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2015年1月[Sanada発 現場から]


[2015年、日本を巡るチェックポイント]

[はじめに]
 昨年後半は、
* 米国の金融引き締め転換姿勢が示されたこと。
* その一方で、日本が金融緩和姿勢を示したこと。所謂、黒田バズーカ砲の発射。
* そして、年末の電撃衆議院解散総選挙が実施されたこと。
などによって、日本は大きく揺れました。
 一方、世界的な視野から見ると、
* 気象の異常による自然災害が拡大していること。
* エボラ出血熱に見られる治療困難な伝染病の拡大していること。
* 予測がつきにくい過激なテロやデモの発生拡大が見られていること。
* ウクライナ情勢に見られるような複雑なパワーゲームを背景とした国際情勢の変化の多発していること。
* 覇権国家同士の対立拡大の可能性が拡大していること。
などが今、起こっており、
「現行の世界秩序が崩れていく兆候」
も見られています。
 こうした状況下、2015年の日本はどのような道を歩むのでありましょうか?
 以下、15のチェックポイントに分けて、予想していきたいと思います。

[15のチェックポイント]
1. 物価問題
 まず、この議論を進める前提として、
「2%物価上昇がデフレ脱却の証とすること自体、そもそも検証されていないこと。」
を意識すべきである。
 即ち、2%の物価上昇に極度に拘り続けてはならない。
 円安進展を背景とした輸入インフレを主たる要因として2%を目指して進むであろう緩やかな物価上昇は、むしろ庶民生活と中小企業のコスト高要因として、日本全体には悪影響を与える可能性が高いと見ておくべきである。

2. デフレ対策=成長戦略
 デフレ克服に必要なことは、理屈から考えれば、「需要」の創出であるはずである。
 その対応については、民間が努力することを前提とはするが、とにかく、政府も公共投資以外の需要創出に注力すべきである。
 その為の即効性の高い解決策の一つは、
「規制緩和」
であり、それに向けた政策対応を注目すべきである。
 また、公共投資拡大を行うのであれば、その公共投資が将来の継続的な需要創出に繋がる公共投資を優先すべきである。
 こうした中に、三本目の矢である、
「成長戦略」
を期待すべきである。

3. 金融政策
 行き過ぎた信用創造によって国際金融市場に供給されている資金量が計り知れぬ規模となっている中、日本もいち早く、緩やかな金融引き締めに転ずることか理には適っていると理解するべきである。
 即ち、究極は緩やかな「利上げ」への転換を米国と平仄を合わせる形で進め、市中に放出し過ぎている資金の回収を図っていくべきであり、更に、これによって、行き過ぎた円安の調整も図るべきであろう。
 但し、利上げは「財政問題」に関する対応上はディメリットがあり、慎重に対応しなくてはならないことを忘れてはならず、現状では円の短期金利の利上げの可能性は低いものと見られる。
 一方、長期金利に関しては、円国債、特に超長期国債の引き受け、流通状況如何では、反転、上昇の可能性も残されていると認識しておくべきであろうが、当面は懸念なしとされている。

4. 株価対策
 誰もが株価が高いことを好むのは一般的に言えば当たり前のことである。
 しかし、実体経済が追い付かず、企業業績もはっきりとせぬ中、株価だけが先行して上昇することを決して好ましいとは言えない。
 また、サプライズによる、金融緩和策と言う金融政策の影で、国の資金、即ち、国民の資金を以て、上場企業株を下支え、底上げする政策を事実上取ったということに疑問もあり、市場の自然な流れに任せていくべきである。
 更に、株価上昇が資産バブルに留まれば、株を持つ者と持たざる者の格差拡大にも繋がるわけであり、そうした意味からも恣意的な株価上昇策には節度を持つべきである。
 こうしたことを前提としても、今現在は、自然な株価上昇を前提として、
「日経平均株価20,000円水準までは容認されるであろう。」
と見られており、一方、この水準を超えることとなれば、バブル懸念が出て、株価は押し戻されるであろうと見られている。

