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2012年7月[Sanada発 現場から]


[私見 欧州財政問題に端を発した世界的経済危機に思う]

 

今回は、世界的な経済混乱に関する「私見」を総括して述べさせてください。
 詳細に見ると異論もありましょうが、私は、鳥瞰図的、複眼的に見た世界経済は、次のようになっていると考えている、否、確信しています。
 その上で、私が考えている打開策を簡単に申し上げてみます。(打開策に関する詳細は現実に進めていることもあり、ここでは控えさせて戴きますが、その中身は検討中です)

 ご覧ください。
混沌の遠因

 

社会の安定は、覇権の状態(強い者のリーダーシップの下での安定)、或いは均衡の状態(社会参加者の平等的地位によって支えられる安定)が最も安定度が高いと政治学の世界では認識されていますが、現状の国際社会のトレンドは、
「多くの国、そして多くの国の指導者が、覇権を意識しつつも、そのリーダーシップが弱く、結果として、世界は、均衡の方向に向かっている。(例えば、その具現化は、世界経済の運営主体がG−7体制からG−20体制になっていることなどにも垣間見られる。)
 そして今年に入ると、そのリーダーシップの弱さが更に顕在化し、均衡どころか、誰もがリーダーシップを取れない無極化=Government of Zero=の時代に突入しようとしている。」
と総括できるものと思います。
 こうした中、リーダーシップを失いつつも依然として「覇権」を強く意識している国々やそのリーダーたちは、人々が生きて行く為に必要なものを押さえて行くことに執着する、即ち、
「水、食料、原材料、エネルギー資源」
の権利を押さえようとすると共に、これらをお金で押さえる、
「国際金融の世界」
での覇権獲得に執着します。
 こうして平時に於ける覇権確保を進めようとする一方で、有事にも覇権を維持できるように、
「軍事力」
に於いても覇権が押さえられるようにと、現状の混沌の時代にあっても、盛んに覇権獲得を模索しようと世界の主要国は悪あがき?!をしています。
 一方、視点を全く切り替えて世界の経済情勢を眺めてみると、
「世界経済、国際ビジネスは、今、明らかに効率性という大義の下、一度そのポジションを獲得してしまえば、相対的、一般的には楽をして利益を得ることができる、大量生産・大量販売型の所謂マス・ビジネスが主流となっており、こうした中で、実体経済の発展を促すと共に、究極的にはお金がお金を生む金融資本主義的経済社会を更に肯定していく土壌を拡大している。」
とも言えます。
 こうした世界情勢を前提とした上で、より詳細に世界の経済動向を見ると、

「今の世界経済は、金(Gold)と言った具体的な裏付け(金本位制といった裏付け)ではなく、“米国の信用力”という、言ってみれば“無形資産=Intangible Asset”を担保として発行されている“基軸通貨・米ドル”を中心とする“貨幣経済”の中で、お金がなくても消費が出来る仕組み、即ち、例えば、クレジットカード、自動車ローン、住宅ローン、そしてその究極としてのサブ・プライム・ローンといった“広義の信用創造”のシステムが、残念ながら、行き過ぎた形で拡大、需要はあってもお金の無い人々(=本来は、その経済力からすれば、消費を拡大してはいけない人々)に対しても信用供与がなされ、これにより、実体経済を上回るはるかに消費を大いに喚起しながら、結果として市中には基軸通貨・米ドルが、米国国内のみならず、基軸通貨であるが故に、世界に放出されていく。
→現在、2008年のリーマン・ショック以降、検討され、推進されている金融機関の与信に対する規制の充実は必要不可欠である。

