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2011年6月[Sanada発 現場から]


今月は最近の日本の景気動向に関する雑感とものづくり大国のあり方についての私見を申し上げたいと思います。  少しでもご参考になれば幸いで御座います。

[日本の景気動向について]

 

「景気は反転回復するか?」

とても気になるところです。

そして、経済産業省が発表した、4月の鉱工業生産指数を見ると、前月対比2.8%の上昇となっています。

東日本大震災で被災した工場の復旧や計画停電の見送りで、3月に急激に落ち込んだ生産水準は緩やかに回復してきているようで、そうした点では、とにかく何よりの状況であります。

但し、こうした中、例えば自動車の部品不足が想定以上に深刻だったようで、乗用車メーカー8社の4月の国内生産台数は前年同月対比60.1%も減少しており、まだまだ懸念は残っていることは確かであることから、「今後」に対する見方を厳しくする人々が多いことは明らかです。

 一方、自動車部品の確保が予想以上に急速になってきていることから、自動車業界の回復は、当初予想よりは早いのではないかといった声も聞かれ、更にまた、計画停電の見送りなどで、

「素材関連などで前月より小幅に上昇した業種も出てくる。」

との見方も出てきており、加えてまた、決しては不謹慎な見方ではなく、所謂、

「復興需要の拡大も期待できる。」

との見方から、日本の実体経済に対する明るい見通しを持つ人々も増えつつあります。

 文字通り、まだら模様の景気予測と言えましょう。

 いずれにしても、このような中で、復興需要に対応するにしても、何にしても大切なことは、

「自社の資金繰りを厚く、確実にすること。」

ということであり、そうした準備を企業が予め行なっていくことを忘れてはならないと思います。

 そして、何とかこの機を無駄にせず、売上高拡大に向けた方向性を目指して戴きたいと思います。

 

 ところで、こうした現状認識をするにつけても、経営上層部の判断は大切なものであると思います。

 私が勤めておりました東京銀行の上司はかつて、

「行動は全部、君に任せる。

 責任は俺が取ってやる。」

とどっしりと構え、私のやりたいように仕事をやらせてくれました。

 しかし、今、改めて考えてみると、私にやりたいようにやらせてくれる中でも、私の考えていることについて、いつも議論をし、そしていつも適切なるアドバイスをしてくれました。

 これは見方を変えれば、上司としての経験を生かして、私を上手に方向返還させ、リスクの低いものに仕上げていくことをし、また、常に予測をしながら、将来のリスクを私とその上司でお互いに確認することに繋がっていたように思います。

 またその上で、中間報告、特にうまくいかなかったこと、二人で話して予測したことから外れたことが出てきた際には必ず報告をするように言われ、そこで、また方向修正をしていました。

 こうしたことをしながら、私のやる気を引き出しつつ、リスクヘッジもされていたのだと思いますが、今の日本全体、そして永田町には特に、このようにして、最終的には、

「責任は俺が持つ!!」

と言い切る人が必要なのではないでしょうか?

 責任を取る人がいない、明確化されていない、方向性が不安定で、責任を取るということが上手に出来ていないとすれば、日本経済の再興は表面に出る数字以上に深刻となるかもしれません。

 そうしたことを含めた景気動向を分析し、その上で、少しでも良い方向になるような対応策を検討していくべきではないでしょうか?

 また、そうした対応策を考えるきっかけとして景気動向予測を利用していくべきであるとも私は考えています。

[ものづくり大国の方向性]

さて、私はいつも、

「大量生産・大量販売型の、いわゆるマス・ビジネスに重きを置く企業は、どうしてもボリューム・ゾーンで販売をし、自社の従業員を食べさせていくだけの売上高を確保しなくてはならない、そしてまた、当然に採算分岐点を越えなければならない。

一方、少量多品種高品質高利潤型のビジネスに主として重きを置く企業は、むしろ少数精鋭の一騎当千の人材をフル活用して、ボリューム・ゾーンにはむしろ入らず、ニッチの世界で少ない生産、少ない商品数を市場提供して価格を引き上げ、高利潤を確保すべきであり、もしも、そうした中に、世界にわが社しか出来ない、そして世界が必ず必要とする商品があれば、オンリーワン企業として、日本に居ながらして外貨を含めた売上高が稼げる企業になる。

日本の中小企業は、第一次産業分野も含めて、基本的には後者となっていくことを目指すべきである。」

と考え、皆様方と議論、対応策を検討しています。

しかし、全ての分野、全ての企業がこうした状況には無く、

「オンリーワン分野を持ちつつも、ある程度のマス・ビジネスは不可欠である。」

「わが社は、やはりマス・ビジネス分野を主として展開していくしかない。」

といった企業がたくさんあることも事実です。

従って、多くの日本企業にとって、やはり、ボリューム・ゾーンは大切なビジネスの場であり、その中でも、就中、人口大国で、潜在的な消費者の数、潜在的な労働者の数が多い人口大国・中国本土は、

「大切なマーケット」

として認識されるものと思います。

こうした状況下、米国国内でも例えば、

「成長する中国本土の中産階級は、米国にとって巨大なチャンスである」

との認識が強まり、

「低迷する米経済を救うのは増殖を続ける中国本土の中産階級ではないか。

米国の経済成長は財政赤字と引き換えに手に入れたものであり、中国本土は商品の生産と販売を地道に続けたことで着実に富を蓄積してきた。

米国が慎重かつ懸命な行動をとれば、中国本土市場は巨大なビジネスチャンスとして米国に開放されるであろう。」

とし、中国本土を意識したビジネス展開を更に加速化する可能性を示唆しています。

更にまた、

「中国本土の中間所得層と富裕層は今後10年で3倍になる。」

との見方も出始めており、

「世帯年収が6万人民元を超える中間所得層以上の国民が2020年までに2億7,000万人増加、現在の1億4,800万人から4億1,500万人にまで膨らむ。

また、今後増加する中産階級と富裕層の4分の3は地方都市に集中する。」

との見方をしており、米国は産官学連携して、この分野へのアプローチを強めて、

「米国から、大量販売の先としての中国本土に対して、商品を出来る限り大量に販売していく。」

という方針を明確にしようとしています。

 こうした基本姿勢がまた米国のものづくりを再生、そこにTPPといった形でのビジネス環境も整えて、

「米国製品の海外に売れ易い方向性を模索する。」

といった動きを見せていると私は認識しています。

 こうした米国の動きなども参考にしながら、果たして、わが社は中国本土やインドといった、どちらかと言えば、

「マス・ビジネス」

を基軸とするビジネスが得意なのか?或いは少量(可能な限り大量)・多品種・高品質・高利潤のビジネス分野が得意でこちらに食い込んでいくべきかといったことを考えていくべきではないかと思います。

 そうした意味からも、

「日本のものづくり中小企業は今、大きな岐路に立っている。」

と私は見ています。

皆様方は、如何、お考えになられますか?

 

これからも、引き続きどうぞよろしく御願い申し上げます。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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