国際機関である国際通貨基金(IMF)は、世界経済見通しを改定しました。
世界成長については0.1%の下方修正である4.3%を予測、しかし、2012年は当初見通し通り4.5%を予測しています。
また、中国本土、インド、ロシアについては当初見通し通りとしています。
しかし、米国については下方修正、そして欧州については、来年度に関して下方修正しています。
一方、日本の2011年の実質成長率はマイナス0.7%と予測、下方修正しています。
東日本大震災に伴う電力供給への懸念などが理由となっています。
詳細は以下の通りです。
|
2011年 |
2012年 |
世界全体 |
4.3 |
4.5 |
米国 |
2.5 |
2.7 |
ユーロ経済圏 |
2.0 |
1.7 |
日本 |
−0.7 |
2.9 |
中国本土 |
9.6 |
9.5 |
インド |
8.2 |
7.8 |
ロシア |
4.8 |
4.5 |
世界経済全体の成長見通しについては、
「一時的には減速しており、下振れリスクが再び増している。
しかし、年後半には再加速するであろう。」
と予測しています。
そして、従来のコメント通り、
「先進国と新興・途上国間の経済成長率の格差が大きいという状態は続くであろう。」
とコメントしている点も注視したいと思います。
世界経済全体の下振れリスクのポイントとしては、
*ユーロ圏での市場の信認が一段と悪化しかねないこと。
*米国経済の回復が予想以上に弱いこと。
*日本の震災が短期的には他国に影響を与えること。
などを挙げています。
一方、新興・途上国経済については、
「引き続き高成長を維持する。
中国本土の成長率は2011〜2012年を通じて9%台半ば、インドは8%前後と見込んでいる。」
と発表しています。
今年は中近東アフリカ問題や日本の東北大震災、そして米国経済の予想以上の減速などもあり、引き続き、先進国経済は力強さに欠け、中国本土やインドなどの新興国経済に依存する傾向が続くものと見られています。
しかし、その中国本土経済にも減速兆候が見られ、インドも今ひとつといった点も垣間見られ、やや不安が残る世界経済情勢となっている点、留意しておきたいと思います。
こうした中、各国の経済成長に少なからぬ影響を与える円・米ドル相場展開について、日本経済の相対的な低下などが見られるにも拘わらず、何故、円の対米ドル為替相場が円の価値低下に向かわないのか、不思議な部分があります。
国際金融市場の視点は、世界の中心通貨である米ドル、ユーロ、円を相対比較しながら分析をするのが常で、絶対評価ではないことから、
*米国の財政問題
*欧州のギリシャ問題の再燃
などと日本の現状を相対比較すると、まだまだ変動に向けた動きには至らないと判断しているようにも思います。
今後は悪化する日本の貿易収支、そして経常収支も本格的に悪化すると視点が変わり、日本円が売られる局面はありましょうが、なかなかその反転の時期が読みにくくなっています。
引き続き、動向をフォローしたいと思いますが、ここで私の知人の為替のプロのコメントを引用させて戴きます。
ご覧ください。
「ギリシャ問題をめぐってユーロが乱高下している。
先週はS&Pがギリシャの長期国債格付けを世界各国でもっとも低いCCCへと格下げしデフォルトの可能性が高まっていると指摘したこと、またIMFからの支援条件となっている財政緊縮に向けた大連立の試みが失敗したことを受けてユーロが大きく売られた。
その後週後半にはギリシャ救済に向けてドイツが譲歩し民間投資家に負担を強制しないことに同意したことにより、問題解決にむけて前進したとの見方からユーロが買い戻された。
ユーロは日米に先んじて欧州中央銀行が4月に利上げを実施し、トリシェ総裁が7月の政策委員会での追加利上げを示唆していることからユーロは年初からみると高値圏で推移している。
しかしながら、OECDが公表している購買力平価ではユーロ/米ドルは1.24、つまり現在の1.43台から比べるとユーロは15%の“割高”状態にあるといえる。
今後米経済の回復が確認されFRBの利上げ開始が視野に入ってくれば ”割高"解消に向けてユーロ/米ドルが売られる可能性が高い。
ユーロ/米ドルは年末までに1.30を目指すものと予想する。
なお、米ドル/円についてはOECDの購買力平価111.44から28%の”割安“となっている。
こちらも米利上げが視野に入る今年末までには”割安是正“の動きが見られる ものと予想する。」
とのことであります。
参考にしていきたいと思います。 |