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2017年8月[Sanada発 現場から]


韓国と米国、そして日本


[はじめに]

 今月は、韓国を軸にして、米韓関係、そして、日韓経済協力関係について、私見を述べたいと思います。
隣国でありながら、なかなかうまくいかぬ日韓関係を意識しつつ、コメントしてみました。
読者の皆様の少しでもお役にたてば幸いです。

[米韓関係]

日本にとっては、不穏な動きを示す北朝鮮問題を意識したとき、或いは日本に対しては厳しい外交姿勢を示す韓国や中国本土との外交関係を意識したとき、或いはロシアの南下リスクを意識したとき等々、米国が如何にアジア問題、就中、北東アジア問題に対する外交姿勢を示すのか、注視する必要があるかと思います。
そして、
「米国が如何なる対韓外交姿勢を示すのかによって、日本のアジアに於ける外交的立ち位置に影響を受ける。」
とも私は見ています。
即ち、米国が基本的には韓国との信頼関係を基にした外交関係を維持するのか?米国が日本との相対比較に於いて、どの程度、韓国に対して信頼を置くのか?その韓国が米国との外交関係の反対側で如何なる対中、対露外交姿勢を取るのか?等々に意識を払う必要があるかと思います。
こうした中、朴前大統領の弾劾、失職に伴う前倒し選挙によって、この5月に韓国の新大統領に就任した文在寅大統領が就任後初めて訪米し、米国のトランプ大統領と面談しました。
そして、この米韓首脳会談に関する各種報道を見ていると、
「そもそも、その基本姿勢として、中国本土や北朝鮮、或いはロシアとの関係を相対的に重要視するのではないか、そうした延長線上で、米国のミサイル防衛システムであるTHHADの韓国配備も見直すのではないかと見られる文大統領に対しては、米国のトランプ大統領は厳しい見方を示すのではないか?」
と見られていましたが、トランプ大統領としても、
「信頼」
をベースとした紳士的な対応姿勢を、一応は、文大統領に対して示したのではないかと思われます。
今回の米韓首脳会議に関する報道の中で私が関心を持った点を、若干、詳細に見てみます。
先ず、韓国は、米国に対して、所謂、
「お土産」
を持って、訪米したようです。
即ち、文在寅大統領に同行して訪米する企業経営者は、今後5年間に米国に128億米ドルを投資する一方、米国から224億米ドルの調達を行うとする合計352億米ドル規模の対米ビジネスを準備することを表明しました。
そして、米国のトランプ大統領と韓国の文在寅大統領との初の米韓首脳会談では、米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉など、通商問題を集中的に取り上げた模様です。
トランプ大統領は、米韓関係に関して、
「米韓FTAが締結されて以降、米国の貿易赤字は110億米ドル以上増えている。
良いディールではない。」
とコメントしつつも、トランプ大統領は、
「相互互恵」
という言葉を繰り返し使い、米韓首脳の信頼関係を強調すると共に、
「貿易障壁をなくし、韓国市場参入をより一層拡大しなければならないだろう。」
とコメント、具体的には自動車産業と鉄鋼産業を挙げ、自動車産業については、
「韓国の企業は自動車を米国で販売している。
米国の自動車関連企業も相互互恵的な原則に基づき、そうできるようになければならない。」
と強調し続けています。
そして、トランプ大統領は、トランプ大統領自身のこうした懸念を表明しつつ、
「文大統領は『公正な競争の場を作る』と答えた。」
と述べています。
トランプ大統領はまた、
「韓国に対し、中国本土の鉄鋼ダンピング輸出を許可しないよう求めた。
そうしなければ、米国の労働者にとって公正ではないからである。
これが我々の貿易関係において非常に重要な第一歩になると考えている。」
とコメントしています。
トランプ大統領は首脳会談の直前の発言で、また、
「今、米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉をしている。
我々は米国の労働者に非常に良い交渉を望んでいる。
両国にとって公正かつ公平な協定になってほしい。」
ともコメントしています。
そして、前述したTHHADの問題には基本的には触れておらず、
「トランプ大統領としては、韓国との関係緊密化には本格的に臨もうとしている。」
と見られます。
そして、日本にとっては、今回の米韓首脳会談は、
「米韓両国が、相対的には信頼関係の緊密化を図ろうと言う姿勢を見せている。」
と見られる一方でまた、
「しかし、米韓相互に一定の不信感も存在しており、その結果として、米韓には適度な緊張感もあり、日本としては、米国に対して、更にアプローチをしていく、そして、日本の相対的な価値の高さを米国に対して示していく必要もある。」
と私は考えています。

[日韓経済協力について]

