国際機関である経済協力開発機構(OECD)は恒例の、「エコノミック・アウトルック」を発表しましたが、2010年及び2011年の世界全体の経済成長率見通しを上方修正しました。
こうした様子を見ると、
「ギリシャ問題に端を発する欧州危機の危険性がある中で上方修正したのであるから、OECDは世界的な二番底はないと見ている。」
とも言えましょうが、一方で、穿った見方をすると、
「二番底発生の可能性を意識しつつも、意図的に二番底はないと発表している。」
とも言え、その真意を掴み取る必要がありましょう。
そこで、OECDのコメントを見てみると、
「引き続きアジアに牽引され、世界経済は予想より早く景気後退から回復する。
但し、先進国の巨額の債務と中国本土など新興国の資産バブルといったリスク要因があることはわすれてはならない。」
ともコメントしています。
しかし、いずれにしても、OECDはそうしたリスク要因があるにも拘わらず、
「順調に行けば、世界経済はこれまでの予想以上に回復をする。
だから、見通しを上方修正した。」
と伝えており、その点は様々な意味で注目すべきところであります。
更にOECDのコメントを見てみましょう。
OECDは、世界経済全体の成長率について、2010年は4.6%、2011年には4.5%になるとして、これまでの見通しを引き上げました。
前回は昨年11月の見通しであり、それは、それぞれ3.4%、3.7%だったことから1.2%、0.8%の引き上げとなります。
また、世界の雇用市場についても前回に比べてはるかに楽観的な見方を示し、OECD加盟31カ国の失業率は約8.5%でピークアウトしたのではないかと見ています。
そして、先進国の成長率については、
「リーマンショック発生地・米国が回復をリードし、ユーロ圏が出遅れる。
即ち、米国の国内総生産(GDP)伸び率見通しは2010年、2011年ともに3.2%で、11月見通しの各2.5%、2.8%から上方修正した。
日本の成長率見通しは、2010年は3.0%に前回(1.8%)から上方修正、2011年は2.0%に据え置いた。
また、ユーロ圏の域内成長率は1.2%と1.8%で、前回(0.9%と1.7%)から若干引き上げに留める。」
としています。
そして、先進国が直面している最大の課題について、
「債務の削減と欧州から広がった金融市場の動揺を抑えることであるが、多くの国にとって財政再建が喫緊の課題であり、それが長期的な持続的成長の土台になる。」
とコメントしています。
これに対して、中国本土やインドを筆頭とする新興国については、
「好況、不況の波のシナリオを排除することができない。
中国本土やインドなどを含む一部の非加盟国では、インフレ圧力を抑制し、資産価格バブルのリスクを軽減するため、金融政策を展開、強力な引き締め政策が必要とされる。」
とコメントした上で、中国本土については2010年のGDP伸び率を11.1%、2011年を9.7%と予想し、昨年11月時点の見通しの各10.2%、9.3%から上方修正しています。
特に成長著しい、世界経済の牽引役ともなっている中国本土については、
「不動産市場の鎮静化と土地価格の抑制を目指した措置が実施されても、過熱リスクは払拭できない恐れがある。」
とコメントしており、人民元の切り上げ問題とともに注目しておかなければならないでありましょう。
いずれにしても、国際機関であるOECDのこうした見通しをどのように受け止めるか、今一度、細かい、また多角的な視点からの分析を続けたいと思います。
尚、同じく国際機関の一つである世界銀行のゼーリック総裁は、
「新興国が世界的な経済危機からの脱却で主導的な役割を果たしている。
しかし、その一方で、中国本土やインドの状況は、やや過熱の危険性に直面しつつあるのも否めない。」
との見方をしている点、最後に付記しておきたいと思います。
皆様方は如何ご覧になられますか?
さて、今月号ではこちらの資料もご覧戴きたいと思います。
これをご覧戴きながら、国際社会に於ける日本の概況をご確認戴ければ幸いで御座います。
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