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2017年11月[Sanada発 現場から]


北朝鮮問題とロシア


北朝鮮問題の進展は気に掛かります。
 ここのところ、北朝鮮問題が落ち着いているせいか、日経平均株価も上昇トレンドを続け、韓国株も史上最高値をつけています。
 こうした中、今月は北朝鮮を軸としたトピックスを取り上げてみたいと思います。

[第二次世界大戦前の日本と現在の北朝鮮]

 私は、国際金融社会で働いている頃、家族はもとより仲間たちからも、
「人を立ち上がれぬほど追い詰めてはならない。
 例え、それが正義であっても。」
とよく諭されました。
 理由や背景が何であれ、人は自らが可愛く、あまりに責め立てられると、
「自己防衛本能」
が発揮され、暴発する可能性が生じる、その結果、大きな衝突が生まれる危険性があるので、例え正義、正論であろうと、他者を責める場合には、
「必ず、少しは、逃げ道を残してあげるべきである。」
と言うのが皆の私に対する「諭し」の内容でした。
 私たち人間は感情を持つ動物であり、また、本能的に自らを守る習性もありますから、他人に責め立てられれば、ほぼ間違いなく、その圧力に対抗しようとします。
 その結果は、責める人にも責められる人にも幸せをもたらさないでありましょう。
 従って、何度も繰り返しますが、
「例え正義、正論であろうとも」
他者を責める際には慎重であるべきだという考え方は説得力があるものと理解しています。
 そうしたことを考える際、一つ、私が日本人として思い出すことは、
「満州事変から国際連盟脱退、ABCD包囲網、そして真珠湾攻撃、敗戦という歴史を持つ日本が国際社会から、
“真綿で首を絞められるように”
責め立てられ、結局逃げ場を失い、日独伊三国軍事同盟を結ぶもイタリア、ドイツが先に降伏、そして、1945年に残された日本も敗戦に追い込まれた。」
という歴史を思い出してしまいます。
 簡単にその道を、なるべく客観的事実だけを追って眺めてみます。

 1931年9月18日の満洲事変の発生で、国際連盟は中華民国の提訴と日本の提案により、日中間の紛争に対し介入を開始し、リットン調査団を派遣しました。
 リットン調査団の報告を受けて、1933年2月24日の国際連盟総会では、
 「日中紛争に関する国際連盟特別総会報告書」
が議決され、賛成42票、反対1票(日本)、棄権1票(シャム=現タイ王国)、投票不参加1国(チリ)で採択されることとなりました。
 この結果を受けて、中華民国は規約16条の経済制裁適用を要求しましたが、対日経済制裁には重要な立ち位置にあるアメリカ合衆国は、国際連盟に対し制裁に反対であることを、リットン調査団が派遣される以前の1931年11月11日の段階で、駐米英国大使が確認しており、中華民国の要求は、他の代表の沈黙および討議打ち切り宣言により先ずは履行されるに至りませんでした。
 その後、1937年7月7日、盧溝橋事件が勃発し、日中間がいよいよ全面戦争に入ります。
 そして、中国の提訴を受けた国際連盟総会では、1937年9月28日に中国の都市に対する無差別爆撃に対する、23ヶ国諮問委員会の対日非難決議案が全会一致で可決されることとなりました。
 翌1938年9月30日の理事会では、連盟全体による集団的制裁ではないものの、加盟国の個別の判断による規約第16条適用が可能なことが確認され、国際連盟加盟国による対日経済制裁がいよいよ本格的に開始されることとなります。
 そして、孤立主義の立場から、アメリカ合衆国議会での批准に失敗し、国際連盟に加盟していなかったアメリカ合衆国は、満州事変当初は、中国の提案による連盟の対日経済制裁に対し非協力的でありましたが、日本の拡大を危惧する米国の立場は、不戦条約および九カ国条約の原則に立つものであり、満州国の主権と独立を認めないと言うものとなり、国際連盟と同調する方向となっていきました。
 更に、アメリカ合衆国の孤立主義的な立場が変わるのは、フランクリン・ルーズベルトがアメリカ合衆国大統領になってからであり、ルーズベルト大統領は就任してから1937年の隔離演説発表まで、表面上は日本に協調的姿勢を見せ、日中国間の紛争には一定の距離を置く外交政策を採っていましたが、1937年7月に盧溝橋事件が発生すると、対日経済制裁の可能性を示唆、1937年10月5日に隔離演説を行い、孤立主義を超克し増長しつつある枢軸諸国への対処を訴え、そうした結果として、最終的には、1941年7月から8月にかけての対日資産凍結と枢軸国全体に対する、石油の全面禁輸措置が完成、これにより、日本が認識した、米国、英国、中国、オランダによるABCD包囲網が完成にしたのであります。
 尚、上述した1933年2月24日、国際連盟特別総会でのリットン報告について審議の最終的な同意確認において、日本の国際連盟代表であった松岡洋右全権は、その表決および同意確認直後、席上で、
「もはや日本政府は連盟と協力する努力の限界に達した。」
と表明し、大日本帝国の立場を明らかにして総会会場を去り、その後、同年3月27日、日本は正式に国際連盟に脱退を表明、その後は国際社会での孤立感を深めていくこととなったのでありました。

