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2013年5月[Sanada発 現場から]


日本企業の生きる道、そしてカナダ情勢と日本

 
[日本企業の生きる道、頑張れ、TEAM SAITAMA!!]

「人は支えあって生きている。」
と良く言われます。
  よって、その人の集合体である組織も支えあって生きていくべきでありましょう。
  しかしながら、そうした一方で、人も組織も、
「他者を排除する。」
という、支えあうとは正反対の行動も示します。
  相性が合わないのか、ネガティブな意味でのライバル関係にあるのか、いずれにしても他者を否定し、排除していくといった行動を示すこともあります。
  難しいものであります。
  しかし、ここでは、そうした悪い意味でのライバル関係と相対を排除すると言うことを乗り越えて、連携する意味を考えてみたいと思います。
  最近、日本各地を歩いていて、人口も維持・拡大、税収も維持・拡大をしている地域や企業経営で実を挙げている、いわゆる元気の良い地域、元気の良い企業に見られる一つの共通点が、こうした、
「支えあい、連携しあう。」
ということにあるからです。
  製造業での事例が最も分かり易いかと思いますので、これを例としてちょっと説明致します。
  ご高尚の通り、ものづくりの過程では、例えば、
*原材料や素材間調達
*一次加工
*本格的機械加工
*表面処理
*最終仕上げ
*半製品や最終製品の販売と輸送、そして代金回収
といった作業が細分化されています。
  そして、これらに関与する各企業では、こうした手順を必ずしも全て自社内部で行っている訳ではありません。
  即ち、こうした手順の中で自社が最も得意とするところに事業ポートフォリオの軸足を置きながら、
「売上高の拡大と利益の拡大」
を図り、当然にそうした過程で、売上高利益率の拡大に努めているのであります。
  そして、こうした流れから、良く言われる、
「サプライ・チェーン」
が生まれるのであって、そのサプライ・チェーンの中では、基本的には、
「優劣、差別」
しないのであり、もっといえば、本来的には、協調していくのですから、優劣や差別をしてはならないのであります。
  しかしながら、下請構造と言われる日本の産業社会に於いては、未だにこうした作業の最終段階にいる企業が、
「買ってやる、仕事を発注してやる。」
とのスタンスで、こうした作業の川上にいる企業を絞り上げ、例えば、そうした結果として、川上企業の仕事の単価も、
「コスト・プラス・マージン」
という積み上げ方式で決めさせていくようになっていっています。
  一方、欧州などでは、こうした手順の中間部分を取り纏めて半製品を作る大手部品メーカーと言われる、ボッシュのような企業が力を持ち、この製造過程における主導権を握ったりもしています。
  しかしながら、いずれの場合に於いても、その手順の中の一つでも落ちれば、
「ものづくり過程は滞り、優秀な製品の製造には行きつかない。」
という状況になるはずです。
  そうした意味で、皆が得意分野で力を発揮して良いものを出来る限り安く作ろうとしてきた日本の共同・協働体制とそれによって自然発生的に築かれてきた集積・クラスターは正に世界に誇るべきものであると私は考えています。
  そして、最近は、こうしたクラスター力をフル活用し、サプライ・チェーンの中で国際展開力を持ち始めた企業群が海外で、
「少量(出来る限り大量)、多品種、高品質、高利潤型」
ビジネスを意識しつつDEALを獲得、それを日本国内のサプライ・チェーンできちんとこなしつつ、
「日本に居ながらにして外貨を稼ぐ仕事」
を皆で共同、協働しながら進めていらっしゃるのであります。
  ここには、日本国内に雇用機会を残す、稼いだ利益を日本国内で税金として社会還元すると言う日本の安定的発展の要素も含まれており、よって、元気の良い企業がたくさん生まれ、その地域が元気の良い地域として、
「支えあう、連携しあう」
中で発展していっているのであります。
  そして、そうした中に、私の知るところでは、例えば、
「TEAM SAITAMA」
のような、まだ始まったばかりではありますが、少しずつ、具体的な成功事例も見られてきているのであります。
  この埼玉地域に限らず、切磋琢磨する上での競争を意識した、お互いに支えあう協調を理解している企業が多いところは、これからも更に発展するものと思います。
  今後も注目したいと思います。

 

[カナダ情勢と日本]

 今月はカナダ・トロントの友人から戴いた現地報告をご紹介します。
 特に、何となく、アベノミクスで景気は上向いたと感じる私たちにとって、世界の景気動向が萎んでしまうと、日本だけの繁栄が期待できぬ現状にあっては、今後の不安も見え隠れします。
 そうした意味で、カナダの景気動向と先行き見通しにも注意を払いたいところであります。
 それでは、以下、友人のコメントを引用させて戴きます。(尚、コメントは四月後半に戴いております。)

「トロントはここ数日寒の戻りがあり、朝方マイナスとなっています。
 昨日トロントのさくらの名所と言われる公園にいってみましたが、膨らみ始めているとはいえ開花まであと1週間くらいはかかりそうです。

 さて、世界的な経済停滞はじわじわと表面化しているように見え、これまで比較的堅調で優等生と言われてきたカナダにもその影響が出始めています。
 今月、カナダ中央銀行が四半期毎の金融政策レポートを発表しました。
 先のIMFによる2013年カナダ経済成長率見通し引き下げ(1.8%→1.5%)を受けた形で、カナダ中銀も2013年度経済成長率を1.5%に下げました。
 カナダ経済は2012年後半から減速しており、それを引きずる形で2013年も停滞すると見込んでいます。

 要因としては、1)世界的需要減による輸出回復の遅れ 2)ビジネス投資の鈍化 3)個人消費の停滞 4)住宅投資減少 5)家計債務の高止まり 6)カナダドルの対USドル 高値推移 などが上げられています。

