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2012年8月[Sanada発 現場から]


[中国本土経済を如何に見るか?]

 

今月号では、カントリーリスクについて、簡単に考えた上で、中国本土経済に対する一つの見方を皆様方にお示ししたいと思います。  ご参考になればね幸いです。

[カントリーリスク分析]

 

国際金融の仕事をしておりますと、対外投資、対外融資などの国際的な与信行為を行う際の基本動作として、
「カントリーリスク」
の分析をきちんと行っていくことは不可欠となります。
それでは、このカントリーリスク(Country Risk)とは何か?
教科書的にお答えをしますと、
「海外投融資や貿易などの与信行為を行う際に、相手対象国の政治・経済・社会環境の変化によって、個別事業相手が持つ商業リスクとは全く無関係に当該ビジネスから生じるであろう収益を損なう危険のことをカントリーリスクと呼び、その度合いを分析していくことがカントリーリスク分析となる。」
とでもなりましょう。
 カントリーリスクを分析していく際には、国内総生産、国際収支、外貨準備高、対外債務といったデータを基にした定量要素と、司法制度や、当該対象国の政情や経済政策などといった定性要素を加味して総合判断されていきます。
また、こうしたカントリーリスクの指標の一つは、現状、S&Pやムーディーズ、フィッチといった民間の格付け会社によって公表されています。
通常、先進国に対して、開発途上国に於いては、カントリーリスクが相対的には高いと考えられています。
また、その変遷を歴史的に見ると、第一次石油ショックの際、多くの開発途上国において対外債務が累積し、これまでの商業リスク概念を超えた考え方が必要であるとしてカントリーリスク概念が注目されるようになってきました。
カントリーリスク分析を行う際の主たるチェックポイントとしては、

  1. 経済情勢の変化

 債務不履行のリスク
インフレ・デフレなどの物価変動リスク
為替相場や金利、株式市場など金融市場の変動リスク

  1. 政治情勢の変化

内乱や革命、その他政情不安リスク
政権と経済界との癒着、政権による企業経営への介入リスク
当該国の朝令暮改的政策変更リスク
外資規制、為替政策の変更リスク
国有化、その他政策・法律の変更リスク
3.社会的要因、変化
司法制度の不備や不公正(法務リスク)
所得格差の増大や、宗教・民族対立・地域間格差などの社会問題の発生リスク
著作権、特許、商標侵害・濫用・詐取リスク
先端技術や商品製造ノウハウの流出と模倣品の氾濫リスク
4.自然災害などの地理学的・水文学的・環境学的な要因
などが挙げられています。
そしてまた、現在、カントリーリスクが特に懸念される地域としては、アフリカ、中東、中央アジア、中南米などが挙げられています。
東南アジア諸国の一部や北朝鮮、更にはロシアの一部もカントリーリスクが高い地域として採り上げられる場合もあります。
今後もこうしたカントリーリスク分析を進めながら、しっかりと国際社会を見つめていきたいと思います。

[中国本土経済に対する見方]

さて、カントリーリスクの視点から見ると、評価が分かれる中国本土ではありますが、国際社会は中国本土に対して、まだまだ楽観的な見方を示していると私は判断しています。
そこで、そうした見方の一端をここで簡単にご報告しておきたいと思います。

中国本土金融当局の軸である、中央銀行の中国人民銀行は、
「経済成長の押し上げに向けて、マネーサプライと信用の着実な拡大を確実にする。」
との政策姿勢を示しています。
そして、これに先立ち、本年第2・四半期(4〜6月)の金融政策報告の中で、
「世界経済は景気後退(リセッション)に再び陥る可能性がある。」
を警告しています。
この報告ではまた、
「安定かつ適切な信用とマネーサプライの伸びを導き、適度な社会的融資総額を維持するため、複数の金融政策ツールを利用する。
金融政策について、引き続き、これが適切な際には予防的に微調整する一方、一段と先行きを見据えて、目標を設定していきながら、柔軟なものとする。」
とのコメントをしています。
そして、これまで、中国人民銀行は、流動性管理のための預金準備率、公開市場操作など複数の金融政策ツールを利用するとしています。
一方で、
「急速な金融緩和政策の遂行は、インフレを引き起こすため注意を要する。」
とした上で、
「拡張的政策について、成長促進面の影響は弱まる一方で、インフレは上昇する可能性がある。」
との見方を示し、慎重な対応をすることを示唆しています。
更にまた、LIBOR問題なども意識し、市場に基づく金利改革と人民元の柔軟性拡大を進めるとし、
「人民元の柔軟性を高めるため、為替市場への介入の度合いを減らす。」
ともコメントしています。
私は、こうした中国本土政府・金融当局のコメントを見るにつけても、
「基軸通貨・米ドルを核とする貨幣経済の中で、行き過ぎた信用創造が行われ、世界的な資金余剰にある中、適度にマネーフローをコントロールしながら、実体経済拡大に向けた実践的な動きを、中国本土政府は取っている。」
と理解しています。
一方、本年8月1日付けUS TODAYは、
「中国本土の各都市では住民がほとんどいないゴーストタウンが増加している。
北京のある集合マンションでは、管理者は、
“空室率は低く、販売は好調だ。”
と強調するものの、駐車場の入庫率は3割程度しかなく、1階のテナントには小さなスーパー1店舗しか入居していない。
中国本土から伝わる各種情報も、中国本土経済に対し警報を発し続けている。
中国本土政府は最近、2度にわたり金利を引き下げ、成長の安定化を図ろうとしているが、不動産市場や株式市場への影響はまだはっきりしていない。
また、多くの評論家は、中国本土の経済データは不透明であり、真実を測り難いため、投資家は慎重になるべきだと指摘している。」
と厳しい見方をしているものの、
「しかし、中国本土経済が短期間のうちにクラッシュすると考える人はほとんどいない。
各銀行の実質的な株主が中国本土政府であるなど、欧米に比べてより強力な政策が採用できるからである。
資産運用会社テンプルトン・エマージング・マーケッツ・グループのマーク・モビアス会長は、
“中国本土のような指令型経済体制では、潜在的な危機を緩和する多くの方法を用いることができる”
と指摘している。
また、中国本土の第3四半期(7〜9月)の国内総生産(GDP)成長率は反発するとの米金融界の予測もある。
それでは現在、中国本土経済は危機に直面しているのだろうか?
米国の金融関係者が想像するほど状況は良くないにしろ、恐らくまだその段階ではないだろう。
前述のモビアス会長は、
“多くの心配は、自分たちが苦境に陥れば、彼らも苦境に陥るはずだという心理的な要素に基づくものである。中国本土はまだ巨大な成長チャンスを持っている。”
とコメントしている。」
と報じています。
そして最後に、中国本土の民間調査機関である胡潤研究院は、
「中国本土の資産が1千万人民元以上の富豪が2011年末に前年末対比6.3%増(人数は6万人増)の102万人と初めて100万人を突破した。」
と発表しています。
また、その平均年齢は39歳と比較的若く、女性は4割を占めたとも報告されています。
更に、年間の平均消費額は176万人民元で、消費額が最も多い分野は旅行となっており、平均で年3回、主に観光目的で海外旅行に出かけていたとも報告されているのであります。
こうした中国本土の富裕層に対するビジネスチャンスも更に拡大していく可能性があると考えられます。
やはり、注目の中国本土経済と言えるのではないでしょうか。

次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。

 

 

以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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