチラテラルの解決を目指す姿勢を示し、例えば、貿易や投資と言った通商問題に関しては、先ずはバイラテラルで解決しようとしていると見ています。
 そしてまた、トランプ大統領は、米国の国力が落ち、威信低下が見られているからこそ、むしろ、米国の強さを意識的に世界中に示そうと、やり得る範囲で米国単独の強硬姿勢を示し、国際社会に米国の強さを示そうとしていると見ています。
 昨今のシリアや北朝鮮に対する強硬姿勢もこうした基本姿勢の中から生まれているのではないかとも見ています。
 従って、日本国内の一部で最近示されている、
「今般の米国によるシリアの軍事施設に対する巡航ミサイル攻撃は、米国のトランプ政権の一国主義的=ユニラテラリズム=傾向を浮き彫りにした。」
との見方に対しては、表面的には賛成出来ても、その本質から見ると同意できないとの考え方を私は持っています。
 そして、
「国際社会との協調や法律上の正当性よりも、自らが考える国益を最優先にするのがトランプ大統領の基本姿勢であり、オバマ前政権との対比が鮮明である。」
との見方が日本国内で出ていることについても、
「トランプ大統領は、米国の威信低下をもたらした前政権の政策調整をしている。」
との立場を取りつつ、粛々と米国威信復活に突き進むと私は考えます。
 因みに、こうした政策の下、強い米国、強い米国経済復活に向けた政策の下、世界に拡散されている米ドルは一旦、米国に回帰する、従って、中長期視点から見れば、米ドル高に向かう可能性は高いとも見ています。
いずれにしても、こうした背景の下、トランプ大統領は、ロシアや中国本土を含む国際勢力の反発や不満が、
「限定的である。」
と見て、シリアでの化学兵器使用が明らかになってからは直ぐに、国際協調を重視せず、米国の国際社会に於ける威信復活を目指して、時間を掛けずに攻撃を実行したと考えるべきであるとも私は考えています。
 そして、その上で、トランプ政権は、国連の安全保障理事会で、武力行使が認められる決議を得る為の他国への働きかけを行う努力もせず、国連憲章が認める自衛権の行使という考えを広く解釈したのか、法的な裏付けが明確でなくても、人道的な見地から軍事介入したのか、その明確な説明をせずに、今回の軍事的行為に出て、米国の威信復活を優先したと考えるべきであると思います。
 果たして、こうした米国・トランプ政権の軍事・外交姿勢とその具体的な動きが、日本の平和、そして世界の平和に繋がるのか、私には疑問も残りますが、いずれにしても、今の米国の動きをもう少しきちんと理解した上で、日本政府としても対応していくべきであると私は考えています。

 引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
コンテンツ

例会・講演会

各部会紹介

リンク


SANADA発現場から

お問い合わせ

当クラブ(地図)へのお問い合わせ、入会希望など、お気軽にお問い合わせください。

tel0438-872-2281 fax048-872-2285

Eメール
clubsaitama@sangyojin.org

お問い合わせフォーム

ホーム当クラブについて埼玉ちゃれんじ企業者表彰例会・講演会情報ファイルお問い合わせサイトマップ
NITEC埼玉産学交流会TDU産学交流会埼玉ビジネス研究会経営研究部会企業PR部会人材開発部会産友会分科会
Copyright (C) 2004 SAITAMA SANGYOJIN CLUB All rights reserved