SAITAMAビジネスライン 埼玉産業人クラブ
埼玉ちゃれんじ企業経営者表彰
ホーム    サイトマップ    当クラブについて   
現在位置:ホーム >Sanada発 現場から サイト内検索
 

2012年3月[Sanada発 現場から]


今月は香港訪問の様子をお伝えしてみたいと思います。

 

[香港経済について]

 

先日、久しぶりでかつて駐在した香港に行って参りました。

最近は、香港に入る度に、

「中国返還後の香港に、かつてほどの活気は感じられないものの、安定成長の中で落ち着きが見られている。」

とも感じています。

しかし、欧州の財政問題を遠因として中国本土・華南地域の工場の一部では閉鎖なども見られ、景気鈍化の兆候も見られる中、香港経済の減速感も出ていると見られています。

そして、街中を歩いていると、市内にそうした雰囲気が感じられます。

先週も少しご報告を致しましたが、香港特別行政区政府は、

「香港の輸出は前年同月対比8.6%、輸入は10.5%減となっている。」

と報告する中、輸出入が揃って減少するのは2009年9月以来、約2年半ぶりであり、香港にとって、最大の貿易相手国である中国本土向けが輸出入ともに1割強減ったのが主因と見られているとコメントされています。

輸出入ともに香港の貿易の約半分を占める中国本土向けが、輸出が12.6%、輸入も10.6%減となっているとのことなのです。

また、今後も、欧州債務危機の影響が中国本土景気の減速に繋がり、香港経由の輸出入鈍化の継続となる可能性もあるとの見方がやはり強まっているようで慎重論が出ていました。

しかし、一方で中長期的に見ると、

「中国本土の発展継続を背景にして、香港経済も一般的、相対的には、引き続き、安定的な推移を示す。」

との見方が出ていました。

そしてまた、例えばHSBCが、世界貿易展望レポートの中で、

「中国本土の貿易量の伸びが2014年に米国を超え、2016年には中国本土が世界最大の貿易国になる。」

との予測を示し、

「中国本土の貿易の重要なハブである香港については、今後6年間の貿易量の伸びが世界平均を上回る。」

との見方も示し、香港経済に対する懸念払しょくを示す見通しを出していました。

 詳細に見ると、HSBSは、

「今後15年間の世界の貿易量の年平均増加率は86%である。

そして、このうちアジアの貿易量は120%の伸びを示す。

また、世界貿易の成長率が加速する時期が市場予測の2015年から2014年に速まる。

即ち、世界経済成長の減速と収縮が2014年に収束する。

今後5年間の世界貿易の年平均伸び率は3.78%となり、更に2017年から2021年までは、世界の貿易商品に対する需要が再び拡大し、年6.23%の伸びとなる。

中国本土の貿易伸び率については、2016年までの5年間が6.61%、2017年から2021年までの5年間が7.41%になる。」

といった予測を示し、香港経済に対する強気の見通しの背景として、中国本土、香港貿易の伸びを示している点、注目されました。

 一方、香港特別行政区政府は、この4月からはじまる2012年度の政府予算案について、

「世界経済の先行きが不透明な中で市民生活の向上を図り、香港が国際競争力を強化し、中小企業の支援拡大を図る予算案を準備した。

 前提として、GDP成長率は1〜3%成長、物価上昇率は3.5%程度と見込む。

 そして、政府支出は総額3,937億香港ドルとし、政府収入は3,903億香港ドルと見込む。」

とコメント、更に、香港の世界的に見た“比較競争優位”を保つため、

*文化

*クリエィティブ産業

*医療

*教育

*技術革新・科学技術

*環境産業

*試験・認証

の分野の産業振興策を盛り込んだとコメントしています。

 更に、香港政府は、中国本土との経済関係拡大、強化が香港の比較競争優位維持の一つの重要なポイントであるとの認識の下、香港・中国本土経済貿易緊密化協定(CEPA)の交流の更なる強化を図ることで合意し、貿易投資促進措置、金融・観光、技術革新の協力強化を前提とした具体策を進めていくことを発表しています。

 そして、国際通貨基金(IMF)が、

「香港の連動相場制、そしてこれを支える金融安定化策の推進を強く支持する。」

との主旨のコメントを示しており、香港の安定的発展が、国際機関であるIMFによってもかなり裏付けられたとの見方も出ています。

 こうした背景もあってか、中長期的に見た香港の発展と安定を意識して、香港に進出する企業数が増えているようであり、香港政府・統計局のデータによると、2011年上半期に香港に進出した外国企業(中国本土企業を含む)は、前年同期対比5.9%増の6,948社となっています。

 因みに、その内訳は米国企業の1,328社、日本が1,150社、中国本土が805社、英国が562社となっています。

 ところで、今回は各地域を久しぶりで確認しましたが、一つは物価が上昇しているのではないかと感じることです。

 いわゆる体感景気ですね。

 香港ドル建ての様々な庶民向け商品やサービスの価格がちょうど一年前と比較すると上昇しており、円高のおかげで日本人旅行者の私たちにとっては、円建てに直すとあまり高いとは感じませんが、やはり庶民にとっては負担なのではないでしょうか?

