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2010年8月[Sanada発 現場から]


「ものづくり大国の真骨頂」

 先日は埼玉に本社を置く日本有数の金型中堅・中小企業を訪問させて戴きました。

 高精度加工技術、高硬度加工技術、高制度鏡面磨き技術の三つの技術を比較競争優位ポイントに持つ企業であり、現在、事業拡大を計画されている中でのお手伝いをさせて戴くと言うことで伺ったので、

「Confidentiality」

の問題から、ここでは詳細を皆様方にご報告できないのが、本当に残念なのですが、この会社を訪問して、とても感激した点が二点あります。

 今日はその二つの点をお伝えしたくて、ここに取り上げさせて戴きました。

 先ず一点目。

 私は常日頃から、

「日本有数の中堅・中小企業にはマニュアル化しようとしてもなかなかマニュアル化できない職人技があり、だからこそ、大量生産・大量販売のマスのビジネスではない少量・多品種・高品質・高利潤のビジネスに行き着く潜在力がある。

 更に、そのマニュアル化できない技術をマニュアル化しようとして努力をしていく中に、更に高度の技術を見つけ出していく源泉がある。」

と考えていますが、今回、伺ったこの会社では四十台半ばの職人的技術者の方が、金型の最終仕上げの“ナノ”の水準での金型の表面磨きの作業に於いて、なんと、通常の研磨の器具ではなく、

「爪楊枝」

を金型を磨く機械の先端に装着して、丁寧に磨いているのを見ました。

 聞くと、

「通常の研磨用の器具を機械の先端に装着して表面の最終調整をすると、掘れ過ぎて磨いてしまったり、表面が粗くなり、ナノ水準での表面の平面化やなだらかな曲面化の仕上げが出来ない。

 しかし、爪楊枝は固さが適度で、また力を入れ過ぎると折れるので、彫りすぎるということも起こらない。

 だからこれが最高の道具!!

 100金で買ってきました!!」

と仰るのです。

 素晴らしい!!

 日本のナノの金型表面研磨は爪楊枝が支えている。

 二つ目。

  ここが更に具体的に申し上げられなくて残念なのですが、この会社の青年社長はこうしたマニュアル化できない技術によって製造される金型を使って生産される製品に特殊なコイルの巻きつけ方をして生産されたモーター用コアの試作に成功した上で、

「そのコイルの大量生産・大量販売型ビジネス」

への転換をトライ、その上で、それを成功させて、これまでの、

「少量・多品種・高品質・高利潤」

のビジネス・モデルから、

「大量・多品種・高品質・高利潤」

のビジネス・モデルに転換し、その結果として、

「更に規模を大きく、体質の強い企業へと成長する。」

ことを果敢にトライされようとしているのです。

  日本各地に、日本の様々な業種に、こうした一騎当千の人が働く一騎当千の企業がパッチワークのように存在すれば、日本は間違いなく、更に強いものづくり大国になると私は改めて感じました。

 

[ビジネスの方向性]

 さて、上述したようなものづくり大国の企業が目指すべき一つの方向性としては、次のようなポイントにあるのではないかと私は考えています。

私は国家レベルで見た場合、その経済規模が必ずしも成長を続けていく必要はないとは考えています。

 もちろん、その背景には、

「経済の質」

の向上は必要とはなりますが、規模だけを拡大していく必要はないとの考え方であります。

 しかし、その一方で、国家は、

「人間の複合体」

であり、その人間は、一般的には常に発展していこうと努力をする生き物でありますから、

「成長をすること自体」

は、やはり大切なことであるとも考えています。

 そして、国家全体の成長を推進する母体は、たとえそれが社会主義・共産主義の国でなくとも、

「国家、中央政府が重要な役割を果たす。」

と考えてよいものと思います。

 特に世界全体、そして自国自身も構造的な経済の縮小均衡に入っている国にあっては、少なくとも、

「産官学・金融」

がきちんと連携して、ベクトルを一にして、国家の成長戦略を構築していくことが、私は不可欠ではないかと考えています。

 このような私の思考回路に基づいて考えてくると、現状の日本にあっては、

「国家主導の成長戦略作りは不可欠である。」

ということになり、実際に年初、鳩山前政権は、日本の今後の成長戦略について、青写真を作り、それを示し、国会でも議論をしていました。

 その中での現状認識を先ず見ると、

(1)GDPは米国に引き離され、中国本土に追いつかれており、日本の世界に於けるプレゼンスは低下している。
(2)潜在成長率も鈍化傾向にある。
(3)労働力人口が減少トレンドにある。
(4)日本を含めた先進国経済が揃ってマイナス成長となる中、新興国のプレゼンスが高まっている。
(5)アジアの中間層市場は急速に拡大している。

といった認識を示しており、これを前提に、

「政治的なリーダーシップ」

を源にして、

「需要から成長へ」

を合言葉に、

*実質2%を上回る経済成長
*2020年には650兆円のGDP規模達成
*失業率3%台の達成

を目指すとしていました。

 そして、そうした目標達成の背景として、

「日本の強みを生かした成長を図る」

「フロンティアの開拓による成長を図る」

「成長を支えるプラットフォームによる成長を図る」

としており、具体的には、

*環境・エネルギー分野
*健康(医療・介護)分野
*アジア
*観光・地域活性化
*科学・技術
*雇用・人材

といった分野に注力したいとしています。

 特に、成長著しいアジアに対してはまた、

「脱化石エネルギー化」

を意識して、

*原子力発電
*火力発電
*水
*省エネ・省水型工場システム
*鉄道
*道路

といった分野で大きなビジネスチャンスがあり、それを日本政府としてもサポートしていきたいとしています。

 私たちは今、こうした鳩山前政権が提示した、骨のある国家戦略に沿って、ビジネスを拡大し、一企業、一企業それぞれが、売上高の拡大を具現化、そしてその結果として、本業の利益である「営業利益」の拡大を目指して、

「国家全体の経済のパイを一定に維持しつつ、肝心の経済の質を向上していくべきなのではないでしょうか?

 皆様方は如何、思われますか?

 

 次回号もまた、どうぞよろしくお願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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