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2011年5月[Sanada発 現場から]


今月号は、お話の内容を、経営に関するお話と中国本土に関するお話の二本立てとさせて戴きたいと思います。  皆様方の少しでもお役に立てば、幸いです。

[成長分野の拡大]

 

 経営者は、精神論だけではなかなかビジネスを成り立たせることは出来ず、霞を食べて生きていくわけにもいきませんので、やはり知恵を働かせねばなりません。

 この知恵、一般論ではなかなか通用せず、個別案件で具体的に頭を働かせ、絞っていかなくてはならないものでありますが、そうは言っても体系的に考え、戦略を考えていかなくてはなりません。

 そうした意味で、企業経営の視点から先ず、考えなくてはならないことの一つは、

「成長戦略」

を如何に立てていくかということではないでしょうか?

 リスク対比リターンの極大化を意識しつつ、経営戦略を考えると、

「与えられた経営資源を最大限に生かして成果を挙げていきつつ、その中で将来の発展の種となる成長分野を拡大していくことにある。」

と言えましょう。

 そして、そのステップを整理して考えていくと、

(1)それまでのビジネス領域の中から、不必要なものを削除していく。

(2)ビジネス撤退によって生まれた余剰の経営資源の効率的利用方法を考える。

(3)既存のコア分野を維持しつつ、新規事業を立ち上げ、次の成長分野の「種」を作る。

といったことを行なうことが不可欠となります。

 不必要な分野の削除には、事業のリストラ、資産のリストラ、人材のリストラと痛みを伴う危険性がありますが、しかし、それには「倫理観」を持ちつつ、果敢に取り組まなければなりません。

 更にまた、ここでは、ビジネスの四要素たる「ひと、もの、金、情報」の再配分を行なうといった意識も必要となります。

 そして、その際に注意すべきは、

1.製品

 品質、デザイン、特徴、ブランド、パッケージ、サイズ、サービス、保証、返品

2.価格

 表示価格、値引き、流通に対する割引、支払期限・条件、信用取引条件

3.販売

 販路、仕分け、在庫・配送、品揃え

4.販売推進

 セールス・プロモーション、広告、PR

といった分野からの自社の、

「比較競争優位」

を考え、その比較競争優位分野に、上述した方法によって搾り出し、余剰となった経営資源を改めて全力投入する必要があります。

 ここが俗に言う、

「選択と集中」

ということになるのでしょう。

 さて、それでは「比較競争優位」を考える場合には、何が必要でありましょうか?

 比較競争優位を意識するとは、即ち、自社が顧客から選ばれる企業となることを意識するということに等しいでありましょう。

そして、だからこそ、先ずは、

(1)自社の独自性を顧客に認知してもらう。

(2)顧客から見て、魅力のあるサービスや製品を量と価格を安定化させて、安定供給、提供していく。

(3)自社の特異性を生かして他者に負けない独自の競争力を高めていく。

ことにあり、その結果として、

「自社にしか出来ない、しかし、世界の人々が必ず、必要とするサービスや製品を提供する、所謂“オンリーワン企業”になる。」

ことが肝要であります。

 そして、オンリーワン企業になっても意識すべきことは、必ず、追随者が出てくるということであります。

 オンリーワンに甘んじていると、

「奢る平家は久しからず」

であり、常に、

「自社のファン」

を持ち続けることが重要であり、そのためには顧客に何度も何度も自社をリピートしてもらうことが第一歩となりましょう。

 従って、お客様が、「見込み客」から「お客様」となり、更には「生涯顧客」となるように、丁寧にアプローチをしていくことがこの段階では大切となるのです。

 そして、こうした企業を運営していく経営者たる者は、ドラッカー先生の言う、

「変化を当然かつ健全なものと捉えて、新規分野に突入していく。」

という精神を持ち、

「慎重に考え、大胆に行動する。」

という人間の奥深さを持たなければならないのでありましょう。

 ここまでが、私が認識する体系化の一つの基本であります。

 そして、ここから先は、上述したとおり、個別案件、Deal by Deal、Case by Caseで立ち向かうこととなりましょう。

 こうして何としても日本に多くのオンリーワン企業を生み、何処の国の人からも、また、たとえ、

「日本人はあまり好きではない。」

と言っている外国人であっても、

「その企業はあまり好きではない。」

といっている人からであっても、日本からしか、その会社からでしか、そのサービスや製品を買うことができないと言わせるような企業を、日本は増やしていくべきではないでしょうか。

皆様方はどのようにお考えになられますか?
[中国本土の国際金融関連政策に基づく政策活動見通]

