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2013年6月[Sanada発 現場から]


日本に対する評価と懸念

 

 今月は我が日本経済に対する評価の見直しと、それでも残る懸念といった点に焦点を充て、コメントさせて戴くこととしました。
 不安定な国際金融情勢にあって、日本経済もまだまだ不安定です。
 必要以上に不安を持つことは回避したいと思いますが、その動向はやはり注視していく必要がありましょう。

[日本経済に対する評価]

 国内総生産基準で世界第三位の経済規模を持ち、技術大国と言われ、金融システムも発展しており、治安も安定している、私にとっては、とても素晴らしい国として映る、我が国、「日本」であります。
しかし、今はその日本は景気が悪く、国際社会からも、
「元気がない国、閉塞感の漂う国」
として見られているようです。
 ところで、その日本に対して、一番、厳しい目を向けているのが、私たち国民自身であるかもしれません。
 それは、ひょっとすると、一般的には、多くの日本人に垣間見られる、
「自虐的な自己評価」
によって齎されているものかもしれません。
 そこで、今日はちょっと古いデータですが、確報基準での国際比較のデータを、項目を羅列して見ながら、私たちの国・日本と言う国を、ざっと復習しておきたいと思います。
*国土面積約38万平方キロメートル 世界第61位。ちょっと小さいでしょうか。でも世界のトップから見て三分の一の国土面積国の中には入っています。
*人口約127.8百万人      世界第10位 今でもなかなか大したものです。但し、少子高齢化という複雑骨折をしながら減少トレンドに入っている点はやはり懸念ですね。
*就業者数約61百万人       世界第26位 数も多く、何よりも質が高いことが評価されています。
*失業率約4.6%         世界第52位 だいぶ悪化してきました。特に若年層の失業者増加、そして非正規雇用問題は社会問題にも繋がる可能性を孕んでいます。
*GDP約5.9兆米ドル      世界第3位 明らかに経済大国です。
*GDP成長率マイナス0.75%  世界第174位 成長性に大いに疑問が持たれています。
*国家の歳入約143兆円GDP対比30.6%
 国家の歳出約191兆円GDP対比40.7%
*政務債務約1,076兆円GDP対比229.7% 世界第1位、これはギリシャやイタリアよりも大変悪いです。
*経常収支約1,200億米ドルの黒字 世界第4位 立派なものですよね。
 如何でしょうか?
 こうして見てくると、日本経済が悪い悪いと言われている点は、正に日本の弱点に焦点を充てた議論であり、その反対側には、
「日本の強み」
も見え隠れしています。
 そして、その日本の強みの中で、例えば、
「経常収支の黒字」
に焦点を充てた、
「円高」
といった評価が出てきていたことを私たちは忘れてはいけません。(そして、その円高は決して悪だけではないということも理解しておかなければなりません。)
 しかし、その反面、
*成長性の低下
*財政の悪化進展
は極めて深刻な状態にあることは国際比較から見ても明らかです。
 私たちは、こうした点を踏まえて、日本経済を改めて冷静に見直し、
「日本経済に対する妥当な評価」
を行い、必要以上に悲観的にもならないように、そしてもちろん、行き過ぎた楽観視を回避すべく頑張らなくてはならないでありましょう。


[日本経済の弱点]

 上述した通り、実は実体経済は強いとも見られている日本経済も、
「金融面」
から見た場合には不安が残るとの見方もあります。
 そして、その究極は、
「日本国債の暴落による日本の信用力の低下が顕在化する。
 その結果、円安が進展する。
 その段階で日本の経常収支、外貨準備高のポジションは悪化する。
 一方で、食糧や原材料、エネルギー資源の価格は上昇している。
 日本はこれらの物を更に輸入しにくくなり、名実ともに一旦は破綻してしまう。」
といった厳しい見方であり、こうした一部の声にも私たちは意識を払わなくてはなりません。
 そこで、ここでは、如何に日本の財政問題とその表面的な問題として起こるであろう日本国債の暴落の危険性などについて、ちょっとその一側面を眺めておきたいと思います。

 昨年、大問題となったユーロ圏の財政危機については、国際金融市場では、
「一次的な操作・抑制のミスにより引き起こされたものではなく、ユーロ圏の政治・経済・金融に長年存在する問題が根本原因にあった。」
との評価が示されています。
 そして、そうした見方の延長線上で、
「自国の経済成長、債務返済能力、金融システムに対して自信を失う次の国はおそらく日本ではないか。」
との見方も出ているのであります。
 戦後の奇跡的な経済成長は、1980年代末の不動産バブル崩壊と株式市場の大暴落により、終焉したことは多くの人たちは否定しないと思います。
 それから先、日本には、繁栄から低迷の過程を経た国民と企業、そして潜在的な負債を抱えた銀行が増えています。
 そして、実際に、その回復には長い期間が費やされていますが、未だに脱却を出来ないでいます。
 日本の負債総額は毎年のGDPの約2.4倍、純債務額も毎年のGDPの約1.4倍にまで達しており、世界一の負債大国となったと言えましょう。
 これは、ユーロ圏のうち、ギリシャの政府債務残高のみが日本に近い水準に達しており、それだけ日本が悪い状況にあると言うことの表れとも言えます。
 日本は戦後、欧米の経済システムを基礎とした上で、国民貯蓄を利用し投資を推進するという資金循環システムの中で一定の成果を上げてきました。
 そして、これが企業の発展と中産階級の拡大を増長したとも言えましょう。
 しかし、先進国の政府は短期金融市場からも利益を得るようになり、この制度のためにより低い利息で多くの融資を、時には必要以上に取り付けられるようになったことから、これらの政府は安易に借金を拡大し、債務が雪だるま式に増加した、日本もそうした形で公的部門の負債を拡大させたと思われます。
 毎年の政府予算の約半分は年金と利息の支払いに充てられており、年金に対する支出が増えるに伴い、増加を続ける公共事業により生じた債務を返済するため、日本の貯蓄が用いられているという状況に陥っている、これはある意味での必然でありましょう。
 そして、日本の国内銀行は大量の国債を抱え、国内の年金制度は将来的な支出を支えるために大量の国債を購入するように事実上推進しており、この結果、日本国債の債権者の約94%は日本国民となっていますが、その日本国民自身が日本国債を売る可能性も出てきているのであります。
 また、労働人口の減少は日本の海外投資の増加を招き、これらの資金は平均年齢が低く人口の多い成長中の国、即ち、投資利益率が高い国に投じられ、投資を受けた発展途上国は経済発展を遂げ高齢化が始まった頃に借金を返済し、日本の年金とその他の福利厚生費を支えることになると考え、日本は過去数十年間にわたり、シンガポールやノルウェーでこのような戦略をとってきたとも言えましょう。
 しかし、これらのメリットは一時的なものであり、また海外資本が本国に流れ込んだ場合、政治家は本国の財政赤字を見落としがちになる、そしてほっと安心した隙に、突然国債が暴落し、突然の破綻という屈辱を味わうと言う可能性・危険性を残します。
 こうしたことに加えて、最近は円の長期金利も上がっていますし、とても気に掛かります。
 皆様方は如何思われますか?

 次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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