 輸出に関しては、80%を米国に依存する体質のため、米国経済の回復が鍵となりますが、カナダの輸出に占める割合が大きい資源、自動車などは、米国シェールガス革命を受けた天然ガス価格の値下がり、米国南部及びメキシコ国境地域への自動車生産シフトなどからこれまでと同じような回復は期待できないかもしれません。

 個人消費の停滞と家計債務の高止まりは、深刻度を増しています。
 2000年代に始まった住宅バブルがピークを迎えておりながら、リーマンショックで金利を上げられない状態になったため、その後も住宅バブルは膨らみ続けています。
 やっと今年年頭からバンクーバーでは住宅価格が下落を始めており、トロントでもコンドミニアムでは下落に転じ始めています。
 銀行系調査機関では、20%くらいのバブルと言われておりその価格調整が入り、さらに2014年以降経済回復に伴い金利が上昇を始めると、破綻する家計が都市部を中心に続出すると言われています。

 反面、トロントではコンドを中心に住宅建設ブームと言われており、ダウンタウンハーバーフロントなどでは建設中のビルが多く見られます。
 しかし、ダウンタウンを外れた地域に目を向けてみると、工事が中断したプロジェクトも多く見られます。購買者、デベロッパー共に住宅投資に対する見方が慎重になってきたように思います。

 日本との関係に関してみると、カナダもTPP参加を表明しておりますが、同時に日本―カナダのEPA(FTA)の交渉に入っています。
 昨年2月に交渉開始を発表、11月に第1回交渉が日本にて持たれ、今週、第2回交渉がカナダで行われております。
 主なテーマは、1)自動車を中心とした製造業と、医薬品やソフト開発を中心としたテクノロジー分野(主に日本からカナダへ) 2)農産物、畜産、海産物など一次産業とエネルギー資源分野(主にカナダから日本へ) となっているようです。

 日本市場を狙った大手企業による新たな日本進出は期待できませんが、中小企業の間にはまだまだ日本市場は魅力的に見えるようで、オンタリオ商工会議所などが中心となりビジネスマッチングの機会を探っています。
 両国の商工会議所が協働していけば、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性はまだまだあると思っています。

 以上、カナダの経済状況をまとめてみましたが、自分はこれでもまだ甘い見通しではないかと危惧しています。」

 更にまた、二週続けて、こうしたカナダ報告もしてくれました。
 こちらも大いに参考になるものと思います。
  続けてご覧ください。

「昨日、日本ーカナダEPA政府間交渉第二回目に併せた民間レベルでの日本ーカナダトレードシンポジウムがトロントで開催され、出席してきました。

 パネルとして、1)製造業と技術産業 2)天然資源産業と農業 の2つがテーマに設定され、日本、カナダ双方からEPAに期待することがプレゼンされました。

 冒頭、カナダ国際貿易省大臣のスピーチがあり、その中で「カナダ経済のバックボーンは中小企業である」と述べたことに興味を持ちました。
国の地学的特性は大きく違いますが、産業構造などでは似ているところもある点を強調していました。

 日本からカナダへの企業進出は320社ほどあり、トヨタ、ホンダなどの工場、三菱、日揮、住友、三井などによるアルバータ州エネルギー産業への投資なども評価されています。
 しかし、カナダから日本への企業進出で成功したのは、Manulifeがこの10年で成果を上げたくらいでその他にはほとんどないのが実態で、やや一方通行的な関係であることも事実です。

 カナダが日本とのEPAに期待している本音は、
1)日本企業によるカナダへの投資(企業進出、企業R&Dやテクノロジーセンターの設置、企業買収等)を増やし、雇用創出
2)日本市場へのカナダの一次産業産品(農産物、肉、水産物、木材、鉱物など)輸出を増やす
3)天然ガスなどエネルギー産業の輸出増とそのためのインフラ整備への投資
などで、カナダ側は非常に積極的な印象です。

 北米アジアへのゲートウェイとして連携を深めたいとのコメントもありましたが、最近は日本を素通りして、中国、韓国に訪問するようなこともありますので、これはリップサービスでしょう。

 先週も書きましたように、中小企業を多く抱えるオンタリオ商工会議所などは、日本の中小企業とのマッチングを模索しています。

 自分も、もし日本の地域商工会議所や中小企業の団体でカナダ市場の勉強会を持ちたいという話があれば、協力したいと考えています。
政治、経済が安定し、北米市場全体を狙えるカナダから、海外進出の一歩を踏み出す日本の中小企業が増えることを願っています。」

とのことであります。
 アジア開発銀行(ADB)の最新の経済成長率見通しによると、景気がいいと言われている日米も以下のような成長率、先進国全体では2013年は1.0%の成長に留まると予測されています。
 為替相場の変動による為替差益や株価の上昇などによって得られる「広義の資産バブル」に浮かれることなく、日本も性根を入れて、「成長戦略」に踏み出さないと、ADBが予測している通り、日本の経済成長は低位横ばいを続けてしまうのではないでしょうか?
 何としても、ADBに上方修正させるような状態に日本経済を立て直したい、そんな風に考えるのは間違いでしょうか?!
 足元を見つめて、頑張りたいと思います。

[ADB発表 最新 アジア経済見通し] 単位:%
2012年
2013年
2014年
先進国
1.2
1.0
1.9
日本
2.0
1.2
1.4
米国
2.2
2.0
2.6
欧州
-0.6
-0.3
1.2
       
アジア
6.1
6.6
6.7
アセアン
5.5
5.4
5.7
中国本土
7.8
8.2
8.0
インド
5.0
6.0
6.5
 

 次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。

 



 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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