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2010年5月[Sanada発 現場から]


「国際情勢概観」

[世界経済の中で注目される新興国経済]
先日、国際機関である国際通貨基金(IMF)は最新の経済見通しを発表しました。

これによると、本年の世界経済の実質成長率は4.2%と予想されており、前回発表の1月時点から0.3%上方修正されています。

中国本土やインドなど新興国経済が堅調であり、米国も立ち直りが早まるとの見方を背景に上方修正をしたようであります。

またこれにより、2011年の世界経済は4.3%成長との見通しが示されています。

そして、IMFは世界経済について、

「世界各国の財政、金融両面からの政策のてこ入れにより、当初の予測以上に好調に回復している。」

と分析したとしており、新興国ではアジアの伸長、特に中国本土は2010年には10.0%成長し、2011年も9.9%成長し、世界経済の成長を支え、またインドも2010〜2011年で8%台の成長が続くとの予想に上方修正している点、特記されます。

 一方、IMFは先進国経済に関して、

「米国が欧州や日本と比べて好調に転じた。」

とコメント、米国は2010年が3.1%、2011年は2.6%で、両年とも前回の見通しが上方修正されています。

 しかし一方で、IMFは欧州を中心に、一部の先進国で財政の悪化が急激に表れ、景気の下振れリスクが出てきたとの見方も示しており、特に、

「現状のままではギリシャに対する市場の懸念が高まり、公的債務の危機が発生し、(ポルトガルなどの)他国に波及する恐れがある。」

と警告、また私はこれに加えて、他国への波及については、

「欧州国家への波及はもとより、現在沈静化している米国の、フレディマック、ファニーメイといった政府系住宅金融公社が発行した債券価格の混乱に伴う、経済危機の再燃の可能性をも実は懸念している。」

と理解しています。

 中国本土やインドなど多くのアジアの新興国は積極的な財政政策を維持することが可能としているのとは対象的な見方となっています。

そしてまた、アジアの新興国経済については、

「景気過熱への対策として自国通貨の切り上げを行う必要がある。」

とコメント、人民元の切り上げを意識していると思われるコメントをしている点は注視しなければならないでありましょう。

 今後の動向を注視したいと思います。

 

[韓国と米中関係について]
こうした世界経済情勢にあって、私は韓国経済は今、大変面白いポジションにあるのではないかと見ています。

即ち、私は韓国政府・李明博政権は現在、前二代の政権の政策スタンスから転じて、米国寄りの姿勢を強めていると見ています。

そしてまた、米国も「米国離れをする日本」、「米中の狭間で微妙な政権運営を続ける台湾」を意識し、東アジア、就中、北東アジア政策の同盟国としての韓国の価値を再認識しているようにも感じています。

そして、その韓国に対して、米国は様々な国際協調を展開しているものと見ており、

「韓国勢の民間原子力案件の国際入札」

に於いて、様々な形で水面下のサポートを行っているとの見方をしています。

 原子力案件は、米国にとってはテロとの戦いの中で一つの関心事項であり、米国としても安心できるパートナーを優先してサポートするであろうし、また原子力発電案件について、実務実績が少なくなった米国企業の手足となって、きちんと協調するパートナーを、米国離れをする日本以外に見つけなければならないとの視点から、韓国勢に白羽の矢が立ったと私は見ています。

こうした状況下、今般、原子力案件で協調するだけでなく、油田に関しても米国は韓国勢への利権供与を示したのではないかと思われる動きを示しました。

即ち、韓国のハンファグループの中核企業であるハンファは、米国・トリオ・ペトロリアムなど3社が保有する米カリフォルニア州の油田「リンチ・キャニオン鉱区」の権益50%を取得したと発表しています。

これにより、ハンファは海外での資源開発に本格参入することになります。

ハンファは今回の権益取得を受け、今年10月には2,900万米ドルを投資し、鉱区の運営権も確保する計画、そして同鉱区は日産500バーレルの原油生産を行っており、採掘可能埋蔵量は約1,040万バーレル、ハンファは今後、同鉱区で日産2,900バーレルの生産を目指すと見られています。

 ハンファでは、

「今後北米地域を中心に、中東、中南米でも積極的に油田開発を行う計画である。」

との姿勢を示唆していますが、こうした背景には、米韓の水面下での協調が前提とされているのではないかと私は考えています。

こうした一方で、その韓国に対して、中国本土の中央銀行である中国人民銀行と中国本土の国富ファンド、中国投資(CIC)が昨年8月以降、韓国国債を約3,000億ウォン相当を買い入れていたと見られています。

これが事実であるとすると、中国本土の国家機関が韓国国債を本格的に買い入れたのは初めてとなります。

 そして、韓国政府・金融監督院は、昨年8月から今年3月までの中国本土・投資家による韓国の債権売買状況は、2兆6,330億ウォンの買い越しで、買い越し規模は毎月3,300億ウォン(約277億円)に達しているとコメントしています。