 皆様、よくご存知の日本の歴史です。
 そして、日本はその結果として、第二次大戦に突入、敗戦、不戦国として、平和憲法を持ち、国際社会と協調する国として、今日に至っているはずです。

 ここで、一つ、当時の日本は、日中紛争不介入の立場を示していた米国をもう少し取り込み、国際社会での孤立感を醸成しないように動ければよかったとの見方ができます。

 昨今の国際情勢を眺めてみると、日本のように真綿で首を絞められるように孤立感を深めている国が、北朝鮮と言えましょうが、私の認識は、北朝鮮は、国際社会を知り、慎重に考え、大胆に行動する国と化しており、第二次世界大戦前の日本についても研究、よって、当時の大日本帝国が、米国を取り込目なかったことを意識、北朝鮮は今、ロシアand/or中国本土の取り込みに必死になっているものと思います。
当時の日本との違いは北朝鮮はロシアと中国本土と言う大国二枚のカードを持っており、米国一枚であった日本よりもその点では余裕があるかもしれません。
 一方、そうした状況を意識する米国は、いよいよ、ロシアと中国本土を北朝鮮の金正恩政権(北朝鮮そのものではない)から引き剥がそうとしはじめており、これが効果を上げると北朝鮮はいよいよ、丸裸、
「窮鼠猫を噛む」
ような事態となる可能性が高まりましよう。
 そして、その際の北朝鮮の暴発、軍事的行動の直接的被害を受ける国の一つに、日本は間違いなく挙げられると私は思っています。
 そうしたことから、日本の一国民として事態を危惧しておりますが、そのリスクがある、日本のリーダーが、国連総会の場に於いて、
「対話の窓は十分に開いていたのにそれに応じなかったのは北朝鮮である。」
「今必要なものは圧力である。」
と強調する姿を見て、私も北朝鮮のやり方に憤懣やるかたない思いはあれど、しかし、この演説は、被害を受ける危険性が高い我々日本ではなく、英国やフランスといった国連安全保障理事会の拒否権を持つ常任理事国などにお任せし、日本はその裏で実効性のある圧力をかけつつ、可能な限り、平和的解決の道を求めて、しつこく、しつこく、しつこく行動すべきではないかとも感じました。
 何れにしても、北朝鮮情勢は更に難しいステージに上がりそうです。

[北朝鮮情勢と米中露について]

