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2012年11月[Sanada発 現場から]


日本企業の国際展開を考える

 

今回は日本企業の国際ビジネス展開に関する私の考え方をご披露いたしたいと思います。
ご参考になれば、幸いです。

私は仕事柄、全国各地の中堅中小企業経営者の方々にお目に掛かり、いつもご指導を戴いています。
そうした中で、最近良く耳にするお言葉が、
「円高、デフレ、国内市場の先行き不安などをはじめとする昨今の経済環境下、経営環境下では、わが社のビジネスの主戦場を海外に移さざるを得ない。
特に需要が見込めるアジア、その中でも、やはり中国は政治的もめごとがあっても捨てることは出来ない。
インドやインドネシアも魅力的である。
そして、ベトナムも検討可能となった。
更にはミャンマーも考えたい。」
と仰り、私に対して、
「君はどう考える?」
と質問をしていらっしゃいます。
そこで、私はいつも、
「はい、ご指摘のような経済情勢、経営環境ですから、国際的な視野を持つことは不可欠であり、またビジネスの国際化を進めることもやはり不可欠かと思います。」
とお答えします。
その上で、
「私の考える国際化とは、先ず、

  1. 世界全部を見回して、わが社が必要なものやサービスを提供しているか?
  2. 世界全部を見回して、わが社の競争相手がいるか?
  3. 世界全部を見回して誰(たち)が一番わが社を一番高く評価してくれているか?

を現状認識することにある。
その上で、その究極の理想である、

  1. 世界に強く必要とされているものやサービスをわが社だけしか提供できず、それを一番高く評価してくれる人に販売することによって、わが社の経営効率を高めること

を目的として経営展開することを国際化と言い、そのように考えて行くことを国際的視野を持つことであると思う。」
とお答えしています。
そして、そこから先は、
「従って、事業展開としては、極力、日本に居ながらにして日本人の強さを生かしながら経営効率を高めることを優先すべきである。
即ち、輸出や技術移転などの“授業料”を取りながら、日本に直接に利益を齎し、かつ、日本に雇用を残せるような方策を考えることをまず優先すべきである。
国際ビジネスは、国内ビジネスと相対比較すると、一般的には、言語、通貨、法律、環境基準を含めた製造基準、会計基準と言ったスタンダードのリスクを乗り越えなければならず、国内ビジネスに比較して相対的にはリスクが高いからである。
その上で、国際ビジネスをせざるを得ないと経営判断した場合には、相対的にはリスクが高いのであるから、国内ビジネスよりもリターンが大きいビジネス・モデルを構築すべきである。
特に、価格決定方式については、日本国内でしばしば見られるCost+Marginの積み上げ型の決定方式ではなく、国際ビジネスに於いては、教科書通りに、市場の需給関係で、相手にわが社の必要性をしっかりと認識させ、わが社に対する感謝の念を以って、わが社に代金を支払うことをさせるべきである。
また、こうしたことをイメージする際に一度、自社自身のことを検証しなくてはならない点は、

  1. 自社には他社に先んじている技術・ノウハウ・のれんといったがあるか?
  2. それを利用して利益率を高めると言うビジネス・モデルが確立されているか?
  3. 確立されていないとすると、マス・ビジネスの表現は悪いは“薄利多売型ビジネス”に飲み込まれる危険性は高く、そのマス・ビジネスに耐えうるだけの企業体力が自社自身にあるのかを検証する必要がある。
  4. そして万一、海外にビジネスの現場を直接設立される場合、主要顧客は日系か、その他の外資系か、或いは進出国系か?そして、その主要取引先とのビジネスで取りあえず、自社経営は黒字化出来るのか否か?
  5. もしも、否であるとすれば、それは急速な現地化経営を進めるべきである。
  6. また、海外拠点は現状、何箇所くらいに展開できるのか?確認してほしい。
  7. 更に、自社のビジネス・モデルの中心はそもそもB to Bか、或いはB to Cか?確認してほしい。」

といったお話をさせています。
そして、特に、
「アジアを注目している。」
という経営者の方々には、
「それでは、皆様のお客様は現地の方なのですか?」
と確認することにしています。
何故ならば、アジアを注目していると言う皆様方の多くは、意外にも、
「アジアの潜在的な消費を意識して進出している日系大企業のお供でアジア拠点展開」
をなさっている、しようとしている企業が多く、その会社自身が直接、その市場の需要を追いかけていないケースが多いからであります。
ちょっと悪い言葉で表現すれば、
「海外展開もやはり大企業様頼りなのですか?」
ということであります。
日本の企業展開、経営姿勢の中心は、これまでの強みである、
「各自それぞれが助け合い、協調し合う。」
ことを前提としながらも、
「各自が自力再生で頑張ること。」
に他ならず、経営の国際化は正にその精神で進められるべきであると私は考えています。
皆様方は、如何、お考えになられますか?
最後にご参考まで、アジア主要国の人口とGDP、そして一人当たりのGDP規模を2011年の統計データとして掲げさせて戴きます。
はてさて、皆様方の企業の国際展開の目的からすると、どの国が一番、「最適利用」ができそうですか?

Source:各国政府統計より筆者が抜粋 As of:2011年
国名      人口(百万人)  GDP(億米ドル)  1人当たりGDP(米ドル)
中国本土    1,348    72,981       5,414

インド     1,207    16,761       1,389

香港          7     2,433      34,049
台湾         23     4,689      20,139
シンガポール      5     2,598      49,271
韓国         49    11,163      22,778

タイ         64     3,456       5,394
マレーシア      29     2,787       9,700
インドネシア    241     8,457       3,509
フィリピン      96     2,131       2,223
ブルネイ        0.4     155      36,584
ベトナム       89     1,227       1,374

カンボジア      15       129         852
ラオス         7        79       1,204
ミャンマー      62       502         702

グループ1:中国本土
経済発展が顕在化、生産拠点としても市場としても大いに魅力あり。但し、カントリーリスクを如何にヘッジしていくかが課題。

グループ2:インド
経済発展の潜在性は大いに評価される。生産拠点として、市場としての魅力も高い。但し、インフラの未整備、金融面での不安大、通貨・ルピーの不安定さ、州ごとに異なるビジモススタイルなど課題大。

グループ3:香港、台湾、シンガポール、韓国(四龍・アジアNIE’S)
様々なコストは上昇。生産拠点としての魅力は薄れるものの域内販売、世界戦略を展開する橋頭保としての価値は上昇。高所得者向け・多品種・高品質・高利潤を取りに行くビジネスの場としては魅力あり。

グループ4:タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム
生産拠点としての魅力は引き続き大。市場としての魅力は未知数、もちろん期待は大きい。
タイはシンガポールと並び、東南アジアビジネス展開の橋頭保となり得る。

グループ5:カンボジア、ラオス、ミャンマー

生産拠点としての魅力はある。市場としてはこれからか?!

 次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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