ところで、私は、先日、名古屋で開催された大きな日韓経済フォーラムにパネルディスカッションのコーディネーターとして参加しました。
このフォーラムは、日韓双方の主催者たちの、
「思い」
が映し出された、とても素晴らしいフォーラムでありました。
そして、フォーラムの冒頭、韓国財界を代表する、そして、現在は教壇に立つ、韓国の著名な先生の基調講演を伺いましたが、その冒頭、
「日韓は何故経済協力が必要か?」
に関する説明が先ず、なされました。
この点に関する先生のお話を私なりに要約すると、以下の通りとなります。
即ち、

  1. 日本の自然災害発生時、韓国の軍事的問題発生時といった非常事態には、相互協力しあう意味がある。
  2. 日韓ともに人口減少社会に突入する中、一つの経済圏となり、質も高く、規模の経済性も生きる共同経済権を構築することに経済的メリットがある。
  3. 日韓の産業構造が類似する中、過当競争を排除、共通利益を求めて強調した方が、日韓双方にトータルメリットが生まれる。
  4. 日本は技術、資本、情報力があり、韓国は現地適応力、瞬発力があると言った、日韓双方の強みを生かした第三国戦略を共に推進していけば、相互メリットは取れる。
  5. 国際標準化を共に推進していけば相互メリットが中長期的に期待できる。
  6. 難しい中国本土に対して、共同戦線を張り、日韓相互のメリットを確保していく上で期待が持てる。

といった形で、
「日韓経済協力の必要性」
を解かれていました。
私も、正に、
「その通り!」
と、同感でありました。
戦争などが起こらぬ程度に、適度に、日韓関係が悪化していれば、米国や中国本土、ロシアなど、周辺大国にはむしろ、
「漁夫の利」
を取られてしまい、日韓は、これら諸国の、
「経済的奴隷国家」
になってしまうのではないかと常日頃から感じている私にとって、
「日韓経済協力」
が実際にワークしていけば、日韓相互メリットが取れると私は確信しています。
しかし、問題はここからであります。
「ビジネスは信頼から始まる。」
とも考えている私にとって、そもそも、
「日韓の相互信頼関係」
は弱いのではないかと見ています。
例えば、民間ベースでは、当初は、経営者同士が意気投合し、日韓ビジネス連携を、たとえスムーズにスタートとしたとしても、日韓は似て非なる国、配当金の支払いや先行投資などについての根本的な考え方の違いが背景となり、関係が悪化、その結果として、
「やっぱり韓国はーーー」
「やっぱり日本はーーー」
とお互いがののしりあうと言った不信感が生まれ、むしろそれが増幅されてしまうといった事例を私はしばしば目にしています。
また、例えば、政府間ベースでは、慰安婦問題や靖国神社問題などを背景に、関係は一向に「本格的」改善を見ずといった状況にあることはご高承の通りであります。
こうしたことでは、如何に、正論を解き、これを具現化しようとしても、具体的成果は上がらないと思います。
「違いを共に生きる。」
日韓双方がお互いを尊重しつつも、
「ハード・ネゴシエーション」
をしていかないと、こうした状況は一向に改善されないと、韓国ビジネスに携わってから33年の私は痛感しています。
そうした意味では、例えば、先にご紹介した韓国の先生もコメントされていた、第四次産業革命を意識した、ものづくりの世界標準作りを行う、日韓共同コミッティーを構築し、これを日韓の相互議論のプラットホームにしつつ、そこで、先ずは日韓がハード・ネゴシエーションをしながら、日韓のものづくり基準を世界標準にしていく努力をしていけば、日韓の相互信頼関係が構築されるきっかけとなるかもしれないと私は考えています。

尚、大韓商工会議所と日本商工会議所は、先日、北海道・富良野で「第11回韓日商工会議所首脳会議」を開催しましたが、大韓商工会議所の朴会長は、開会挨拶で、文大統領と安倍首相が特使を派遣し合い、先の主要20カ国・地域(G20)首脳会議で会談したことに言及しながら、
「今年はもう2〜3回会うことになると思う。
こうして頻繁に会う中で両国が実用的で成熟した協力パートナー関係に発展し、北東アジアの安定と協力にも寄与するよう願っている。」
と明言、また、両国の協力が期待される分野としては、
「新産業と来年の平昌冬季五輪である。」
と強調しています。
更に、朴会長は、
「IoTや人工知能(AI)など多くの分野でデータの蓄積が必要である。
これらの分野で先を行く国々に追いつくため、北東アジアの主要国同士でデータを流通・共有するシステムを構築し、協力することができる。
また、五輪の行事をはじめ大会後の施設活用、地域発展などを巡って意見交換できるよう期待している。」
ともコメントしている点、注視したいと思います。

日韓関係は難しいです、本当に。

 引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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