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2014年3月[Sanada発 現場から]


[新興国経済の行方]

 今月は、皆様方のビジネスには、直接的にはご関係が薄いかもしれませんが、ここ数年、世界全体の経済成長を一定程度牽引してきた、
「新興国」
について、簡単にコメントをさせて戴きたいと思います。
 今のところ、新興国の中で、
「中国本土やインド」
といったところにまで、大きな経済的悪影響は及ばないと見られていますが、これらの国々でも、
「経済成長の鈍化」
は明らかに見られてきています。
 そしてまた、その中で、
「外国為替に関する市場規制が少なく、自由化された新興国にはむしろ、投機性の資金が流れ込んでおり、これらの国に何か思わぬ事態が生じると、自由化が進んでいるからこそ、むしろ、その国の通貨が暴落するというリスクも存在している。」
とも考えられ、特に、1997年のアジア通貨危機を経験した東南アジアなどでは、注意を要するかもしれません。
 そうした視点から、以下の内容をご参考まで、ご覧戴ければ幸いです。

[新興国経済の見通しについて]
 私は、現在、
「今年は強い米国が復活する。」
という方向に動き、
* 年末には若干の米ドル高に向かう。
* TPP交渉については、米国主導色が強まり、日本もこれに同調する動きが強まる。
* 米国の金融引き締め姿勢は強まる。
と見ると共に、米国経済の少しずつの回復を背景として、
「米国は資金バブルを是正するため、金融引き締め姿勢を徐々に強めていく。」
のではないかと見ています。
 そして、こうしたシナリオに基づくと、世界の新興国の外国為替市場に流れている投機性資金は一旦回収される、即ち、新興国通貨の中の少なくとも一部では、弱含みで推移する可能性が高まり、場合によっては、そうした新興国通貨の更に一部は大幅下落する危険性もあると見ています。
 こうした中、最近、ロイターが収集した各中央銀行の統計(中国本土を除く)によると、1月はロシアやトルコを含め多くの新興市場国・地域で中銀が保有する外貨準備が大幅に減少していると報道しています。
 こうした背景には、自国通貨の下落を意識しつつ、債務返済や通貨の為替面での下支えに外貨準備が使われたものと見られ、懸念されています。
 そして、詳細を見ると、ロシアの外貨準備高は前年対比300億米ドル減少、インドネシアは80億米ドル、インドは40米億ドルと、それぞれ減少しています。
 国際金融市場では、
「トルコは、利用可能な外貨準備高(純ベース)が昨夏の400億米ドルから330億米ドル程度にまで縮小した。
 減少率では、パキスタンが前年対比40%減と最も落ち込み、次いで、アルゼンチンが34%減、ウクライナが28%減となった。

 一方、メキシコの外貨準備高は140億米ドル増加し、韓国や台湾も増加した。

 中国本土を除く新興市場国・地域全体の外貨準備高は本年1月末時点で4兆1,900億米ドルと前年対比5%(2,000億米ドル)増加、前月対比では650億米ドル拡大した。
 2003〜2007年は年間20〜30%、2009〜2011年にかけても同10〜20%のペースで拡大していた。」
と指摘されており、その変動の激しさが増していることを警戒しています。
 こうしたことからも、外国為替相場の動きには、注意を払わなくてはならないかと思います。

[米国FRBの見る新興国通貨に関するリスク見通しについて]
 その新興国通貨の変動に関して、米国・FRBのイエレン新議長は以下のような見方をFRBがしていることを証言しました。

 法治主義の中で、米国が発行している通貨である米ドルを基軸とした貨幣経済が拡大、行き過ぎた広義の信用創造が行われ、世界は明らかに資金余剰の状態に陥り、この溢れ出た資金が投資先を求めて新興国の為替市場にも流れ込んではいるものの、リスクが高まり、投資家がリスクに対して神経質となれば、こうした資金は新興国の為替市場から再び流出、この結果として、新興国通貨が下落する可能性を秘めています。
 そして、その新興国の為替市場から資金が流出する契機の一つとなるであろうと言われているものの一つに、
「基軸通貨を発行している国である米国が金融引き締めに転じ、余剰資金そのものを回収する動きを示すこと。」
が挙げられています。

 そして、その米国の連邦準備理事会(FRB)のイエレン新議長は議会証言の中で、その、
「金融引き締め政策姿勢」
を明確に示しました。
 その上で更に、FRBが米国議会に提出した半期ごとの通貨政策報告書の中では、主な新興国のうち、量的緩和の縮小など外部からの要因に耐えられる国・地域として韓国と台湾を挙げたことが報告されました。
 1997年のアジア通貨危機を経験した韓国にとっては、大変好ましい、また、頼もしい発表がされたと言えましょう。
 FRBはこの発表の中で、主な新興国・地域の「脆弱性指数」評価を実施した結果を示しており、
「韓国と台湾の脆弱性が最も低いことが分かった。」
との主旨のコメントをしています。
 この脆弱性指数とは、国内総生産(GDP)に占める経常収支、政府債務、民間融資、外貨準備高の割合と直近3年間の平均物価上昇率など主な経済指標を総合する方式で算出された、所謂、定量分析でのデータに基づくものであり、数値(3〜13)が高いほど、外部の不確定要素に弱いことを意味するとなっています。
 そして、今回、外部からの衝撃に最も弱いと評価されたのはトルコで、脆弱性指数は12を超えています。
 また、 以下、ブラジル、インド、インドネシア、南アフリカの順に脆弱性指数が高い危険国として挙げられています。
 これら5カ国はいずれも脆弱性指数が9を超え、高リスク群に分類されました。
 一方、韓国と台湾の脆弱性指数は4前後で、低リスク群に分類されたことから、上述のような評価になったのであります。
 中国本土、メキシコ、マレーシア、ロシア、フィリピン、タイ、チリ、コロンビアの指数は5〜9で、中リスク群とされています。
 そして、総括すると、
「特に韓国は通貨価値の変動幅が最も安定した国」
と評価されたようであります。
 こうした発表の後、国際金融市場では、FRBのイエレン議長が市場の安心を誘う議会証言を行ったことに加え、中国本土の輸出入統計が好調だった影響も受けて、韓国ウォンはウォン高傾向が再確認されるとの見方も出てきているのであります。

 皆様方には、是非、こうした国際金融社会の世界経済全体に対する見方や、各国に対する評価などを参考にして戴きながら、皆様方の実体ビジネスのパートナーでもあろう「新興国」の動向に関して分析をして戴ければ幸いで御座います。

 次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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