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2017年7月[Sanada発 現場から]


米国とNATO、そして中露、日本のみちびきプロジェクト


 今回は米国とNATO、中露、そして日本のみちびきプロドェクトについてのトピックスを取り上げたいと思います。

[NATOと米国トランプ大統領、そしてロシアと中国本土]

 世の中には今、通称、NATO、即ち、北大西洋条約機構というものがあります。
NATOは、北大西洋条約に基づき、アメリカ合衆国を中心とした北アメリカ(=アメリカとカナダ)およびヨーロッパ諸国によって結成された軍事同盟であり、その前身は1948年に締結されたブリュッセル条約であります。

 第二次世界大戦が終わり、東欧を影響圏に治めた共産主義の旧ソビエト連邦との冷戦が激しさを増す中で、イギリスやフランスが主体となり、1949年4月4日締結の北大西洋条約によりNATOは正式に誕生しました。
こうした背景もあって、NATOは、結成当初は、旧ソ連を中心とする共産圏(東側諸国)に対抗するための西側陣営の多国間軍事同盟の性格を強く持つものでありました。
また、アメリカを引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む=反共主義と封じ込め=と言う理念を持ち、ヨーロッパ諸国を長年にわたって悩ませたドイツの問題に対するひとつの回答であったとも言われています。

 そして、加盟国は集団的安全保障体制構築に加えて、域内いずれかの国が攻撃された場合、共同で応戦・参戦する集団的自衛権発動の義務を負っており、相互扶助を原則としています。

  そしてまた、当初はアメリカなどの一部で、ドイツの徹底した脱工業化・非ナチ化が構想され、また連合軍占領下ではドイツは武装解除され、小規模な国境警備隊や機雷掃海部隊以外の国軍を持つことは許されず、アメリカ・イギリス・フランス・旧ソ連の4カ国が治安に責任を持つという体制からスタートしました。
しかし、冷戦の開始とともに西ドイツ経済の復興が求められ、主権回復後の1950年には西ドイツの再軍備検討も解禁、西ドイツは新たな「ドイツ連邦軍」の創設とNATOへの加盟の準備を始め、フランスなどはドイツ再軍備とNATO加盟に反対などを受けて、紆余曲折はありましたが、ドイツ連邦軍が1955年11月12日に創設され、西ドイツはNATOに加盟しました。

  こうした一方、旧ソ連が、旧ソ連を中心とする東側8か国によってワルシャワ条約を締結してワルシャワ条約機構を発足させたことから、ヨーロッパは2つの軍事同盟が存在することになりました。

  この後、1989年のマルタ会談で冷戦が事実上、終焉し、続く東欧の動乱と1991年のソ連崩壊によりNATOは大きな転機を迎え、新たな存在意義を模索する必要性に迫られることとなりました。

  1991年に「新戦略概念」を策定し、脅威対象として周辺地域における紛争を挙げ、域外地域における紛争予防および危機管理(非5条任務)に重点を移していき、今日に至ります。

  そしてまた、ソ連の崩壊によりソ連の影響圏に置かれていた東欧諸国が相次いでNATO加盟を申請し、結果として、旧ワルシャワ条約機構加盟国としては、バルト三国を除く旧ソ連各国(ロシア・ベラルーシ・ウクライナ・モルドバ)を残し、その他、全ては、所謂、西欧圏に取り込まれることとなりました。
そして、2000年代後半に入ると、アメリカが推進する東欧ミサイル防衛問題や、ロシアの隣国であるジョージア、ウクライナがNATO加盟を目指していることに対し、経済が復興してプーチン政権下で大国の復権を謳っていたロシアは強い反発を示すようになり、2008年8月にはグルジア紛争が勃発、NATO諸国とロシアの関係は険悪化し、「新冷戦」と呼ばれるようにまでなりました。

  ロシアは2002年に設置されたNATO・ロシア理事会により準加盟国的存在ではありましたが、このようなことから、NATOとロシアは未だ緊張関係にあるとも見ておくべきかと思います。

 さて、こうしたNATOに対して、米国のトランプ大統領は、先般、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長と会談し、会談後の記者会見では、
「NATOは、もはや時代遅れではない。」
と述べました。

  先の米国大統領選中からNATO不要論を繰り返してきたトランプ大統領の姿勢に、NATO加盟国は危機感を示していましたが、今回のトランプ大統領の姿勢の変化によって、国際金融市場には、
「現状の世界秩序維持」
と言う視点から、安心を与える材料の一つとなりました。

  具体的には、ストルテンベルグ事務総長をホワイトハウスで迎えたトランプ大統領の、
「テロの脅威がNATOの同盟関係の重要性を強化した。
イラクやアフガニスタンといったパートナーに今まで以上に協力して欲しい。」
と言う発言に繋がったと見られてもいます。

