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2011年4月[Sanada発 現場から]


[市場の動きと経済]

読者の皆様方の多くは実体経済、ものづくりに関わる方々かと思いますが、その実体経済に国際金融は少なからぬ影響を与えます。

そこで、今回は「市場」に目を向けて、コメントをさせて戴くことに致します。


 

[為替相場動向について]

私は、為替相場展開については、マーケットを自らは離れたものの、そこで正にDealをする仲間たちのコメントと実際の為替相場動向を見ながら、

「少なくともこの一年は円高ではなく、米ドル安で推移してきた。

 そして、相対的な比較に於いて、米ドルやユーロよりも円が良く見え、米ドルやユーロが売られる中、円が買われた。

 一方、今現在、もし、例えば中国本土の人民元がより開かれた通貨、国際的な通貨に転じていたならば、米ドルが売られ、ユーロが売られた後に、市場関係者は円を購入せずに人民元をもっともっと買っていたのではないか、或いは、場合によっては、円も売られて、米ドル・ユーロ・円安、人民元独歩高という事態も起こっていたのではないか?」

と考えていた者であり、しばしば、このレポートでもそうした見方をご披露させて戴いておりました。

 しかし、大震災後の、直後の動きではなく、特に日本の原発事故対応を見た後の国際金融市場の日本に対する評価は極めて下がってきているように感じられます。

 そして、そうした評価は、

「相対的な比較に於いて米ドルやユーロよりも円が良く見える。」

という見方にも変化を与える可能性がある、即ち、今後は現在水準よりも円安に振れて行く可能性があるのではないかと私は見始めています。

 もちろん、適度な円安への振れは、日本経済を輸出サイドの局面から元気付け、総合的には好影響を与えましょうが、振れ過ぎて、

「円売り」

が進みすぎると、今度は海外から物が買いにくい状況を引き起こし、

「エネルギー、食糧、原材料を海外に大きく依存、更に今後は、これまでは比較的安価で高品質と言われてきた水までもが放射能汚染で相当程度輸入しなくてはならないという状況を引き起こすと、日本の豊かさに大きな悪影響を与える可能性がある。」

と私は危惧しています。

 こうしたことが愚かなる私の単なる杞憂に終わることを祈念しております。

 さて、そこで、私が信頼する為替のプロの相場展開に対する見方をご紹介申し上げます。

「米ドル・円相場は年内に95円へ!!

米ドル・円が力強く上昇している、というよりも円が大きく売られている。

これは、これまでの“経常黒字”と“リスク回避時の逃避通貨”という伝統的な円買い材料が震災によって減退したことが主因。

“経常黒字”については、東北地方の工場が損壊によって輸出品を生産できないという直接的な影響に加え、電力不足による生産活動の落ち込みにより、その減少もしくは赤字化の可能性がある。

“リスク回避時の逃避通貨”という点については福島原発の問題についていまだ解決のメドがたたない現状では円はむしろリスク通貨となる。

加えて、日米景気のギャップ、そして金利差の拡大、そして本邦財政赤字、きたるべきインフレのリスクも円売り材料だ。

今回の米ドル・円上昇は3月18日の協調介入時につけた高値82.00を自立反発で上方ブレイクしたところでスピードに拍車がかかった。今後昨年9月の政府・日銀の単独介入時につけた85.94を上抜けしてくれば同様にもう一段高となる可能性が高い。

中期ターゲットとしての2011年末における水準を2007年につけた高値124.14から今回の安値76.25のフィボナッチ係数38.2%となる95円近辺と予想する。」

とのことであります。

 こうした水準で本年末に着地してくれれば、為替相場面から見た、国際金融社会の対日信頼度は低下せず、また日本経済に悪影響を与えるほどのインパクトともならず、むしろ日本経済に輸出面からよい影響を与えるかもしれません。

 いずれにしても、今後も為替相場展開をきめ細かくフォローしていきたいと思います。

 

[韓国経済と人民元]

さて、それでは注目される中国本土・人民元はどうでありましょうか?

