国際機関であるアジア開発銀行は、恒例の経済見通しの中で、最新の東アジア新興国・地域経済概況についてコメントしています。
これによると、来年の国内総生産増加率は前年対比7.2%になると発表しています。
アジア諸国の経済を支える輸出の主要先である欧州が財政問題を抱え、この問題で今後も一連の債務危機などの影響が続くとの見方から、9月に行われた前回見通しである7.5%成長を0.3ポイント下方修正した模様であります。
即ち、今回の下方修正の要因は欧米先進国の低成長にあり、その欧州の経済成長率は0.5%と前回より0.8ポイント下げられ、米国も2.1%、日本も2.5%へとそれぞれ下方修正されています。
アジア開発銀行では、
「欧州発の混乱によって、東アジアの貿易などが受ける潜在リスクはまだまだ残っており危険な状態である。」
との認識を示唆しており、更なる悪化もあり得るとのニュアンスも残していると私は見ています。
また、国別での動向を見ると、世界経済の牽引車的役割を果たしている中国本土であっても、前回より0.3ポイント下方修正されています。
欧州危機による輸出の減速に加え、中国本土政府が不動産価格高騰の抑制などを推進しようとしている点が下方修正の背景にありますが、内需を中心に8.8%成長が予想されており、まだまだ相対的には高成長を維持すると見てよいでありましょう。
一方、経済成長に対する貿易依存度が高い韓国や台湾、香港、シンガポールといったところは米欧の影響が受け易く、経済成長はこのため鈍化するとの見方がなされています。
また、ASEAN諸国も同様に減速するであろうと見られる中、洪水被害を受けたタイについては、特に、
「サプライチェーンの立て直しが見られ、本年の2%成長から、来年には4.5%成長に回復する。」
といった強気の見通しが示されています。
尚、アジア開発銀行は、欧州などの不透明な経済状態への対応策として、東アジアの各国・地域が、域内やほかの地域の新興国との輸出入を拡大するであろうと予測、またこれを推進すべきであり、金融政策などについても相互協力を加速すべきであると提言しています。
こうしたコメント、提言なども意識しながら、来年のアジア経済を眺めていきたいと思います。 |