  そして、トランプ大統領は、これまでNATOについて、その存在意義を疑問視し、米国の拠出金負担が過剰で偏っているなど、不満を声高に繰り返していましたが、事務総長との共同記者会見で、その考えも変わったと表明しつつ、
「事務総長と私は生産的な話し合いをもち、テロとの戦いでNATOが今まで以上に何ができるか協議した。
ずっと前に私はその点について文句を言ったが、NATOは対応を変えテロと戦うようになった。
NATOは時代遅れだと私は言ったが、もう時代遅れでなくなった。
米国が帳尻を合わせてくれるだろうと依存するだけでなく、ほかの国々も公平に負担を分担すれば、全員がもっと安全になる。」
とコメントしたのであります。

  トランプ大統領は、こうした反面、モスクワにティラーソン国務長官を送り込み、プーチン大統領、ラブロフ露外相との会談も実現させています。
この会談では、主にシリア問題について協議したようですが、まだまだ、NATOを脅威と認識するロシアを意識し、特に、ロシアのプーチン大統領が、
「米ロ関係が悪化している。」
との認識を示していることなども受けて、NATOに対する警戒感が必要以上にロシアに出ないようにも動いているのではないかと思います。
米国にとっては欧州との大切な架け橋であるNATOへの配慮もしつつ、ロシアを刺激し過ぎないようにも意識を払い、また、そのロシアが軍事的には中国本土に近寄り過ぎないように作戦を張り巡らし、更には、中国本土にNATOの絆を崩されないようにも警戒しながら、トランプ政権は巧みに動いていると思います。
米英中露仏独と言った大国を含めた動きに、NATOと言う組織にも重ね合わせて、今後も動向を注視したいと思います。

[日本が進める「みちびき」プロジェクト]

世界は、
「制空権ならぬ制宙権」
を強く意識して、パワーゲームを展開することを意識し始めています。
「宇宙を制する者は世界を制す。」
であり、中国本土などは、自国単独で宇宙開発を推進し、着々とその権益を広げているものと思われます。
これに対して、我が国・日本は米国の庇護の下、
「制宙権は米国任せ」
といったところがありました。

 しかし、こうした一方で、日本でも、カーナビやGPS機能がついた携帯電話の普及によって、人工衛星を使った測位情報は私たちの暮らしに欠かせないものとなってきています。

  そして、測位衛星により位置を特定するためには、最低4機の人工衛星から信号を受信する必要がありますが、これまで日本国内の都市部や山間地では、高い建物、山などが障害となって4機の人工衛星からの測位信号が届かないことがあり、測位結果に大きな誤差が出ることが度々ありました。
こうした中、今般、日本政府が主導となり開発、遂行された「準天頂衛星システム・みちびき」は、「準天頂軌道」と言う日本のほぼ天頂(真上)を通る軌道を持つ人工衛星を複数機、組み合わせた衛星システムとなっており、現在、運用中のGPS信号やアメリカが開発を進めている新型のGPS信号とほぼ同一の測位信号を送信することで、日本国内の山間部や都心部の高層ビル街などでも、測位できる場所や時間を広げることができるようになりました。
準天頂衛星システムは、補強信号の送信等により、これまでの数十メートル程度の誤差だったGPSに比べて、1メートル程度、更にはcm級へ測位精度の向上を目指して作られたものです。

 普段カーナビを使っている方の中には、現在でも十分実用に耐え得ると思われる方もいるかもしれませんが、「みちびき」と言う衛星測位システムは、カーナビ以外にも、

  • 地図作りや建築作業に欠かせない測量
  • 子供や高齢者の見守りサービス
  • 農業機械等の自動制御
  • 地震や火山の検知
  • 天気予報

 など、応用範囲が広がっており、それに伴い精度や信頼性の向上等の高度化が求められていることから、今後、これまでにない位置情報を活かしたサービスも生まれるかもしれません。

  そしてまた、これは、日本にとっては、ミサイル防衛やミサイル誘導という、実は安全保障上の目的にも使い得るものであり、日本にとっては大きな財産となると期待されます。

  こうしたことから、日本が今般導入した、
「みちびき」
のプロジェクトは多角的な視点から注目していくべきものであると私は考えています。

 しかし、こうした日本が米国と連携してミサイル防衛とミサイル誘導のシステム強化を図ることに対しては、中露とも警戒感を示しており、中国本土は、日米の日本海や東シナ海海域・上空近くで展開される合同軍事演習を懸念したり、韓国に配備された米国のTHAADなどを厳しく批判しています。
そして、ロシアに関しては、プーチン大統領自ら、北方四島問題に関連する形で、
「日本の主権下に入れば、これらの島に米軍の基地が置かれる可能性がある。」
と述べつつ、日米安保条約が適用される現状では日本への返還は難しいとの認識を示し、制宙権を意識した日米連携を危惧する発言をこの時期に行ってもいます。
上述したような平和利用としての「みちびき」の効果を期待する一方で、中露がこうした警戒感を示していることを私たち、日本の民間人も一応、念頭に置いておく必要がありそうです。

 引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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