 ヒヤリングをすると、賃金はそこまで上昇していない、また、需給関係がはっきりと出やすい香港にあっては、必需品の価格上昇が適度にコントロールされておらず、庶民生活を圧迫しつつあるとも感じられます。

 こうしたことも、中国本土経済の7%程度の安定成長化への転換が進めば、沈静化するとの声もありましたが、やや心配であります。

 また、香港の高級マンション事情ですが、その近代化、効率化は更に進んでいるようであり、見学させてもらった高級マンション(最近は九龍半島側も人気で、特に九龍駅近くは高級地域です。)は、セキュリティーの良さ、高層マンションはもちろん、マンションの中流階である60階前後にレストラン、トレーニング施設、バスケットコート、プール、宴会・会議場やテラスなども完備、また各部屋もコンパクトで機能的な部屋から広くて功利的な間取りの部屋もあり、更に、高度化しているようであります。

 但し、家賃が日本円にしても30〜40万円もするので、高いのですがーーー。

 

いずれにしても、かつての、返還前の香港の熱気を知る私にとって、「落ち着いた、しかし、それでも成長を続ける香港」には、今また、その新しい魅力を感じさせます。

引き続き、香港を中国本土・華南地域も含めながら、定点観測していきたいと思います。


[香港政庁と高層ビル]
[国際金融市場に対する見方について]

 以上は、香港に入ったことを基にした定性分析(≒私の肌感覚のコメント)の一部をご紹介申し上げましたが、香港に於いて、国際金融筋の見る、国際金融市場に対する見方も感じて参りました。

これを私なりに纏めてみると、以下のようになるかと思います。

 そこで、そうした見方を簡単に列挙、述べさせて戴きたいと思います。

  1. 国際金融市場は総じて好転していくと見ていってよい。但し、引き続き、Volatilityが高いことは覚悟しておくべきである。
  2. 一方で、まだまだ金融災害(Disasterという表現が出ていました。)が続く可能性があることも否めない。
  3. 反面、実体経済が、再び、国際金融をリードしていく構造に戻る可能性もここにきて出てきていることを注目したい。
  4. こうした見方の背景には、

*欧州財政危機が一応、収束していくのではないかという期待感が出てきたこと。実際にはイタリアやスペインの10年物国債などは流通利回りが最近の最高値に比較すると2%程度低下し、市場には安心感が少しずつ戻ってきている。

*米国経済が、少なくとも今年は、大統領選挙前の景気対策の中で、一定の成長が期待されること。

*世界経済の牽引車たる中国本土経済についても、減速感が見られるとは言え、やはり一定の成長維持が期待されること。

*ここにきて、北朝鮮問題やイラン問題といった不安定要因にも一定の方向性が見られ始めていること。

*国際政治面での当面の注目の一つはロシアとフランスの大統領選挙とその後の動向ではあるが、少なくとも、国際金融社会に大きな影響が出るような状態にはならないと、今現在は予測されていること。

などがあり、不安定の中で、混沌の中で、一筋の光が見え始めていると、市場はこれらを好感していることが上げられる。

  1. こうした微妙なMarket Perception、市場心理の変化を背景にして、今後は、国際金融市場にも一部、少しずつ、動きが出てくるのではないかとの声≒期待感が出てきている。具体的には、
  2. 外国為替市場に長い間滞留してきた資金がいよいよ、それ以外の市場にも動き出し始める。
  3. そして、先ずは原油価格の上昇トレンドが見られる。
  4. 一部、実体経済の好調部門には資金が流れ、この結果として、特定の注目業種・銘柄を軸に株価全体も少し、底上げされていく。
  5. 不動産価格も同様に当面、実体経済の好調部門に呼応する形で底上げされる。
  6. 但し、株と不動産分野に対しては、まだ投機性(Speculation)の資金が大量に流れ込むことは考えにくい。即ち、上昇は限定的である。
  7. 投機性資金は、むしろ、人々が生きていく為に必要なもの、即ち、上述の石油(エネルギー資源)と共に原材料と食糧に流れ込む可能性を秘めており、金は1オンス2,000米ドルもあり得る、世界のカロリー減の源である米や小麦の価格には注意を払う必要があるといった声が出ている。

といった状況でありました。

 引き続き、国際金融市場の動向をフォローしていきたいと思います。

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
コンテンツ

例会・講演会

各部会紹介

リンク


SANADA発現場から

お問い合わせ

当クラブ(地図)へのお問い合わせ、入会希望など、お気軽にお問い合わせください。

tel0438-872-2281 fax048-872-2285

Eメール
clubsaitama@sangyojin.org

お問い合わせフォーム

ホーム当クラブについて埼玉ちゃれんじ企業者表彰例会・講演会情報ファイルお問い合わせサイトマップ
NITEC埼玉産学交流会TDU産学交流会埼玉ビジネス研究会経営研究部会企業PR部会人材開発部会産友会
Copyright (C) 2004 SAITAMA SANGYOJIN CLUB All rights reserved