更に、こうした行き過ぎた信用創造を助長するが如く、世界的な格付け機関と称されるInstitutionが信用補完(Credit Enhancement)を行った。→未だに明確となっていない格付け機関に対する一種の規制を新たに実施することは必要不可欠である。
 世界経済はこの結果として、実体経済を大きく上回る基軸通貨・米ドル資金を抱えながら走ることとなった。(因みに、世界の実体経済を国内総生産=GDP=Gross Domestic Production)で捉えるとすると、現状では、例えば、外国為替市場ではそのGDP規模の20倍前後の資金がフローとして売買されていると見られている。また、以下のようなデータも行き過ぎた信用創造を示す一つの傍証データと言えるのではないか。
単位:兆米ドル 出所:国際通貨基金(IMF)データなどより筆者が作成

  1980年 2010年
世界のGDP規模  10.7  62.9
世界の銀行与信総額)     10.0 106.8

  1990年 2010年
世界のGDP規模  22.4  62.9
世界の株式時価総額規模    9.4  56.2

→行き過ぎた信用創造を作るシステムの是正はもとより、行き過ぎた信用創造によってあふれ出ている資金の回収が必要不可欠である。
 また、大反対があることを覚悟で敢えて言えば、行き過ぎた信用創造を作りだす「場」として使われる外国為替市場に関し、外国為替取引についても、市場に金融リテラシーが定着、そして、倫理観が戻るまでの間、一旦、「実需原則」に戻した方がよいとすら私は考えている。

こうした不自然な「行き過ぎた」不均衡は、結局は、サブ・プライム・ローン問題とこれに続く、リーマン・ショックによって一旦、収束の方向に向かう。

国家の借金を原因とした欧州財政危機の背景

しかしながら、こうした是正の動きは、お金がなくとも信用創造を利用して消費をしてきた人たちの消費を急激に冷え込ませ、結果として、実体経済にも、
“売上高の急激な減少”
という悪影響を、残念ながら齎す。
 そこで、実体経済の参加者たちは政治家に対して、景気対策を要求、政治家はこれを受けて、(政治家は、これに対して、きちんと対応しないと自らの政治家としての地位が失われる危険性が高まることから必死に対応する。)
“財政出動を伴う景気対策”
という伝統的な経済政策手法を用いて、この危機を回避しようとし、一旦はこれが功を奏するかに見えた。
しかし、国庫に資金の足りない国は、
“国の借金、主として国債発行による国の借金”

を拡大させ、この危機を乗り越えようとし、結局はこれがサブ・プライム・ローンなどに取って代わる“新手の”行き過ぎた信用創造の源となり、再び、市中には基軸通貨・米ドル資金が溢れることとなる。 次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。

→現在、欧州で検討されている国債保有も含む金融機関の与信システムに対する規制は必要不可欠である。

尚、このシステムが欧州のみならず、日米も含む国際スタンダードとなる可能性は高く、例えば国際決済銀行(BIS=Bank for International Settlement)の規制といった形で厳格なる国際ルール化されると、その規制は日本の国債保有者にも及ぶ、即ち、日本国債を大量に保有している日本の金融機関にも及ぶこととなり、結果として、日本の金融機関が日本国債を売却せざるを得なくなる、日本の金融機関のサラリーマン資金運用担当者たちによる国債の投げ売りといったことが連鎖として発生し、日本の国債暴落による経済危機の危険性が高まるといったことも、念のため、想定しておくべきであろう!!

また、こうした視点からすれば、現在、永田町で議論されている税と社会保障の一体改革は、“ある意味では”必要不可欠の対応と言える。但し、筆者はマイナンバー制度について、国民の私生活を全て裸にしていく監視していく性悪説に基づいたシステムとして使われていく制度の危険性があり、この制度導入については慎重に議論すべしと考えている。

上述したような一連の流れと現状が、現在の世界的な経済的混乱、否、混沌=Chaosの根源にある。」

と言えるのではないでしょうか。

 

 

改善の道は険しい?!

