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2010年4月[Sanada発 現場から]


「中国と韓国、ある側面から見た見方」

[世界経済の実態]
 今日は先ず、世界経済の現状を概観した上で、日本企業の進むべき方向性についての私の見方をご披露し、皆様方のご参考として戴ければと考えています。
 世の中には様々な見方があり、私の見方が絶対であるとは決して申しませんが、私なりに客観性を以って、以下、表現をしていきたいと思います。
 ご一読ください。

 先ずは2008年9月に発生した世界的な経済危機以降の世界を概観すると私は以下のようになると考えています。

(1)過度の、また広義の定義による信用創造によって作られたバブル経済が突然の信用失墜によって崩壊、これにより齎された急激な信用収縮状態となり、そうした世界経済に回復の兆しは見られるものの、本格回復にはまだ至っていない現状にある。
金融機関が金融機関に対して与信を躊躇する異常事態からの改善は見られるものの、主要各国の財政収支の悪化と米国の住宅関連証券の暴落の危険性はまだ残存しており、金融問題から発する二番底発生の可能性は完全には否定されていない。

(2)こうした状況下、世界の支配システムの行方はどうなるか?超大国の覇権主義?それとも協調(均衡)主義?となるのか不透明である。
―Key Pointは−
「基軸通貨・米ドル」の「立ち位置」に変化があるか、否か?
G7(G8)、G20が如何なる動きを示すか?
短期的には、基軸通貨・米ドルを再び容認?!
しかし、中長期的には基軸通貨・米ドルの相対的地位は下落する?!
そしてG−2か?
等々といった点に垣間見られる。

(3)直近の国際原油・原材料価格、食糧価格動向と為替、株、金利動向も不透明である。
原油価格は1バーレル60〜80米ドルが適正値?
国際原材料価格は上昇トレンドか?そして、商品取引市場で進むインデックス化取引拡大の可能性が見られる。
株は金利と連関、当面は若干の円上昇トレンドか?
先進国金利は景気を睨み低金利誘導、新興国金利はバブル発生を防衛するよう引き上げトレンドに転ずる。先進国の長期金利は国債発行と関連してテクニカルには上昇か?円の長期金利も上昇の可能性が出てきている。

(4)中国は取り敢えず安定化、これを背景に相対的には高い経済成長を維持していくであろう。
2009年の工業生産は前年対比18.5%増、小売販売額も同17.5%増、内需だけでも中国経済の成長を支える力がある?!と見られ始めている。
但し、中国経済にもあるアキレス腱。やはりインフレ懸念、バブル懸念が大きく、預金準備率は上昇トレンドに向かうであろう。

(5)インドやベトナムも発展の可能性がある。
また、韓国の動向には日本としても注目していく必要性がある。

(6)自動車業界の転換、原子力ビジネス、鉄道の高速化、環境ビジネス
―Key Pointは、「脱化石エネルギー化の進展」

(7)排出権取引は金融取引?!
原材料市場はよりインデックス化され、金融取引に組み込まれる。
如何にして投機性資金の動きを牽制するのか?
そして、日本の脆弱性が見られ、万一、世界的な景気の二番底が具現化されると、最後に大きく落ち込むのは日本?!との見方も出てきており、私はとても心配しています。

 しかし、こうした世界情勢下でもなお、一人勝ちする「中国経済」を私たちは注目しなくてはなりません。
 東アジアのブラックホール・中国、その力は、
「人口、国内総生産、経済成長率、貿易総額、外貨準備高、R&D投資規模、自動車生産台数、鉄鋼生産規模、造船規模と資源輸送力、海軍力の強化」
等に象徴され、中国自身、
「一国主義的に思考し、二国主義的に問題を追及、その上で多国間主義的に振舞う」
ことを意識しており、更に、新興国として台頭しているインド、そしてかつての大国・ロシアとの連携を進めていると言えましょう。

 そして、その中国の拡大の背景には、
 *中国には真の実需を背景とした消費がある。
 *中国には真に必要なインフラ開発意欲がある。
 *中国は日米に比べて財政状況がよいことから、財政出動を伴う景気対策を実施し易い。
 *中国の国債の主要な引き受け手は国内投資家となっており、国際投機筋の攻撃対象となりにくい。
 *相対的に見ると、今年も世界経済の成長の牽引車はやはり中国であり、世界が中国系座に対してアタックしないであろうと予測される。
ことなどが挙げられるかと思います。

[日本経済の実態]
 それでは日本経済はどうか?
 結論から言うと、私は、
「まだまだ本格回復にほど遠い。」
と感じています。

 特に、日本企業の経営の視点から見ると、コスト削減が限界に近づいている今、一部では既にコスト削減が限界に近づき、常勤社員の人件費の一律カットなどにも及んでおり、こうした状況から見れば、日本企業がすべき最大のポイントは、
「如何に金額基準で売り上げを拡大するか?」
に尽きると考えられます。