 さて、その北朝鮮問題ですが、昨今の北朝鮮情勢を巡り、国際社会では、トランプ大統領と安倍首相の国連演説を機に、一層、
「対話か圧力か?」
が注目されています。
 こうした状況にあって、韓国ではかつてより、
「北風と太陽」
と言うイソップ寓話のひとつが意識されてきました。
 皆様、よくご存知の通り、この寓話の教訓は、
 「物事に対して厳罰で臨む態度と、寛容的に対応する態度の対比を表す言葉として用いられる。
 そして、手っ取り早く乱暴に物事を片付けてしまおうとするよりも、ゆっくり着実に行う方が、最終的に大きな効果を得ることができる。
 また、冷たく厳しい態度で人を動かそうとしても、かえって人は頑なになるが、暖かく優しい言葉を掛けたり、態度を示すことによって初めて人は自分から行動してくれる。」
と言った内容が包含されていると理解されています。
 従って、強硬な姿勢を示す北朝鮮に対しても、
 「融和を以って解決することが先決である。」
との議論が生まれ、国際社会もここまでは我慢を重ね、対話の努力をしてきたのでありましょう。
 しかし、前述したトランプ大統領と安倍首相の発言は、平たく言えば、
「もう堪忍袋の緒が切れた!!
 北朝鮮、いい加減にしないといよいよ本気で怒るぞ!!」
とかなり強烈にその意思を示したこととなります。
 そして、そうした内容は例えば、英語では、
「President Donald Trump downplayed the possibility of a dialogue with North Korea after its latest missile test.
In particular, they have sought to apply economic pressure through China, North Korea's only major ally.」
と言った表現の中にも見られ、もはや対話は重要視しない、北朝鮮に対して影響力を持つ中国本土を通じて経済的な圧力を加えていくぞと言った姿勢が明確に示され、中国本土もこれに呼応するように、対北朝鮮取引の見直しに入り、例えば中核的な銀行の北朝鮮取引停止措置に出るなど、これまで以上に北朝鮮取引を限定的とし、制裁強化の姿勢を目に見える形で具現化してきています。
 これにより、米中連携はいよいよ強化され北朝鮮がコーナーに追い込まれているとの見方も出てきていました。
 そうした中、私が今、注目しているのはロシアです。
 上記の英語のコメントで北朝鮮に対する唯一のサポーターは中国本土のみであるかのように書かれていますが、私はロシアがまだ影響力を持っていると見ています。
 そもそも北朝鮮建国の流れを見ると、北朝鮮建国の父である金日成氏(1912年4月15日〜1994年7月8日)は、もともとは朝鮮の革命家・独立運動家であり、その後、北朝鮮の政治家、軍人となった人物です。
 そして、満州に於いて抗日パルチザン活動に部隊指揮官として参加し、第二次世界大戦後はソビエト連邦の支持の下、北朝鮮に朝鮮民主主義人民共和国を建国したことからすれば、北朝鮮のそもそもの関係国は旧ソ連であり、それは今のロシアとなります。
 しかし、ロシアの国力の低下と中国本土の国力拡大を背景に、北朝鮮は、ロシアに対する経済依存を中国本土にシフト、然し乍ら、決して中国本土の傀儡となることはせず、中露、そして米国と言う大国の狭間で生き延びてきました。
 むしろ、米中露のパワーゲームを巧みに利用してきたとも言えます。
 然るに昨今、米国と中国本土の軍事筋が急接近し、「金ファミリー帝国」の撲滅に対する共同戦線を張ろうとし始めたことを受け、北朝鮮は、そもそもの関係国であるロシアに助けを求め、ロシアも北朝鮮に対する権利を失うことを嫌い、その北朝鮮と呼応する形で、
「北朝鮮と米国、場合によっては北朝鮮と中露」
の対話の場を積極的に作ろうとする動きを示していると思われます。
 こうした中、また、米露は北朝鮮問題とイラン問題を天秤に掛け、ロシアが影響力を残したい北朝鮮問題では米国がロシアの意向を尊重、一方で、米国がイスラエルを意識しながら、警戒しているイランの問題に関連しては、米国がロシアの協力を求めると言った形で、協調する可能性もあると思われます。
 いずれにしても、果たして、こうしたロシアと北朝鮮の動きが上手く作動するのか否か、を私たちは今注目しなければならないと考えています。
複雑な国際情勢です。

 引き続き宜しくお願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光
 


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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