 

私の見るところ、国際金融市場には資金が溢れすぎるほど、溢れている訳ですから、
「当然にこれまでの一般的な金融政策はあまり稼働しない、通用しない。効果を上げない。」
訳であり、いくら、G−20をはじめとする国際社会が金融政策で対応しようとしても、それでは不十分である、場合によってはほとんど効果を挙げないと私は考えています。(実際に今回のG−20会議によって、様々な金融政策的対応が示されても、世界に不安が残る根源はここにあると私は考えています。)
更にまた、私は、金融緩和による短期的な景気対策を全面否定するつもりはありませんが、上述した通り、現在は、ただでさえ資金余剰の状態にある金融市場に対して、更に資金を放出していけば、中長期的には一層の、即ち、今回の混沌を更に上回る経済危機発生の火種を作ることになりかねない、或いは、そこまで至らぬとも、
「多くのお金が存在する経済社会にあっては、お金がお金を生む経済社会を助長し、実体経済軽視の傾向が強まる。」

といった懸念を私はしています。
抜本的な解決の道

 

従って、私はそうした点を踏まえて、まず、
→「人々が生きて行く為に必要な分野に対する投資に関しては“実需原則”を国際社会の中で、徹底的に強化、確立し、その分野での投機、バブル発生の危険性を今、未然に回避していく必要がある。」
と考えています。

しかし、そうした一方で、根源的な解決策としては、世界のリーダーたちが力を合わせて、
「先ずは溢れる米ドル資金を国際金融市場から徐々に吸収する。(一気に吸収すると、世界恐慌となる可能性は大、よって、ゆっくりと適度に資金吸収する。) その一方で、実体経済を一刻も早く拡大していく。」
という世界的経済政策を、世界が一致団結、協調して推進していくべきであると考えています。
 更に、前者(資金回収)は米国を中心とする先進国主導で、後者(実体経済拡大)は、実体経済のニーズが高い中国本土やインドを中心に推進されれば効果的であろう(但し、インドは財政に問題あり、ギリシャのような新たな行き過ぎた信用創造とならぬように注意を要する。)と私は考えており、財政に余裕のある国が先ずは実体経済拡大に入ると共に、一方では、
「財政出動を伴わない景気対策、市中民間資金をフル活用した景気対策を推進すべきであり、その軸として、国際機関によるCredit Enhancementを利用した実体経済拡大プロジェクトを各地域で推進し、一刻も早い実体経済の拡大を促す。」
ことによって余剰資金と実体経済のギャップを両サイドからいち早く埋め、縮めていき、世界経済を正常化していく必要があると思います。
 もしも、こうした対応策が遅れると、
「世界は、一旦、壊して、実需を作り、世界経済を再構築(Scrap and Build)していく方向に動く。
 即ち、その究極は、“戦争発生”の可能性を高めるのではないか。」
とも考えられ、私はとても懸念しているのであります。
 世界は本当に、
「混沌の極み」
にあります。
 国際協調による、いち早い解決を!!
 それは金融政策的な解決だけでなく、実体経済の拡大を誘引する解決策を必要としていると私は考えています。
 そこで、例えば、注目されるのは、世界の成長センターであるアジアなどを一つの具体的プロジェクトの推進先として想定しながら、国際復興開発銀行やアジア開発銀行、或いは、
「北東アジア開発銀行(機構)」
なども新設しながら、資金を極力流さず、保証(Guarantee=偶発債務)、これが難しければ、念書(awareness)といった信用補完システムをフル活用して、実需のある実体経済拡大に向けたプロジェクト推進を拡大すべきであると考えています。
 そして、そのプロジェクトの具体的な対象としては、例えば、
*三江平原開発に伴う食糧基地開発構想
*シベリア地域での治水プロジェクトとその水のモンゴル・内モンゴルなどの乾燥地域への輸送プロジェクト、更には同地域の緑地化プロジェクト、そして産業化プロジェクトの同時推進構想
*日本国内の「未来都市モデル構築構想(現在、私が提案検討中)」
などといった実需、実体経済の発展に直結するような案件を極力、財政出動を伴わない形で推進していくことが肝要であると考えています。
 如何でしょうか?

 次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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