ご高承の通り、国際機関であるアジア開発銀行(ADB)は、アジア大洋州地域(日本など域内先進国を除く)45カ国・地域の2010年の実質国内総生産(GDP)が8.6%成長となるとの見通しを発表しています。
こうした背景には、中国本土の経済成長などが挙げられており、9月時点の前回見通しを0.4ポイント上方修正されています。
そして、その一方で、2011年の経済成長率は7.3%成長に据え置かれました。
また、東アジア(14カ国・地域)も9月より0.4ポイント上方修正し、8.8%成長とされています。
更にまた、東南アジア諸国連合(ASEAN)については、7.5%と0.1ポイント上方修正されています。
タイが自動車など輸出の前年対比2桁増、フィリピンが海外送金増加による個人消費への寄与などでそれぞれ0.6ポイント上方修正され、シンガポールは据え置かれましたが、14%成長が見込まれています。
南アジアの、インドも8.5%と高い伸びが予想されています。
こうした一方で、先進国の2010年の経済成長率については、米国が2.8%に据え置かれ、日本は0.7ポイント、欧州(ユーロ圏)は0.2ポイントそれぞれ上方修正され、3.2%、1.5%と見られています。
そして、ADBでは東アジアで半年前に比べ、急激な資本流入やインフレなどによる腰折れリスクが高まっていることが課題であるとの認識を示した上で、安定成長維持に向けて、域内の為替協調の必要性も指摘しています。
尚、こうした見通しの中で、やはり気に掛かるのは中国本土の情勢でありますが、その中国本土政府系Think-Tankである中国社会科学院(CASS)は、年次報告書の中で、
「中国本土の2011年の経済成長率は10%前後となる。」
との見通しを示しています。
投資の勢いが衰えるなかでも、今年の推定成長率である9.9%とほぼ変わらないと見ているものであります。
CASSはまた、来年のインフレ率は引き続き中程度となると予測。消費者物価指数(CPI)上昇率は3.3%となり、今年の推定CPI上昇率3.2%からやや加速する程度と見ています。
中国本土経済の最も重要な牽引役である固定資産投資の伸び率は、来年は20%となり、今年の推定伸び率23.5%から更に減速すると見ています。
こうした中国本土政府自身の見方も意識して、今後の動向を注視したいと思います。
一方、もう一つの元気の良いアジアの国である韓国については、韓国政府系Think-Tankである韓国開発研究院(KDI)が、韓国の2011年の経済成長率予測値を4.2%に下方修正しました。
韓国政府は公式予測を5%前後としていますが、内部では予測値を4%台半ばに引き下げることも検討されていると見られています。
KDIは、韓国の経済成長率を今年が6.2%、来年が4.2%と予測、今年まで急速に回復した景気が来年からは潜在成長率の水準に戻ると予測したことにより下方修正したものの、来年は輸出が引き続き伸びる一方、民間消費は所得増とほぼ同じ4.1%の伸びを示し、設備投資も8.5%増えるとの見通しを示しているのであります。
一方、国際的な活動をする投資銀行の予測値は、ウォン高と原材料価格の上昇で、輸出が影響を受けると見られるほか、欧州の財政危機など外部条件が依然として不透明なことから、韓国の経済成長見通しをKDIよりは厳しく見ています。
また、韓国国内では、最近の韓国経済の成長の約半分は中国本土経済に依存しているとの見方も出ている点も注視したいと思います。
尚、主要機関が予測する韓国経済の来年度経済成長予測値は以下の通りとなっています。
出所 |
予想経済成長率(%) |
IMF |
4.5 |
OECD |
4.3 |
KDI |
4.2 |
LG経済研究院 |
4.0 |
三星経済研究所 |
3.8 |
BOAメリルリンチ |
3.6 |
UBS |
3.5 |
野村證券 |
3.5 |
|