 中国本土の経済誌「新世紀」は、

「中央銀行である中国人民銀行が外貨準備を使ってエネルギー資源や貴金属に投資する新たな基金の設立を検討している。」

と報道しています。

基軸通貨・米ドルの相対的地位の低下などを背景に、米ドルの先行きに不安があるとの考え方の下、中国本土政府は米国債などに偏った外貨準備の運用を多様化したいとしていると報道されています。

こうしたことが実現されると、中国本土の「米国債離れ」が強まる可能性もあり、それに伴って、更に米ドルの「基軸通貨としての地位」も低下する可能性が出てくると思います。

 もちろん、まだこうした基金の設立時期や規模は明らかになっていませんが、ご高承の通り、3月末の中国本土の外貨準備高は3兆447億米ドルとなっており、中国人民銀行は人民元相場の安定を保つために人民元を売って外貨を買う大規模な為替介入を繰り返していることから、今後も更に外貨準備高が増加する可能性は高く、こうした計画が具現化されるのは確実との見方も出ています。

 そして、中国本土政府の外貨準備高の約7割は米国債など米ドル資産で運用していると見られる中、米国格付け会社が米国債の長期格付けの見通しを引き下げ、中国本土国内では米国債の安全性に対する懸念が高まっていることから、新基金の設立構想は、早期に実現されるとの見通しも出ています。

 尚、中国本土政府は2007年には、外貨準備高の有効活用を目指して、シンガポールなどのシステムや組織を参考に、企業買収などを手がける政府系ファンドである中国投資(CIC)を設立し、中国国内金融市場、そして国際金融市場では、中国本土政府が近くCICの増資に踏み切るとの見方も出ています。

 こうした動きも同時に注目していきたいと思います。

一方、中国本土の経済力が拡大、上述したように外貨準備高が増加し、中国本土の国際社会に対する影響力が増している中、中国本土政府は、

「通貨・人民元の国際化に伴う影響力の拡大」

も目指していると見られています。

こうした状況下、中国銀行業協会は、

「2009年に試験的に解禁された人民元建て貿易決済の実務ルール作りを開始している。

既に国内外の29行が参加し、“貿易金融専業委員会”を立ち上げた。

人民元建て決済の利用促進へ向け、現在主流である米ドル建ての決済ルールを転用するのか、中国本土独自のルールを採用するのかなどを実務家レベルで話し合う。」

としており、中国本土側からは国有銀行大手の中国銀行、中国工商銀行など22行がこうした協議に参加しています。

 こうした中国本土の政策姿勢と具体的な動きについては、引き続き、大いにフォローしていくべきであると考えています。

 

尚、こうした中国本土の政策姿勢を左右する要因に関連して、以下の二点、付記しておきたいと思います。

即ち、

(1)国際通貨基金(IMF)は、中国本土経済が2016年に米国を追い抜き、世界一の経済体になるとの予測を発表しています。

IMFは、為替レートの変動要素以外に、購買力平価の考えを取り入れ分析、その結果として、中国本土のGDPは今年の11兆2,000億米ドルとの予測から2016年には19兆米ドルへと拡大し、世界全体のGDPに占める割合は18%になり、米国のGDPは同15兆2,000億米ドルから18兆8,000億米ドル、世界全体のGDPに占める割合は17.7%に留まり、この結果、2016年には中国本土が世界一の経済体になると予測しています。

(2)また、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、2010年の外国直接投資(但し、速報値基準)統計を発表しましが、これによると、中国本土の投資額は680億米ドルとなり、日本の567億米ドルを初めて上回り、ここでも、中国本土の影響力拡大を示唆するデータが示されています。

好調な輸出で外貨を稼ぎ、外貨準備高も増加している中国本土が、対外投資を積極的に進めていることが鮮明となったとのコメントも見られています。

また、世界全体の直接投資額は前年対比13.2%増の1兆3,462億米ドルと3年ぶりに増加に転じ、こうした中で、中国本土など開発途上国と、旧ソ連を含めた市場経済移行国の投資が計3,767億米ドルとなり、過去最高となったのが特筆されています。

国別では、首位の米国が3,255億米ドル、これに続いて、フランス1,229億米ドル、ドイツ1,049億米ドルとなっています。

そして、日本は7位で、企業が外国拠点から資金を国内に戻す動きが進んだことから、同24.1%減と落ち込み、中国本土は同20.3%と対外投資を2桁増としており、世界第5位となったと報告されています。

中国本土政府の動きをこれからも注目、フォローしていきながら、日本企業の進むべき道などについても考えていきたいと思います。

 

これからも、引き続きどうぞよろしく御願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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