これは、同期間の外国人による債券買い越し額71兆9,240億ウォンの3.7%に相当すると見られています。

 また、金融監督院は、

「中国本土の投資家が買い入れた韓国国債の大半は中長期債である」

ことを示唆しています。

また、これまでのところ、他の外国人投資家とは異なり、韓国国債を買い取るだけで、売却はしていないとコメントされています。

そうした上で、

「中国本土の国家機関が韓国国債を買い入れたのは、2兆4,000億米ドルに達する外貨準備高のポートフォリオを多様化するのが最大の狙いとみられる。

中国本土は米ドル安進行に備え、昨年11月以降、米国債を500億米ドル以上売却し、金などへの投資割合を高めた。

韓国国債を買ったのもそうした一環と言える。」

との見方を示しています。

 もちろんそうした見方が大きな背景であると私も考えています。

 しかし私は、中国本土は、地政学的な韓国の価値と米韓関係の接近を意識した韓国国際の買い入れといった側面も根底の一つにあるのではないかと考えています。

 そして、韓国はこうした米中のアプローチを上手に生かしつつ、その国力、プレゼンスを高めようとしているのではないかと見ています。

 

[中国本土経済、そして環境ビジネスと日本]
 さて、一方、私は、世界は今や、

「地球環境問題」

を共通の課題にして、協力をしていこうとの姿勢を見せており、私はそうした意味では素晴らしい方向性にあると考えています。

しかしながら、そうした反面、

「先進国は今までの環境破壊を棚に挙げて開発途上国にも先進国同様の規制を求めるのか?」

「開発途上国の中でも急激な発展の影で、環境破壊を進める国に、特別な規制は必要ないのか?」

といった様々な議論も起こっており、こうした議論に対して対応策を確立することは決して簡単には出来ないのもまた事実でありましょう。

こうした現状下にあっては、各国が先ず、自らの倫理観との「地球市民」の意識を以って、どれだけ自制をしていけるかといったことが大きなポイントの一つとなりましょう。

世界の大国の一つである中国本土では、最近、

「向こう10年間、中国本土のエネルギー消費量は世界一となり、中国本土国内のエネルギー生産量と需要の差が拡大、エネルギー輸入量が総消費量に占める割合は上昇する。

 今後10年で中国本土は米国を超える世界一のエネルギー消費国となる。

但し、人口が多いことから、一人当たり消費量は日本やヨーロッパ諸国の半分程度、米国の3分の1にも及ない。

一方、中国本土のエネルギー生産量と需要の差は広がり、エネルギー輸入量が総消費量に占める割合は現在の3%から2020年には20%に達する。

そして、世界は、中国本土に対して、一層の排出削減義務を引き受けることを要求する声が高まるであろう。

これにより、中国本土のエネルギー政策は巨大な圧力を受けるという事態に直面することになる。」

との認識をした上で、こうした結果として、

「中国人民の環境保全に対する意識は大きく向上するだろう。

中国本土はエネルギー構造をクリーンエネルギーに転換し、経済構造を低炭素経済に転換する方向で進めていく。

近年、中国本土の省エネ・排出削減政策が強化され、エネルギー消費弾性係数は2004年の1.6から徐々に低下し、2008年には0.44まで低下した。

発展途上国にとっては非常に低いといえるこのエネルギー消費弾性係数を維持し、今後10年の中国本土のGDP成長率が平均8%となれば、エネルギー消費量は年平均で4%増加し、2020年の中国本土のエネルギー消費量は標準石炭ベースで45億トンを上回ることになる。

これは原油32億バーレルに相当し、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリアの合計に近い。

中国本土国内のエネルギー増産では需要の増加に対応できないため、中国本土のエネルギーの対外依存度はより上昇し、2020年には中国本土のエネルギー需要の20%弱が輸入に依存する。

2020年に中国本土のエネルギー輸入量は標準石炭ベースで8億トンに達する見込みであり、これは原油5.6億バーレルに相当し、世界のエネルギー輸出量の5分の1を占める。

中国本土など発展途上国の経済の急成長によりエネルギー需要が増加し、エネルギー価格を押し上げている。

石油を例に挙げると、10年後に原油価格は1バーレル200米ドルまで上昇し、少なくとも150米ドル以上に維持される見通しである。

石炭、天然ガス、液化ガス、ウランの実質価格が現在の倍となることもほぼ間違いない。

エネルギー消費量の増加による二酸化炭素排出問題が世界で注目されるようになり、今後10年、気候問題と環境問題はテロ問題を超える最も重要な国際課題となる。

水力発電、原子力発電、風力発電、太陽光発電などの非炭素エネルギーの発展、硫黄回収、炭素回収貯留(CCS)などのクリーンエネルギー技術の発展と普及に力を入れることこそが、中国本土がエネルギー難を脱する唯一の道である。」

と強く意識をしていると私は見ています。

 そして、その手始めに、「脱化石エネルギー」を意識した、

*原子力発電所建設計画の拡大

*鉄道の高速化事業の拡大

を具体的に目指し始めているようであります。

 こうした中国本土の姿勢を賞賛、そして大いに期待をしていきたいと思います。

 そしてまた、そこに日中協力の大きな接点が生まれているとも考えており、また日本企業にとっては、いわゆるビジネスチャンスの芽も生まれてきていると考えています。

皆様方は、こうした一連の国際情勢の中にあって、日本はいったいどのように生きていくべきか?について、どのようにお考えになられますか?


 次回号もまた、どうぞよろしくお願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光

真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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