 もとより、企業の利益というものを煎じ詰めて考えれば、
「売上高マイナス総コスト」
であり、繰り返しになりますが、総コストの削減が限界に近づいている今、利益を確保しようとすれば、それは売上高の拡大にしかないと私は考えています。

 そして、これを国家的視点から見ると、
「貿易立国、技術立国に回帰し、きちんと外貨=基軸通貨を稼げる国となる。」
ことであり、内需に頼るのは誤った方向である!!とも私は考えています。
  ここで、こうした点を意識して日本経済の現状を整理すると、

1.短期的な視点
(1)相対的な円高の与える影響
(2)デフレ下に於ける原材料、エネルギー価格の高騰の影響
(3)国際比較では相対的に高い人件費の影響
(4)内外における需要の低迷と販売先発掘の困難さによる影響
(5)財政出動に伴う景気対策の将来的な剥げ落ちによる影響
(6)派遣問題に代表される人材確保から表れる影響
(7)金融システム不安、特に活性化しない信用創造による影響

2.中長期的視点
(1)国内政治に於ける潜在的混乱の影響
(2)外交問題、特に日米外交と日本の国際社会に於ける立ち位置、日本の存在力低下による影響
(3)中長期的な為替・株・金利・原材料価格変動による影響
(4)財政赤字による影響
(5)人口減少、人口構造変化による影響

があり、日本経済は短期的な懸念のみならず、成長の潜在力も低下してきていると見ておかなければならないと私は考えています。

[日本の、そして日本企業の対応]
 こうした厳しい世界経済、日本経済の状況下、それでは、日本は、日本企業はどうすべきなのでしょうか?
私は、以前に日刊工業新聞で示しました、
「仙(専)人国家を目指せ!!」
と、改めて申し上げたいと思います。

 「ものづくり大国」としての性格を維持、決して、「ものづくり奴隷大国」とならぬ為に、資源、エネルギーを確保する必要性があり、
「ひと、もの、金、情報の根幹を握る国際戦略」
を先ずは構築する、そうした戦略の下、

 *組み立て工業からプロセス工業へ。マニュアル化できない技術が差別化の道を歩む。
 *新素材の開発と原材料、エネルギー資源を備蓄する。
 *世界経済に貢献する真の環境ビジネスを拡大する。
 *世界経済に貢献する新エネルギービジネスを普及する。
 *技術のブラックボックス化の利用とアフターケアの利用を拡大する。
といったことを推進、各分野での、
「国際スタンダードを如何に握るか?」
を考えつつ、日本は目立たぬ影のスタンダードを握るべきであると思っています。

 そしてまた、
「需要効果、雇用効果、知恵活用」
を意識しつつ
「成長を支えるプラットホーム作りに専念(科学と技術)」
し、日本企業の「売上高」拡大の源泉をしっかりと構築していくことが重要であると考えます。

 こうした一方で、日本企業は、
「比較競争優位を持ったものづくり企業となる。
一致団結した企業が生き残る。

 そして国際的に見た場合には、良いものを高く売る姿勢が必要となる。
 基本形は少量(可能な限り大量)、多品種、高品質、ハイ・マージン型ビジネスである。

 原材料の料と価格の安定確保やデザイン構築といった川上から、実際の生産・製造過程、そして、物流や高価格で販売することが可能な売り先を効率的に見つけていく販売戦略といった川下までを一貫する「真のものづくり大国」を意識した企業となる。
 ものづくりの伝統を如何に伝えていくか、ものづくりは人づくりであり、後継者作りを意識する。
 ビジネスは待っていてもやってこない。
 消費に火をつけ、真の消費を引き出す総合戦略が必要となる。」
といった点を強く意識すべきであると考えます。

[日本の、そして日本企業の対応]
 そして、具体的には、
1.シュンペーター先生
  五つの新結合
  (1)新しい製品、新しい品質の製品生産
  (2)新しい生産方法の導入
  (3)新しい販路・市場開拓
  (4)原料、或いは半製品の新しい供給源の獲得
  (5)新しい組織の実現

2.ドラッカー先生
 変化を当然かつ健全と考える!!
 革新のための七つの機会
  (1)予期せぬ成功と失敗を利用する
  (2)ギャップを探す
  (3)ニーズを見つける
  (4)産業構造の変化を知る
  (5)人口構造の変化に着目する
  (6)認識の変化を捉える
  (7)新しい知識を活用する
等々を意識して、新たなビジネス・チャンスを構築、売上高を拡大し、総コストとの差額となる利益の拡大を、日本企業としては、まずは目指していくべきではないでしょうか。

 そして、最後の決め手は、
「自力再生」
しかないと思います。

皆様方は如何お考えになられますか?


 次回号もまた、どうぞよろしくお願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光

真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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