5. 為替相場
 通貨・円の全面安は一義的には、やはり、日本の国力低下に繋がると認識すべきである。
 もちろん、再び、行き過ぎた円高となることは希望していない。
 しかし、黒田バズーカ砲のように恣意性を以て、市場にコンタクトするのであれば、国際金融筋などが示してきた理論値での適正相場水準である、
「1米ドル=95〜111円」
を強く意識したオペレーションをし、輸出サイドからも輸入サイドからも日本にとって相応しい相場水準を意識、維持すべきである。
 現状では、円・米ドル金利の格差拡大を背景として、125円の円安方向に行き易いと見ておくべきである。
 しかし、資源エネルギー・原材料の国際価格安によって、米国の物価上昇が進まない場合、予想されている米国の利上げが遅れ、この場合、一転、円高に戻り110〜115円水準に反転する可能性もある。
 ユーロは、ギリシャをはじめとする財政赤字問題の再燃の可能性があり、円が米ドルに対して円安に向かっていったとしても、単純にユーロに対しても円安となるとは限らない。

6. 円金利
 金融政策に合わせて低金利であることを基本的には否定せず、また、財政問題や金融機関のオペレーションを考えると相対的は円の低金利維持を予測しておきしたい。
 しかし、これに伴う、行き過ぎた円安進展が起こるとせば、円金利の微調整は場合によっては必要となる。
 また、上述したとおり、円国債の引き受けや流通状況によっては長期金利の反転上昇の可能性があることを否定してはならない。

7. エネルギー価格、原材料価格、食糧価格
 米国の金融引き締め策を大きな背景とする米ドル建て価格の下落は日本にとっては総じて好ましい方向である。
 原油価格については、突然の急落は、むしろ、
「これまでの原油高の背景は投機性の資金がエネルギー市場に流れ込んでいた証である。」
とも認識しておくべきであり、この投機性資金が原油市場から一気に流出したのは、
「ロシアに対する経済制裁の一部である。」
と認識しても良いかもしれない。
 いずれにしても、投機性の資金が原油市場から流出し、今現在は、
「原油の実需の需給関係を反映した適性水準に調整されている。」
と見ておきたい。
 一方で、金の価格や穀物などの主要食糧品市場には投機性の資金が未だに滞っていると見ておくべきであろう。
 こうした状況を踏まえて、国際価格であること、また、その国際価格のボラティリティが比較的高いと言うことを承知の上で、更には、国際金融社会からの反発が予想されるということを踏まえたうえで、敢えて、
「重要なエネルギー銘柄、原材料銘柄、食糧銘柄については、実需原則を貫いて欲しい。」
とのメッセージを日本から世界に向かって発信すべきである。
 その意味は、人々が生きて行くために必要な品々が投機性資金に晒されることは厳に回避すべきである考える庶民が多いことを世界のリーダーに理解せしめるべきである。

8. 財政問題
 冷静に考えれば、年金をはじめ、財政に関連が大きいシステムが既に破綻していることを多くの日本人は認識している。
 収入サイドの税制の問題などだけでなく、支出サイドの見直し、更には、年金制度に見られる抜本的な制度の見直しにも着手し、総合的な対策を取らないと傷口は広がる一方である。
 この問題の放置は、日本の国際社会に於ける
「信認低下」
の遠因となり得、早期に抜本的な対策を取るべきである。
 しかし、政界の意向を踏まえて、現実を見ると、そうした対応策が出るとは想像し難く、当面は国際金融筋に日本に対する不信認の動きが出ないように、個別・具体的な対応策を以って対処していくという現実が見られよう。
 尚、万が一、国際社会からの不信認姿勢が突きつけられれば、
「更なる円安と日本国債の売りに伴う長期金利の急上昇」
といった事態に陥る危険性があると認識すべきである。

9. 消費税問題
 消費税引き上げをするにしても、例えば、先ずは生活必需品とその他の少なくとも二段階に分け、前者は2%程度にむしろ引き下げ、後者は引き上げて、結果として平均10%引き上げとし、国際公約を守るといった議論が出て然るべしである。
 こうした議論が出ないこと自体不思議であり、違和感すら感じる。
 しかし、いずれにしても、当面は消費税引き上げ延期を受けて、
「実際の消費が戻ってくるのか否か?」
に注目をすべきである。
 そして、消費の回復には、まだ一抹の不安感が国際金融筋には存在しているということをここでは指摘しておきたい。

10.国内賃金と女性活用
 総論賛成である。
 しかし、政治的得点を意識し、政府がこの問題について民間ビジネスに過度に介入してくることは回避すべきである。

11.エボラ出血熱対策
 この問題が自由、公正なる世界経済の秩序を崩すことは明白であり、日本が国際社会に於いて応分の責任を果たすことは当然である。
 当面は日本経済に直接的な悪影響を及ぼすとは思われないが、欧州ビジネスや南アジアビジネスには影響が出る可能性もあり、注視すべきである。

