今月はカナダ・トロントの友人から戴いた現地報告をご紹介します。
特に、何となく、アベノミクスで景気は上向いたと感じる私たちにとって、世界の景気動向が萎んでしまうと、日本だけの繁栄が期待できぬ現状にあっては、今後の不安も見え隠れします。
そうした意味で、カナダの景気動向と先行き見通しにも注意を払いたいところであります。
それでは、以下、友人のコメントを引用させて戴きます。(尚、コメントは四月後半に戴いております。)
「トロントはここ数日寒の戻りがあり、朝方マイナスとなっています。
昨日トロントのさくらの名所と言われる公園にいってみましたが、膨らみ始めているとはいえ開花まであと1週間くらいはかかりそうです。
さて、世界的な経済停滞はじわじわと表面化しているように見え、これまで比較的堅調で優等生と言われてきたカナダにもその影響が出始めています。
今月、カナダ中央銀行が四半期毎の金融政策レポートを発表しました。
先のIMFによる2013年カナダ経済成長率見通し引き下げ(1.8%→1.5%)を受けた形で、カナダ中銀も2013年度経済成長率を1.5%に下げました。
カナダ経済は2012年後半から減速しており、それを引きずる形で2013年も停滞すると見込んでいます。
要因としては、1)世界的需要減による輸出回復の遅れ 2)ビジネス投資の鈍化 3)個人消費の停滞 4)住宅投資減少 5)家計債務の高止まり 6)カナダドルの対USドル 高値推移 などが上げられています。
輸出に関しては、80%を米国に依存する体質のため、米国経済の回復が鍵となりますが、カナダの輸出に占める割合が大きい資源、自動車などは、米国シェールガス革命を受けた天然ガス価格の値下がり、米国南部及びメキシコ国境地域への自動車生産シフトなどからこれまでと同じような回復は期待できないかもしれません。
個人消費の停滞と家計債務の高止まりは、深刻度を増しています。
2000年代に始まった住宅バブルがピークを迎えておりながら、リーマンショックで金利を上げられない状態になったため、その後も住宅バブルは膨らみ続けています。
やっと今年年頭からバンクーバーでは住宅価格が下落を始めており、トロントでもコンドミニアムでは下落に転じ始めています。
銀行系調査機関では、20%くらいのバブルと言われておりその価格調整が入り、さらに2014年以降経済回復に伴い金利が上昇を始めると、破綻する家計が都市部を中心に続出すると言われています。
反面、トロントではコンドを中心に住宅建設ブームと言われており、ダウンタウンハーバーフロントなどでは建設中のビルが多く見られます。
しかし、ダウンタウンを外れた地域に目を向けてみると、工事が中断したプロジェクトも多く見られます。購買者、デベロッパー共に住宅投資に対する見方が慎重になってきたように思います。
日本との関係に関してみると、カナダもTPP参加を表明しておりますが、同時に日本―カナダのEPA(FTA)の交渉に入っています。
昨年2月に交渉開始を発表、11月に第1回交渉が日本にて持たれ、今週、第2回交渉がカナダで行われております。
主なテーマは、1)自動車を中心とした製造業と、医薬品やソフト開発を中心としたテクノロジー分野(主に日本からカナダへ) 2)農産物、畜産、海産物など一次産業とエネルギー資源分野(主にカナダから日本へ) となっているようです。
日本市場を狙った大手企業による新たな日本進出は期待できませんが、中小企業の間にはまだまだ日本市場は魅力的に見えるようで、オンタリオ商工会議所などが中心となりビジネスマッチングの機会を探っています。
両国の商工会議所が協働していけば、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性はまだまだあると思っています。
以上、カナダの経済状況をまとめてみましたが、自分はこれでもまだ甘い見通しではないかと危惧しています。」
更にまた、二週続けて、こうしたカナダ報告もしてくれました。
こちらも大いに参考になるものと思います。
続けてご覧ください。
「昨日、日本ーカナダEPA政府間交渉第二回目に併せた民間レベルでの日本ーカナダトレードシンポジウムがトロントで開催され、出席してきました。
パネルとして、1)製造業と技術産業 2)天然資源産業と農業 の2つがテーマに設定され、日本、カナダ双方からEPAに期待することがプレゼンされました。
冒頭、カナダ国際貿易省大臣のスピーチがあり、その中で「カナダ経済のバックボーンは中小企業である」と述べたことに興味を持ちました。
国の地学的特性は大きく違いますが、産業構造などでは似ているところもある点を強調していました。
日本からカナダへの企業進出は320社ほどあり、トヨタ、ホンダなどの工場、三菱、日揮、住友、三井などによるアルバータ州エネルギー産業への投資なども評価されています。
しかし、カナダから日本への企業進出で成功したのは、Manulifeがこの10年で成果を上げたくらいでその他にはほとんどないのが実態で、やや一方通行的な関係であることも事実です。
カナダが日本とのEPAに期待している本音は、
1)日本企業によるカナダへの投資(企業進出、企業R&Dやテクノロジーセンターの設置、企業買収等)を増やし、雇用創出
2)日本市場へのカナダの一次産業産品(農産物、肉、水産物、木材、鉱物など)輸出を増やす
3)天然ガスなどエネルギー産業の輸出増とそのためのインフラ整備への投資
などで、カナダ側は非常に積極的な印象です。
北米アジアへのゲートウェイとして連携を深めたいとのコメントもありましたが、最近は日本を素通りして、中国、韓国に訪問するようなこともありますので、これはリップサービスでしょう。
先週も書きましたように、中小企業を多く抱えるオンタリオ商工会議所などは、日本の中小企業とのマッチングを模索しています。
自分も、もし日本の地域商工会議所や中小企業の団体でカナダ市場の勉強会を持ちたいという話があれば、協力したいと考えています。
政治、経済が安定し、北米市場全体を狙えるカナダから、海外進出の一歩を踏み出す日本の中小企業が増えることを願っています。」
とのことであります。
アジア開発銀行(ADB)の最新の経済成長率見通しによると、景気がいいと言われている日米も以下のような成長率、先進国全体では2013年は1.0%の成長に留まると予測されています。
為替相場の変動による為替差益や株価の上昇などによって得られる「広義の資産バブル」に浮かれることなく、日本も性根を入れて、「成長戦略」に踏み出さないと、ADBが予測している通り、日本の経済成長は低位横ばいを続けてしまうのではないでしょうか?
何としても、ADBに上方修正させるような状態に日本経済を立て直したい、そんな風に考えるのは間違いでしょうか?!
足元を見つめて、頑張りたいと思います。
[ADB発表 最新 アジア経済見通し] 単位:%
|
2012年 |
2013年 |
2014年 |
先進国 |
1.2 |
1.0 |
1.9 |
日本 |
2.0 |
1.2 |
1.4 |
米国 |
2.2 |
2.0 |
2.6 |
欧州 |
-0.6 |
-0.3 |
1.2 |
|
|
|
|
アジア |
6.1 |
6.6 |
6.7 |
アセアン |
5.5 |
5.4 |
5.7 |
中国本土 |
7.8 |
8.2 |
8.0 |
インド |
5.0 |
6.0 |
6.5 |
次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。
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