私は、
「2012年は混沌の年」
と見ています。
国際金融中心の市場経済が実体経済以上に膨らみ、欧州をはじめとする財政危機の遠因となる中、世界の中核国はその地位を落とし、
「世界は無極化している=G−ZEROの時代到来か?!=」
などと認識され、更にその延長線上で、
「世界は全世界が関与しつつ、新たなる秩序を構築する時代に入る。」
などとも指摘されています。
私もそうした現状認識を基本的にはしており、よって、こうした見方の下、2012年の世界を、私なりの視点から簡単に総括させて戴くと次のようなものになります。即ち、
- 一国主義に基づくグローバル化の時代は終焉し、リーマンショックから始まった経済危機の連続や米軍のイラクとアフガニスタンからの撤退は、むしろ世界を一層混沌に陥れる可能性がある。そうした中で、中近東、南アジアには政治的、軍事的混乱が起こる可能性が高まり、これらが背景となり、更なる経済的混乱が発生する可能性が存在している。尚、中近東情勢に関してみると、注目国はイランのみならず、サウジアラビアとトルコの対米姿勢にあると見られ、また、シリア、バーレーンなどに関しても注意を払う必要が出てこよう。
- 当面は、欧州危機、米国の景気回復力の行方が注目され、そして更に、中国本土の世界経済に於ける影響力拡大とその反面にある中国本土景気の減速に、リスクがあると見られる。そうした状況に対する活路を、世界全体は韓国、台湾を含むアジア諸国や一部活溌途上国に求める可能性がある。
- 世界の大国はもはや地域の軍事バランスを保つことが出来ず、北アフリカと中近東の不安定さは拡大、インドを含む南アジアもその影響を受けざるを得ない。南アジアの混乱が発生すると、パキスタンやアフガニスタンを軸に、これは中国本土を巻き込む可能性が出てくることとなり、ひいては、朝鮮半島を軸にした新たな北東アジアの緊張という形で、地域情勢にも影響が出る可能性がある。
- 米国の対アジア政策、就中、対中警戒姿勢は、中国本土の周辺国であるフィリピンやベトナムをして、中国本土に対する自国の主張を強めることを後押ししよう。一方、中国本土では、米国を意識しつつ、国内で「ナショナリズム」を台頭させ、更に、人民解放軍が国内での相対的立場を強める可能性が出てきている。こうした状況下では、中国本土政府は、今後、ベトナムやフィリピンのみならず、日本や韓国を含む近隣諸国の挑発に対して、海軍力並びに経済力を背景とした対応姿勢を示す可能性がある。更に中国本土は雇用機会の造成を意識しつつ、原子力産業・宇宙航空産業にも注力、その延長線上で兵器製造をも含む軍事大国化の芽が出てくる可能性もあり得る。
- 米国経済、就中、米国の実体経済は実はまだまだ深刻な状態にある。大統領選挙までは政治家の人気獲得の為に財政出動を伴う景気対策を取る可能性があるが、大統領選挙後は一転、財政支出削減策を決定する可能性があり、対米輸出に大きく依存する韓国や中国本土といった国家はその余波を大きく受ける可能性がある。一方、間一度、米国経済自身に目を向けると、雇用環境に改善が見られず、これが個人の収入増に繋がらず、よって、たとえ企業業績が改善しても、米国のGDPの約70%を占める民間消費には、改善の兆しはあると言われつつも、なかなか火がつかない。更には米国企業自身が新たな設備投資拡大に転ずる勢いをもなかなか強めないであろう。
- 現行のユーロ経済圏の不安は政策的対応が事実上不可能といった状態までも示唆しているといった見方すら出てきている。こうした見方を前提とすると、2011年に見たユーロ経済圏の不確実性と不安定性は拡大する可能性がある。いずれにしても、欧州を大きな輸出地域として依存している中国本土経済もこれらによって減速、その結果、中国本土経済と関係が深い韓国や日本も悪影響を受ける可能性も出てきている。今一度、欧州問題の余波を簡単に整理すると、欧州経済は財政問題を背景に、各国国債の時価の低下をも谷須、これにより、各国国債を保有している欧州系金融機関の損失拡大と資本注入の必要性を高め、これら欧州系銀行の金融仲介機能の低下は欧州経済のみならず、米国経済やアジア経済の資金繰りにも影響を与える危険性を高める。そして、こうした結果として実体経済の低迷を引き起こす。また、財政の視点から見る歳入の減少、そして歳出の削減による景気刺激力の低下、実体経済の資金調達コストの上昇といった形で負の連鎖が拡大していく可能性をも、まだまだ秘めている状況にある。
- 世界的に見ても、未解決の宗教、派閥、民族間の緊張が拡大し、地域の不安定感が拡大する。有効な地域間の安全保障の枠組みが欠如する中、独裁政治が危機に瀕する一方、新たに生まれる民主的政権にも誕生の困難さが存在し、世界は混沌の度を増す危険性を孕む。こうしたことから見ると、昨年末に誕生した「金正恩」氏率いる北朝鮮の新体制にも当然に潜在的な不安が付きまとうと見ておかなければならない。
- パキスタンは支持率の低い文民政治の時代が続く中、核兵器を保有し、軍部の干渉は増し、治安の悪化は顕著となる危険性を持つ。そのパキスタンと政治的・軍事的関係が深いと見られる北朝鮮にもその影響が及ぶと考えておくべきであろう。結果として、北朝鮮もパキスタンと同様に、その不安定性を意識した国家運営を強いられる。更に、これらの国、即ち、パキスタンや北朝鮮に対する一定の影響力を持つと見られている中国本土は、これら二国に対して如何なる対応を示すのか、そうした中国本土の動きに対して米国、更にはロシアが如何なる対応を示すのかも注目される。
- また、アフリカ地域にも同様のリスクは見られ、エジプトの新政権はどうなるか?リビアはどの方向に向かうか?分断後のスーダンは本当に安定的か?大衆迎合的な動きを示す南アフリカの政治家の動向は南アフリカ自身と南部アフリカの安定に対して如何なる影響を与えるのかについても注意を払わなくてはならない。
- そして最後に南北アメリカ大陸については、今年10月に予定されているベネズエラの大統領選挙を一つのリトマス試験紙としたい。ベネズエラはロシアや中国本土も意識をする国家であり、特に中国本土の対米国大陸外交の中では一つの重要国として位置づけられていると考えられることから、大統領選挙の行方がこうした米中ロといった大国たちに如何なる影響を与えるかは注視しなければならない。
といった状況を予想しています。
そして、これらは、明らかに、
「日本も、世界の混沌の渦の中に巻き込まれる。」
ということを想定しておくべきではないかということも意味しており、だからこそ、日本についても、
「単に現行のシステムを崩すだけではなく、悪しきを崩しながらも良きは維持しながら、如何に新しい世界に向かって動き出すかについての明確な理念とビジョンに基づいての“善なる破壊”を目指さないとむしろ混沌の度を深めることとなる。」
と見ておくべきではないかと思われます。
そして最後に、こうした混沌の中では、私たち一人一人に関して言えば、
「原点回帰し、自らの立ち位置を見極め動く者にとっては、むしろ他者との比較優位を明確にするチャンスの時期が到来したとも言える。」
ということを付言して、これからの社会を生きていくべきであると述べたいと思います。
いずれにしても、引き続き、世界動向を注視、フォローしていきたいと思っています。 |