国際金融の仕事をしておりますと、対外投資、対外融資などの国際的な与信行為を行う際の基本動作として、
「カントリーリスク」
の分析をきちんと行っていくことは不可欠となります。
それでは、このカントリーリスク(Country Risk)とは何か?
教科書的にお答えをしますと、
「海外投融資や貿易などの与信行為を行う際に、相手対象国の政治・経済・社会環境の変化によって、個別事業相手が持つ商業リスクとは全く無関係に当該ビジネスから生じるであろう収益を損なう危険のことをカントリーリスクと呼び、その度合いを分析していくことがカントリーリスク分析となる。」
とでもなりましょう。
カントリーリスクを分析していく際には、国内総生産、国際収支、外貨準備高、対外債務といったデータを基にした定量要素と、司法制度や、当該対象国の政情や経済政策などといった定性要素を加味して総合判断されていきます。
また、こうしたカントリーリスクの指標の一つは、現状、S&Pやムーディーズ、フィッチといった民間の格付け会社によって公表されています。
通常、先進国に対して、開発途上国に於いては、カントリーリスクが相対的には高いと考えられています。
また、その変遷を歴史的に見ると、第一次石油ショックの際、多くの開発途上国において対外債務が累積し、これまでの商業リスク概念を超えた考え方が必要であるとしてカントリーリスク概念が注目されるようになってきました。
カントリーリスク分析を行う際の主たるチェックポイントとしては、
- 経済情勢の変化
債務不履行のリスク
インフレ・デフレなどの物価変動リスク
為替相場や金利、株式市場など金融市場の変動リスク
- 政治情勢の変化
内乱や革命、その他政情不安リスク
政権と経済界との癒着、政権による企業経営への介入リスク
当該国の朝令暮改的政策変更リスク
外資規制、為替政策の変更リスク
国有化、その他政策・法律の変更リスク
3.社会的要因、変化
司法制度の不備や不公正(法務リスク)
所得格差の増大や、宗教・民族対立・地域間格差などの社会問題の発生リスク
著作権、特許、商標侵害・濫用・詐取リスク
先端技術や商品製造ノウハウの流出と模倣品の氾濫リスク
4.自然災害などの地理学的・水文学的・環境学的な要因
などが挙げられています。
そしてまた、現在、カントリーリスクが特に懸念される地域としては、アフリカ、中東、中央アジア、中南米などが挙げられています。
東南アジア諸国の一部や北朝鮮、更にはロシアの一部もカントリーリスクが高い地域として採り上げられる場合もあります。
今後もこうしたカントリーリスク分析を進めながら、しっかりと国際社会を見つめていきたいと思います。 |