ここでは韓国勢の人民元の見方をお伝えしたいと思います。

 

中国本土はその潜在的な政治力、軍事力、外交力に加えて、経済力も拡大し、文字通り、世界の中で大国となってきていると思います。

そして、そうした中で、

「通貨・人民元の相対的価値は高まり、現行の基軸通貨・米ドルに対して強めで推移をしている。」

とも言えましょう。

その自由度の低さから、国際的な基軸通貨としての信認はなく、まだまだ国際的な流通度は低いのでありましょうが、今後はじわじわと人民元の勢力は拡大していく様相を見せています。

そしてこうした状況下、中国本土政府が実施する、相次ぐ人民元建て貿易決済拡大措置を受けて、韓国企業も人民元建ての決済システム導入を急いでいると見られています。

 例えば、大韓貿易投資振興公社(=KOTRA)は、中国本土と貿易を行う104社、そして中国本土に進出した企業136社を対象に行った調査結果の中で、

「全体の77.5%が貿易決済に人民元を使用しているか、使用する計画があると答えた。」

と発表しています。

 そして、

「現在、人民元を実際に貿易決済通貨に採用している企業は全体の4.2%に過ぎないが、まだ採用していない企業のうち76.5%が今後、人民元決済を導入する計画である。」

とも報告しています。

更に、大企業は11社中10社が中国本土との取引で決済通貨を人民元に変更する計画があることも分かったと報告されています。

 また、決済通貨を人民元に変更したある食品会社は、

「米ドルで決済した場合、人民元切り上げで為替差損が出るが、人民元で決済すればそうした為替リスクを回避できる。」

と人民元建て決済移行の意味を説明しており、こうした動きは更に拡大する可能性を秘めていると見られています。

 中国本土の経済力は通貨・人民元にも及びながら、拡大していくものと見ておきたいと思います。

 

[市場とは?]

最後に、ここでは市場とは何かに関する私見を申し上げたいと思います。

私は、為替相場なり、株式相場なり、金利相場なり、商品相場なり、いわゆる金融化された市場の動向というものは、

「資本主義の原理に基づいて、人々の経済社会を円滑、健全に発展させる大きな、そして重要なシステムの一つである。」

と考えています。

 しかしながら、そこの中でもしも行き過ぎた動きがあると、かえって経済の健全な動きを阻害することにもなりかねないとも考えています。

 但し、それでは、

「行き過ぎた」

とはどの程度を言うのかについてはここに明確な基準も無く、また行き過ぎたことを立証する術も無いとは言いませんが、極めて難しく、

「運用の難しさ」

を感じています。

 例えば、私には、日本の大震災後の、

「円買い・米ドル売り」

の動きを海外投資家から見ると、ある意味では当然とは思いつつも、

「それでも、日本経済やアジア経済の今後を意識すると、実需ではない動きが、実需に先取りして起こるのは、やはり投機的動きである。」

と私は感じてなりません。

 そして、こうした状況下、先般ものニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場が続落しました。

WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が下落したものであり、これもまた、日本の大震災による日本経済の落ち込みが原油需要を抑制する要因になりかねないとの懸念がくすぶり、目先の利益をひとまず確定する目的の売りが優勢となったと分析されていました。

 また、日本と中国本土は経済面での繋がりが強固なため、市場では日本経済の落ち込みが中国本土経済の重荷になりかねないとの見方が根強く、その結果、原油消費量を伸ばしてきた中国本土経済にまで悪影響が広がれば需要の停滞を招きかねないとの懸念が拡大しています。

 もちろん、

「原油相場が世界的に下がった。」

という現象そのものは、一旦、好ましいと言えましょうが、私にとっては、

「その背景がやはり投機性的匂いがする。」

ということで気に入りません。

 そして、今後の原油市場動向については、

「下値も堅かった。

世界有数の産油国であるリビアなど北アフリカ・中東の情勢不安が続き、今後の展開次第で原油供給が細りかねないとの見方も残る。

下値では買いが入り、一方的に売り込む動きは見られなかった。」

との見方があり、まだまだ、今後、投機筋が波乱を引き起こす可能性を含んでいると感じられ、それが、今後の経済活動の健全な発展を阻害しないかと、私は危惧しています。

「市場とは何か?」

を改めて感じる今日この頃であります。

 

これからも、引き続きどうぞよろしく御願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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