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2014年4月[Sanada発 現場から]


[中国本土経済、韓国経済に関するトピックス]

はじめに
 今月は昨今の中国本土経済と韓国経済に関するトピックスを、簡単にコメント、ご紹介をしてみたいと思います。
 日韓、日中の政治関係になかなか改善の兆しが見られませんが、日本経済、就中、日本の民間企業にとっては、中韓との経済関係は下端に期って捨てるわけにはいかないかと思います。
 そうした意味で、以下のようなトピックスが少しでもお役に立てばと願っております。

中国本土経済リスク
 私は、自らの経験、実感からして、
「中国本土の政策指導者たちは、国際金融のシステムと実態をかなり深く研究し、また認識している。」
と考えています。
 その一方で、共産主義、社会主義的な体制の下、システムを整えつつ、
「計画経済的な動きをとり続けている。」
とも見ています。

 さて、中国本土経済の現状に見られる実態を眺めてみると、その先行きに対する不透明感が国際金融市場では一段と強まっているとも言えます。
  景気減速が各種経済指標を基とした定量データからも見られているからであります。
  そして更に、最近になり、中国本土国内・債券市場で今月7日発生した初の社債デフォルト(債務不履行)と、前年同月対比で18.1%減少した8日発表の2月の中国輸出統計によって、
「中国本土経済はやはり減速感が顕在化している。」
との見方が強まっています。
  更に、中国本土国内市場では、
「銅を担保にした資金調達が減る。」
との“噂・思惑”まで飛び出し、上海先物取引所では銅相場が続落し、株式市場の上海総合指数も混乱しました。
 また、中国本土の今後を予測することに影響する全国人民代表大会(全人代=国会)で採択されるであろう経済改革案にも、
「既得権益層など中国本土内の抵抗勢力の政治パワーで“骨抜き”にされるのではないか。」
との懸念まで出る始末で、昨年の全人代後に一気に高まった李克強首相の経済政策「リコノミクス」への期待は、急速にしぼみ始めているとまでコメントされています。
 しかし、私は中国本土の政策指導者たちは、既にこうしたことは織り込み済みで動いていると見ています。
 即ち、あまり、
「中国本土経済は危ない、危ないと大騒ぎをせず、客観的にその影響を分析していくべきである。」
と考えています。

そして、例えば、中国本土の政策指導者は、

* 上述した中国本土初の債券デフォルトは、リスク意識の甘さからモラルハザード(倫理の欠如)を起こしている中国本土の投資家への「警告」にするという効果を狙っている。

* 市場で懸念されている連鎖デフォルトによる混乱や「影の銀行(シャドーバンキング)」関連の金融商品への飛び火を市場そのものに警戒させて、実際に発生しないように牽制する効果を狙っている。

* 輸出低迷は人件費の高騰や人民元高による中国本土製品の国際競争力の低下を裏付けたと国際金融市場に知らしめ、これによって、国際金融市場の「人民元切り上げ圧力」をむしろ弱めて、中国本土の輸出競争力回復を狙い、中国本土の実体経済の建て直しを図るように誘導する。

といった「奥の狙い」があると私は見ており、こうしたことを加味しつつ、今後の動向を予測していくべきではないかと考えています。

 そして、最後にもう一つ、
「外需も内需も伸び悩む中で、デフォルト問題へのコントロールがきかなくなり、中国本土の成長が急激に失速した場合には、外国人投資家の中国本土債券も、投資家責任を背景にして、不良債権化させて、一部を切り捨てる形で、市場にショックを与えて、市場全体を守る。」
といった手に中国本土政府が意図的に出てくる可能性があるとも見ています。
 この手法は、1997年のアジア通貨危機前後に中国本土の中央政府が取った手法で、中央政府ではなく、各地方の下に組織化されていた「投資信託公司(ITIC)」を潰し、不良債権化、投資家責任を日本の金融機関を含む外国人投資家にも取らせると言う、「トカゲの尻尾切り型」ショック療法を以って、中国本土に向けられていた不安感を改善させたことにも似た手法であり、私にはそれを強くイメージさせるからであります。
 いずれにしても、中国本土経済を実体経済、金融経済双方から客観的に分析をしつつ、中国本土が社会主義的な国家であることを意識、中国本土政府の思惑とその政策動向を加味して、総合分析をしていく必要があると私は考えています。

韓国の輸出力と日本
 日韓関係が悪化する中、韓国経済界には、日本への依存度が高い韓国経済を意識し、関係改善を望む声が水面下では少なくないと私は見ていますが、そうした声を抑えるうえからも韓国政府は、韓国経済の強さ、就中、日本に対する優位性を韓国が持ち始めていることを様々な機会、様々な視点から紹介しています。
 そして、最近では、
「円安に転じても、韓国の輸出は堅調であり、貿易収支は黒字を続けている。
 一方、日本貿易赤字続けている。」
と強調し、韓国の貿易収支黒字継続の背景について、

(1) 半導体、海外建設、船舶をはじめ、韓国の様々な製品の国際競争力が向上し、価格対比品質に見合う商品が日本よりも増えてきていること。

(2) 海外展開を急いだ日本企業は、円安効果を享受しにくく、むしろこれが日本企業の悩みとなっていること。

(3) 韓国にとっても日本にとっても大切な輸出先となっている中国本土市場に対する食い込み方で、韓国企業は明らかに勝っていること。

などを上げ、円安による悪影響が韓国に及ぶ危険性は言われているほど大きくはないと言うことを示しています。
 韓国の輸出力がそこまで強いとは思いませんが、しかし、上述したような見方が出来ることも否定してはなりません。
 
 今後も中韓の経済動向をしっかりと睨みつつ、日本経済に対する影響をも見極めていきたいと思います。

 次回号も引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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