最近の不安定な世界情勢の中、多くの国々は、中国本土に対して、大きな期待をしているようであります。
しかしまた、中国本土に対しては、覇権主義が強まるのではないかといった視点から、不安を持つ見方も出ており、期待と不安が錯綜しているとも言えましょう。
こうした状況下、米国・ブルムバーグの金融情報サイトは、
「中国本土の豊かな時代は近隣諸国に落胆を齎す。」
と題した記事を掲載しました。
当該記事の中では、
「現在9.5%の経済成長率を誇る中国本土経済と対等に戦える国は無く、アジア経済は中国本土一辺倒の傾向が強まりつつある。
米国の雇用問題、欧州の債務問題、日本のデフレと、次々にこれまで世界経済をリードしてきた主要先進国がその経済力を弱めるなか、中国本土はその力を伸ばし続けている。
こうした一方、中国本土経済は5年以内に挫折する可能性があると危惧されており、貧富格差、官僚の腐敗問題、資産バブル、環境問題、男女人口比のアンバランスなど多くの厳しい問題も抱えている。」
といった内容の指摘をしています。
中国本土に対しては、今後もこうした複雑な見方がより一層錯綜し、更にこれに軍事力に関する予測などの見方も加われば、更に期待と不安は錯綜する可能性が高いと思います。
そうした意味でも大いに注目していく必要がありましょう。
ところでまた、米国航空機大手のボーイング社は、上海市で、同社の2011年の中国本土市場見通しを発表し、
「2030年までの20年間で中国本土での新規航空機需要が5,000機となり、その総額が6,000億米ドルとなる。
中国本土の航空会社の国際業務が急成長し、ワイドボディ機の需要が増加する。
中国本土国内の経済成長と商業活動の拡大、また個人資産の増加、市場の自由化によって航空輸送市場が発展する。
旅客数が年7.6%の勢いで伸びるとすれば、同国の航空機需要の成長率は世界で2番目となる。」
との予想を示し、具体的なビジネス面では大きく期待しているようであります。
こうした見方からしても、
「中国本土に対しては、様々な懸念があるものの、結局は中国本土に大きく依存せざるを得ないのではないか。」
との見方があること、付記しておきたいと思います。
更にまた、中国本土の温家宝首相は、大連で開幕した夏季世界経済フォーラムで講演し、
「中国本土は、インフレ抑制のため、金融引き締め策を維持する方針を示す一方、長期的な経済成長を維持するために構造改革を推進し、国内消費を高めていく。」
とコメントし、その姿勢を示唆しています。
経済成長の鈍化はインフレ抑制に向けた政府の引き締め措置に起因するもので、
「想定の範囲内」
であるとし、
「我々は全体的な物価水準の基本的安定を維持し、経済成長の大きな振幅を回避する。」
とコメントしています。
また、世界経済の停滞は中国本土の経済ファンダメンタルズに影響していないとの認識も示しています。
そして、温首相は、
「中国本土の上半期の国内総生産は前年対比9.6%増加する一方、貿易収支の黒字額は同17.6%減少した。
これは、中国本土経済の全体の情勢が良好なものであると同時に、中国本土が目指す成長方式の転換に積極的な進展が得られたことを示すシグナルである。」
とコメント、その上で、今夏のダボス会議のテーマである、
「成長の質を重視し、経済局面を掌握する。」
について、中国本土としては国際社会との共同努力を通じて、世界経済の力強い持続可能な成長を実現する意志があり、第12次5カ年計画期間中、中国本土は内需拡大戦略を継続的に実施、またイノベーションや資源節約・環境保護への取り組みなどを堅持すると力説しています。
覇権などは目指さず、国際協調を求めるという中国本土の姿勢を内外に示したということでありましょうか。
ところでまた、中国本土は香港と同様に台湾との間でも経済連携を深めていく姿勢を示しています。
実際に台湾と中国本土の間では、経済協力枠組み協定(ECFA)が締結され、その発効後、台湾にとっては、工作機械や魚類など関税を先行して下げた品目の一部では台湾の対中輸出が急拡大し、馬英九政権はこうした成果を国内に対して誇示しています。
ECFA発効から1年となり、今後乗更なる発展が期待されていますが、今後の動向については、台湾の意向を踏まえながらも中国本土が如何なるメリットを探るのか、注目されましょう。
いずれにしても、今後の中台間の交渉推移も見守りたいと思います。 |