12.過激派対策
 イスラム国、アルカイダなどに見られる暴力行為に対しては厳に対処すべきである。
 しかし一方で、そうした過激派の動きの一つの背景となっている「格差拡大問題」などについては、冷静な対応も合わせて取るべきである。
 当面は直接的な影響が日本にまで及ぶとは思えないが、我々が予想している以上に、過激派の動きは拡散しているものと予想され、油断は禁物である。

13.イスラエル・パレスチナ問題やシリア問題をはじめとする中東問題
  中東問題は日本人にはその背景が分かりにくい宗教問題を絡む、長い歴史の中で繰り返されている対立が根底にあることから、安易に関与は出来ない。
 しかし、そうした根底にある背景を乗り越えて、日本がまた対立する双方と比較的等距離での関係を持っていることもまた事実である。
 そうしたことを考えれば、敢えて、この問題に積極的に関与するまでのことはしなくとも、状況によっては日本が相応の関与を行い、和平に向けての努力を惜しまぬと言う姿勢だけでも示しすべきである。

14.北朝鮮問題
 拉致問題の解決が最優先されることは言うまでもない。
 しかし、そのための戦術を吟味しないと、我々が期待する結果は表れないと言うことを庶民も認識しており、政治的パフォーマンスに終始すべきではない。
 一方で、米国が再び北朝鮮に対して厳しい姿勢を示し、ロシアが逆に北朝鮮にアプローチをする動きを示していること、中国本土は、そうした状況にあって、北朝鮮との距離を置きつつも影響力を確保しようとする水面下での動きを示していることを日本としても意識しておくべきである。

15.そして対中、対韓を意識した外交政策全般
 周辺国との競争と協調を日本独自の立場、視点から検討した上で、米露を中心とする国家の思惑と日本の国益を再度じっくりと見直す時期に来ている。
 日本のアイデンティティを強く意識した外交姿勢と外交戦略の展開を一般庶民は強く期待している。

[そして日本の生きる道]
 以上のようなことを踏まえ、今後の日本を考えれば、
「日本は頑なに、世界に於ける“平和推進国家”を標榜すべきである。」
と私は考えています。
 そしてその為にも、
「日本は世界に必要なものとサービスを量と価格を安定化させて供給できる国家」
を目指すべきであると考えます。
 そして、こうした国家に先ず必要なことは、
「少数精鋭、一騎当千の人材」
であり、人口自然減が予想される中、敢えて、
「人口増加に向けた少子・高齢化対策は不要である。」
とも考えます。
 その際に当面必要なことは、現行の年金、社会保障システムを抜本的に改善して、財政問題を痛みを伴いながら解決していく以外にはないと考えます。
 更に、一騎当千の人材を以って、
「規模の経済性」
を追うビジネスから基本的には決別し、
「少量・変量、多品種、高品質でかつ、高利潤が追求できる中堅中小企業を日本全国各地に、一次産業も含めた全業種に拡大し、山椒は小粒でもぴりりと辛い日本企業をパッチワークのように配置する。」
ことを進め、その結果として、
「日本に居ながらにして外貨を稼ぐ、即ち、日本に雇用機会を残し、日本での利益を明けで適正なる税金を払う企業を増やして、日本が必要とする食糧、原材料、エネルギーを海外から輸入、確保するための外貨を稼いで、自立できる環境を強化していくこと。」
を日本は国家前提として目指していくべきであると考えます。
 果たして、2015年、日本はどのような変化を遂げていくのでありましょうか?
 人を頼らず、
「自力再生」
を旗印に、私たち庶民一人一人が切磋琢磨すべきであると考えます。
 皆で頑張りましょう。

 本年も引き続き宜しくお願い申し上げます。


 
以上
 
愛知淑徳大学 ビジネス学部・ビジネス研究科
教授 真田 幸光


真田先生のプロフィール
真田 幸光氏(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部教授。
1957(昭和32)年生まれ。81年慶大法卒、東京銀行(現・東京三菱UFJ銀行)入行。韓国延世大学留学、ソウル支店、資本市場第 一部、BOT International(H.K.)Ltd.出向などを経て、97年独系ドレスナー銀行東京支店・企業融資部長。98年愛知淑徳大学ビジ ネス・コミュニケーション研究所助教授に就任。2002年4月同 教授、2004年4月より現職。
著書は『日本の国際化と韓国』、『アジアの国、日本』など多 数。 NHKクローズ・アップ現代などテレビ、ラジオ出演をはじめ、中小企業大学校ほか活発な講演活動を展開中。
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